「もののあはれ」の物語

古き世のうたびとたちへ寄せる思いと折に触れての雑感です。

「有夫恋」との出会い

2004年11月23日 | 歌びとたち
 時実新子さんの名は、田辺聖子さんの書かれたものを通して、現代川柳の旗手とは知っていましたが、川柳ということであまり関心を持っていませんでした。

 偶然、店頭で手にしたのは、表題の「有夫恋」の魅惑的な題名に惹きつけられたからです。ぱらぱらめくってみて、目から鱗の「川柳」でした。

 私の頭の中に巣くっていた、どこか斜に構えて、軽く風刺するといった川柳の概念を根底からゆさぶる強烈な個性がそこには息づいていました。
 ともあれ、次に何句かを紹介します。

     人の世に許されざるは美しき

     明日逢える人のごとくに別れたし

     ぞんぶんに人を泣かしめ粥うまし

     子を寝かせやっと私の私なり

     夜明けかな美は乱調にありて乱

     さようなら心をこめて怨こめて

     八重桜まぶた重たき共暮らし

     雷神の女房志願まだ捨てず

     れんげ菜の花この世の旅もあとすこし

 独断と偏見にみちた選択ですが、おおよそは伝わるかと思います。書きたいことはまだありますが、「腹ふくるるわざ」にして、あとはあなたの感性におまかせします。