【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「フラガール」:ほっとプラザはるみ入口バス停付近の会話

2006-09-24 | ★都05系統(晴海埠頭~東京駅)

あの煙突は何だ?
ほっとプラザはるみ。清掃工場の余熱を利用した温浴施設よ。
何があるんだ?
いろんなお風呂やジャグジーやレストランがあるらしいわ。
そのわりに、あまり知られてないんじゃないのか。
PRがいまいちなのかもね。
フラガールでも呼んでくればいいのにな。常磐ハワイアンセンターみたいに。
って、それが安易なのよ。ちゃんと「フラガール」観たの?
だから、炭鉱がつぶれそうになったんでハワイアンセンターをつくってフラガールを呼んできました、っていう映画だろ?
その認識が全然違うのよ。フラガールを呼んできたんじゃなくて、炭鉱の娘たちがフラガールになったの。
おんなじようなもんじゃないか。
これだから、男たちが地域再生をやろうとしても失敗するのよね。この映画はね、地域再生するには、地域住民が自ら立ち上がらなければ成功しないということを訴えた映画なのよ。どっかで成功したものをそのまま持って来ようとする安易な考えが再生の失敗を生むのよ。
夕張市民が観たら複雑な思いかもな。
夕張市の担当者だって、ひょっとして地域再生の参考にしようとハワイアンセンターを視察したかもしれないけど、華やかな表の顔じゃなくて、地味で地道な裏の顔にどこまで目を向けることができたか・・・。この映画をもっと早く観ていればと悔やんでいるかもしれないわ。
俺もスパリゾートハワイアンズて名前が変わってから行ったことはあるけど、そんな裏のことまで考えなかったもんな。
別に深刻に考える映画じゃないけどね。娯楽映画なんだから。でも底にはそういう視点が流れているからピシッとした映画になったのよ。
「Shall We ダンス?」とか「ウォーターボーイズ」とか「スウィングガールズ」のような映画なのに、もっと深いところで感動してしまうというのは、そういう社会的な問題が背景にあるからかな。
かといって、そのために映画が停滞するってことはないしね。
ああ、よく動いていた。映画とは動きだと改めて思ったよ。
白眉は、なんといっても、お母さんと和解するシーンよね。言葉ではなく、体の動きだけですべてを理解するという・・・。
いつも、天才キム・ギドクの名前を出して申し訳ないが、彼の映画も「」とか「うつせみ」とか、言葉ではなく、動きで感情を現していた。まさしくそれに通じるものがあるよな。
おおげさに言えば、真の映像表現てことでしょ。
映画じゃなきゃできない表現てことだ。先生との別れのシーンも、ちょっとあざといが、言葉でなく動きで表現している、いいシーンだった。
そういえば、親友との別れのシーンも動きの中で表現されていたわ。
言葉はひとことだけでな。そのひとことを繰り返すだけで。
「さよなら」でも「元気で」でもなく日常的なひとことってところが泣かせるわ。
これから観る人のために、何て言ってるかは伏せておくけど、親友は結局お父さんと一緒に職を求めて夕張の炭鉱に引っ越していっちゃうんだよな。
その夕張が今では・・・という皮肉。
最後のフラダンスシーンで、あの親友の姿が一瞬でも映れば、俺はきっと号泣だったな。
夕張でがんばってるシーンでも何でもいいからワンカット入れてほしかったわね。
役者もみんな最高だ。
そうそう。しずちゃんに泣かされるとは思わなかったわ。
さ、涙を洗いに風呂でも行くか。
ほっとプラザはるみにね。
男湯に松雪泰子が入ってきたりして?
まさか。


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ふたりが乗ったのは、都バス<都05系統>
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