死んだら談志2024

水仙花死んだら談志完成す
回文俳句&吾郎関連の諸事雑事
copyright 2024 by goro iguchi

回文解体新書 その三十九

2005年11月30日 23時34分50秒 | Weblog

右翼らの招きしキネマの落葉
針供養軽く送るか右翼リハ


掲句、どっちが旧いんでしょう。さ、考えてみましょう! 答、はい、そうです上の句の方が旧いんですね。記録によると1998年12月19日に投句されてます。どうも最初に回文を作った時、所謂記念すべき処女作だそうです(閑話休題、そーいや、なんで「童貞作」って言わないんだろ、ま、いいか)。
言葉を裏返すと全然違う意味の、百万光年くらい離れた言葉に瞬時にして変わってしまう喜びを、これで知ってしまったんですねぇ。表が裏になってまた表に返る‥‥メビウスリングみたいな麻薬的悦楽、これ、一度味わうとやめられないんです。最初は「右翼らが真似したシネマが落葉」。これが「右翼らの真似したシネマの落葉」に変わり、掲句のように変化していったとか。
「落葉」が「右翼ら」になった瞬間は、さぞ興奮したでしょうね。オシッコちびりそうだったんじゃないですか。その寸前にシネマって単語を移動中のタクシーの中から見つけ‥レンタルビデオ屋だったとか‥マネシタシネマなんて思いついて悦にいってたらしいですから。で、そこに季語として確定した落葉が、縁もゆかりも無い右翼らを連れてきたので、こいつらをあっさり主役にしてしまった。当然シネマは落葉する方向に向かい、そこはかとない哀愁が漂っていくわけです。
当時俳句を作ることが、というより何が自分にとっておもしろいのか、もっと言うとオリジナリティなんてものはないにせよ、オノレの色はなんだろ?ってことにかなり悩んでいたようで、この急転直下大へんし~ん!のドラスティックさには参ったみたいです。
その後、少し間を置いて、以前紹介した「つまんねえ恋スイスイ超え年末」をモノにしてからは、貘のごとく悪夢を喰らいまくる回文悪鬼に変身しちまったそうです。最近どうしてるかって?掲句の下の方がさっき届いたんですけど‥‥‥あんまりいい夢喰ってないみたいですね。ここんとこ。



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回文解体新書 その三十八

2005年11月29日 22時07分01秒 | Weblog

三線に神楽揺らぐか妊娠さ

歳時記、近隣では「季語の書いてあるやつ」。冬に入り、といっても今日あたりは暖かで、コートを置いて昼飯を喰いに出て、メシ屋で一年ぶりの「冬」を開く。あ、私ハルキさんちの分冊を愛用してます。何度もお世話になった季語がずらり。ふんふん‥‥んふんふ‥‥悲しい性で思わず逆さに読んでしまう。そこでようやくかって作った句を思い出す。なんともまぁ雑技団的哀しい世界。逆エビに反った足下を見て己の踵の汚れを知る‥‥なんちって。
だが、しかしこの一年ぶりってのがいいのです。つい最近まで「秋」に飽きて(ここ笑うとこあるよ、団体さん)たから、文字がどんどん入ってくるのです。単語が意味ではなく音で入ってくる。その音は音を呼び、連なってやがて気持ちのいいリズムを刻む。そして見渡すと天国的な無意味が広がって‥‥。そういうことが起こる。
普通の俳句を作ろうとするとトーシローの私は、どうも意味を考えてしまう。例えばお題が「楽器なんでもOK」としましょう。ギターだのバイオリンだの、それぞれの形や音や、弾く姿や曲を思って狭い狭い袋小路に入ってしまう。もちろんそういうところからの作句はあるでしょうし、だからと言って、無闇に違うキャラのものをぶつけりゃいいってもんでもない。いや、そんなことは皆様先刻ご承知でしょうからこの話題はこの辺で。
で、何が言いたいかというと、意味じゃないところから始まってしまう回文ちゃんは、そういう悩みがぜ~~んぜんないワケで、実に自由気ままに、ただかなり厳格なルールの中で、遊んで友達を見つけてくるのです。
掲句は近々の句会に出場しますが、まぁお目こぼしってことでフライングさせてもらいます。「楽器」ということで沖縄の三線(さんしん)を取りあげることにした。「サンシン→ンシンサ」。「~さぁ」というのは沖縄の方言にもある。◯ンシンサは、アンシンサでも、カンシンサでも、キンシンサでも、かなり広がりがある。この段階で三線の持つ空気感がふわ~~っと出てきて、なんだかお祭り気分になってくる。浮かれてくるんですな。季語のやつをぺろぺろめくると「神楽」なんてものが出てきた。ここで悪戯心がムクムクとおきる。倭の祭りにウチナンチューを殴り込ませてしまえ、どーせ夜を徹するお祭りだ、一晩中揺れることをやろぉぜ~~ Let's Spend Night Together !! ♪ で、できちゃうわけですな、これが。
ホント身も蓋もない句なんですが、スピード感と無意味な意味深が好きなんで、早々に発射しちまいました。
メンゴ。
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blogランキング

2005年11月29日 08時34分23秒 | Weblog
え~~と
お気づきの方もあるかもしれませんが、数日前より「blogランキング」とやらにこの「死んだら談志」入れてみました。さっき見たら120 位前後をうろうろしてます。なんの告知もしてないのに、どなたか危篤な、いや奇特な方がクリックしてくださったようで。多謝。
で、上記アイコンの貼り方がわからんので貼ってないのですが、左欄の下のほうに「blogランキング」ってのがありまして、それをクリックするとカウントされるようです。
遊んでみようかという方は押してみてくださいませ。ではでは。

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回文解体新書 その三十七

2005年11月28日 22時32分50秒 | Weblog

若い桜鯛嗅いだら臭い皮
ズワイ煮え間男とお前に言わず
白梅へ出窓角まで塀爆破
裏も見よゴルフの古暦もらう
文化の日生け垣が経費の幹部


瞬間的に笑える句ってけっこう好き。もちろん考え落ちの句も嫌いではないが、やはり瞬発力の前には霞む。掲句はいわゆるおバカ句の第二弾。ま、このテはまだまだ在庫がありそうなので(ちうか、この回文集かなりの数がそのエッセンスを含んどる)、今回はややジミめも含めてのご紹介。
「桜鯛」句。鯛って皮が旨いわけで、そこだけ別注文する贅沢な客もいるというのに、何をトチ狂ったか臭いとおっしゃる。若さの臭さはある意味その世代性の特権というかシンボルであって‥‥なんて解説がつくわけもなく、ただただおバカに面白い。理屈っぽいが、それを真剣に分析した形になってるとこがキモ。
「間男」は何度か登場する。隣町へ追っていく展開の句もあるが、道具立てはこのズワイの方がB値(おバカ度)が高い。鍋を囲んだ微妙な空気感が苦しい設定。
「白梅」句は「ハクバイバクハ」で別途作成してる。制作年度が違うので、こちらの方がやや豪快。破壊的なギャグ仕立てはかってのドリフ的でもある。センスはひょうきん系だが。
「古暦」は一見回文には見えない、こっそりひっそりタイプ。古暦が何の役に立つかしらないが、考え落ち系としてはかなりB値が高い。しかしこれを俳句と言われてもワタシ困ってしまうのことよ。
「経費」は情けなさが先に立ってしまうが、文化の日がいい感じで利いてる。季語とのタッグマッチがうまくいった希有な例、これはこれで完成してる。
ともかく「ったくしょ~がねぇなぁ~」って言いながらも、「オイ、兄ちゃん頑張れよ!」って肩をポンと叩きたくなるような句、そんなおバカ句をもっと作ってみたいと思う今日この頃であります。
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回文解体新書 その三十六

2005年11月27日 23時05分56秒 | Weblog

凌ぐパンが凍て果て胃がんパグの死
外科の傷身に沁む死に水木の陰
見ろ命お疲れ鰹血の色味


クスッと笑える句の裏返しではないが、回文では掲句のようなかなり深刻かつ悲惨な句が時折できる。健常俳句ではこういうタイプはまったく作ることはないのだが、ま、これも偶然の産物といえばそれまで。ただ、「死」という単語は最初からではなく、返ってくる時の流れで使ってることがほとんど。
「パグ」は犬の名前というテーマの時。最初犬といえば柴犬か秋田犬か、スピッツくらいしか思いつかず、ようやくゴールデンレトリバーだの、アフガンハウンドだのに巡り会うのだが、すんません、長いんですわ、使えません。短いところを探し当てようやく「パグ」。で、中国産とのこと。ちょっと哀し過ぎた作りになった。パグすまん。にしても「凌ぎ」って文字面、かなりイタイ。
「外科」も「鰹」も門外不出座敷牢組。「外科」はリズムがイマサンなのと「沁む」の季語が反則だろって使用方法。「鰹」は中七「お疲れ鰹」を戻り鰹と見立てて(無茶な!)の読み。内容的にはこっちの方がやや救われる。
しかし、このテはあまり見てて気持ちのいいものではないので、ここいらでお終い。でも、どっかあるのかな、こういったテイストが。ま、次回乞うご期待ってとこで。
あ、そいうえばこんなのもあったな。
春浅し遺体解体示唆ある歯
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回文解体新書 その三十五

2005年11月26日 16時55分35秒 | Weblog

哀しみの新蕎麦尊師飲みし仲
中身夏のネタまたねのTSUNAMIかな
彼岸会もおねむの宗男燃えんが日
木の芽片手ミニモニ観てた亀の子


その時々のコンテンポラリーな事象を読むってのはあまりやってない。あんまり回文向きじゃないし、そこはそれ難しいから。在庫品を見渡して見繕ってみても掲句ぐらいかな。いやはや時代を感じますね。オウムの頃から作ってたんだ。で、サザンか。それに宗男、ミニモニと一時代を築いた名優?ばかり。こういった句はその瞬間面白いんだが、ほれ、回文の生命線である単語パワーが賞味期限を過ぎると激減するでしょ。ブツとブツのぶつかりあいで生まれるギャップ、これが片方の存在感が希薄になると衝撃がなくなるんだよね。
ただ、そうは言っても「新蕎麦尊師」「おねむの宗男」あたりはまだ賞味可能かな。リズムがいいのは残るってことか。口に出しても無理がないし。それにおバカ度も高い。ここいらのツボの突き方が、それこそこの回文のツボかもしれない。前日書いたテキストに戻るかもしれないけど、「クスっと笑える」というのは常に標榜してることなんです。これは俳句を始めた頃に出会った「みどり亀」句のあまりのスゴさに、目からウロコが何枚も剥がれ落ちたため(※未許諾のため全句不掲載)。
これでいいのか?これでいいのだ。ほとんどバカボンのパパ的納得のもとに、以降作句に勤しんできました。回文を作り始めたのも、それがあったからかな。そうかもしれない、そうだろう、いや、多分そうだ。
このあたりについては、また別の話。
にしても亀の子はちょっとえっち。
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回文解体新書 その三十四

2005年11月25日 02時02分10秒 | Weblog

好きだ恋だとヒロヒト大根焚きす
鉦叩き二階陛下に来た胤か
今身近の宮家闇の火事見舞い


何の思想的背景もないことを最初にお断りしておきますね。不敬罪とかってこともないでしょうから、何故かいくつかあったコレ系の句をまとめてみました。かの大英帝国、あちらではこの手のジョークというかおふざけも半ば公認されてる。ま、国営放送で王室パロディネタ満載のモンティパイソンやってるし、ビートルズは「女王陛下は可愛い女の子」なんて歌を唄っちゃう‥お国柄ですから。そういう親愛の情‥‥みたいな空気ってのが自然とあるんだろうな。
例えば掲句を1チャンネル(そうか1チャンなんだ)の番組に投句してもずぇ~~~ったいオンエアされないだろうし、俳句雑誌でもまず掲載しないだろうな。もちろんそれほどの出来ではないし、それはどうってこたぁないんだけど。でも不思議なのは、なんでこういう句作るんだろう‥‥ってこと。たまたまの巡り合わせなのに、どういう理由かこっち系の単語を思わず使ってしまう。普通だったら、敢えて作りはしない題材なのに。不思議です。どっかこういう資質があったんかね。
掲句ってどれも笑えるでしょ、クスって。そのちょっと笑えるとこってのがミソかも。愛情の裏返しじゃないけど、権威(エスタブリッシュされたもの)を笑いのネタにする‥‥ってのをビートルズやキンクスから教わった少年としては、この流れは自然なのかもしれない。例えばディランに傾倒してたら、もっと辛辣なの作ってるな、きっと。
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回文解体新書 その三十三

2005年11月24日 02時10分53秒 | Weblog

我が死に蠅生まる真上は西側
罪と罰しぼり切り干し唾と蜜
椎茸やムカつき掴む焼けた石
殿下には華美な花火かはにかんで
死せる月が武士と渋柿吊るせし
たらーばー浜に揚げ兄マハーバーラタ


この際だから「解体新書その三十一」の続きを書いておこう。プロレス界も大変動時代を迎え、新日本が買収され(援助を受け)、全日本のメインどころは元新日本が仕切り、元全日本勢はノアを立ち上げ気を吐いている。元メジャーのレスラーがそれぞれインディー団体をつくり、雨後の筍のように増えたそれも企業努力が成功したところは生き残ってはいるが、ほとんどがプロダクション化して自主興行が打てなくなっている。そしてこのプロレス不況を尻目に大躍進を遂げたK-1も一時期のブームは去り、ゴリゴリの宗教じみたUWFからはなぜかエンタメ格闘技が生まれハッスルしている‥‥という状況だ。あ、詳しく言うともっと複雑なので、ここは部外者が書いたテキストとしてお目こぼしくだされ、マニアの方。
で、掲句。かっての新日ストロング・スタイルを残しているのが「蠅」句。猪木が異種格闘技をやってた頃の新日。道具仕立ての大仰さと、絵に書いたような緊張感が作り出すワンダーランド。ただそこには必ずカタルシスがあった。今じゃ型にハマった「罪と罰」に成り下がってる。予定調和で緊張感の欠片もないぜ。
全日はあの曙を蘇生させて楽しく激しく頑張ってる。「焼けた石」あたりはそういったテンポ感や、予定調和の美が逆に安定につながって成功している。グレート・ムタのような"よくわかる不条理"をエッセンスとして混ぜたのもよかった。
ノアはかっての全日王道をひたすら進んでいる「殿下」句が似合う。全日ほど泥臭くなく、カジュアルながら気品がある。景が大きい、ドラマがあるタイプ。
「死せる月」は元U.W.Fだな。道場句。人に見せることより、ひたすら研鑽を重ね純度を増していくナルシスティック系。時折、そのドラマティックな様子が掲句のようにポピュラリティを持つこともあるのだ。
で、同じ釜の飯を喰ってスノッブ&唯我独尊系だったはずの元Uの遺伝子が絡んで、突然変異を遂げたのが爆笑エンタメイベント、ハッスル。おバカなとこなんざ「たらーばー」とどっこいどっこい。まぁ、一つ間違えば(すでに間違ってるかも)ホントのバカになるからな、このあたり。気をつけないと。
若干無理がある比較だが、たまにはこういった笑ってポンのテキストもいいでしょ、ネ。

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回文解体新書 その三十二

2005年11月23日 02時04分36秒 | Weblog

雉諍いて野辺の定価歳時記


前々回のお話をもう一度。ネット句会に出した3句。それぞれ趣向を凝らしてというか、ちょいと趣きの違うブツを出した。さて、食していただいた皆様のリアクションやいかに。
まずわかりやすく点数で行きましょ。並選1 点、特選2点にしての結果は?
朽ち田明日も晴れ枯葉燃す足立区  並3特1 計5点
生糸の絵に浪漫マロニエの吐息   並3   計3点
けったいな決まり襟巻き泣いたっけ 並5特1  計7点
バランスでいうと、デザートは美味しいが、メインが弱い。オードブルはまぁまぁ。というところか。
シェフとしては痛いとこです。メインが弱いってのはかなりきつい。たしかに、今回パティシェは頑張りました。予想以上の美味しい「けったいな」句を作ってくれました。エリマキ→キマリエから始まったから中七と季語は楽だったのか、ルールの必要十分条件を満たすと後はスイスイといったようだ。遊べるしね。そのあたり、デザート的なとこに落ち着いたのかも。
メインは今でも悪くないと思ってる。ただ、悪くないってのはすごく良くもないわけで、自信を持ってメインに据えるには力不足だった。鑑賞していただく方の目に頼り過ぎてるね。そこまでユーザーを信じちゃいけない。こちらの準備したテイストの半分以下が賞味範囲ということは、エンタテインメントを作る者としては覚悟/認識してなきゃ。
オードブルの意外なウケの良さは、その場の空気とか年代感もあるな。わざと狙ったわけではもちろんない。そんなやらしいことはしない。ただ、ずっと「三丁目俳句」と呼ばれてきたことへのオマージュというか、回答というか。小賢しいことはナシにして、結構好きな世界をやってみたのだ。
一方ちょいと変わったアナライズでは、それぞれにコメントがいくつ入ったか、という比較検討がある。良くも悪くもお目にとまらなければどーしよーもない。
足立区 5コメント ★★☆
マロニエ5コメント  ★★
襟巻き 7コメント ★★★☆
それなりにメインはガンバっていたわけだ。ちなみに★は回文鑑賞の達人によるもの。見事にポピュラリティとフリークス度合いを見抜いてる。さすがというべきだ。
で、掲句。これはどうやって喰えばいいんでしょうかね。

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回文解体新書 その三十一

2005年11月22日 14時55分20秒 | Weblog

師走です根あかバカ姐泣かす儂

プロレスが凄く好きな時期があった。中学生からの10年くらいは、毎週金曜夜8時にはテレビの前に座る生活だった。そうやってプロレスからいろいろなことを教わった。その中でもここのテキストでよく書いてる、役者だの、脚本、ドラマだのっていうアイテムは、この頃に読んだ村松友視氏の本による影響だ。プロレスを演劇、それも観客論からのアプローチで語った名著「私、プロレスの味方です」。私、文庫本も買って持ち歩いてました。まぁ、それくらい好きだったわけです(こういう文体、まんまやんけ!)。
プロレスなんていう世間からは後ろ指さされるジャンルに光りを当てて、逆に世間を照らし返しす‥‥という方法論は、プロレスを回文に置き換えるとそのまんま、ここで書いてるようなものになってくる。もちろん村松さんの筆力、眼力とこちらではメインエべンター(イベンターじゃないとこなんざプロレス的だね、まったく)と前座レスラー程の違いはあるけどね。にしても、名文句がたくさんあった。「ジャンルに貴賎なし、されどジャンル内に貴賎あり」なんて、その後何度使ったことか(もちろん無断使用)。
回文なんて、毎回書いてますが、ホント言葉遊びです。俳句というジャンルの中の極北にこじんまり生息するカモーディー・ ベアーみたいなもんです。白いクロクマと呼ばれてるこのクマ、いわゆる白子とは異なり、劣性遺伝の遺伝子を持つ両親が交配したときのみに白 くなるらしい。で、数百頭程度しか生息していないから見かけるのはツキ任せのシロモノ(クロもの?)らしいとか。いいですね~、劣性遺伝の交配から生まれるレアな存在なんて回文にぴったりだ。
そんな回文だからこそおもろいんですね。どうにもならないブツが一転して光り輝く可能性を秘めてる。ゲームでいやぁオセロみたいなもんです。その一方で、どうしても見る人を楽しませたくなる。というか自分が楽しみたくなる。誰かが楽しんでくれるであろうことを楽しむ。この二重三重の多層構造が回文の魅力なんです。このあたりもプロレスとよく似てるかも。
で、掲句。こいつぁ全日本ですね、新日じゃない。ましてやUの遺伝子はないな‥‥‥って、これはまた別の話。
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回文解体新書 その参拾

2005年11月21日 23時16分28秒 | Weblog

生糸の絵に浪漫マロニエの吐息
けったいな決まり襟巻き泣いたっけ
朽ち田明日も晴れ枯葉燃す足立区


掲句は現在進行形の「オクンチ句会」(http://www3.ezbbs.net/03/0123/)に投句したもの。こちらでは三句投句を全部回文でやらせていただいている。実に心の広い句会である。ま、せっかくのチャンスなんですからということで、今回のこの三句、それぞれキャラの違う‥‥というか、コース料理でいうならオードブル、メイン・ディッシュ、デザートの役割を果たして、読む方が楽しんでいただければ‥‥と思って投句いたしました。さて、どれがメインか、これは受け取り方の違いがモロに出てしまうでしょうが、CHEZ GORORIN では一応こういうメニューをご用意させていただきました。
オードブル:朽ち田明日も晴れ枯葉燃す足立区
親しみやすい素材をベースに、朽ち田、枯葉というややネガティブな単語を、明日も晴れ、燃やすというポジティブ・テイストで料理。足立区というシンプルな味付けが似合うイメージへとフィックスさせ、次のディッシュへの橋渡しとしました。
メイン・ディッシュ:生糸の絵に浪漫マロニエの吐息
フレンチ・テイスト溢れる素材を、初冬の暖かな肌触りで仕上げた一品。過剰なくらいの装飾がやや好みの別れるところですが、一枚の絵画のような佇まいはメインにふさわしいものかと。
デザート:けったいな決まり襟巻き泣いたっけ
食事を美味しく楽しくするのは、なんといってもそこで交わされる会話です。少し昔のセンチメンタルな物語。形は違えど、規則、服装、想い出、は共通のものとして、その場のムードを少し暖めてくれます。
といった具合に‥‥と思ったんですが、順番に関してはあまり自信がなかったので、一部逆にしちゃいましたね。皆様がどう味わっていただけたか、その結果はこれからお送りする選句一覧をお楽しみに。
そろそろ店じまいして準備にとりかかります。
では、またのお越しをお待ちしております。 CHEZ GORORIN
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回文解体新書 そのニ十九

2005年11月20日 21時50分31秒 | Weblog

とーさん来ない春ハイなコンサート 
ストーブ盾に階下にてタブーとす
十六夜ダンサーぼーさん大余罪


さて、おなじみの回文クイズの時間です。掲句における共通点を5秒以内で答えなさい。1.2.3.4.5 はい、時間です。そーです。そーーーなんです。ってそこまで引っ張るネタじゃねえな。つまり、ひっぱり、音引きですね(最近じゃNHK教育テレビでもこういう脚本はないだろうな)。
回文の弱点っていうか、問題のひとつがこの音引き。含まない単語で作ればいいんだけど、それじゃやっぱりおもしろくない。上記三句はその中でも栄誉あるベスト3(今まで作った7~8句中)に挙げられるバカ句。「とーさん」はちょいと苦しいところもあるが、コンサートというポップなブツとの出会いなんで、こういった軽口風は許容範囲。意味はわかりすぎるくらいの説明句なので、特に言及するに及ばず。「ストーブ」は「タブーとす」への落とし方が先に決まった記憶あり(数年前の作)。単語にちょいとしたひねりを加えて、意味深な物語性を出すタイプ。空間処理が意外にうまくいって、なんとか形を保った。「ぼーさん」はごくごく初期の作。今見てもかなりヘンな句。無茶苦茶な登場人物と物語設定。そういうことが好きな頃だったのね。今はもうちょっと、縁側でお茶をいただいているような句が多くなってきたから(ホントかよ)、逆にこれは新鮮。ニューウェーブっぽいのかな。パンクのエネルギーをちょいとスタイリッシュに遊んだタイプ。エレクトロ・ポップの無邪気な毒気の薄さを感じる。無意味な意味性というかさ。お手軽感。ゲイリー・ニューマンてなとこか。本来はクラウス・ノミの方角へ行きたい人なんだけどね。
‥‥って、しかし、このテキスト読んで、ふんふんってうなづいてくれる人何人いるんだろ。

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回文解体新書 そのニ十八

2005年11月19日 02時58分36秒 | Weblog

ヤアと絵売るは野辺の春上戸彩
那覇の片道失せ打ち身貴乃花
花梨死期知らず小津らしき心理か 
紀信が撮る空パラソルと眼識
海友傘もなし名も坂本美雨
手に蜘蛛勝新温室寡黙にて 
髪増し哉熊を巻く中島美嘉
井口楽しむ寒さ無視の立ち食い


人名のおいしいところは(以前にも書きましたが)、イメージがすごく広がる(頼れる)のね。当然の方向はもちろん、意外な向きの出逢いがおもしろくなるもの、意外を通り越して論外ながら、新発見新解釈につながっていくもの‥‥といろいろある。
例えば、当然組は掲句でいえば「貴乃花」「小津」「紀信」。それぞれ個人がその準ずる職業にからむところに置かれ、やや異彩を放ちながらも手堅い作りになっている。キャラ8割、物語2割というところか。にしても貴乃花句はすごいな、那覇って夏の季語なんだ。
意外組。「上戸彩」「坂本美雨」「勝新」は心地よい外し方で楽しませてくれる。野辺の絵売り少女は、かなり斬新なキャラクター。新作ドラマの第一回目のオープニング・シーンにはもってこい。後のエピソードにはつながらないが、主人公のキャラを出すにはいい絵柄。どうスかCXさん、こーゆーの。海辺で傘もなく歩く坂本も、PVのワンシーンみたいでよい。友というからには、彼女を見ている目線があって、それが掠れた映像(フィルム)で撮られると、ちょっと前のJUNあたりのイメージ・フィルムになる。雰囲気モノの勝利だね。勝新はいいね。どこに置いても異化効果を発揮する異能の人だけあって、こういう大人しい出し方でも充分に効力を発揮している。絵的には現代劇だ。これは前衛という連中が撮れなかった絵かもしれない(なんて偉そうに)。
で、論外組。中島美嘉は天気さんの人名俳句に詳しいので、そちらを御参照ください。作者以上に回文を愛でることでは定評のある天気さんならではのテキストがうれしい限り。たしかに、作者自身も中島はよく知らない。こうなってくると知っているからどうなの?とか思ってしまうな。
とにかく、半ばチャレンジ精神、遊び心いっぱいで作れる人名俳句って好きよ。回文だから、どこに話がつながるかわからんし。
ん? 最後の「井口句」? あれは当然組系論外でしょ。
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回文解体新書 その二十七

2005年11月18日 07時44分50秒 | Weblog

子規忌ですモンク泣くんも素で聞きし
シナトラにキムチ拉致向き韮と梨
待てコペルニクス薄く煮るペコ手間
軽くニクソン笑む遠足に来るか
空つ風名うて盧泰愚なぜカツラか


掲句は外国人名を使ったものの一部。同じように見えて実はちょっと出生が違う。モンクはもちろんセロニアス・モンクからだが、これは名前から作った。多分人名俳句に投句するためだったかと記憶している。「モンク→クンモ」‥そっか、「◯◯君も」‥って別な手もあったな。なんて書きながら思ったが、ここでは微妙な方言ワザで逃げた。方言の持つ省略形も結構便利で、リズムを良くして尚かつ消費数が少ないという利点がある。季語はおもしろいところに落ち着いた。さすが名ジャズピアニスト。
シナトラは季語からの変換。「ニラとナシ→シナトラに」か、わかりやすいな、安直だな。しかしこの句はその分、出演者とドラマの背景小道具に凝った。キムチを持ち出して(ニラもナシも材料としては必須)、拉致(当時ニュースの最先端でした)につなげ、それもアメリカそのものというシナトラを使うなんてなかなか。サタディナイト・ライヴのギャグみたいだ(おまえ、ちょっと褒め過ぎ)。
コペルニクスは意地で作ってるな。こういう、こんな長い単語まさか使わねぇだろう‥‥という世間様に対する回答。ペコをちゃんと紅茶と解ってくださった俳人のコメントにほっとした記憶あり(ありがとうございます祐天寺大将)。
ニクソンは遠足から(エンソクに→ニクソンえ)。これは句会の最中に作った。問題はニクソンにつながる「え」の処理、「へ」ではないのでここはちょいと考えた。この場合「ニクソンえ◯遠足に」という風に最低限の文字数でつながないとリズムを崩す。ま、それ故やりやすいんだけどね。
最後の盧泰愚はお遊び。「空つ風→ぜカツラか」ができてたので、カツラだったら誰がおもしろかろうということで。ただし今もそうだが、盧泰愚ってどんな顔してたっけ、んで頭は?
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回文解体新書 その二十六

2005年11月17日 00時03分27秒 | Weblog

坂下の風土湯豆腐のたしかさ

チャレンジ大作戦~~、パチパチパチ。大好きなクボマン湯豆腐にチャレ~~んジ!。といっても挑戦なんて恐れ多いことではなく、季語「湯豆腐」をお借りしての回文制作。"湯豆腐"はフェバリッツの中でも常に上位キープの句、相変わらず、こっそりひっそりやります。
ゆどうふをひっくり返すとアッチチ‥‥となるが、ならないのが回文のいーところ、さてお立ち会い。ユドウフ→フウドユとなり前後を入れ替えると「フウドユドウフ」となる。単純に考えれば、季語は中七に入ってるから、ひっくり返すことが可能な上五と下五があればいいわけで、パチンコでいえばチューリップ満開、フィーバー開始ってとこなのですが、実はこれからがホントの勝負なのです。と、実はここまで一気に書いてきたので、ここからは思考錯誤?の後にまとまった形になったものをいくつかサンプルにして書きます。
「死に身待つ風土湯豆腐つまみにし」。一見してわかるように湯豆腐から言葉が延びたタイプ。安定はするが前半に無理があるため、全体の出来はいまいち。嫌いではないが。
「灯の風土湯豆腐伸びしもと」。こちらは風土につなげたもの。下半身がダメだな。ラーメンじゃないんだから。上五も思わせぶりでダメに拍車をかけてる。
「眠たげな風土湯豆腐投げた胸」。ただおもしろいだけ。こういう形に落ちていくのはNG。
「留守疎き風土湯豆腐祈祷する」。物語りが多すぎ。材料がうるさい。
「坂下の風土湯豆腐のたしかさ」。あ、これは結構好き。無理してないし、姿形がきれい。"どっしりした下町の本格的湯豆腐が目に浮かびます"なんてコメントがつきそうだ。回文臭が薄いのもいいかな。ただクボマン先生には遠く及ばない。もう少しなんとかなりそうなので、ちょっと後でやってみます。
というわけで、このあたりで今回はお終い。制作途中の句をずらずら並べてもおもしろくないし、読んでいただく方にも申し訳がない。この、中七を変えない上下穴埋めパズル、いろいろお試しくだされ。コメントでいただくとうれP!かも。

コメント (2)
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