白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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決め手(外柳是聞二段ー藤村洋輔三段)

2017年01月16日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、外柳是聞二段(黒)と藤村洋輔三段の対局をご紹介します。



1図(実戦白138)
激しい戦いの末、白△と中央の白を生きた所です。
これからの碁のように見えますが、黒はある場所に狙いを持っていました。
黒の次の一手を当てられたら、天才です。







2図(実戦黒139)
実戦はなんと、黒1の置き!
下辺に目を付けられた方はいらっしゃるでしょうが、なかなかこの位置は気が付かないでしょう。
2線に置くような手は時々実戦に現れますが、大抵は周囲への脱出を見ているのです。

しかし、この場合は白△の存在で、両方への退路は塞がれています。
簡単に取られてしまいそうなのですが、これが意外としぶといのです。





3図(変化図1)
白1には黒2以下、ごりごり切って行って攻め合いになります。
一応白に粘りの手があって、最終的にはコウになるのですが、黒からのコウ立てが多い碁なので白ダメです。





4図(変化図2)
白1には、今度は左の白との攻め合いに持ち込みます。
黒10の後はコウになりますが、コウでは白がダメなのは先述した通りです。





5図(変化図3)
白1のツケも黒6まで、AとBが見合いで白ダメです。





6図(実戦白140)
そこで、実戦は白1の並びを捻り出しました。
黒を取りに行くにはこれしかないという、唯一の粘りです。
これで白が凌いだようにも見えますが・・・。





7図(実戦黒141~白142)
黒1の並び!
これも気が付き難い手ですが、黒の読み筋でしょう。
対する白2の並びも、黒の脱出を防ぐためにはこの一手です。

お互い並びばかり打っていますが、5目並べをやっている訳ではありません(笑)。
一手一手、ちゃんと意味があるのです。





8図(実戦黒143~白148)
黒は外へ脱出できなくなりました。
白6まで、白がなんとか凌いだように見えますが・・・。





9図(実戦黒149~黒151)
黒1、3となって、ようやく黒の狙いが見えて来ました。
黒2子を取っても、中手で死ぬと言っているのです。





10図(変化図4)
白1なら黒2以下スペースを狭め、白7に黒Aと取ってコウです(黒がコウに勝つと5目中手)。
このコウも、やはり白ダメです。





11図(実戦白152~黒161)
という訳で、白1とより大きくスペースを広げようとしましたが、黒2を用意していました。
白3と切るしかありませんが、黒10まで攻め合い黒勝ちです。
外柳二段の中押し勝ちとなりました。

それにしても、まさかこの白が死ぬとは・・・。
外柳二段、見事な読み切りでした。
決め手を逃さず一気に勝ちを決める能力は、勝負師には必須なのです。
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