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スパイダーマン ホームカミング

2017年09月04日 | 洋画(17年)
 『スパイダーマン ホームカミング』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。

(1)評判が良さそうなので映画館に行ってきました。

 本作(注1)の舞台はニューヨーク(注2)。
 始めの方では、エイドリアン・トゥームスマイケル・キートン)らが、破壊されたニューヨークの街(注3)で、散らばっている瓦礫の撤去や放置された様々の機械の解体などの作業を行っています。
 トゥーマスは、合間に、自分の娘が描いた絵を部下(マイケル・チェルナス)に見せて、「世界は変わったんだ」「見ろ、宇宙人だ」「昔だったらカウボーイを描くところだが」などと言うと、部下は「悪くない絵だ」「将来が楽しみだ」などと応じます。
 トゥーマスは、「それじゃあ切断できない」などと言いながら、他の部下にカッターの使い方を教えたりしています。
 そこに、ダメージ・コントロール局の職員たちがやってきて、その責任者の女性(タイン・デイリー)が、「我々が残骸処理を引き受ける」「あなたたちはここから出ていって」「集めたものはすべてここに置いていって」と言うので、トゥーマスは「こちらは市と契約を結んでいるんだ」と拒否します。
 ですが、さらに相手は「権限は全て私達の方に移っている」と言い、トゥーマスは「トラックも雇ったんだ。そんなことを言われても困る」と応じますが、「不服なら上司に言って」と取り合ってくれません。

 次いで、「8年後」の字幕。
 トゥーマスの会社。
 流れ作業の模様や、トラックに荷物を積む様子が描かれます。
 トゥーマスは、ウイングスーツを着装して飛んできます。
 どうやら、トゥーマスらは、ダメージ・コントロール局の警告を無視して以前と同じような作業を継続して行っていて、それもかなり儲かっているようです。

 ここで「a Film by Peter Parker」との字幕が現れ、ピーター・パーカートム・ホランド)自身が撮影した映像が流されます(注4)。
 映像は、ピーターが、ハッピー・ホーガン(注5:ジョン・ファブロー)に連れられてヨーロッパに行った時のもの。
 目的は、トニー・スタークロバート・ダウニー・Jr)の会社の研修であり、その際ピーターは、スパイダーマンの新しいスーツをもらいます。
 映像の最後の方では、ハッピーが運転する車の中で、トニーとピーターが後部座席に座っています。ピーターが「次の研修はいつ?」と尋ねると、トニーは「誰かが連絡する」と答えます。

 それから2か月が経って、ピーターが学校へ行くところから本編が始まりますが、さあ、物語はどのように展開するのでしょうか、………?

 これまでスパーダーマンを主人公とする作品はいろいろ作られていますが(注6)、本作はこれだけでも楽しめる作品となっているように思います。何しろ、高校生の主人公が、自分をアイアンマンに認めてもらおうと単独で敵と立ち向かうというのですから。スパイダーマンが決して万能でも最強でもなく、何度も危ない目に遭うというのも面白さを増します。ただ、今回の敵が、それほど大物でもないように描かれているのは、少々残念な気がしましたが。

(2)本作でスパイダーマンが対決するヴィランは、トゥーマスがウイングスーツを着装してなりすますヴァルチャーですが、それをマイケル・キートンが演じていることが面白いなと思いました。



 ヴァルチャーらは、異星人(注7)が地球に残していった様々なメカを回収し、それらから彼らの技術を盗んで新しい兵器を作って売りさばいて儲けをあげているのです。
 また、ヴァルチャーらは、引っ越し作業で兵器を色々積載しているスターク社の飛行機を奪い取ろうとまでします。
 こうしたところは、『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』においてマイケル・キートン扮するレイ・ロックが、マクドナルド兄弟が創出した大層効率的なシステムを乗っ取って、世界的な大企業を作り上げたのと随分と類似しているなと思えました。
 というのも、ヴァルチャーにしても、レイ・ロックにしても、事業の大元となるものは自分で作り出してはおらず、他人が考えたものなのですから(注8)。

 ヴァルチャーは、こうした背景を持ったヴィランですから、実際にはスパイダーマンは大変な目に遭うものの(注9)、その強敵にはなりえないでしょう。
 まだ15歳のピーターがヴィランの相手というわけで、本作のヴァルチャーくらいで仕方がないのかもしれません。でも、スパイダーマンが相手にするヴィランとしてはやや小作りではないかと思いました。

 また、ヴァルチャーらが武器取引をするフェリーでのスパイダーマンの働きぶりについて、アイアンマンのトニーはピーターを叱責し(注10)、さらに「スパイダーマンのスーツは返せ」と命じるのです。
 にもかかわらず、ピーターは、トゥーマスの悪だくみがわかると、取り上げられたはずのスパイダーマンのスーツを着装するために学校に急いで戻り、いつもの隠し場所からそのスーツを取り出してスパイダーマになるのです。
 クマネズミは、“アレッ、いつの間にスーツが戻されていたの?”、“もしかしたら、スーツは何着もあるの?”と思ってしまいました(注11)。

 でも、そんなことはともかく、本作におけるスパイダーマンの戦いぶりは、なかなか目覚ましいものがあり(注12)、特に、トニーが用意した新しいスーツは、面白い機能をいくつも持っています(注13)。

 さらにまた、本作では、15歳のピーターの特色ある学園生活が色々描き出されていて、興味が惹かれます。
 例えば、「全米学力コンテスト」に参加すべく、ピーターたちはワシントンDCに行ったりしますし(注14)、また「ホームカミング」(注15)のパーティーが開かれたり、ピーターが学校で思いを寄せるリズ(注16:ローラ・ハリアー)の家で催されるホームパーティーにピーターが呼ばれたりします(注17)。

 いずれにしても、スパイダーマンは、本作を契機にして今後新しい姿で活躍するものと思われ、次回作ではどんなヴィランとどのように闘うことになるのか興味が持たれるところです。

(3)渡まち子氏は、「スパイダーマンは、やっぱり愛すべき“ご近所のヒーロー”だ。まだ表情に幼さが残る若手俳優トム・ホランドのフレッシュな魅力が、スパイダーマンに新鮮な息吹を吹き込んでくれた。次回作にも大いに期待!である」として80点を付けています。
 渡辺祥子氏は、「普通の人のドラマが見たい観客には複雑な思いが残りそうだが、アメコミ・ヒーローを借りて普通の学園生活を描くアイデアは悪くない」として★4つ(「見逃せない」)を付けています。
 毎日新聞の勝田友巳氏は、「若さゆえのイキのよさと未熟さが持ち味で、片思いしたりヒーローを夢見てムチャしたりと、戦いながら成長する青春映画でもある」と述べています。



(注1)監督はジョン・ワッツ
 脚本はジョン・ワッツら。

 なお、出演者の内、最近では、マイケル・キートンは『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』、ロバート・ダウニー・Jrは『シャーロック・ホームズ』、マリサ・トメイは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』で、それぞれ見ました。

(注2)舞台がニューヨークであることについては、この記事を参照。

(注3)直前にあったアベンジャーズとチタウリの戦い(『アベンジャーズ』で描かれています)によって、破壊されてしまいました。

(注4)その映像は、こちらで見ることが出来ます。

(注5)『アイアンマン』ではトニー・スタークの運転手。本作では、トニー・スタークの秘書で、ピーター・パーカーの監視役。

(注6)それらの作品から本作に至る流れの概要については、こちらの記事が随分とよくまとまっていると思います。

(注7)上記の「注3」で触れたチタウリ。

(注8)さらに言うと、ヴァルチャーになるトゥーマスは、ピーターが学校で思いを寄せるリズの父親であることもわかります。
 ピーターが、「ホームカミングのパーティーに僕と一緒に行かない?」と思い切ってリズに尋ねたところ、リズから「いいわよ」との返事をもらいます。



 有頂天になったピーターは、メイおばさん(マリサ・トメイ)に手伝ってもらって、ネクタイを結ぶとかダンスの練習をしたりします。
 そして、当日、メイおばさんに「本番よ、さりげなく」と言われて、プレゼントを手にしてリズの家に行きます。ですが、ドアを開けて出てきたのが父親のトゥーマスで、彼がヴァルチャーであることがその顔を見てピーターには分かってしまいます。
 その後、リズとピーターは、トゥーマスの運転する車で「ホームカミング」のパーティー会場に連れて行ってもらいます。ただ、その車の中で、リズがピーターについて「彼は、スターク社で研修を受けている」とか「スパイダーマンと知り合い」などと話すものですから、トゥーマスもピーターがスパイダーマンであることに気付きます。

(注9)ピーターはスパイダーマンとなって、トゥーマスラの工場に行くのですが、ヴァルチャーによって崩された天井の石の瓦礫の下に埋まってしまいます。

(注10)トニーは、「馬鹿なことをするなと言ったのに、君はそれを無視した」「君は期待はずれだった」「君を推したのは私だ。誰かが死んだら、私の責任になる」などと言い、ピーターからスパイダーマンのスーツを取り上げます。その際、ピーターが「いつまで?」と尋ねると、トニーは「永遠にだ」と答えます。

(注11)もしかしたら、トニーに取り上げられたのは、スターク社が開発した新テクノロジー満載のスーツの方で、ここでピーターが着装したのは、もっとずっと中身のないスーツ(自作の)の方なのかもしれません。
 確かに、トゥーマスの後を追ってその工場に行ったスパイダーマンのピーターは、スーツに備わっているはずのいろいろな機能を何も使わなかった感じです。
 でも、仮にそうだとしたら、あの重い何重もの石の瓦礫を持ち上げる力は、どうやってピーターに湧いてくるのでしょう?自作のスーツでそんな力を発揮できるのであれば、何も新しいスーツなど必要ないようにも思えるのですが。

(注12)例えば、2つに切断されたフェリーが分離してしまわないように、スパイダーマンはウェブ・シューターからクモ糸を発出してつなぎとめようとします(尤も、クモ糸の強度不足で、フェリーは分離して沈んでしまいそうになり、結局アイアンマンの助けが必要となってしまいますが)。



(注13)例えば、この記事に簡単に記載されています。
 中でも、声の調子が変わる「強化尋問モード」には笑ってしまいます。

(注14)ピーターが通う高校では、リズをリーダーとするチームが参加します。
 なお、本作で言われる「全米学力コンテスト」は、この記事で言う「全米アカデミック・デカスロン大会」に依っているように思われます(より詳しい記事は、こちら)。

(注15)例えば、この記事を参照。

(注16)でも、本作のヒロインはミッシェルゼンデイヤ)なのでしょうか?でも、それほどピーターに絡んで来ない感じです。

(注17)一緒に呼ばれたネッドジェイコブ・バタロン)は、ピーターがスパイダーマンであることを知っているので、ピーターに「早くスパイダーマン化しろ」と急かしますが、ピーターは「コスプレじゃないんだ。素の僕で勝負するんだ」と拒否します。



★★★☆☆☆


象のロケット:スパイダーマン ホームカミング


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2 コメント

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自作のスーツ (KGR)
2017-09-04 23:53:52
あのスーツは自作です。
もしかしたらマスクだけだったかもしれません。
敵(ショッカー)にもダサいと言われてました。

自作にしてはまずまずよくできてますが、トビー・マグガイア版でも最初は自分で作ってました。
自分で作ったらもっとボコボコのはず・・・というのは「スーパー」の主人公とか、「バットマン・リターンズ」のキャットウーマン(ミシェル・ファイファー)がそうだった気がします。
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Unknown (クマネズミ)
2017-09-05 05:59:36
「KGR」さん、TB&コメントを有難うございます。
やっぱり「自作」ですか。
だとしたら、ピーター・パーカーは、あの重そうな天井の残骸を持ち上げてしまうのですから(普通の人間だったら1個も持ち上げられないところ、何個も重なっているのです)、もともと超人的な力の持ち主なのですね!
それで、ネットで調べてみると、下記のサイトの情報によれば、スパイダーマンは「10tの重さにまで耐えることが出来る筋力」を持っているとのこと。いやはや。
https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%B9%E3%83%91%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3#h3_2
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