「イチゴを食べる」と言う時も、同様に部分冠詞を用いるが、これもわかりにくい。数えられない名詞に部分冠詞をつけるのはまだ理解できるが、イチゴは数えられる名詞なのである。
日本では1個1万円もするような巨大なイチゴを売っている。しかし、野イチゴはとても小さくて、1個だけでは食べた気になれない。米を1粒食べるようなものだろうか。かつて、人類がイチゴの原種を食べていたころは、イチゴのつるから小粒のイチゴをたくさん取って食べていたのだろう。そうすると、イチゴを食べる時にも部分冠詞を使うということもまあ、理解できるのである。イチゴのツルという全体から部分を取って食べるということである。この場合、イチゴは複数形になる。
1粒1万円の巨大イチゴなら、一度に全部食べてしまうのはもったいないので、筆者なら、一口ずつ、一部分を食べそうである。この場合も部分冠詞を使うのもいいだろうが、イチゴは単数形にしないといけないだろう。
「木がある」というような時にも、木(arbre、スペイン語は árbol)の前に部分冠詞をつけるようだ。こちらの方の解釈はこうだ。
昔、ヨーロッパ(地中海性気候のところは除く)は森におおわれていたとのこと。そうすると、木はいたるところにあり、木は森の一部として考えられていたのだろう。その後、だんだん木が伐採されていったあとも、部分冠詞を使った言い方は残ったということだろうか。
ラテン語には冠詞そのものがなかったそうで、部分冠詞などはありえない。ということで、ラテン語からフランス語が生まれた時期と、フランスで森林の伐採が進んだ時期が重なっていればいいのだが、それについての詳細な考察は、どなたかにお任せします。
ここまで親切に説明しているフランス語のテキストがあったかどうかは不明だが、今後はちゃんと書いてほしいものである。
ところで、スペイン語にも部分冠詞の萌芽のようなものがあったらしい。興味があるお方は『スペイン語史』(寺英樹著、大学書林、2011、p.150)を参照されたい。ただし、定価6500円+税で、かなり高価である。
ちょっとだけ紹介しよう。中世スペイン語の『わがシードの詩』(Poema de Mio Cid)に次のような一節がある。
Non nos darán del pan「われわれにはパンも手に入らないだろう」
(現代のスペイン語とは少し違う)
この形式はスペイン語では発展せず、16世紀以降廃れてしまったとのことである。よかった、よかった。
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スペイン語とともに考える英語のラテン語彙の世界 (開拓社言語・文化選書)
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「木がある」というような時にも、木(arbre、スペイン語は árbol)の前に部分冠詞をつけるようだ。こちらの方の解釈はこうだ。
昔、ヨーロッパ(地中海性気候のところは除く)は森におおわれていたとのこと。そうすると、木はいたるところにあり、木は森の一部として考えられていたのだろう。その後、だんだん木が伐採されていったあとも、部分冠詞を使った言い方は残ったということだろうか。
ラテン語には冠詞そのものがなかったそうで、部分冠詞などはありえない。ということで、ラテン語からフランス語が生まれた時期と、フランスで森林の伐採が進んだ時期が重なっていればいいのだが、それについての詳細な考察は、どなたかにお任せします。
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