白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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封じ手

2017年05月09日 20時50分00秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
本日は本因坊戦第1局の1日目が行われました。
序盤から派手な分かれになったものです。
ポン抜き30目とは有名な格言ですが、左下の白地も30目ぐらいあります。
良い勝負なのでしょうね。
黒が厚みを生かしてどれだけ追い込めるか、これが2日目以降のテーマとなるでしょう。

封じ手予想ですが、これは迷わず2線にコスミ(G-2)です。
大本命の封じ手なので、むしろ外して欲しいですね(笑)。

ところで、封じ手という制度は2日目の対局特有のものです。
普段の対局も昼食休憩などで中断することはありますが、45分~1時間程度です。
手番の対局者が休憩時間を全部研究につぎ込んだとしても、さほど成果は上がりません。
ですから、わざわざ封じ手をする必要が無いのです。

ところが、2日制の対局での1日目の終わりだと事情が変わります。
食事や睡眠時間などを除いても、研究するには十分な時間があるからです。
手番の対局者が好きなだけ考えて次の手を決められるのでは、大きな不公平が生じかねません。
そこで封じ手制度が必要になります。

封じ手により、お互いに相手の次の手が分からない状態になります。
条件は五分ですから、不公平が生じないという訳ですね。
とはいえ、一般的には互角であっても、個人の感覚は別問題です。
封じ手を好きな棋士と嫌いな棋士がいて、時にはどちらが封じ手をするかの駆け引きが行われることもあります。
仲の悪かった坂田栄男藤沢秀行戦では、それが元で険悪なムードになったことがありました。
とはいえ、現代では対局者が敵愾心をぶつけ合うようなことは少なく、粛々と封じられているようです。

封じるタイミングを決める際に最優先で考えるべきことは、いかに夜気持ち良く眠るかということです。
封じ手が実は悪手だったのではないか、などと考えて眠れなくなったら、翌日の対局に支障を来してしまうでしょう。
そういう意味では、本木挑戦者は分かりやすい場面で封じましたね。
これ以上打ってしまうと本格的に戦いが始まり、どちらが封じるかの駆け引きが行われる可能性が出てきます。
ここで封じておけば、お互いに気持ち良く眠れるというものです。
そんな事情もあって、1日目の対局はあまり手数が進まないことが多いですね。

さて、ともあれ明日は朝から難しい戦いが始まりそうです。
百戦錬磨の本因坊文裕、ハードパンチャーの本木挑戦者、どちらの力が上回るでしょうか?
明日もぜひご覧ください。