観察を重ねて慣れっこになったチョウの場合,孵化への道筋は大まかにはわかります。したがって,間もなく孵化するだろうと予測することができます。予測できたら,気を抜かないで確認を続けていけば得たい画像を確実に撮影できるはずです。
はずです,というのはそうだとばかりはいえないからなのです。
いつも「もうすぐだ」というわくわく感を抱きながら撮影チャンスを待っています。ところが,ときには,その場を離れてしまうときがあります。用ができると,どうしても離れざるを得ません。そうしたときに限って,もう孵化し終わっているといった事態が起こりうるのです。これだけは,もうどうしようもありません。これまでに,何度こんな目に遭ってきたことか。
結局,それまでに払ってきた注意が徒労に終わるのです。
つい先日もそうでした。アゲハの卵の「これはもう孵化直前だ。いつ孵化してもおかしくない」という状態で撮影したのが,下写真です。
その場を離れたのが30分。戻ってみると,出終わっていたー! なんと,出たばかり! 殻に開いた穴がなんとも無情!
同じ日の夜。同じ失敗をしてしまいました。下写真の幼虫の背景にあるのは,卵殻です。
この日はショックでした。終わったことなので仕方ありませんが,これも油断のうちなのだろうなと反省しきりです。それほど,生きもののいのちと向き合うこと,それを観察することには気苦労がいります。