北の大地からやって来たこの若者とは一度だけ会っている。
そして彼の会社のボスは、「建設業におけるCCPM」という、この国ではまだ指折り数えられるぐらいしかなかった取り組みにわたしが足を踏み入れたとき、北の彼方で燦然と輝く先達だった。
若者との出会いは3年前の奈良。懇親会の席上、その前段たる会でプレゼンターのひとりだったわたしに、真っ先に近寄ってきた二人のうちの片割れが彼だった。
彼と彼の先輩(だと思う、たぶん)の熱心な問いかけに、たぶんそれ以上の熱で応えていたわたしは、ふと思い、こんな質問をした。
「ひょっとして君ら、ボスがオレのところへ行けって言ったの?」
そうではない、という。誰にどう言われたわけでもなく、来たという。
瞬時、わたしはおのれの不明を恥じたが、そう思ったとしてもしかたがない。実際に、そのひと足を踏み出せる人たちはめったにいるもんではないからだ。「ほ~、やるやんか」と思いつつ、しばし楽しい話をさせてもらったことを覚えている。
前置きが長くなった。本論へ行きたい。
(そのわりに本論が短いんですネ、いつものことです、ゴメンナサイ)
「ほ~、そうきたか」
と思わずうなってしまったのが、子どもさんを対象にした「みんなのための” コウジ目的 ” シート」。
おじさんたちはこんな思いで” しごと ” をしています
みんなのための”コウジもくてき” シート
こうじのもくてき
1 みずたまりのできない、安全で走りやすいどうろ
2 歩きやすいほどうをつくる
3 みんなにとって、きおくにのこるようなこうじ
こうじのとりくみ
1 やさしいおじさんの、ゆうどうやきりんさんのバリケードをおく
2 こうじきかんちゅう”みまもりたい”でみんなをまもる
3 ポストをおいて、みんなの意見をきく
とりくみのけっか
1 あたらしいきれいな三角点通りたんじょう
2 みんなの元気なあいさつと、さいこうの笑顔
3 みんなから、しんらいされる工事げんば
この基となったと思われる大人版、「地域のための工事目的シート」なるものはこうだ。
工事の目的
・路面の排水を向上し、安全に走行できる車道を整備する
・人に優しく安全なバリアフリー化された歩道に整備する
・地域住民にとって記憶に残るような”道路整備(生活空間)”
・安全・安心な道路空間に整備し、地域住民の生活環境を向上させる
工事の取組
・工事期間中、安全に通行できるように充実された安全施設と交通規制を行う
・工事期間中”みまもり隊”を結成し、子供たちを交通事故や犯罪から守る
・地域住民への工事アンケートBOXを設置して、情報を得る
・作業者全員が、地域の方々と明るく元気な挨拶をする
取組の結果
・快適なみんなが通りたくなる、リニューアル三角点通り!
・子供達の元気なあいさつと満面な笑顔
・地域住民から”信頼”される工事現場
・工事完成後、地域住民から感謝される
う~ん、こちらも素晴らしい!
だがわたしは、「子ども向け」のほうに軍配を上げたい。
それは何も、漢字が少ないからだの平仮名が多いからだのということでは、もちろんない。
よりわかりやすくするためにはどのようにすればいいか、より伝わるようにするにはどうしたらいいかを考えた結果として、ポイントがしぼられ、簡潔な表現になり、ストレートに思いが伝わる「工事目的シート」になっていると、わたしは思うからである。
(ちなみに「やさしいおじさん」はダメだね。そんなこと自分で言うのは「正しいオジさん」的にはNGです)
「自分が伝えようとすることをわかってもらおうとするには、相手はバカかもしれない、というぐらいの姿勢で臨まないとダメ」
折にふれ、わたしはこう言う人だ。だが、言うは易く行うは難し。どこらあたりで折り合いをつければいいのかにいつも頭を悩ました結果、ついつい中途半端なところに落ち着いてしまったりするのが常である。
そんなわたしからすれば、「おじさんたちはこんな思いで”しごと”をしています」の後につづく「みんなのための”コウジもくてき”シート」は、お見事としかいいようがない。
「子ども用」だから、とか言うことではない。そこには、大の大人に伝えようとするときの要諦があると私は思うのだ。
建設業はただ「モノづくり」をしているわけじゃない。
工事完成の強い想いを地域住民にわかりやすく伝える。
北の大地からやって来たプレゼンターの力強い言葉にうなずきながら、同時に、そのボスたる彼の人の顔を思い浮かべ、「いやいやさすが、やるもんだわい」と感服してしまったわたし。
勉強になりました!
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