白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

手合日

2016年06月16日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日はビッグニュースが2つありましたね。
一つはイチロー選手の日米通算4257安打!
もう一つは、井山裕太七冠の総理大臣顕彰!
いずれも今世紀中に破られるかどうかわからない大記録だと思います。
お二人には今後も人々の目標になる存在でいて頂きたいですね。

さて、本日は木曜日、棋士の対局日でした。
幽玄の間で中継された対局から、見所を紹介していきましょう。



たまにはヨセに注目してみましょう。
安達利昌三段(黒)対大西竜平初段戦です。
白番、次の一手は?




白1と一本切りを入れ、その後何事も無かったかのようにヨセに入りました。
白1には何の意味があったのでしょうか?





放っておくと、黒2から6までのヨセの手筋が生じる所でした。
白Aと打つしかありませんが、黒Bで白地を大きく荒らされてしまいます。





ではそれを防いで白1と押さえるのはどうでしょうか?
すると黒は他の大きなヨセに回ってしまいます。
白3と打っても1目取れるだけで、地としては小さいです。





という事で実戦の切り一本という発想が生まれるのでした。
今度は黒10に白11が成立します。





黒1にはAとBが見合いで黒取られています。

何気なく通り過ぎてしまう場面かもしれませんが、プロの碁はこういう所の巧拙が勝負の分かれ目になります。
棋譜を見ていてこういう所で手が止まるようになれば、皆様自身のヨセのレベルアップにも繋がる事でしょう。





2局目は張瑞傑二段(黒)対蘇耀国九段戦です。
白△と、黒3子を攻めに来ました。
黒はどう対応しますか?





3子が弱いので、黒1以下まず治まりを図るのが普通の発想です。
しかし白14までと進み、白地もかなり大きくなりました。
この図を不満と考えた黒は・・・。





黒1!
守りではなく、仕掛けて行く道を選びました。
無謀なようですが、下方の白の大石も弱い事が計算に入っています。





下方に気を使って白1は仕方ありませんが、黒2と白△を大きく飲み込むつもりです。
白もそれは許さんと白3以下切断して行き・・・。





このような攻め合いになりました。
黒番、どうしますか?





攻め合いの原則は本体(この場合白△)のダメを詰める事、内ダメ(黒A)を詰めない事です。
という事で黒1が正解、ここで白投了となりました。





白が続けて打った図です。
最後の最後、白石を当たりにする段階で初めて黒4の内ダメを詰めるのがポイントです。

若い棋士はよく手が読めます。
本局はその武器を最大限に生かした1局でした。





最後は張豊猷八段(黒)対依田紀基九段戦です。
白番、上下の白が弱く苦しそうな状況です。
どう凌ぎますか?





実戦は白1、これが形の急所です。
白A黒B白C、白B黒A白Dという2つの狙いを見ています。
黒は行動が不自由になりました。





黒1は打ちたい手ではありませんが、上方の黒を守るために仕方なく打ちました。
結果白12までと、自然に右下白が生きています。
白△も相変わらず急所に来ており、白のサバキは成功です。





手順が進んで、白番です。
どこに目を向けますか?





実戦は白1と格好良いツケ!
黒石のダメ詰まりを睨んで、ここが急所です。





割り込まれては困るので黒1は仕方ありませんが、白2となって黒の頭を押さえ込む事に成功しました。





さらに手順は進み、黒△とノゾいて来た場面です。
白、どう対応しますか?





白1と繋ぐのは重く、黒の注文通りです。
黒2となって、次に黒A白B黒Cで切断する狙いが生じました。





実戦はまたしても格好良い手が出ました。
白1のカケ!
黒の逆手を取って行きました。





以下長手数ですが白23まで一本道です。
白は枝葉の石を捨て、大石を攻められる事を回避しました。

筋場理論を提唱する依田九段は、石の形に拘りがあります。
本局は白石の形が崩れる場面が全くありませんでした。
棋譜並べには最適の1局だと思います。


本日は23図を掲載、ちょっと頑張りすぎました
プロの碁の魅力をお伝えできていれば幸いです。
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