![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/88/add2ca63ccbe253a89dbdf7bc894a945.jpg)
『アウトレイジ ビヨンド』を渋谷TOEIで見てきました。
(1)ビートたけし監督の作品はこれまでも随分と見ていることもあり、特に前作の『アウトレイジ』が面白かったので、遅まきながら映画館に出かけてみました。
物語は、警察官の死体の入った乗用車を海から引き上げるところから始まります。
どうやら、暴力団「山本会」を内偵中だった刑事が、殺されたようです(注1)。
今や山本会は、かなりの大組織になっていて、初代会長を排除して二代目会長の座に就いた加藤(三浦友和)と、大友組(組長大友:ビートたけし)を裏切ってその右腕となった若頭の石原(加瀬亮)とが会を牛耳っています(注2)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/72/0d6242cfadf980681d21bf6073dce223.jpg)
これを快く思わない古参幹部の富田(中尾彬)は、関西の暴力団「花菱会」のサポートを受けようとしますが、逆にそのことを知った加藤会長(注3)に射殺されてしまいます。
こうした動きの背後でいろいろ画策しているのが、“マル暴”刑事の片岡(小日向文世)(注4)。
前作において刑務所内で殺されたはずの大友ですが、実は生きていて(注5)、片岡は、この大友を使って加藤や石原に揺さぶりをかけようともします(注6)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/4f/aa000ef2e5f19631b938b59319657def.jpg)
“マル暴”刑事の片岡としては、巨大組織になった山王会の力をなんとしてでも削いで手柄を立てたいのでしょうが、果たしてそんなことが上手くいくのでしょうか、大友の運命はどうなるでしょうか、……?
本作も、前作について申し上げたのと同様、「組の名前と組同士の関係、誰がどの組に所属しているのかさえ把握してしまえば、今回の北野作品はとても理解が容易で、映画自体を娯楽作品として楽しむことができる」ように思われます。
そして、前作について『ソナチネ』との違いを申し上げましたが、本作のラストにおいて、ビートたけし扮する大友が、仲間の葬儀の際に、片岡から拳銃を受け取った後(注7)、山王会と花菱会の面々が打ち揃う葬儀場に乗り込みますが、『ソナチネ』において、主人公(ビートたけし)が、自分たちを抹殺しようとする組織の本拠にマシンガンを持って乗り込んでいく姿を彷彿とさせました。
さらに、本作においては、前作同様、これまで北野作品では見かけなかった俳優とか、「ヤクザ映画には向いていなさそうな俳優」が多数見られるのも興味深いことです。
前作との重複を避けると、花菱会の若頭に扮する西田敏行、同会幹部の中田役の塩見三省、片岡の部下の刑事を演じる松重豊、ヒットマンの高橋克典、などなど。
(2)この映画を見て、登場人物たちの怒り方に面白さを覚えました。
なかでも、花菱会若頭の西野に扮した西田敏行とか、同会幹部の中田役の塩見三省の怒りの形相には、年期が入っているとでもいったらいいのか、すさまじいものがあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/bd/84321cd03502a07c30918555c8e3c0fd.jpg)
これに対して、主役の大友役のビートたけしの怒りの面貌は、また違った感じです。
怒りをそのまま派手に表に出さずに、押さえていながらも、心の中は激しく燃え立っているというところでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/34/749ed1be095e99da21a87b4465291edb.jpg)
ありきたりの連想で恐縮ながら、奈良の東大寺戒壇院の四天王とか、新薬師寺の十二神将といった仏像の忿怒の面構えを思い出してしまったところです。
例えば、西田敏行や塩見三省の怒りの様は、十二神将の「伐折羅大将」に似ているように見えます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/5b/fd6adcf56dce5b467bb2c7850c1f3603.jpg)
また、ビートたけしの怒り方は、戒壇院の四天王のうちの「広目天」でしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/16/e008950fd91552c8e9eabd405d23d704.jpg)
こんな変なことを思いながら本作を見るのも、また楽しいかもしれません。
(3)渡まち子氏は、「ヤクザ社会の壮絶な下剋上のその先を描く「アウトレイジ ビヨンド」。ヤクザ社会と政治の世界は実に良く似ている」として60点を付けています。
(注1)山本会の若頭・石原は、国土交通省の大臣や課長にも手を伸ばしていたところ、それを内偵中だった刑事が殺されたわけながら、映画ではこの側面は余り展開しないまま終わります。
ただ、暴力団内の若い者が警官殺しの犯人として差し出されると、片岡は、その若い者を無理矢理犯人に仕立て上げますが、こんなところは、昨今の“でっち上げ”捜査批判というところでしょう。
(注2)加藤会長は、「これからは実力主義でいく」といい、若頭・石原も「これからはデカイ金を動かす」といったりして、まるでどこかの国の金融機関の感じです。
(注3)花菱会の会長(神山繁)から、富田がやってきた旨の連絡が入ります。これは、花菱会と山王会とが盟友関係(仙台会長の時に和平協定を結んでいます)にあることによってなのですが、実は、花菱会も東京進出を狙っているようなのです。
(注4)山王会の古参幹部の富田が、花菱会の幹部と会えるようにお膳立てしたのも片岡なのです。
その前に富田に会い、片岡は、「最近の山王会はやりたい放題で困る。加藤会長が引退し、富田さんに変わってもらいたい」などと焚き付けます。
(注5)大友が殺されたとの情報を流したのは片岡のようなのです。
(注6)若頭の石原は、大友組を裏切って山王会に入ったのですから、大友が仮出所したことを知ると恐怖に駆られます。また、加藤会長も、大友組潰しを指令した張本人なため、大友が恨みを抱いてもおかしくはありません。
ただ、大友自体は、仮出所後は、暴力団に戻ろうとはしなかったのです。
そこで、片岡は、大友を刑務所内で刺したはずの木村(中野英雄)―先に出所しています―を大友に料亭で引き合わせ、木村の力で大友を加藤会長に立ち向かわせようとします。
(注7)大友は、片岡から受け取った拳銃でまず片岡を撃ち殺してしまい、それから葬儀場に向かうわけですが、……。
★★★☆☆
象のロケット:アウトレイジ ビヨンド
(1)ビートたけし監督の作品はこれまでも随分と見ていることもあり、特に前作の『アウトレイジ』が面白かったので、遅まきながら映画館に出かけてみました。
物語は、警察官の死体の入った乗用車を海から引き上げるところから始まります。
どうやら、暴力団「山本会」を内偵中だった刑事が、殺されたようです(注1)。
今や山本会は、かなりの大組織になっていて、初代会長を排除して二代目会長の座に就いた加藤(三浦友和)と、大友組(組長大友:ビートたけし)を裏切ってその右腕となった若頭の石原(加瀬亮)とが会を牛耳っています(注2)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/72/0d6242cfadf980681d21bf6073dce223.jpg)
これを快く思わない古参幹部の富田(中尾彬)は、関西の暴力団「花菱会」のサポートを受けようとしますが、逆にそのことを知った加藤会長(注3)に射殺されてしまいます。
こうした動きの背後でいろいろ画策しているのが、“マル暴”刑事の片岡(小日向文世)(注4)。
前作において刑務所内で殺されたはずの大友ですが、実は生きていて(注5)、片岡は、この大友を使って加藤や石原に揺さぶりをかけようともします(注6)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/4f/aa000ef2e5f19631b938b59319657def.jpg)
“マル暴”刑事の片岡としては、巨大組織になった山王会の力をなんとしてでも削いで手柄を立てたいのでしょうが、果たしてそんなことが上手くいくのでしょうか、大友の運命はどうなるでしょうか、……?
本作も、前作について申し上げたのと同様、「組の名前と組同士の関係、誰がどの組に所属しているのかさえ把握してしまえば、今回の北野作品はとても理解が容易で、映画自体を娯楽作品として楽しむことができる」ように思われます。
そして、前作について『ソナチネ』との違いを申し上げましたが、本作のラストにおいて、ビートたけし扮する大友が、仲間の葬儀の際に、片岡から拳銃を受け取った後(注7)、山王会と花菱会の面々が打ち揃う葬儀場に乗り込みますが、『ソナチネ』において、主人公(ビートたけし)が、自分たちを抹殺しようとする組織の本拠にマシンガンを持って乗り込んでいく姿を彷彿とさせました。
さらに、本作においては、前作同様、これまで北野作品では見かけなかった俳優とか、「ヤクザ映画には向いていなさそうな俳優」が多数見られるのも興味深いことです。
前作との重複を避けると、花菱会の若頭に扮する西田敏行、同会幹部の中田役の塩見三省、片岡の部下の刑事を演じる松重豊、ヒットマンの高橋克典、などなど。
(2)この映画を見て、登場人物たちの怒り方に面白さを覚えました。
なかでも、花菱会若頭の西野に扮した西田敏行とか、同会幹部の中田役の塩見三省の怒りの形相には、年期が入っているとでもいったらいいのか、すさまじいものがあります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/bd/84321cd03502a07c30918555c8e3c0fd.jpg)
これに対して、主役の大友役のビートたけしの怒りの面貌は、また違った感じです。
怒りをそのまま派手に表に出さずに、押さえていながらも、心の中は激しく燃え立っているというところでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/34/749ed1be095e99da21a87b4465291edb.jpg)
ありきたりの連想で恐縮ながら、奈良の東大寺戒壇院の四天王とか、新薬師寺の十二神将といった仏像の忿怒の面構えを思い出してしまったところです。
例えば、西田敏行や塩見三省の怒りの様は、十二神将の「伐折羅大将」に似ているように見えます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/5b/fd6adcf56dce5b467bb2c7850c1f3603.jpg)
また、ビートたけしの怒り方は、戒壇院の四天王のうちの「広目天」でしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/16/e008950fd91552c8e9eabd405d23d704.jpg)
こんな変なことを思いながら本作を見るのも、また楽しいかもしれません。
(3)渡まち子氏は、「ヤクザ社会の壮絶な下剋上のその先を描く「アウトレイジ ビヨンド」。ヤクザ社会と政治の世界は実に良く似ている」として60点を付けています。
(注1)山本会の若頭・石原は、国土交通省の大臣や課長にも手を伸ばしていたところ、それを内偵中だった刑事が殺されたわけながら、映画ではこの側面は余り展開しないまま終わります。
ただ、暴力団内の若い者が警官殺しの犯人として差し出されると、片岡は、その若い者を無理矢理犯人に仕立て上げますが、こんなところは、昨今の“でっち上げ”捜査批判というところでしょう。
(注2)加藤会長は、「これからは実力主義でいく」といい、若頭・石原も「これからはデカイ金を動かす」といったりして、まるでどこかの国の金融機関の感じです。
(注3)花菱会の会長(神山繁)から、富田がやってきた旨の連絡が入ります。これは、花菱会と山王会とが盟友関係(仙台会長の時に和平協定を結んでいます)にあることによってなのですが、実は、花菱会も東京進出を狙っているようなのです。
(注4)山王会の古参幹部の富田が、花菱会の幹部と会えるようにお膳立てしたのも片岡なのです。
その前に富田に会い、片岡は、「最近の山王会はやりたい放題で困る。加藤会長が引退し、富田さんに変わってもらいたい」などと焚き付けます。
(注5)大友が殺されたとの情報を流したのは片岡のようなのです。
(注6)若頭の石原は、大友組を裏切って山王会に入ったのですから、大友が仮出所したことを知ると恐怖に駆られます。また、加藤会長も、大友組潰しを指令した張本人なため、大友が恨みを抱いてもおかしくはありません。
ただ、大友自体は、仮出所後は、暴力団に戻ろうとはしなかったのです。
そこで、片岡は、大友を刑務所内で刺したはずの木村(中野英雄)―先に出所しています―を大友に料亭で引き合わせ、木村の力で大友を加藤会長に立ち向かわせようとします。
(注7)大友は、片岡から受け取った拳銃でまず片岡を撃ち殺してしまい、それから葬儀場に向かうわけですが、……。
★★★☆☆
象のロケット:アウトレイジ ビヨンド
怒り方が違うってなるほどって思いました。
たけしさんって笑ってても目が笑ってないというか、「野球やろうか?」の顔が特に怖かったです。
今回って片岡刑事が終始出ずっぱりで片岡の栄光(?)と没落って感じでしたよねw
あまりにもオモシロい記事だったので、ツイッターで紹介させていただきました。事後承諾ごめんなさい。
https://twitter.com/durhum2
コメントをわざわざありがとうございます。
映画の実際の場面にはもっとものすごい表情が沢山見られるのに、こんな貧弱な画像しか掲載できなくて申し訳ありません。
それから、おっしゃるように今回の映画は片岡の「栄光(?)と没落」と言えるでしょうが、小日向文世にうってつけの役柄ではないかと思いました。
ウルトラマンはアルカイック・スマイルなどとの論評をどこかで読んだ覚えがあるのですが、激怒を背にしたウルトラ兄弟は一人も思い浮かばない。ウルトラマンもああ見えて沸々と怒ってるのかもしれいなあ、など記事を読んで思ったりしました。
怒りは、それを表に目に見える形で出さない人のものが一番激しいとかいいま
すね。それでいくと、お釈迦様の怒りが極北なのかもしれません!
>西田敏行や塩見三省の怒りの様は、十二神将の「伐折羅大将」に似ているように見えます。
そういわれてみれば そうみえますね。 マジでこわいですよ^^
じゃあ、神山繁さんが演じた花菱会の会長が怒るとは 弥勒菩薩が怒った顔になるのでしょうか(笑い)
>大友は、片岡から受け取った拳銃でまず片岡を撃ち殺してしまい、それから葬儀場に向かうわけですが、……。
大友は まず葬儀の場で ドンパチなんて バカなことは やらないでしょうね。それやったら まず逃げ場がなく 殺されてただろうし、その仲間の葬式を
ぶち壊すなんて 筋を通す大友にとって できるわけないだろうし 。 やるなら 街中で やりますね。
片岡については下劣過ぎて 言葉失う・・・
大友が手を下さなくても 山本会からも花菱会からも 影で私利私欲で煽動してることを見抜かれて 殺されてましたよ。 まず片岡は 今回は助からないなって・・・
「弥勒菩薩が怒った顔」とは想像するだけで笑ってしまいますね!
なお、「大友はまず葬儀の場でドンパチなんてバカなことはやらない」
とのことですが、クマネズミは、本文に書きましたように、ラストは、「『ソ
ナチネ』において、主人公(ビートたけし)が、自分たちを抹殺しようと
する組織の本拠にマシンガンを持って乗り込んでいく姿」と二重写し
になっているのではと思い、それも、マシンガンではなく拳銃を手にして
いるだけですから、まさに自らカッコよく死にに行くのだと思いました。