【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「今宵、フィッツジェラルド劇場で」:白金台五丁目バス停付近の会話

2007-03-15 | ★品93系統(大井競馬場前~目黒駅)

シロガネーゼは、このあたりを毎日かっ歩しているわけだな。
フィッツジェラルドの「華麗なるギャツビー」みたいな生活しているのかしら。うらやましい。
そう言えば、「今宵、フィッツジェラルド劇場で」のフィッツジェラルドって、あの作家からきているらしいな。
ラジオの公開番組を収録している劇場なんだけど、そのラジオ番組も最終回を迎え、劇場も明日には解体されるという晩の出演者たちの物語が「今宵、フィッツジェラルド劇場で」。
番組がなくなる夜というシチュエーションに加え、天使のような死神が出没したりして、なにやらロバート・アルトマンの遺作にはふさわしい映画だな。
おそらく、この映画が最後になるって、監督自身、意識していたんじゃないかしら。
言われてみれば、ざわざわした画面の雰囲気といい、音楽の嗜好といい、出演者の立ち居振る舞いといい、ゆるやかに移動するカメラといい、あらゆるところにアルトマン趣味があふれている。これが最後という意識で自分の監督としての証を残して置こうとしたのかと思うと、不覚にも目がウルウルする。
女の子が「自殺の歌しか歌えない」なんて言うと「マッシュ」の主題歌を思い出しちゃうし、最後にマイクが意外な人物に渡っちゃうと「ナッシュビル」を思い出しちゃうし、「老人の死は悲しむものではない」なんて言われちゃうと、かえって、もうアルトマンの新作は観れないんだという寂しさが押し寄せてくるわ。
でも、監督自身は、そんなに悲しむなよとばかりに、いろんなところにいたづらをしかけている。
いちご模様のパンツとかね。
姉妹デュオがリリー・トムリンとメリル・ストリープなんてすごい濃い配役だ。
この超ベテランの二人が演技同様、結構歌もうまいのよね。
日本でいえば、安田祥子と由紀さおりか?
由紀さおりなんて、映画に出ても演技ばかりでほとんど歌を披露しないけど、日本でもこの本物の姉妹に存分に歌わせる映画ができてもいいのにね。
「モスラ」の双子小美人なんてどうだ?
ああ、双子も歳取ったっていうシチュエーションね。それ、いいかも。
「モスラの老後」とか言って。
話が脱線しちゃったけど、そういう風に脱線していくところがアルトマンの魅力なのよね。
この前観た「ボビー」なんて、アルトマンの映画みたいに何人もの人間が入れ代わり立ち代わり出てくるんだけど、脱線ていうんじゃないんだな。ちゃんとレールの上を走ってる。そのぶん、アルトマンみたいな茶目っ気が足りなかった。
あれ、「ボビー」は傑作だって言ってなかった?
いや、傑作だ。でも、アルトマンとは肌触りが違うって言いたいんだ。
アルトマンはやっぱり一人しかいないってことね。
フィッツジェラルドが一人しかいないようにな。
すごい比較。


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