漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「凡ハン」<木製の容器>と「汎ハン」「帆ハン」「鳳ホウ」

2015年02月10日 | 漢字の音符
 ハン・ボン・すべて・およそ  几部つくえ

           上は凡、下は舟
解字 上の古代文字は、上が凡で、下が舟。凡の甲骨・金文は、舟と似ており木製の角ばった容器などの象形と考えられる。凡と舟は、篆文から、それぞれ大きく形が変わった。また、凡ハンは盤バン・ハン(たらい・はち・大さらなどの器)に通じる。どこの家にもある容器なので、すべて・みなの意となり、また、どこにでもあることから、ありふれた意となる。篆文から形が大きく変形し、それを受けて現代字は凡になった。   
意味 (1)すべて(凡て)。みな。おしなべて。「凡例ハンレイ」(書物のはじめに掲げる編集の約束事。すべてに通じる例の意) (2)ありふれた。なみ。あたりまえ。「平凡ヘイボン」「凡俗ボンゾク」 (3)[国]およそ。だいたい。「凡(およ)そ」

イメージ 
 「木製の容器」
(凡・汎)
 「風の略体」(帆)
 「ホウの音」(鳳)
 「ボンの音」(梵)
音の変化  ハン:凡・汎・帆  ホウ:鳳  ボン:梵 
 
木製の容器
 ハン・ひろい  氵部
解字 「氵(水)+凡(木製の容器)」 の会意形声。木製の容器が水にうくこと。水の上にうかぶ・ただよう意となる。古代には、舟を浮かべる意でも用いた。また、凡ハン(すべて)に通じ、ひろく行きわたる意となる。
意味 (1)うかぶ。ただよう。舟をうかべる。「汎汎ハンハン」(①浮きただようさま.②広々と果てしないさま))「汎舟ハンシュウ」(舟をうかべる) (2)ひろい(汎い)。広くゆき渡る。あまねく。「汎用ハンヨウ」(ひろくいろいろの用途に使う)「汎論ハンロン」(ひろく全体にわたって論じること。通論)

風の略体
 ハン・ほ  巾部
解字 「巾(ぬの)+凡(風の略体)」 の会意形声。風をうける巾(ぬの)で船の帆を表す。
意味 ほ(帆)。ほをかけて走る。「帆船ハンセン」「出帆シュッパン」「帆前船ほまえセン」「帆走ハンソウ

ホウの音
 ホウ・ブウ・おおとり  鳥部   

解字 甲骨文は想像上の瑞鳥である、おおとりを描いた象形に発音をあらわす凡をつけた字。篆文から、「鳥(とり)+凡(ホウ・ブウ)」の形声に変化。凡(ボン・ハン)は、上古音(殷周代)でホウ・フウ(ブウ)の発音であり後にボン・ハンへの字音の変化があったと推定されている。おおとりは風の神ともされ、古くは風の意味もあった。
意味 (1)おおとり(鳳)。古代中国で尊ばれた想像上の瑞鳥。「鳳凰ホウオウ」(鳳はオス、凰はメスを表すとされる瑞鳥) (2)天子・宮中に関することにつける語。「鳳輿ホウヨ」(天皇の乗り物) (3)「鳳梨ホウリ」とは、パイナップルのこと。

ボンの音
 ボン・ハン  木部
解字 「林+凡(ボン)」 の形声。林に意味はなく、梵語(古代インドの文語であるサンスクリット語)のボンの発音を表す字として用いられる。
意味 (1)バラモン教の神。「梵天ボンテン」(①バラモン教の神。②仏法守護の神) (2)インド古代のサンスクリット語のこと。「梵字ボンジ」「梵語ボンゴ」 (3)仏教に関する物事につける。「梵鐘ボンショウ」(お寺の釣り鐘) (4)姓。梵(そよぎ)。
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 冨谷 至著 『木簡・竹簡の語... | トップ | 音符「殺サツ」<ころす> と... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

漢字の音符」カテゴリの最新記事