白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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努力の方向性

2017年09月06日 22時03分34秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は三星火災杯32強戦の2日目が行われました。
結果は日本勢が全員1勝1敗となり、明日勝てば16強戦進出、負ければ敗退という分かり易い形になりました。
頑張って欲しいですね。

それにしても、山下敬吾九段と李世ドル九段の対局は凄い殴り合いでした。
ぜひ幽玄の間でご覧ください。

もう1つお知らせです。
iOS11を導入すると、日本棋院提供の4つのアプリが動かなくなります。
これは日本棋院のアプリだけでなく、多くの一般アプリでも起こる問題ですが・・・。
しかし、対応策がOSをアップデートしないでくださいとはびっくりですね。
流石にアプリの更新はされるものと思いますが、ちょっと心配になるような記述でした。


さて、本日は努力の方向性についてお話ししたいと思います。
沢山打っている、勉強しているのに強くなれないという方は珍しくありません。
それを才能が無いからだと思ってしまう方も多いのですが、多くの場合それは間違っています。
少なくとも私の経験では、才能の限界に達した方は見たことがありません。

では何が原因かと言えば、それは努力の方向性を間違っているからです。
努力をすれば必ず何かが上手くなりますが、それが必ずしも棋力アップに結び付くとは限りません。

〇詰碁
難しい詰碁を、30分かけてようやく解いたとします。
それはそれで達成感はあるでしょうが、その30分でどれだけの図に触れることができたでしょうか?
プロを目指すような人はそうした努力も必要でしょうが、一般的には無駄が多い方法です。
1分で解ける詰碁を30問解いた方が、遥かに上達に役立つでしょう。

〇棋譜並べ
棋譜並べの勉強も良いですが、手順がぎっしり詰まった棋譜は避けましょう。
序盤だけのもの、細かく譜分けされたものなどが良いですね。
棋譜並べで数字探しだけが上手くなることは、結構ありがちです。

〇実戦
実戦はもちろん有効な勉強法です。
しかし、正しい意識を持っているかどうかで、得られるものには大きな差が付きます。

1つは着手に目的意識を持つことです。
ただ何となく石を置いているだけでは、何千局打っても強くなれません。
まず何をしたいか、するべきかということを考え、それから具体的な着点を選ぶべきです。

もう1つは、正しい反省をすることです。
局後に自分の打った手を反省することは必要ですが、正しく反省しないと逆効果になることはよくあります。
例えば、正しい考え方で打った手を、ずっと先の結果がよくなかったために反省してしまう。
逆に、良くない手にも関わらず、相手が間違えて上手くいったばかりに、それで良いと思い込んでしまうこともありますね。

詰碁や棋譜並べをやっている限りは、間違ったやり方であってもマイナスになることはありません。
しかし、実戦に関してはそれがあり得ます。
1局1局が本当に身になっているかどうか、確認してみましょう。
指導碁を受けて、自分の碁の特徴を指摘して貰うのも良いでしょう。

ちなみに、私の本は正しい努力の仕方を身に付けて頂くことがテーマになっています。
正しい考え方を学び、それが実行できたかどうかを確認することで正しい反省もできます。
そのために細かい要素は排除し、シンプルなものになりました。

正しい努力をしていれば、どんな年齢・才能の方でも必ず上達できます。
上達を諦めている方も、もう一度ご自身の努力の仕方を確認して頂きたいですね。