漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「思シ」<囟シ(ひよめき)がうごく>「偲シ」と「鰓えら」「顋えら」

2023年05月09日 | 漢字の音符
 鰓サイと顋サイに図版を追加しました。
 シ・おもう  心部

泉門(デジタル大辞泉)
解字 篆文は「心(心臓)+囟(ひよめき)」の会意形声。囟(ひよめき)は、幼児の頭の骨がまだ完全に縫合し終わらない形で、左右の前頭骨と頭頂骨とに挟まれた菱形のものを大泉門、左右の頭頂骨と後頭骨との間の三角形のものを小泉門という。この字で、ひよめきは大泉門を指す。
 思は、心臓の動き(脈拍)につれて大泉門がヒクヒクと動くこと。脳をおおっている頭蓋骨が心臓の鼓動でゆれるさまは、人が脳をはたらかせているさまであり、思う意となる。現代字は、篆文の囟 ⇒ 田に変化した。
幼児のひよめきが動く
意味 おもう(思う)。おもい。「思考シコウ」「思慮シリョ」(思いめぐらす)「思潮シチョウ」「意思イシ」(考え。おもう)「相思相愛ソウシソウアイ

イメージ
 「おもう」
(思・偲)
 心臓の動きにつれて、ひよめきが「ヒクヒクと動く」(鰓・顋)
音の変化  シ:思・偲  サイ:鰓・顋

おもう
 シ・サイ・しのぶ  イ部
解字 「イ(ひと)+思(おもう)」の会意形声。人が過去や物事をなつかしく思うこと。また、孜(つとめる・はげむ)に通じ、はげむこと。
意味 (1)[国]しのぶ(偲ぶ)。 (2)努力する。「偲偲シシ」(たがいにはげましあう)

ヒクヒクとうごく
 サイ・えら  魚部
解字 「魚(さかな)+思(ヒクヒクとうごく)」の会意形声。魚が常にヒクヒクと動かして呼吸する部分。えらをいう。

コイの鰓(「MCF Japan-CARP」より)
意味 (1)えら(鰓)。魚など水生動物の呼吸器。「鰓呼吸えらコキュウ」 (2)(魚のえらは口の両側の後ろにあることから)俗に人の両あごの下の部分を指す。正式な字は「顋サイ」。
 サイ・えら  頁部
解字 「頁(あたま・かお)+思(=鰓。えら)」の会意形声。人の顔のえらに当る部分。(魚のえらは口の両側の後ろにあることから)口の両側のあごの下のところをいう。また、あたまの上のヒクヒクうごく「ひよめき」の意でも使う。
 
意味 (1)えら(顋)。①人の顔でほほの下に当るあごの部分。「顋の張った人」②魚などのえら。正式な字は「鰓」(2)ひよめき(顋門)。乳児の頭蓋骨がまだ接合していない部分。
<紫色は常用漢字>

<関連音符>

 シ・シン  口部
意味 ひよめき。脳の蓋骨。また、生後間もない赤ちゃんの完全に閉じきっていない頭蓋骨の隙間のことを言う。音符「囟シ」を参照。 

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音符「重ジュウ」<おもみがかかる>と「種シュ」「腫シュ」「衝ショウ」「動ドウ」

2023年05月07日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 ジュウ・チョウ・トウ・え・おもい・かさねる・かさなる  里部 

解字 金文第一字は「人(ひと)+東(中に荷物が入った袋)」で、人が荷物をいれた袋を背負う形。荷物が重い意となる。金文第二字は人が東の上にきた形。篆文は、さらに下に土がつき人が持つ袋の重みが土にかかる意で、重い意を表す。現代字は形が変わり、千と里がつながった重になった。したがって部首は里になっている。発音は東トウが変化した、ジュウ(呉音)・チョウ・トウ(漢音)。
意味 (1)おもい(重い)。おもさ。「重量ジュウリョウ」 (2)おもおもしい「重厚ジュウコウ」 (3)大切にする。「重用チョウヨウ」 (4)かさなる(重なる)。「重箱ジュウばこ」「八重やえ

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 「おもみがかかる」
(重・動・働・慟・衝・踵)
  重の意味(4)の「かさなる」(腫)
 「形声字」(種・鍾・董)
音の変化  ジュウ:重  シュ:種・腫  ショウ:衝・踵・鍾  トウ:董  ドウ:動・働・慟 
 
おもみがかかる
 ドウ・うごく・うごかす  力部  
解字 「力(ちから)+重(おもい)」の会意形声。重いものに力を加えて動かすこと。うごく・うごかす意。
意味 (1)うごく(動く)。うごかす(動かす)。「動画ドウガ」「「動向ドウコウ」 (2)乱れる。「動乱ドウラン」「動転ドウテン」 (3)人のふるまい。「活動カツドウ」「動機ドウキ
<国字> ドウ・はたらく  イ部
解字 「イ(人)+動(うごく)」の日本製漢字。人が動いてはたらくこと。
意味 はたらく(働く)。はたらき。「労働ロウドウ」「実働ジツドウ」「稼働カドウ」(かせぎ働く。機械を働かせる)
 ドウ  忄部
解字 「忄(心)+動(うごく)」の会意形声。身体を揺れ動かせて悲しむこと。
意味 なげく(慟く)。身もだえして悲しむ。「慟哭ドウコク」(大声をあげてなげき悲しむ)「慟泣ドウキュウ」(泣いて悲しむ)
 ショウ・つく  行部  
解字 「行(ゆく)+重(おもい)」の会意形声。重い物が行き当ること。ぶつかること。
意味 (1)つく(衝く)。ぶつかる。「衝突ショウトツ」「緩衝カンショウ」(あたりを和らげる)「折衝セッショウ」(敵の衝いてくる戈先をくじき(折)とめる。外交のかけひき) (2)つきうごかす。「衝動ショウドウ」(つきうごかすこと)「衝動買い」(その場の欲しいという気持ちだけで買ってしまうこと) (3)かなめ。大事な所。「要衝ヨウショウ」(衝(攻撃)に対し要(かな)めとなる所)
 ショウ・かかと  足部
解字 「足(あし)+重(おもみがかかる)」の会意形声。立ったとき重みがかかる足の部分。
意味 (1)かかと(踵)。きびす(踵)。くびす。「踵きびすを返す」(引き返す) (2)つぐ。後ろに付き従う。「踵接ショウセツ」(踵が接する。人が絶えまなく続いて行く)

かさなる
 シュ・はれる・はらす  月部にく
解字 「月(からだ)+重(かさなる)」の会意形声。体の細胞が過剰に増殖して、重なるようにふくらむこと。
意味 はれる(腫れる)。はれもの。「腫瘍シュヨウ」(身体の細胞が過剰に増える症状)「肉腫ニクシュ」(皮膚以外の組織の腫瘍)

形声字
 シュ・たね・うえる  禾部
解字 「禾(穀物)+重(ジュウ⇒シュ)」の形声。[説文解字]は「先に穜(うえ)て後(のち)孰(みの)る也。禾に从(したが)い重の聲(声)」とし、穀物を最初に穜(うえ)る、また蒔(ま)くタネ(種子)とする。禾(穀物)にシュ(重)の発音で、うえる(種える=穜)、タネ(種子)の意味とした。また、タネの意から、タネの種類(同じタネの仲間)の意となる。
意味 (1)たね(種)。「播種ハシュ」 (2)うえる(種える)。「種芸シュゲイ」(穀物や草木を種え付ける)「種痘シュトウ」(牛痘を人体に種えつける) (3)たぐい。「種類シュルイ」「種目シュモク」「人種ジンシュ
 ショウ・シュウ・あつめる・かね  金部
解字 「金(金属)+重(ジュウ⇒ショウ・シュウ)」の形声。ショウ・シュウとよぶ金属の器。[説文解字]は、「酒器也。金に从(したが)い重の聲(声)とする。また[同注]は、「古者(いにしえは)此の器に蓋を用い以(もっ)て酒をたくわえた。故に其の下は大きく、其の頸くびは小さい」とし、つぼ型の酒器を言った。この酒器が周代において容量の単位とされ一鍾は49.7リットルとされた。また、シュウの発音が聚シュウ(あつまる)に通じ、あつまる意がある。またショウの発音が鐘ショウ(かね)に通じ、「つりがね」の意味にもなる。
意味 (1)つぼ形の酒器。(2)周代の容量の単位。1鍾ショウ(約49.7リットル)は4釜で大容量。(3)あつめる(鍾める)。あつまる。「鍾愛ショウアイ」(愛をあつめる。非常にかわいがること) (4)かね(鍾)。=鐘。「鍾乳ショウニュウ」(鍾の表面に乳首のように突起した飾り)「鍾乳洞ショウニュウドウ」(地下の石灰岩が雨水や地下水で溶け、できた空洞)「鍾乳石ショウニュウセキ」(鍾乳洞の天井から下がる白い石。その下に石筍セキジュンができる) (4)「鍾馗ショウキ」とは、疫病神を追い払うという民間信仰の神。

鍾乳がある鍾(かね)(中国ネット「古玩珍蔵」から)
 トウ・ただす  艸部
解字 「艸(くさ)+重(トウ)」の形声。草冠がつくのでハスの根を表したとされるが根拠は不明。草冠の字は姓となることがあり、原義は董姓からか。董姓は中国の姓のうち最も古い姓の一つとされ、最初の皇帝である黄帝の末裔である高陽氏まで遡ることができるとされる。董の意味に、みはる・ただす・監督するなどがあるが、指導力のある董姓の人々の行動をあらわしたのかも知れない(私見です)。
意味 (1)ただす(董す)。とりしまる。おさめる。「董正トウセイ」(ただす。おさめ正しくする)「董督トウトク」(監督し取り締まる)「董統トウトウ」(董・統とも、全体を統括する意で、きちんと管理すること)「董事長トウジチョウ」(中国で、理事長・代表取締役のこと) (2)「骨董コットウ」とは、価値ある古道具や古美術品をいう。※中国語で「骨董グトン」と発音し、「古董グトン」とも書くことから「古い東西(品物)」を略した「古東グトン」が語源か。 (3)姓の一つ。「董仲舒トウチュウジョ」(武帝に仕えた前漢の学者)「董卓トウタク」(後漢末の将軍)
<紫色は常用漢字>

<関連音符>
 トウ・ひがし  木部  
解字 筒状の袋の両端を縄でしばった形の象形。この袋は普段は両端が開いている袋で、荷物を入れて運ぶのに使用した。袋に荷物を詰めると両端を結び、人が背負って運んだ。この字形が「重い」という字になる。東は袋の意味で使われることなく、「ひがし」の意味に仮借カシャ(当て字)された。
意味 ひがし(東)。 
東を音符に含む字  トウ:東・棟・凍  チン:陳
音符「東トウ」を参照。
  
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音符「音オン」<おと> と 「暗アン」「闇アン」「諳アン」

2023年05月05日 | 漢字の音符
 オン・イン・おと・ね  音部                   

解字 金文は、言(いう)の口のなかに短線を入れた形で、言葉を言うのでなく口からでる音声を表した指事文字。言葉以外の、人の声帯の振動をともなう音声がもとの意。のち物の振動から出る音やひびきもいう。篆文で、「口+短線」は日となり、現代字は上が立に変化した音になった。
意味 (1)おと(音)。ひびき。ねいろ。「音楽オンガク」「音階オンカイ」(音楽の音を高さの順に並べたもの)「音色ねいろ」(音の特性) (2)こえ。「音声オンセイ」(人間が発する言語の音) (3)おん(音)。漢字の字音。「呉音ゴオン」(古代に伝来した中国南方系の字音)「音訳オンヤク」(外国語の発音を漢字で表すこと。地名や仏典に多い) (4)知らせ。たより。「音信オンシン
参考 音は部首「音おと」になる。左辺や下部に付いて音の意味を表す。しかし、主な字は響キョウ・ひびく(音+音符「郷キョウ」、韻イン・ひびき(音+音符「員イン」)の2字しかない。

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 「おと」
(音)
 「形声字」(暗・闇・諳・黯)
音の変化  オン:音  アン:闇・暗・諳・黯

形声字
 アン・くらい  日部
解字 「日(太陽)+音(イン⇒アン)」の形声。アンはアン(くらい)に通じる。アンは「日(ひ)+奄エン(おおう・さえぎる)」で、日の光がさえぎられて、くらい意。暗も同じく、日がさえぎられてくらい意となる。
意味 (1)くらい(暗い)。くらがり。やみ。「暗雲アンウン」「幽暗ユウアン」(くらいこと)「暗黒アンコク」 (2)隠れていて見えない。「暗礁アンショウ」 (3)あんに。ひそかに。「暗殺サンサツ」 (4)おろか。「暗愚アング」 (5)そらで覚える。「暗記アンキ」(=諳記)  
 アン・やみ・くらい   門部
解字 「門(もん)+音イン⇒アン(=暗。くらい)」の会意形声。門を閉じて中が暗いこと。日本語のやみ(闇)は、光が止(や)む意。「光ノ止(や)みタル二テ暗キ意」(大言海)。
意味 (1)くらい(闇い)。やみ(闇)。くらがり。「夕闇ゆうやみ」(夕方の暗さ。日が落ちて月がのぼるまでの暗さ)「闇夜やみよ」(月のない夜) (2)ひそかに。こっそりと。「闇市やみいち」 (3)とじる。門をとじる。「諒闇リョウアン」とは「まことに暗し」の意味で天子が父母の喪に服する期間を言い、一年とされた。闇アンは、くらい意味であるが、天子が居所の門をとじる意味も含まれている。
くらいと闇やみの違い
 暗アンは日の光がさえぎられて、くらい意であり、闇アンは門が閉じられてくらい意。どちらも「くらい」意味で用いるが、暗は日の光がさえぎられるので、薄暗い意味でも使える。しかし、闇アンは門を閉じるので門の内(=屋内)に光がまったく入らない暗さの意味で「まったく光のない所」のニュアンスがある。
「暗アン」は「相対的に明るくないこと」。「薄暗い」と言い換えると分かりやすい。まったく暗い意味は「暗黒アンコク」といい黒をつける。
「闇アン」は「絶対的な暗さ」であり、ここから転じて「闇市やみいち」「闇金融やみキンユウ」などの語も派生する。
 アン・そらんじる  言部
解字 「言(いう)+音イン⇒アン(=暗。くらい)」の会意形声。暗い中で文字を見ずに言うこと。
意味 そらんじる(諳んじる)。そらでおぼえる。「諳記アンキ」(そらでおぼえる=暗記)「諳誦アンショウ」(そらでおぼえていて口に出していう=暗誦)
 アン・エン・くろい・くらい  黒部
解字 「黑(くろい)+音(オン⇒アン)」の形声。[説文解字]は「深い黑くろ也(な)り。黑に従い音の聲(声)。発音は「乙減切(アン)」とする。深い黒の意。
意味 (1)くろい(黯い)。深い黒。あおぐろい。「黯黒アンコク」(くろい。黯も黒も、黒い意) (2)くらい(黯い)。奥深い。「黯黯アンアン」(暗いさま)「黯爾アンジ」(くらいさま。爾は状態を表す)「黯澹アンタン」(①うす暗くふかい、②くらい気持ちのさま)「黯靄アンアイ」(くらくたちこめた靄もや) (3)いたましい。心がふさぐ。「黯然アンゼン」(悲しみでくらく沈んでいるさま。=暗然)
<紫色は常用漢字>



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音符「石セキ」<いし>と「碩セキ」「拓タク」「妬ト」「岩ガン」

2023年05月03日 | 漢字の音符
 これまで石は、厂(がけ)の下の口(いしころ)として解字されてきた。ところが甲骨文字の研究がすすむと、石は三角形の石製打楽器を象ったことが明らかとなった。
  セキ・コク・シャク・いし  石部

解字 甲骨文字第一字は、石磬セッケイとよばれる三角形の石製打楽器を象ったもの。大きさの異なる石磬をいくつも吊るして編磬ヘンケイとよばれる楽器とし演奏した。この打楽器が祭祀で使われることから祭器の形である口サイを付けたのが第二字である[甲骨文字小字典を参照]。金文以降は第二字の形が「厂+口」となって継続し、現代字は上辺が少し左に出た「石」となっている。意味は甲骨文字から、いし・石製の意味で使われている。

石磬セッケイ(中国ネットの骨董品市場出品物)

中国白山市の長白山満族文化博物館での石磬の演奏(「東北亜の窓」より)
意味 (1)いし(石)。「岩石ガンセキ」「隕石インセキ」「石火セッカ」(火打ち石を叩いたときに出る火花) (2)石製の楽器。「石磬セッケイ」 (3)いしぶみ。石に刻した文字。「石碑セキヒ」「金石文キンセキブン」(鼎かなえ・鐘や石碑に刻された文字) (4)医療用の石針。「砭石ヘンセキ」(石の針)「薬石ヤクセキ」(薬と石針) (5)かたくて融通のきかない。「石頭いしあたま」(6)尺貫法の容積の単位。一石イッコク(約180リットル)は10斗。 (7)おおきい。いわ。「石窟セックツ」 (7)姓のひとつ。「石平セキヘイ

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 「いし」
(石・岩・拓・宕・跖・磊・鮖) 
  石は固くて「中味がつまる」 (妬・碩・柘)

音の変化  セキ:石・碩・跖  シャ:柘  タク:拓  ト・トウ:妬・宕  ガン:岩  ライ:磊  かじか:鮖 
 
い し
 タク・ひらく  扌部 
解字 「扌(て)+石(いし)」の会意形声。石器の道具を手に持って土地を切り開くこと。また、手に持ったもので軽く石をたたく拓本の意もある。
意味 (1)ひらく(拓く)。未開の地を切り開く。「開拓カイタク」「干拓カンタク」(湖沼などを水を抜いて耕地にする) 「拓殖タクショク」(土地を拓き民を移住させる。開拓と殖民) (2)写し取る。「拓本タクホン」(石碑の上に紙をおき、墨のついたタンポで叩いて文字を写し取る)
 セキ  足部
解字 「足(あし)+石(いし)」の会意形声。石をふむ足のうら。蹠セキの異体字。
意味 (1)足のうら。足。⇔跗(足の甲) (2)ふむ。ふみつける。「跖地セキチ」(地をふむ) (3)古代中国の泥棒の名。「盗跖トウセキ
 ライ  石部
解字 「石+石+石」の会意。石三つで、大きな石が重なり合うさま。また、人に移して、細かいことに拘らず、度量が大きく型にはまらない人をいう。
意味 (1)大きな石が重なりあうさま。「磊磊ライライ」「磊塊ライカイ」(積み重なった塊) (2)心が大きいさま。おおらか。「磊落ライラク」(朗らかで小事にこだわらない)「豪放磊落ゴウホウライラク
<国字> かじか  魚部
解字 「魚(さかな)+石(いし)」の会意。小石の多いところに棲む魚。
意味 かじか(鮖)。鰍とも書く。山地の渓流に生息する淡水魚。石礫セキレキ(小石)中心の川底を好み、水生昆虫や小魚、底生生物などを食べる。
 ガン・いわ  山部
解字 「山(やま)+石(いし)」の会意。山のように大きな石。つまり岩(いわ)。
意味 いわ(岩)。いわお。大きな石。「岩塩ガンエン」(岩になった塩)「岩礁ガンショウ」(海水中にかくれている岩)「岩壁ガンペキ
 トウ ・いわや   宀部  
解字 「宀(たてもの)+石(=岩)」の会意。建物の象形である宀ベンと石(岩)からなり、岩屋を意味する。甲骨文字では祭祀施設や地名またはその長の意味で使われているという[甲骨文字辞典]。また、蕩トウ(きまま)に通じ、ほしいままの意もある。
意味 (1)いわや(宕)。石の洞窟。石窟。「偃宕エントウ」(偃(ふ)せて入る低い石洞) (2)気まま。ほしいまま。「宕子トウシ」(道楽者=蕩子)「跌宕テットウ」(こせこせしないさま。=跌蕩)(3)地名。「愛宕あたご」(①地名。②神社名)「愛宕山あたごやま」(京都市にある山。山頂に火伏の神を祭る愛宕神社がある)

中味がつまる
 ト・ねたむ・そねむ  女部
解字 「女(おんな)+石(中味がつまる)」の会意。女性の競争心がいっぱい詰まること。なお、「説文解字注」は「婦、夫を妒(ねた)む也(なり)。女に従い戶(ト)聲(声)」とし、夫人が夫にやきもちをやく意とする。[集韻]は「妒トに同じ」とする。
意味 ねたむ(妬む)。そねむ(妬む)。やく。「嫉妬シット」(嫉も妬もねたむ意)「妬婦トフ」(嫉妬深い女)「妬気トキ」(ねたむこと。りんき)
 セキ・おおきい  石部
解字 「頁(あたま)+石(中味がつまった)」の会意形声。充実した立派な頭脳をもつ意。
意味 (1)頭が充実している。中味がすぐれている。「碩学セキガク」「碩士セキシ」(学問・人格のすぐれた人。中国では大学院修士課程をいう)(2)おおきい(碩きい)。おおきくてかたい。「碩徳セキトク」(大きな徳、また、大徳のある人)
 シャ・つげ  木部
解字 「木(き)+石(中味がつまる)」の会意形声。材が極めて緻密な木。

柘植つげの幹と樹皮(「庭木図鑑」より)
意味 (1)やまぐわ(柘)。桑の一種。材はかなり硬く工芸用に使われる。(2)つげ(柘)。柘植つげ・黄楊つげとも書く。。ツゲ科の常緑低木、材は黄褐色で極めて緻密で、印材、版木、チェスの駒や将棋の駒、櫛、数珠などに利用される。(3)「柘榴ざくろ」は石榴の書き誤り。
<紫色は常用漢字> 

参考 石は部首「石いし・いしへん」になる。漢字の下部や左辺につき、石や鉱物の意味を表す。常用漢字で16字、約14,600字を収録する『新漢語林』では232字が収録されている。
常用漢字 16字
 セキ・いし(部首)
 カク・たしか(石+音符「隺カク」)
 ケン・とぐ(石+音符「开ケン」)
 (石+音符「基キ」)
 コウ・かたい(石+音符「更コウ」) 
 サ・すな(石+音符「少ショウ」)
 砕[碎]サイ・くだく(石+音符「卆(卒)ソツ」)
 (石+音符「茲ジ」)
 ショウ(石+音符「肖ショウ」)
 ショウ(石+音符「焦ショウ」 
 ソ・いしずえ(石+音符「楚ソ」)
 ハ・やぶる(石+音符「皮ハ」)
 ヒ・いしぶみ(石+音符「卑ヒ」)
 ホウ・つつ(石+音符「包ホウ」)
 マ・みがく(石+音符「麻マ」)
 リュウ(石+音符「㐬リュウ」)
常用漢字以外
 キ・いそ(石+音符「幾キ」)
 バン・いわ(石+音符「般ハン」)ほか  
   
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音符「黒コク」<すす>「墨ボク」「黙モク」と「熏クン」「薫クン」「勲クン」

2023年05月01日 | 漢字の音符
  増補改訂しました。
[黑] コク・くろ  黒部           

解字 金文は上が田のような顔、下が大で、顔に点々、大の上下にも点々がつき、中国の古文字学者の唐蘭は、入れ墨の刑をされた人をかたどった形で、意味は入れ墨の色である黒とする。篆文は上がの中に小の形、下が「火+火」に変化した。この字形を[説文解字]は、下を炎とみなし「火の燻(くん)ずる所の色なり」とし、[同繋伝]は上部を煙突の形とする。すなわち炎の煙が通る煙突に点々と煤のついたさまを表わすとし、黒いすす(煤)、すなわち黒の意とした。旧字で上の火⇒土に、下の火が灬に変化、新字体はさらに、すすのついた煙突の部分が田に変化し、全体で「里+灬」になった。こんなに変化してしまうと、成り立ちを覚えても意味がない。黒は「里に四つの(灬)黒い点」と覚えるしかない。イメージは煙突についた「すす(煤)」
意味 (1)くろ(黒)。くろい(黒い)。「黒雲コクウン」「黒衣コクイ」 (2)悪い。やみの。有罪の。「黒心コクシン」(①悪い心。②ねたみ心)「腹黒(はらぐろ)い」 (3)くらい。よる。「暗黒アンコク
黒は部首「黒くろ」になる。漢字の左辺や下部について、くろい意を表す。
常用漢字 2字
  コク・くろ (部首)
 モク・だまる(黒+犬)
常用漢字以外
 タイ・まゆずみ(黒+音符「代ダイ」)
 ゲイ・いれずみ(黒+音符「京ケイ」)
 バイ・かび(黒+音符「微の略」)ほか

イメージ 
 「すす(煤)」
(黒・墨) 
  黒の意味(3)の「くらい」(黙)
音の変化  コク:黒  ボク:墨  モク:黙

す す
 ボク・すみ  土部
解字  旧字は墨で「土(つち)+黑(すす)」の会意形声。土のようになったススのかたまりで、新字体は墨に変化。
意味 (1)すみ(墨)。煤をにかわで練り固めたもの。また、墨でかいたもの。「墨汁ボクジュウ」「水墨画スイボクガ」「白墨ハクボク」(2)墨子(中国の思想家)のこと。「墨守ボクシュ」(自分のやり方を改めないこと)

くらい
 モク・だまる  黒部
解字 旧字は默で「黑(くらい)+犬(いぬ)」の会意。犬は死者と共に埋葬される犠牲獣で葬儀を示し、黒はくらい意。「諒闇リョウアン」(まことに暗し)は、天子が父母の喪に服する期間のことで、暗いは服喪する意味がある。黙は、葬儀に続く服喪の期間中、人々が行動をひかえ口数が少なくなること。転じて、口をつむぐ・だまる意となる。新字体は黙に変化。
意味 だまる(黙る)。口をつぐむ。「沈黙チンモク」「暗黙アンモク」「黙示モクジ」(黙ったまま、意見や考えを示すこと)
覚え方 くろ()い夜は、いぬ()がる。



   クン <くゆらす>
 クン  灬部          

解字 篆文は「屮(けむり)+黑コク」の会意。黑は、下から火でいぶされて煙突の中に煤がたまる形。熏クンは黑の煙が出ている形で、いぶす・くすべる・くゆらす(香などをたく)意。現在の字は「千+黑」の熏クンとなった。新字体に用いられるとき、上部は、重に変化する。
意味 (1)くすぶる。けむる。 (2)いぶす。くゆらす。

イメージ 
 「いぶす」
(熏・燻・壎)
 「くゆらす」(薫・勲・醺)
音の変化  クン:熏・燻・薫・勲・醺  ケン:壎

いぶす
 クン・いぶす・くすぶる・くゆらす・ふすべる  火部
解字 「火(ひ)+熏(いぶす)」の会意形声。熏クンの意味を、火をつけて強調した字。
意味 いぶす(燻す)。くすぶる(燻ぶる)。くすべる。ふすべる(燻べる)。「燻し銀」(硫黄でいぶした銀)「燻製クンセイ」(魚・肉などをいぶした食品)「燻蒸クンジョウ」(害虫などを殺すため薬剤で燻すこと)
 ケン・つちぶえ  土部

解字 「土(つち)+熏(いぶす)」の会意形声。土で形を作り、いぶして作った笛。
意味 つちぶえ(壎)。卵型で複数の穴があき、指で穴をふさいで音階を調節する。「壎箎相和ケンチあいわす」(壎ケン(土の笛)と箎チ(竹の笛)の音が調和すること。また、これを吹く兄弟の仲が良いこと。)

くゆらす
 クン・かおる  艸部
解字 旧字は薰で「艸(香草)+熏(くゆらす)」の会意形声。香草のにおいが、もやもやと立ちこめること。新字体は、薫に変化。
意味 (1)かおりぐさ。香草。(2)かおる(薫る)。かおり(薫)。(3)くすべる。香をたく。転じて、徳の力で善に導く。「薫育クンイク」「薫化クンカ」「薫陶クントウ」(徳の力で人材を教育する)
 クン・いさお  力部
解字 旧字は勳で「力(ちから)+熏(=薫。香りをくゆらせる)」 の会意形声。国や王国の香り(影響)をはっきり示す(くゆらす)のに力のあった功績。新字体は、勲に変化。
意味 (1)いさお(勲)。てがら。国家や王室のために尽くした力。「勲功クンコウ」(てがら)。「勲章クンショウ」(国家のために尽くしたてがらに授与される賞牌) (2)勲章。「勲一等」「叙勲ジョクン」(勲章を授ける)
 クン・よう  酉部
解字 「酉(さけ)+熏(くゆらす)」の会意形声。酒のにおいをくゆらすこと。
意味 (1)よう(醺う)。酒によう。におう。「醺然クンゼン」(酒によって気分のよいさま) 「微醺ビクン」(ほんのりと酒に酔う)「醺醺クンクン」(①酒の香りの立ち込めるさま。②ほどよく酔うさま。)
<紫色は常用漢字>

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