白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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上手を怖がらない(7子局)

2017年03月07日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日森ビル杯第55期十段戦(主催:産経新聞社)が開幕し、結果は井山裕太十段の先勝となりました。
余正麒挑戦者に逆転のチャンスがありましたが、珍しく手所でミスが出てしまいましたね。
内容としては、派手で面白い碁だったと思います。

また、本日幽玄の間では、十段戦に加えおかげ杯の予選決勝も中継されていました。
志田達哉七段小山空也三段の対局はいかにもプロの碁という感じのじっくりとしたヨセ勝負でした。
一方、王景怡二段上野愛咲美初段の対局は、凄まじい乱闘!
200手ぐらい戦い続けていました。
どちらも同じプロの碁なのですから、面白いものですね。

さて、本日は7子局の指導碁を題材にします。



1図(テーマ図)
白1と打った場面です。
この手は黒△の動き出しを取り切りつつ、左辺の黒に脅しをかけたものです。
黒はどう対応するべきでしょうか?





2図(実戦)
私の経験では、こうした場面では殆どの方が黒1と受けます。
確率にして95%以上といった所でしょうか。
本局の黒の方も迷われていましたが、やはり黒1と受けられました。

見た目におかしな手ではありませんが、実は大きくポイントを失う結果になります。
せっかく黒△に石が2つ並んでいるにも関わらず、さらに守ってしまうと1手余分にかかった理屈になるのです。
白2に先行されては失敗です。





3図(正解図)
正解は手抜きです。
黒1は右上一帯の黒模様に芯を入れる手で、文句の無い大場です。
他には黒AやBもお互いの石の根拠に関わる手で、大きいですね。

今回タイトルでネタバレしているので、手抜きを考えた方は多いかもしれませんね(笑)。
しかし、実際に打っていると上手を怖がってしまう方が多いのです。
まだリードが大きいから無理をしたくない、という意識も働くかもしれません。

しかし、置き碁ではむしろ序盤が頑張り所なのです。
一手の価値が非常に大きいので、一手の遅れは大きな損失につながります。
序盤で勇気を出して頑張っておけば大きな貯金ができるので、後が楽に打てるようになります。
有段者、高段者を目指すためには、この意識が大切です。





4図(正解変化1)
白1なら黒2以下で問題ありません。
黒2の石を抜かれてしまいますが、黒△を取られているので、元々白は強い石です。
強い石がさらに強くなっても問題ありません。
黒〇に先行している分だけ有利です。





5図(実戦)
白1、3のように あくどい事をやってくる上手もいるかもしれません(笑)。
これには難しく考えず、黒4、6と取ってしまって問題ありません。
この後白Aから黒△を取られますが、地が少し増えるだけなので小さな利益です。
黒Bに回れば、黒〇と合わせて大場を2つ打てた事になります。
こうなれば黒必勝形でしょう。


置き碁では失敗をしない事も大事ですが、それ以上にのびのびと打つ事が大事です。
自分を信じて頑張って頂きたいですね。