【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「苦役列車」

2012-07-18 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


昔はいっぱいあったよなあ、同じようなところでグダグダ、グダグダしているだけの青春映画。
藤田敏八の一連の青春映画とか、神代辰巳の「アフリカの光」とかね。
そうそう。グダグダしてないで早くアフリカ行っちまえよショーケン、とか声をかけたくなるような映画。
でも、嫌いじゃないでしょ、こういう下層志向の冴えない青春映画。
だって、脈絡もなく動物ごっこだぜ。どうしてああいう発想が出てくるわけ?三池崇氏の「愛と誠」に並ぶくらいおったまげた趣向だ。
足を折った中年の歌う「襟裳岬」も相当きてたわね。
「俺は悪くない」とか、完全に行っちゃってる。
モテキ」の森山未来がまったくもてない中卒19歳を熱演すれば、「軽蔑」の高良健吾が爽やかな笑顔の専門学生を好演。対照の妙を見せる。
森山未来が憧れる女子大生を演じるのが前田敦子ってどうよ、と思うけど、案外このあっけらかんがいいのかもしれないと思い直したりして。
彼女も老人の介護のシーンや雨の中のケンカのシーンとかがんばってた。
がんばってるだけで、人格的な陰影が何にもない。からっぽの感じがかえって良かったかもしれないな。
昔の映画なら若いころの桃井かおりとか秋吉久美子が演じそうな役柄かもしれないけど、彼女たちじゃあ賢さが邪魔しちゃったかもね。
そして、高良健吾のガールフレンドの女子大生。こういう女、いたなあ。
インテリの仲間に入ったような錯覚全開のしょーもない頭でっかち女。
山下敦弘監督としては「マイ・バック・ページ」よりこういう女のほうが時代のリアリティを感じさせる。
森山未来が彼女に食ってかかる内容もおもしろいけど、結局負け犬にすぎない。
最後は「友達紹介して―」だもんね。
不器用を通り越してほとんど救いようのないバカ。
と言いながら憎みきれない。
場末の名画座にかかるような青春映画。
いまどき、こんな流行らない映画をつくる度胸だけでも買うね。


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