東の散歩道

B型ヴァイオリニストのマイペースライフ

人生は煙のように

2017年08月25日 23時20分05秒 | 映画

 大学時代、後輩から強力に勧められて読んだ二冊の本があり、それがポール・オースターの「スモーク」と「ルル オン ザ ブリッジ」でした。「ルル〜」の方は実はあまり記憶にないのですが、「スモーク」は、幾つかのシーンをとても鮮明に覚えています。もうずっと昔(なんと21年前!)に公開されたこの映画が、デジタルリマスター版として蘇り上映されるということで、今回初めて観に行きました。

 入館してびっくり。リバイバルなのに、この映画館で私が経験したなかでは最高の観客数だったと思います。それだけファンの多い映画だったのですね。(まあ、私が基本的に地味な映画が好きなせいもありますが。。。)

 しかし観終えて納得しました。しみじみ、素晴らしい映画だと思います。大号泣シーンなどが用意されているわけではないのですが、一つ一つのシーンが実にあたたかく、愛おしいのです。私は全くタバコは吸いませんが、映画の中で吸われているタバコのなんと味わい深いことか。オースターも、20年後の世の中がここまで変わっていると予想していたでしょうか。

 人生は見方一つで良くも悪くもなり、曖昧で、まるでタバコの煙のようなもの(そういえば肉体だって、死んだら焼かれて骨と煙になるわけです)。同時にそれは、タバコ屋の主人、オーギーが撮り続ける定点観測写真の如く、かけがえのない一瞬にだってなり得ます。叶う事なら、少しでもそういう一瞬が多い人生を送りたいものです。

 特別カッコ良くもない自分の人生がちょっと好きになれる、そんなオススメ映画です。ただし禁煙中の方はご注意を。タバコの煙を味わいたくなること請け合いですから。。。。

 

 

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