【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「バッテリー」:白金台駅前バス停付近の会話

2007-03-10 | ★品93系統(大井競馬場前~目黒駅)

この堂々たる建物は何だ?
東大医科学研究所。
東大って、あの六大学野球の万年弱小チーム、東大か?
そう、あの東大。
東大の野球部にも「バッテリー」の主役みたいなピッチャーが入れば、いいとこ行くんだろうけどな。
でも「バッテリー」って、中学の野球部の話よ。
そうか。いや、でも、中学生が主人公の映画だからって敬遠してると大損するぞ。大人が見ても十分感動する映画だ。
でも、かわいそうよねえ、あのピッチャー。
そうそう、天才ピッチャーにも弱点や苦悩があって、それを中学生らしい心根で乗り越えていくってところが涙を誘うよな。
いえ、天才ピッチャーのほうじゃなくて、控えピッチャーのほう。
控えピッチャー?そんなのいたか?
強豪中学と対戦するっていうのに、エースが弟の病院へ行ってるんでしかたなく投げていた控えピッチャーのほうよ。
全然覚えてないけど。
そう、顔もほとんど出ないくらい影の薄い存在なんだけど、とにかく急な登板だったろうに懸命に投げてたのに、一番いいシーンになったら、エースが出てきちゃってマウンドを降ろされちゃう。かわいそうったらありゃしない。
しかし、しょうがないんじゃないのか。勝負の世界は力がすべてなんだから。
そういうこと言ってるから、映画の中に出てきたように暴力行為に走る野球部員が出てきたりするのよ。中学では野球は教育の一環なんだから。
おまえ、何かPTAみたいな顔になってるぞ。
だってプロじゃないのよ。中学生なのよ。大人が正しく導いてあげなくてどうするのよ。
中学生っていやあ、もう自分で考える力を身につけていいころだ。なのに、それがわからない親がいるからかえってねじくれちゃうんだよ。天海祐希演じる母親みたいに。
まあ、彼女の愛し方が正しかったどうかはわからないけれど、彼女なりに子どもを愛してはいたのよ。
そりゃ、最後のシーンを観ればわかるさ。
ああ、あのシーン。家族の和解を象徴するシーンね。天海祐希の登場があまりに絶妙なタイミングなんで、思わず涙が出そうになっちゃったわ。
だろ。子どもには子どもなりに生きる力があるんだから、それを信じろってことさ。
それにしても、主役のバッテリーをはじめとするあの若手俳優たち、よかったわね。
ピッチャー役の林遣都は、ファンタジーと現実のちょうど中間にいるような顔つきをしていて、ちょっとありえない天才ピッチャーを演じるにはぴったりの雰囲気だし、キャッチャー役の山田健太がまた、ピッチャーのわがままをすべて全身で受け止める度量の大きさを納得させる風貌で、なんといっても笑顔がすばらしい。大物になるぞ。
他の野球部員たちもいかにも田舎の中学生って感じで好感がもてたわ。
単なるその他の野球部員じゃなくて、主人公のバッテリーが成長していく過程に大いなる影響を与える。
それだけに控え投手の描写がなくてちょっと寂しかったのよ。
「あとはまかせた」のひとことだけだもんな。でも、全員が天才ピッチャーになれるわけじゃないんだから仕方ないんだよ。それに、さっきも言ったけど天才には天才なりの苦悩がある。
そうね。彼の病弱な弟のように、天才とか何とか言ってないで純粋に野球を楽しむのが、ほんとうの幸せなのかもしれないわね。
野球がやれる、それだけで幸せだっていうのが、また泣かせるよな。
心の離れかけたバッテリーがよりを戻すきっかけになったのが、「野球」ではなく、弟を中心にした「野球ごっこ」だったっていうのがまたいいわよね。
原作が800万部を超えるっていうのがわかるような気がするな。
わかりやすくて、おもしろくて、それでいていろいろなことを考えさせてくれる。文句も言っちゃったけど、いい映画だったわ。
監督の滝田洋二郎も久しぶりにうまくまとめた。プロの仕事だ。
監督だけじゃなくて、彼を中心とするチーム全員がね。
野球チームと同じだ。
ほんと・・・。
東大は今年何位なのかなあ。
そんなこと考える前に純粋に野球を楽しみましょうよ。
ああ、そうだった。


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ふたりが乗ったのは、都バス<品93系統>
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