右翼らの招きしキネマの落葉
針供養軽く送るか右翼リハ
掲句、どっちが旧いんでしょう。さ、考えてみましょう! 答、はい、そうです上の句の方が旧いんですね。記録によると1998年12月19日に投句されてます。どうも最初に回文を作った時、所謂記念すべき処女作だそうです(閑話休題、そーいや、なんで「童貞作」って言わないんだろ、ま、いいか)。
言葉を裏返すと全然違う意味の、百万光年くらい離れた言葉に瞬時にして変わってしまう喜びを、これで知ってしまったんですねぇ。表が裏になってまた表に返る‥‥メビウスリングみたいな麻薬的悦楽、これ、一度味わうとやめられないんです。最初は「右翼らが真似したシネマが落葉」。これが「右翼らの真似したシネマの落葉」に変わり、掲句のように変化していったとか。
「落葉」が「右翼ら」になった瞬間は、さぞ興奮したでしょうね。オシッコちびりそうだったんじゃないですか。その寸前にシネマって単語を移動中のタクシーの中から見つけ‥レンタルビデオ屋だったとか‥マネシタシネマなんて思いついて悦にいってたらしいですから。で、そこに季語として確定した落葉が、縁もゆかりも無い右翼らを連れてきたので、こいつらをあっさり主役にしてしまった。当然シネマは落葉する方向に向かい、そこはかとない哀愁が漂っていくわけです。
当時俳句を作ることが、というより何が自分にとっておもしろいのか、もっと言うとオリジナリティなんてものはないにせよ、オノレの色はなんだろ?ってことにかなり悩んでいたようで、この急転直下大へんし~ん!のドラスティックさには参ったみたいです。
その後、少し間を置いて、以前紹介した「つまんねえ恋スイスイ超え年末」をモノにしてからは、貘のごとく悪夢を喰らいまくる回文悪鬼に変身しちまったそうです。最近どうしてるかって?掲句の下の方がさっき届いたんですけど‥‥‥あんまりいい夢喰ってないみたいですね。ここんとこ。