気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

喜望峰に立ちたし 上田清美 青磁社

2022-03-02 00:11:25 | つれづれ
千本のバラの花よりひなげしの小さな花束下さいあなた

独り言吐きたる夕べ俎板に耳たぶほどの百合根散らばる

足早に交差点渡る人の波春宵一人ああをばさんもゆく

濃みどりの銭苔生ふる湿地ゆけば中年期なる体にほへり

嘘すこし交へて書ける近況の最後の句点ためらひて打つ

ベランダに干せばくるくる揺れてゐる子の婚の日に履きし白足袋

新京極スター食堂のA定食母に連れられ食みし幼日

新ジャガの煮物ほこほこつるりんこ夫とふたりの夕餉の楽し

ああこれがわが後ろ姿 のそのそとビデオ画面に老人が行く

喜望峰にいつか立ちたし嵐吹く岬と知りてなほあこがるる

(上田清美 喜望峰に立ちたし 青磁社)

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お目にかかったことはないが上田清美さんの歌集が送られてきた。白珠で長く歌を作ってきた方らしい。オノマトペの使い方の思いきりのよさに驚く。またご自身の老いを詠うことも多いが、これは自虐なのだろうか。ご夫婦の仲のよい様子など、羨ましく読んだ。