気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

フランスキャラメル

2008-04-24 19:56:55 | おいしい歌
金髪の少女稚けなしいつまでもフランスキャラメル紙箱のうへ
(角川短歌5月号 公募短歌館 秀逸)

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今月は、河野裕子さんと米川千嘉子さんに秀逸にしてもらった。
この歌は、とうげ歌会でお題が「箱」のときに作ったもの。
約一年半続いたとうげ歌会も、今回が最終回となってしまった。一応、すべて参加して36首の歌が出来た。管理人の久保寛容さんのおかげである。ありがとうございました。また参加したみなさまにたくさんの意見をいただき、自作について考えることが出来ました。
ネット上の歌会は、読めないほど長文の意見を書き込む人がいたり、忙しくて選歌だけの人が居たり、バラバラなところが、長所でもあり短所でもある。
とうげ歌会は、月二回というテンポのよさで、次々進んだことも良かったと思う。
久保さん、みなさん、ありがとうございました。

七時のニュース

2007-07-25 19:42:14 | おいしい歌
大皿に天ぷらいつぱい揚げし日は遠くなりけり七時のニュース
(近藤かすみ)

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角川短歌8月号の公募短歌館、蒔田さくら子選で秀逸にしていただきました。
結句の七時のニュースが良かったようです。

いろいろ読みたいものがあって、うれしい悲鳴。
きょうは、短歌人夏季集会の詠草集が届いたので、それを読んでいます。いいと思う歌が塊になっているところがあって、全体はまだ読めていません。選ばなかった歌が続くときは、お昼寝タイム・・・なんて不謹慎なこと言っちゃいけませんね。

うちのパソコン、少々不具合があります。文章は読めますが、なぜか画像が出ません。
電源を入れてしばらくは、うまく行くけど、しばらくすると画像がなくなってしまいます。
今月はヤフオクで、いろいろ買物して、まだ何か欲しくて、見にいくんだけど、商品の画像が見えない。もうこれ以上ムダ使いして買うなという警告なのかも。自嘲します。


英字ビスケット

2007-06-12 22:38:55 | おいしい歌
英字ビスケットそのI(アイ)の字の砂糖衣(フロスティング)うすももいろの今にかなしも
(酒井佑子 矩形の空)

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ここ数日『矩形の空』をちびちびと読んでいる。
最近買わなくなったが、英字ビスケットとか動物ビスケットを子供が小さかったころはよく買って食べていた。動物ビスケットには、ヨーチといって、色のついた砂糖をかけたのがあって、これが独特の甘さでおいしかった。酒井佑子さんのこの歌を読んで、すぐにあれだ・・・と思ったが、近ごろ見かけない。
子供のころ、曽祖母が大阪から遊びに来るときは、いつも松竹梅のかたちの甘いおせんべいで、砂糖のかかったのをおみやげに持ってきてくれていた。生姜板というのもあった。むかしは甘いというだけで、有難がられたのだろう。いつの間にか甘いものを食べるのに、罪悪感を持つようになってしまった。めちゃくちゃな甘さは、懐かしさでもある。

歌会に出て行くためには、歌を作らなくっちゃいけないんだけど、実は最近、不調。こう言う歌を作ったら、きっとだれかが、こう批判するだろうと予想して萎縮しちゃう感じがある。一時は勢いがあったのに。まあ休み休みでも、続けるしかない。休むととてもさみしいから。


梅干

2007-05-23 23:10:14 | おいしい歌
人の世の勝ち負けなどは梅干とらつきようの差ぞとシーツを干しぬ
(栗木京子 虹の力 短歌研究6月号)

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梅干とらっきょうとシーツという日常的な素材で、人生の深遠を詠んだ歌。
わたしも相当負けず嫌いの性格だが、いつの間に世の中はこんなに勝ち負けを言うようになったのだろう。自嘲気味に、私は負け組とか負け犬とか言ってみると、楽になるのだろうか。人それぞれで、負けるが勝ちというんだけどね。
いま読んでいる本は、『「性愛」格差論』斎藤環+酒井順子(中公新書ラクレ)。短歌関係の本を読もうと思いつつ、気分転換に新書を読むのが好きだ。


蓮根のうた

2007-05-09 19:05:06 | おいしい歌
レンコンの穴から人生がほどほどに見えてきた笑うしかない
(竹原市 岡元稔元 読売歌壇 5月8日)

父十三回忌の膳に箸もちてわれはくふ蓮根及び蓮根の穴を
(小池光 日々の思い出)

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読売歌壇の小池光選のトップを飾った歌。
たしかに笑うしかない、諧謔に満ちた歌。「ほどほどに」を三句とすると、四句目が五音、結句が七音ということか。不思議な歌である。
小池さんの蓮根の歌も調べたら、ありました。わたしは蓮根の食感が好きだが、あれは穴に土がついているので、よく洗わないといけない。酢蓮根よりは、きんぴらや筑前煮や天ぷらにするのが好きだ。


ラング・ド・シャ

2007-04-20 00:24:12 | おいしい歌
ひとりなる午後の愉悦に舌あそぶラング・ド・シャは極薄の舌

ひとつづつ指が運ぶとくちびるはよろこびひらくチョコレートのため

前後左右見渡すかぎり「短歌人」歌会のごとき機内といはむ

夜市なるグアバの汁の香に立ちてほほばる人を悦に導く

使ひ古しの感情といへど丹念に拡げてゆかむゆびをつかひて

(西村美佐子 猫の舌)

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ラング・ド・シャは猫の舌という意味のお菓子の名前。
食べることを描写するのに、舌、くちびるといった身体の一部を切り離したもののように言って、言葉の操作を楽しむ歌。わたしもこの真似事のような歌をときどき作っている。美佐子さんとは、台湾へ行ったとき一緒だった。娘さんのおみやげとか言いながら、ぴったりしたチャイナドレスを買っておられた。抜群にスタイルの良い彼女なら、きっと似合う。東京の歌会に着てこられたのだろうか。写真は台湾の夜店の入り口のイルミネーション。
五首目。ゆびをつかって感情をひろげてゆくとは、どんなことだろう。不思議な感覚の歌だ。


2007-02-21 19:42:02 | おいしい歌
鶏卵を割りて五月の陽のもとへ死をひとつづつ流し出したり
(栗木京子)

処女(をとめ)にて身に深く持つ浄き卵(らん)秋の日吾の心熱くす
(富小路禎子)

大きなる手があらはれて昼深し上から卵つかみけるかも
(北原白秋)

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は
(穂村弘)

砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている
(俵万智)

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今日は、とうげ歌会の投稿の〆切。
今回のお題は「卵」である。卵から思い出す歌がいくつもあって、自分でもいくつかのパターンを作ってみた。迷ってまよってさっきやっと詠草を送った。さて今回はどんな歌が並ぶことだろう。↓は出さなかった歌。こちらの方がよかったかな。

パック入り玉子六ヶを食べ切れず捨つるわが身に天罰あらむ
(近藤かすみ)

チョコレート

2007-02-14 21:40:45 | おいしい歌
パイナップル、グリコ、チョコレート、石段を上つて下りて日の暮れるまで

銀紙を剥がしてチョコをもうひとつ食べる ぎんがみ一枚を生む  

(近藤かすみ)

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一首目は、2005年の題詠マラソンのときに作ったうた。二首目は、去年のいまごろ短歌人に出したうた。
今日はヴァレンタインデーだけど、わが夫、息子はどこかのだれかにチョコレートをもらっているのだろうか。不二家のハート型のチョコで、ピーナッツの入ったのがけっこう好きで(しかも安くて)ときどき食べていたが今年は、もう売っていないような気がする。なんとなくさみしい。


春畑茜『きつね日和』批評会

2007-02-04 01:45:19 | おいしい歌
蜜豆のひそひそ話ひそひそと陶(たう)のうつはに生(あ)るるさざなみ

寒天のうすくれなゐにあはき白午後のひかりを匙は掬へる

灰白の志野の小皿のうへにしてひとつぶおほき梅干は光(て)る

(春畑茜 きつね日和 風媒社)

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春畑茜第二歌集『きつね日和』の批評会に名古屋へ出かけた。
加藤治郎、松村正直、東直子、中津昌子のパネラー各氏の批評を中心に、この歌集をいろんな方向から読むことが出来た。わたしとしては、春畑さんの食べ物の歌が好きで、よく「食べ物のうたはおいしそうでないとダメね」と言い合っていたので、この方面の意見が出なかったのが残念だった。
ネット上の歌会や題詠マラソン、題詠ブログ100首に共に参加し、苦労している仲間として(ずっと後輩ではありますが)本当に良い歌集が出来たことをこころからお祝いしたい。そしてますますのご活躍をなさいますよう、春畑短歌のファンとしてもっともっと読みたい気持ちがまた高まった一日であった。


牛乳

2007-01-28 00:25:34 | おいしい歌
牛乳を四合も飲みて青年のごとくになりぬ山の牧場に
(小池光 短歌現代12月号 鳥取秋天)

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きのうは朝日カルチャー小池教室の日だった。今回は、自作について作歌の秘密を聞かせていただいた。本人の口から聞く解説はまた格別の真実味がある。この一連は、去年の十月に腰痛に苦しみながら、鳥取に講演のため招かれたときの歌。
しぼりたての牛乳は、あっさりしていてどんどん飲めるらしい。そして力を得て、青年のようになったとおっしゃる。今年還暦ということだが、ご本人を見ていると、若々しくそんな年齢には見えない。髪も椿油の効果で黒々している。何より、まだまだ短歌を作るぞ!・・・という意気込みが若さの秘訣だと見た。