白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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駆け引き

2016年12月05日 23時50分49秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、藤沢里菜三段(黒)と広瀬優一初段の対局をご紹介します。



1図(実戦黒27~白28)
黒1と飛んだ途端、白2の両ノゾキが来ました!
白AとB、どちらか出る手を見合いにしています。
果たして、黒の対策は?





2図(変化図)
黒1には、白2から分断します。
白6までとなって、これは黒いけません。





3図(変化図)
黒1には白2と出ます。
白4までとなって、前図よりはマシというだけで、やはり黒のまずい図です。

では黒が困ったかと言えば、そんな事はありません。
藤沢三段は、ちゃんと対策を用意していました。





4図(実戦黒29)
実戦は、どちらも繋がずに黒1のツケ!
この手を見ていたので、白に両ノゾキを許したのです。
ノゾキを放置した格好ですが・・・。





5図(変化図)
白1と出て来れば、黒2から捨てて十分と見ています。
白は狭い所に地を増やしただけの結果と言って良いでしょう。
黒8まで、黒が足早に打ちまわしています。





6図(実戦白30~黒31)
そこで白は1と受けましたが、それを待って黒2と繋ぎました。
ツケ一本を打っただけですが、それが手品の種です。





7図(変化図)
ここで白1、3と分断して来れば、黒4の切り違いが手筋です!
これで白がどう打っても、要石の白1子か2子が抜ける形になっています。
白5なら黒6で白2子が抜け、黒は全部繋がります。





8図(実戦白32~黒35)
そこで、白は1、3と、黒3子を逃がしてポン抜きました。
両ノゾキの時点でここまで想定して、ポン抜けるので白が悪くないと判断したのでしょう。

一方黒も、黒4で白2子を分断すればやれると見ています。
その判断があったので、白に両ノゾキを打たせたのです。

お互いに同じ図を目指しながら、主張する所は違います。
どちらの判断が正しかったのかは、定かではありません。
プロはそういう所でも勝負しているという事だけ、ご理解頂ければ十分でしょう。
結果は先輩の貫禄か、藤沢三段の中押し勝ちでした。