【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「絶対の愛」:海岸一丁目バス停付近の会話

2007-03-29 | ★虹01系統(浜松町駅~ビッグサイト)

あらあら、あの女の子、松葉杖ついて足の骨でも折っちゃったのかしら。整形外科のお世話になってるのかな。
おまえの場合は、美容整形のお世話になったほうがいいけどな。
よけいなお世話よ。
しかし、世の中には男の愛を引き止めるために整形をする女もいるんだぜ。
キム・ギドクの「絶対の愛」の話でしょ。
ああ、自分の顔が男に飽きられるのが怖い女が顔を整形して別の女として男の前に現れるっていう、なんともゆがんだ愛。
しかも、男がまだ前の姿の自分が好きだってわかって、前の姿の自分に嫉妬するという、ねじくれた展開。
さすが、キム・ギドク。一筋縄じゃいかない展開だ。
そう、こんな程度のねじれ方じゃまだ満足しないしないとばかり、それを知った男のほうがこんどは整形をしちゃうっていう、なんとも破天荒な展開。
さて、顔の変わった同士で愛は成り立つのか。その後の展開がまたなんとも哀れを誘う。で、結局、結末もそうきたか、っていう終わり方。
一貫してるっていえば、一貫してるわね。
韓国は日本以上に整形大国だっていう話もあるし、主演の女優も実際、整形の経験があるっていうじゃないか。まさに一貫している。
安部公房の小説で「他人の顔」っていうのがあったけど、あれをほうふつとさせるような話よね。
事故で自分の顔を失った男が仮面をつけて他人になりすますうちに常軌を逸していくって話だろ。たしかに似ているが、こっちは純粋な愛の話だ。
純粋な愛の話?
事故じゃなくて、自分から別の顔を選択するんだから。しかもの愛のために。「他人の顔」というより、谷崎潤一郎の「春琴抄」みたいな話じゃないか。
うーん、男の側に立ってみれば、「おまえが整形するなら、俺も整形する」って「あなたの目が見えないなら、私の目もつぶす」っていう話と似ていなくもないけど、でも、結末はだいぶ違うじゃない。
まったく、愛って何だろうな。「絶対の愛」なんて、いい日本語タイトルをつけたもんだ。
原題は「Time」なのにね。
それはそれでわからなくはないけど。時間が愛を壊していくのを止めたかった、っていう話だからな。
でも、キム・ギドクの映画って日本語題名のほうがよかったりするのよね。「The Isle」を「魚と寝る女」とか「3-Iron」を「うつせみ」とか。
だけど、そうまでして、女の愛を一身に受ける男のほうがそのへんの兄ちゃんで、別にいい男でも何でもないってところが不思議だ。
愛は盲目ってやつね。
あそこを歩く少女も実は、そういう愛の戦いの果てに松葉杖になったのかも。
うーん、それはないな。


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ふたりが乗ったのは、都バス<虹01系統>
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