【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ブラック・ダリア」:東京国際フォーラム前バス停付近の会話

2006-10-19 | ★都05系統(晴海埠頭~東京駅)

東京国際フォーラムってよく映画の試写会が開かれるわよね。
ワールド・プレミアっていうやつな。日本映画で日本人しか来ないのにワールド・プレミアって名づけたりして。あの史上最低映画のひとつ「男たちの大和」もたしかここで試写会を開いたはずだ。
でも建物の豪華さだけで言ったら「ブラック・ダリア」なんて、ここで試写会を催すのにぴったりの映画だと思わない?
そうだな。久しぶりにハリウッド映画らしい大作だしな。
ハリウッドの映画界が舞台になっていることといい、人を煙に巻く目的だけで入り組んだ物語といい、やたら思わせぶりな展開といい、ハリウッドらしいこけおどしの映画を堪能したわ。
って、それ、誉め言葉か?
もちろん。最近のハリウッドっていうのは、アカデミー賞でも「ミリオンダラーベイビー」とか「クラッシュ」とか良心的で地味な映画が受けているようだけど、私はこういう見た目に豪華で底の浅い映画こそ、映画の殿堂ハリウッドらしい本当の娯楽映画だと思っているのよ。
ポップコーンがよく似合う?
ポップコーンも似合うし、それでいて粗悪品のワインも似合うような浮世離れした映画。
ま、俺も、映画の出来は置いといて、アカデミー賞にふさわしいのは、地道な「ミリオンダラーベイビー」より、はったりかました「アビエイター」だろうと思ったほうだけどな。
その「ミリオンダラーベイビー」に出ていた男っぽい女優、ヒラリー・スワンクが曲者の悪女で出ていたり、「マッチポイント」でウディ・アレンをクラクラにさせたスカーレット・ヨハンソンが中途半端にミステリアスな役で出ていたり。配役も怪しげで素敵。
空疎な大作にふさわしく、どちらも代表作にはほど遠い演技だけどな。
だけど、二人とも何ともいかがわしさが漂っていて、たまらないわよ。これこそが映画の醍醐味よ。
実はブラック・ダリヤ役のミア・カーシュナーが一番魅力的で儲け役だった。
というか、彼女って1940年代の顔してるのよね。この映画が描いている時代にぴったりなのよ。
男優がまた素晴らしい。ジョシュ・ハートネットなんてハリウッドらしいボンクラ演技でいいねえ。
日本映画でいうと、伊藤英明って感じかしら。ちょっと弱々しい感じで。そのジョシュ・ハーネットとスカーレット・ヨハンソンがこの映画の共演が縁で結ばれてしまったというんだから、ゴシップ的にももう完璧よね。
しかし、ハリウッド大作には一番遠い監督の一人だと思っていたブライアン・デ・パルマがいまや古き良きハリウッド映画を代表する監督になってしまうなんて、隔世の感があるな。
そういえば、この監督、昔は「キャリー」とか「殺しのドレス」とか若気の至りみたいな映画ばかりつくっていたのよね。いつからこんな堂々とした監督になっちゃったの。
老けたってことだろ。
大人になったのよ。この渋さは、大人の娯楽映画だと思うわ。
誉めてるんだか、けなしてるんだか良くわからないけど、まあ、そんな風な映画だったってことだ。
そう。赤じゅうたんでも敷いてちょうちんマスコミをいっぱい集めて国際フォーラムでバブリーな試写会を開くような映画。
って、誉めてるのか?
ああ、あなたには、まだわからないの。こういう誉め方もあるんだってことがわからないようじゃ、あなたもまだまだ子どもね。
もう30越えてるんだけど。


ふたりが乗ったのは、都バス<都05系統>
晴海埠頭⇒ほっとプラザはるみ入口⇒ホテルマリナーズコート東京前⇒晴海三丁目⇒勝どき駅前⇒勝どき橋南詰⇒築地六丁目⇒築地三丁目⇒築地銀座四丁目⇒有楽町駅前⇒東京国際フォーラム前⇒東京駅丸の内南口

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