「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

訃報 時実新子さん

2007年03月13日 | 歌びとたち
 現代川柳作家の時実新子さんには、「有夫恋」で、衝撃的な出会をしました。以来、その切り口の鮮やかな句に惹かれ、とりこにされて、墨彩画の賛にお借りしたりしてきました。
 1929年生れの同年です。

 10日、肺がんのため神戸で亡くなられたと新聞報道で知りました。
 いまや、川柳界の寵児として与謝野晶子になぞらえる人もいます。一世を風靡し、多くの新子ファンを持ち、充分に燃焼させた生であった別世界の人で、生きる次元が違っていても、同じ時代、同じ時間の流れを共有した人が、表舞台から去ってゆくのは、格別のものがあります。

 まして、敬愛していた人の訃報です。なす術もなく、遺された句を拾って、心からご冥福をお祈りするのみです。

     れんげ菜の花この世の旅もあとすこし

     箸重ね洗う縁をふと思う

     人の世に許されざるは美しき

     倖を言われ言い訳せずにおき

     男の嘘に敏感なふしあわせ

     明日逢える人のごとくに別れたし