【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「フローズン・タイム」:春日駅前バス停付近の会話

2008-03-19 | ★都02系統(大塚駅~錦糸町駅)

この春日局、全然動かないわね。
あたりまえだろ。ただの銅像なんだから。
でも、こう凍ったように動かないと、何かいたずらでもしたくなっちゃうわね。
着物を脱がして絵のモデルにでもするか。
そんな、「フローズン・タイム」じゃあるまいし、銅像の着物なんて脱がせられるわけないでしょ。バッカじゃないの。
って、お前が言い出したことだろ。
イギリス映画の「フローズン・タイム」は、失恋で不眠症になった男子美大生が、時間を止められるようになっちゃうって話。
でも、せいぜい、バイトしているスーパーの客を脱がして絵のモデルにする程度。
実は、そこで働いている女性と恋に落ちる、っていうほうが本筋なのよね。
いわゆる、ロマンチック・コメディってやつだな。
「フローズン・タイム」って、結局、恋する二人の時間は止まるっていう意味だった。あのファンタジックなエンディングをつくるための仕掛けだったのね。
二人のためにフリーズした世界。「時間よとまれ、君は美しい」っていう瞬間だ。
ああ、ロマンチックの極致。
だれか、ロマンチック、とめて。ロマンチック、とめて
って、あんたは、C.C.Bか。
軽い感覚の映画だから、それくらい肩肘張らずに観ていればいいってことさ。
渾身の力をこめてつくりました、っていうより、こんな映画つくってみました、っていうノリだもんね。役者も演出もどこかアマチュアっぽくて、映画の出来としては未熟というか、安っぽい感触もあるんだけど、案外憎めない。
監督がショーン・エリスというファッション・フォトグラファーだっていうからね。
写真家かあ。言われてみれば、スーパーの客がみんな写真のモデルみたいだったもんね。
日本でも女性写真家が「さくらん」なんていう映画を撮っているけどね。
あれこそ、豪華絢爛で、いかにも写真家が撮りました、っていう映画だった。
あれに比べれば派手さはずいぶん控えめだけど、それだけに心情が素直に伝わってくる。
さくらん」はあんまり気持ちが伝わってこなかったからね。
「フローズン・タイム」は、イギリス映画だからかわからないけど、主人公を取り巻く人々に、「フル・モンティ」みたいなみみっちい感じがどこかにあって、それが人間味を生んじゃうのかもしれない。
彼が恋するスーパーの女性店員が、最初はドンくさい田舎娘なのに、話が進むにつれてどんどんきれいになっていく。まるで、「ロッキー」のエイドリアンを見ているみたいだったわ。
おいおい、いくらなんでも、それは褒めすぎだろう。ちょっと似ていないこともないけど。
この春日局像が本物の春日局に似ている程度には、似ていると思うわよ。
うーん、たとえがヘン。
なんでもいいけど、私にも「フローズン・タイム」みたいなロマンチックな瞬間、来ないかしら。
身も凍るほど恐ろしい時間っていう意味の「フローズン・タイム」なら、俺は毎日経験しているけどな。
私といるから?
う、う、口が凍った。


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