気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ははそは 水原紫苑

2005-02-28 12:27:44 | つれづれ
時計、眼鏡、櫛を求むるははそはのいのちのはなびらひらきゆく順

処女(をとめ)なりし母の矢絣まとふとき少年兵のごとき水仙

あかねさす紫の衣(きぬ)買ひくれぬわが生涯の色とさすべく

さはさあれ母よみがへるよろこびは忘るまじきよ全天星座

ははそはを抱きて時の波こえむその余の恋は恋にあらなく

(ははそは 水原紫苑 短歌3月号)

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角川短歌の3月号を図書館で読む。グラビアページで紫苑さんが、矢絣の着物を着ておられる。
本を積み上げた和室に座る写真もあるが、ご自宅だろうか。後ろのダンボール箱に「ぽんかん」の文字が見える。懐かしい夢の世界のようだ。


たんぽぽの・・・

2005-02-25 22:17:53 | つれづれ
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ

三月の甘納豆のうふふふふ

がんばるわなんて言うなよ草の花

ゆびきりの指が落ちてる春の空

(坪内稔典)

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半月ほど前、ふとしたことから坪内稔典氏の話を聴く機会を得た。
その後、折に触れて稔典さんの本を見るようになった。
今日は「俳句的人間短歌的人間」を読了。なるほどと頷く。
そこで、私が今追いかけている香川ヒサについて書いてある文章にもめぐりあった。
京都に住んでおられるので、またお話を聴くことが出来そうだ。
あっちこっちに点々とあったものが、線になって、いずれ星座になって見え始めたらいいと願う。

これいただくわ!

2005-02-24 19:58:04 | つれづれ
指触れし銀の器はたちまちに曇りを帯びて我を拒めり

何か足らぬ何か足らぬといくばくの迷ひに掬ふ一匙の塩

奪ひても欲しとぞ思ふものはなくなくて足れりといふにもあらず

(蒔田さくら子)

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蒔田さくら子さんは、短歌人の重鎮でいらっしゃるので、何度かお目にかかったことがある。
しかし、毎月の短歌人誌のほかで作品を読むチャンスを逃したままだった。
「現代短歌の鑑賞101」をやっと入手して読む。

先日、家の近くにブック○フが開店したので、ぶらぶらと様子を見に行った。
詩歌の棚はどこかと探す。知っている名前の歌集はないかと見ていると、店員が来て、ストックを開けるのでつい「中を見ていいですか?」と尋ねる。あっさりと見せてもらう。
すると、そこに新書館「現代短歌の鑑賞101」を見つける。しかも100円になっている。

「これいただくわ!」思わず言ってしまった。いつも言ってみたいと思っているセリフ。
その後、ストックからT氏の歌集(3500円)S氏の歌集(2500円)を発見。合計300円の買い物をして帰る。歌集2冊は栞がきれいに入ったままだった。

たましひに着る服なくて 米川千嘉子歌集

2005-02-22 23:24:17 | つれづれ
泥水をまつたき世界として泳ぐ蝌蚪(くわと)六月の万緑のなか

ふゆぐれのさびしい儀式子を拭けばうす桃色の足裏(あうら)あらはる

たましひに着る服なくて醒めぎはに父は怯えぬ梅雨寒のいへ

時間をチコに返してやらうといふやうに父は死にたり時間返りぬ

子供とふことのかなしみ突つ立ちてピアニカとなりて行進をする

(米川千嘉子 たましひに着る服なくて 砂子屋書房)

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米川千嘉子の第三歌集。父親の死、子供のことを歌いながら、独自の視点を持つ人だと思った。
以前読んだ渡辺松男の「歩く仏像」を思い出した。同じ「かりん」の人なのだ。


気まぐれ徒然かすみ草HPの件

2005-02-22 18:45:52 | つれづれ
年明けから始めたホームページの更新がうまく行きません。
こちらのブログは、毎日更新しますが、あちらはちょっとペンディングです。
題詠マラソンが、はじまるまでに何とかできればいいのですが・・・
最近、目が非常に疲れます。
短歌に関わるために、パソコンが出来なければならないならない理由はない。
より多くの人に見ていただいたり、より多くの情報を得るために、パソコンやインターネットは大事なツールだけれど、出来ないときは休むほかはありません。たいやきでも食べて…

こちらのブログは毎日何か書きますので、読んでくださいね。

とんちんかん 俵万智

2005-02-21 22:57:35 | つれづれ
いちご一つろうそく一本頭にのせてケーキが吾子の一歳祝う

「とんちんかん」と書かれたページで子は笑う必ず笑う「とんちんかん」で

バスタオルのくまの模様を見て笑うそのシンプルな心に触れる

叱られて泣いてわめいてふんばってそれでも母に子はしがみつく

(俵万智 短歌研究3月号)

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短歌研究3月号が届く。
今回は詠草欄でがんばったご褒美で「贈呈」のハンコがある。
うれしい。3月号は、現代代表女流歌人作品集。エッセイの競作もある。
短歌をはじめた3年半前に知っていた名前は、俵万智、道浦母都子くらいだろうか。

俵さんらしい歌。
お子さんが、お誕生を迎えられたのだと知る。
20年先は、こうなりますよ~
「叱られて泣いてわめいてふんばってそれでも母は子にしがみつく」
失礼しました。


扇風機

2005-02-20 23:02:28 | つれづれ
しまふときを逸したる黒い扇風機がたたみのうへに夜を迎ふる

『灰とダイヤモンド』の画面の隅に回りゐし扇風機ありきそこからの風

鯱旗をみなもととするシャチハタの赤小池ぽんと押す休暇願に

一時間はやく帰るをこひねがひゆるし受けたりき徳育のしもべ

(小池光 滴滴集 短歌研究社)

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昨日、ナマ小池さんとすこしお話をする。
そのあとに読む滴滴集は、また格別の味がある。
夕飯を食べながらテレビで「行列の出来る法律相談所」を見る。

限りなく射干玉に近き灰色を白と言ふため並ぶ弁護士
(近藤かすみ)

天使

2005-02-18 22:59:44 | つれづれ
天使らはすなはち言葉やはらかに密集しつつさやげりをかし

天使らは神の使者ゆゑ天使らの現るるところ神の在さじ

この世界続けるかぎり問はれなむこの世界はいつ終はりとなるか

(香川ヒサ ファブリカ)

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密かに敬愛している香川ヒサ氏に明日会えるかもしれない。

マリちゃんに天使が見えてユキちゃんに見えないらしい 放課後の空
(近藤かすみ)

丹波黒豆甘納豆

2005-02-17 23:12:35 | おいしい歌
冬の日のいまいちばんによいひかり洗濯物にそそぎ部屋暗(くら)

保革油のミンクオイルをあたらしき鞄に塗れば春とほからじ

丹波黒豆甘納豆のいくつぶか口に入れしかば歯があらそひて噛む

鵜のとりのはばたけるとて飛び立たぬ一羽みてをり夕暮れ川に

ゆふぐれの鉄のくさりに閉ざされて外人墓地よりあゆみをかへす

(小池光 雑歌 歌壇3月号)

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またふらふらと書店に行き、歌壇3月号を買ってしまう。
佐佐木幸綱と穂村弘の対談で「インターネット短歌の現在」というのがあって、立ち読みは無理と判断したため。また出費。

ぬばたまの丹波黒豆甘納豆買(こ)うて亭主の帰りを待たむ
(近藤かすみ)

饗庭 永田和宏歌集

2005-02-16 18:18:45 | つれづれ
春の川ふたつ出会えり川上の染め屋の紺は片流れせる

送られて出づる甃(いしみち)春の夜の祇園の坂は光に濡るる

抱く腕のなかにしだいに繭となるかなしき夢よ汝を知りてのち

せつなさは不意に襲いて池底の鯉の口より出入りする砂

鞠小路(まりのこうじ)を猫横切れり仁丹のかの制服の兵士のゆくえ

(永田和宏 饗庭 砂子屋書房)

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永田和宏の第六歌集。40代後半の歌を集めたもの。
二首め三首めなどロマンティック。

もう2年半前のことになるが、小池さんが大阪弥生会館で講演されたとき、はじめてお話をした。それまで何回か短歌を送っていたがそのときが初対面。ロビーで同年代の男性と話しておられるのを見て「小池先生ですか」とどきどきしながら声をかけた。そのとき横におられたのが、永田和宏氏だった。今思えば、なんとも世間知らずの大胆な振る舞い。
小池さんは「ああ、あんたが・・・」と言って永田さんに「この人は、京都にいながら短歌人に入った奇特な人なんだよ」と言ってくださった。
永田和宏は京都在住なのでよく知った地名が出てくる。鞠小路は私の卒業した小学校に近い。
内輪話になってしまった。