映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ジャポニスム

2010年02月20日 | 美術(10年)
 2月6日の記事で取り上げたジェームズ・アンソールは、日本にかなり関心があったようです〔その記事の注において触れましたように、2004年に東京都庭園美術館で開催された「ジェームズ・アンソール展」では、葛飾北斎の絵手本『北斎漫画』を模写したデッサンが10点近くも展示されました〕。



 上記の絵も、「シノワズリー」(1907年)とのタイトルながら、明らかに日本の浮世絵や団扇などが的確に描かれています。

 としたところ、丁度現在、」東京駅近くにあるブリジストン美術館で開催されている「美の饗宴―東西の巨匠たち」展(4月11日まで)では、西洋絵画に見られるジャポニスムが紹介されています。



 シャルル=ルイ・ウダールの「蛙」(1894年)



 アンリ・ラシューの「装飾パネル」(1893年)



 オットー・エックマンの「五位鷺」(1896年)

 ただ、上で紹介した絵は、日本画の純然たる模倣ともいえ、西洋絵画自体にどのような影響を及ぼしたのかはこれだけでは分かりません〔とはいえ、19世紀末に、これだけ日本画を模倣した画家がヨーロッパにいたとは驚きですが!〕。

 美術館のHPには、次のような解説が見られます。
「ドガやモネら印象派の画家たちは、浮世絵などから日本的な要素を学んで取り入れました。例えば人物や事物を画面の端で断ち切って、スナップ写真のような瞬間性や偶然性を表したり、左右のどちらかに主要なモティーフが片寄っていたり、一部が極端にクローズアップされたりします。また遠近法が人間の眼の高さの地平線や水平線に一つの消失点を持つのに対して、俯瞰的に上から覗き込むような構図や、「枝垂れモティーフ」のように枝先の部分だけを描いて、画面の外に柳の存在を暗示させるという手法は、きわめて新鮮なものとして受け取られました」。

 とすると、むしろ近代絵画の発展という観点から重要なのは、下記のモネの「睡蓮」(1903年)とかドガの「踊りの稽古場にて」(1895-98年)の方なのでしょう。






 今回の展覧会では、HPに掲載されている案内文をザッと読んだだけですが、ジャポニスムにかかわる様々な絵画が中心的に紹介されているものと思っていました。ですが、こうした絵画が見られるのは、全体で140点ほどの展示の中で、わずかに30点足らずに過ぎません(「第2章日本美術との出会い」の部屋)。
 驚いたのは、「東西の巨匠たち」展の最初の展示室に入ると、すぐに目に付くのはレンブラントの絵画なのです。一体、レンブラントは日本画の影響をどうやって受けたのだろうと思ってしまいました。
 むしろこの展覧会では、ジャポニスムの紹介はほんの一部であって、全体としては西洋絵画と日本絵画(洋画)の移りゆきが展開されしています。美術館のHPの案内文には「西洋と日本の相互の影響関係を軸に」とあるところ、元々日本の洋画は西洋絵画を習得してはじめて出来上がったわけですから、「相互の影響」といっても、「ジャポニスム」を除いたら“一方的”なものでしかないはずです。
 結局のところは、今回の展覧会もこれまでと同様、それぞれの流れに従って順番に絵画を展示するだけのことに終わってしまっているように見受けられました〔つまらない揚げ足取りですが、ウダールは別にしても、ラシューとかエックマンを“巨匠”と呼べるのでしょうか?〕。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿