【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ひゃくはち」:本所一丁目バス停付近の会話

2008-08-16 | ★門33系統(豊海水産埠頭~亀戸駅)

LIONの文字を見ると、学生のころ、野球部の連中がよくライオンの洗剤でユニフォームを洗っていたのを思い出すなあ。
試合に出られない補欠選手なんて、それだけで高校3年間過ぎちゃうのよね。
そういう縁の下の力持ちにも、たまには光を当ててもいいんじゃないかと思っていたら、ついに出てきた、補欠野球選手映画「ひゃくはち」。
野球の縫い目は煩悩と同じ百八あるから、「ひゃくはち」。なんかごじつけのような気もするけど。
それくらい稚気あふれる高校野球映画ではあった。
強豪ひしめく名門野球部で、試合に出るどころか、ベンチに入ることも夢の補欠選手たちのほろ苦くも滑稽な物語。
ベンチ入りギリギリの背番号20をもらってあんなに感激するんだもんな。
もらえない選手は、大泣きする。ベンチに入れるかどうかってだけなのに。
それも青春。あれも青春。
「無駄に前向きなやつら」とか言われながら、彼らなりにチームに貢献しようとする涙ぐましさ。
「楽しいか」と聞かれて即座に「楽しくないです。ほぼ、苦しいです」と答える。そうさ、それがほんとの青春なのさ、フフフ。
なに、ひとりで納得してるのよ。
甲子園はいまや、熱戦の真っ最中だけど、その底辺には彼らのように、何ひとつ報われることなく黙々と部活に励んでいるやつらがゴマンといるってことだよ。
黙々、っていうほどストイックじゃなかったわよ。タバコも吸えば女の子ともいちゃつくんだから、見つかったら野球部廃部もんよ。
まあ、まあ。そう目くじら立てるな。社会に出れば出たで、注目を浴びることなく、平凡な人生を送っていくんだろうから、それくらい羽目をはずしてもバチは当たらないだろう。
ずいぶん、彼らの肩を持つのね。
何も野球選手に限らず、大半の人たちは野球で言えば補欠選手みたいな人生を送るわけよ。これが、共感せずにいられるか、ってんだ。
他人事とは思えない?
ぜーんぜん、思えないね、俺たち下流社会の人間には。
だからって、ふてくされてばかりいないで、無駄でもいいから前向きに生きていこうよ、っていう勇気をもらえるくらいには、いい映画だったかな。
竹内力が名監督なのか迷監督なのかわからない野球部の監督を怪演するかと思えば、光石研が息子のベンチ入りを喜ぶ父親役で相変わらずいい味出してるし、なかなか隅に置けない映画だったぜ。
野球で言えば、甲子園に出るほど隙のない映画ではないけれど、地区大会を沸かせるほどにはいい映画だったかな。
なんだ、その微妙な感想は。やっぱり、男じゃなくちゃわからないのかねえ、万年補欠の切なさは。
それほど言うなら、あなたも彼らを見習って、せめて身の回りのものは自分で洗濯したら?
余計なお世話だ。ライオンの洗剤とコイン・ランドリーさえあれば俺は生きていける。それくらいには清潔な人生を送ってるぞ。
煩悩だらけのくせに。



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ふたりが乗ったのは、都バス<門33系統>
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