環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

雑誌「世界」(2009年1月号)の「特集 大不況」に登場する識者の環境意識、ほとんどなし

2008-12-08 18:35:00 | 環境問題総論/経済的手法
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11月29日のブログ「私の環境論 経済危機と環境問題のとりあえずのまとめ」 で、 「21世紀の経済成長」の最大の制約要因であるはずの「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点がインタビューを受けた10人の識者に意識されているかどうかを調べた結果を掲げました。

これまでに登場した10人の識者のうち、21世紀の「世界の経済危機の行方」を論ずる際に、「資源」、「エネルギー」および「環境」という実体経済を直接支えている要因に触れた識者は経済学者のスティグリッツさんと元首相の中曽根康弘さんのお二人しかおりませんでした。

今日発売の岩波書店の雑誌「世界」の2009年1月号が「大不況-いかなる変革が求められているか?」を特集しています。特集のタイトルに魅かれ、購入し、読んでみました。この特集では著名な学者やマスメディアでおなじみのエコノミストが登場しますので、「21世紀の経済成長」の最大の制約要因であるはずの「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点が意識されているかどうかを調べてみました。

この特集は141ページから223ページまでの80ページが割かれています。内容は次のとおりです。

対談 いま、ケインズを読む意味
宇沢弘文(東京大学名誉教授)、間宮陽介(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

改めて問う、小泉-竹中路線とは何だったのか
高杉 良(作家)
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

世界不況vs家計 貯蓄こそ防御の王道
荻原博子(経済ジャーナリスト)
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

シンポジウム:経済危機の深度と震度-いかなる政策が有効か

第Ⅰ部 危機はなぜ起きたのか、その影響は    

    報告 世界金融危機の進展と世界経済へのインパクト 河合正弘(アジア開発研究所所長)
    討議 小野善康(大阪大学社会経済研究所教授)、河合正弘(アジア開発研究所所長)、浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)、
        原田 泰(大和総研常務理事チーフエコノミスト)、水野和夫(三菱UFJ証券チーフエコノミスト)、小峰隆夫(法政大学社会学部教授 司会)「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

第Ⅱ部 政策的対応はどうあるべきか
    報告 長期景気循環と政策の考え方 小野善康(大阪大学社会経済研究所教授)
    討議 
討議の中で、小野善康さんが「だから、私が何年も前から主張しているのは環境です。環境投資は生産性を上げない。けれども雇用を作って、国民の生活は快適になる。しかも、今後、世界は絶対に環境投資が必要ですから、重要な戦略産業となる。いまでこそ、国土交通省はいろいろ批判されていますが、高度成長期の建設省や運輸省は日本の発展の星だった。そこで土木技術にものすごい産業政策をやったわけで、日本は世界一の土木技術を持った。いまでは途上国援助でも土木産業が多い。まさにそれを環境でやれというのが私の主張です。」と述べておられます。 

討議の中でただ一人、小野さんが「環境の視点」を意識されていることを私は大いに評価しますが、小野さんの考えが「将来も今までのような経済成長を維持しつつ、環境への投資を積極的に行う」というのであれば、私の小野さんに対する評価は急落します。環境への視点があるとは言っても、この発想は90年代に十分な議論がないまま日本社会に定着してしまった感がある「エコロジー的近代化論」の発想の域を出ていないと思うからです。 

関連記事
 
エコロジー的近代化論(環境近代化論)(2007-03-14) 

エコロジー的近代化論の問題点(2007-03-15) 

ドイツの環境政策を支える「エコロジー的近代化論」(2007-03-16) 


第Ⅲ部 日本経済はどうなるか
    報告 世界金融危機の日本への影響 アメリカなき世界をどう生きるか 原田 泰(大和総研常務理事チーフエコノミスト)
    討議
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

第Ⅳ部 世界経済のパラダイムが変わるのか 
    報告 金融危機が突きつけるもの 浜矩子(同志社大学大学院ビジネス研究科教授)
    討議
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はなし。

つまり、この80ページにおよぶ特集「大不況 いかなる変革が求められているか?」の中で、わずかにお一人、大阪大学の小野さんだけ「環境投資」の重要性を主張されているにすぎないのです。

この特集の中の高杉良さんの論文「改めて問う、小泉-竹中路線とは何だったのか」の「はじめに」を取り上げます。

この論文では、論文のタイトルから容易に想像できますように、小泉純一郎・元首相、竹中平蔵・元経済財政担当大臣への厳しい批判とニュースキャスターの田原総一朗さん への厳しい目が向けられています。高杉さんは「月刊現代」(2002年12月号)でも「憂国提言 竹中大臣を即刻クビにしろ」という論文を書いておられますので、「世界」(2009年1月号)の批判論文にも迫力があります。

私のブログでも過去に、 「環境問題の視点」からこの3人を取り上げたことがあります。

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2001年5月7日の小泉首相の所信表明演説(米100俵の精神)、9月27日の2回目の所信表明演説(2007-09-13)

2002年2月4日の小泉首相の施政方針演説(2007-09-12)

パラダイムの転換とはいうけれど(2007-02-13)

正月番組「地球温暖化」:サンデープロジェクト他(2008-01-09) 

94年の朝まで生テレビ:評論家 田原総一朗の「環境認識」(2007-01-28)

朝日のシリーズ企画「環境元年」 第6部 文明ウオーズが今日から始まる

2008-12-01 18:04:56 | 環境問題総論/経済的手法
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朝日新聞の今朝の一面トップは「環境元年」 第6部文明ウオーズの1回目です。「石油の次 道二つ」という大見出しが示唆するように、21世紀社会を支えるエネルギーをどのように選択するかで、私たちの将来は運命的に決まってしまうはずです。

関連記事

2021年のスウェーデン 我々はすでに正しい道を選択した(2007-10-26) 
 
「2021年のスウェーデン・プロジェクト」 対 日本の「2050年脱温暖化プロジェクト」(2007-10-25) 

混迷する日本⑥ 福田首相の変心?(2008-01-20) 


 「石油の次 道二つ」という記事をお書きになった編集委員の竹内敬二さんは2面の「21世紀型の文明 生み出す過渡期」と題する記事の結びで、いま必要なのは、例えば「2050年に私たちがつくりたい社会の姿」を描くこと。そこに向かう道を混乱の中に見つけることだ、と書いておられます。


このような考えに立って、12年前から具体的な行動を着々と進めているのがスウェーデンです。1996年に「20世紀の福祉国家」を「21世紀の緑の福祉国家(エコロジカルに持続可能な社会)」へ転換させるというビジョンを掲げ、それを実現するために環境法体系の刷新(環境法典の制定)、環境の質に関する16の政策目標の設定、省庁の再編成など様々な試みを行ってきました。

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市民連続講座:緑の福祉国家③ スウェーデンが考える持続可能な社会(2007-01-13) 



このブログでは、これまでの経過を2007年1月11日から6月23日まで「市民連続講座 緑の福祉国家」と題して63回にわたって紹介してきました。「エコロジカルに持続可能な社会」というビジョンを掲げて11年、現在のスウェーデンは順調に進んできたようです。現在の状況は「希望の船出から11年-経済も、福祉も、環境も・・・・・」と題して、このブログにPDF形式でまとめてあります。



同じく2面で、神田明美記者が書いた記事「石油頼みの日本人 毎日1人6.7リットル エネルギー転換模索」の中には、「脱化石燃料」を掲げるスウェーデンは今年1月、「温室効果ガスの排出を21世紀末にゼロにする」との方針を打ち出したとあります。


スウェーデンのエネルギー体系の転換はすでに、1980年代の後半から始まっています。現在の基本的な考え方は、21世紀のビジョンである「緑の福祉国家」(エコロジカルに持続可能な社会)を支えるエネルギー体系として、「脱原発、脱化石燃料路線」をめざしています。


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原発を考える⑫(最終回) 私の素朴な疑問(2007-04-23)

スウェーデンのエネルギー政策の変遷①化石燃料に恵まれなかった福祉国家(2008-03-22)

スウェーデンのエネルギー政策の変遷⑤温室効果ガスは7%減少、GDPは36%成長(2008-03-26) 



今回の「第6部文明ウオーズ」が世界の最前線の状況を報告してくださることを期待しましょう。

私の環境論 「経済危機と環境問題」⑪ とりあえずのまとめ

2008-11-29 14:48:04 | 環境問題総論/経済的手法
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10月17日のブログで次のように書きました。

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私の環境論が他の多くの日本の専門家の議論と異なるのは、 「環境問題」と「経済(活動)」 を最初から関連づけて考えていること、そして、環境問題の解決のためには 「民主主義の考え方」と「その実践」
が必須なこと、具体的には環境問題の解決は、従来の公害とは違って技術的な対応だけでは不十分で、経済社会の制度の変革をともなうこと、21世紀に主な環境問題を解決した「エコロジカルに持続可能な社会」の創造のためには、さまざまな「政策」とそれらの政策を実現するための「予算措置」が必要なこと、つまり、環境問題の解決に当たって「技術の変革」「政治と行政のかかわり」を強く意識していることです。

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スウェーデンの国会議員の投票率の推移(2007-01-09)

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑧ 国の方向を決めた政治的選択(2007-08-25)  

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑨ 省益に左右されない意思決定システム(2007-08-26) 

なぜ、先駆的な試みを実践し、世界に発信できるのだろう⑩ 地方分権:国と地方の役割分担(2007-08-27) 

今度は、過去最低を更新!(2007-08-27)



20世紀の安全保障の議論は「軍事的側面」に特化されていましたが、21世紀の安全保障の概念は軍事的側面だけでなく、さらに広く「経済活動から必然的に生じる環境的側面」へと展開していかなければなりません。戦争やテロ活動がなくなり、世界に真の平和が訪れたとしても私たちがいま直面している環境問題に終わりはないからです。その象徴的存在が「気候変動問題」といえるでしょう。
 


そして、10月17日から11月8日までに朝日新聞に「経済危機の行方 世界は」のタイトルのもとに10人の識者へのインタビュー記事が掲載されました。11月8日以降は、記事掲載がありません。このまま終わってしまうのかどうか不明ですが、とりあえず、これまでに掲載された記事を、ここで後日必要な時に参照しやすいようにまとめておきましょう

私の判断基準は「世界の経済危機の行方」を考えるときに、 「21世紀の経済成長」の最大の制約要因であるはずの「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点がインタビューを受けた10人の識者に意識されているかどうかです

①岩井克人・東京大学経済学部教授
資本主義は本質的には不安定●貨幣それ自体が実は純粋な投機●セカンドベストを目指すしかない
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

②行天豊雄・元大蔵省財務官
欲望と倫理 バランス不可欠●責任持つものいない市場万能主義●過剰消費変わるか 米の選択が鍵
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

③入江 昭・ハーバード大名誉教授
大恐慌と同じ道辿らない●国際協調が不可欠と米も悟った●「金融版WHO」構築し英知を絞れ
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

④ポール・サミュエルソン・マサチューセッツ工科大学名誉教授
規制緩和と金融工学が元凶●赤字いとわぬ財政支出不可欠●米政治、民主党主導へ転換必至
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

⑤本田由紀・東京大学大学院教育学研究科準教授
市場主義の波 家庭・教育にも●崩れた「戦後日本型循環モデル」●個人を守る社会モデル構築を
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

⑥エマニュエル・トッド 人口統計学・歴史学者
今や米国は問題もたらす存在●中国、輸出頼みを続ければ崩壊する●欧州・北米・極東に保護主義圏を
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

⑦ジョセフ・スティグリッツ・米コロンビア大学教授
恐慌防ぐ手を正しく打て●企業だけでなく働く人を助けよ●特定通貨に依存しない仕組みを
長期的視野に立って地球温暖化対策に力を入れ、「グリーンなアメリカ」をつくるべきだ

⑧黒田東彦・アジア開発銀行総裁
背景に経済収支の不均衡●米バブル あくまで国内に原因●アジアに消費・投資増やす役割
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

⑨武藤敏郎・大和総研理事長・前日本銀行副総裁
繁栄続き、楽観しすぎた米国●世界金融の枠組み、再構築必要●各国の政策、同質化進むだろう
「資源」、「エネルギー」および「環境」の視点はまったくない。

⑩中曽根康弘・元首相
モラルなき拝金主義 背景に
●米国に代わりG20を司令部に●日本主導でアジアの声上げよ
現代においては、環境や資源など地球的規模の課題が、かつてのソ連の脅威に匹敵する切迫さをもって迫ってきている。地球規模の環境や資源などの人類的課題について、もっと具体的に、真剣に、対策を講じていかなければならない。



これまでに登場した10人の識者のうち、21世紀の「世界の経済危機の行方」を論ずる際に、「資源」、「エネルギー」および「環境」という実体経済を直接支えている要因に触れた識者は経済学者のステグリッツさん元首相の中曽根康弘さんのお二人しかおりませんでした。これが現実のようです。

世界不況に対する、クルーグマン教授の大胆な主張

2008-11-17 12:08:35 | 環境問題総論/経済的手法
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今年のノーベル経済学賞受賞が決まった米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授が、ニューヨークで記者会見した内容を今朝の朝日新聞が報じています。この記事の見出しが「大不況克服へ巨額財政出動せよ」「債務増を心配する時ではない」と、大胆な政策を訴えています。

この主張の妥当性を後日検証するために、私のメモとしてこの記事を掲載し、合わせて、教授の主張に「資源・エネルギー、環境」の視点が入っているかどうか確認しておきましょう。


もうひとつの記事も掲げておきましょう。こちらは、今年のノーベル経済学賞がクルーグマン教授に決定したことを報ずる記事です。


この記事には、「あまりにも市場に信任を置きすぎているが、これが間違いだったことがわかってきた。今、世界で起きていることは(29年に始まった)世界恐慌前夜に似ている」と警告していた、とあります。現象面の解説としてはそうかもしれませんが、当時と経済では時代背景がまったく違います。私の環境論からすれば、経済規模が圧倒的に当時と異なるという「質的な相違」があります。

当時は「資源・エネルギー・環境問題」という視点は全く必要ありませんでした、しかし、自然科学が様々な限界を示している現在、この「資源・エネルギー、環境」の視点こそ、最優先されるべきだと思います。「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則はここでも有効だと思います。  

関連記事

再び、「今日の決断が将来を原則的に決める」という経験則の有効性

私の環境論 「経済危機と環境問題」⑩ 中曽根康弘・元首相

2008-11-08 17:21:27 | 環境問題総論/経済的手法
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「少子・高齢化問題」と「経済規模の拡大から適正化への大転換」という二つの大問題への対応策を考えるとき、参考になるフロンティア国家が2つあります。一つはスウェーデンで、もう一つは米国です。ただし、米国は先進工業国の中で唯一人口が増加しているです。2008年の人口は3億人を超え、2050年には4億3800万人と推定されています。  

日本が手本とするところの多い米国は世界の基軸国(言語、通貨、政治、経済、軍事、文化など)で、新しい発想を生み出し、新しい試みを実行するのが得意な国ですが、自分の都合だけを考えて行動するユニラテラリズム(単独行動主義)の国でもあります。

22年間の大使館での勤務の体験を通じて私が理解したスウェーデンは、伝統的に新しい発想から新しい概念を生み出し、世界に先駆けて新しいシステムを創造し、導入し、社会を変革するのが得意なシステム思考の強い国です。

これら二つのフロンティア国と違って日本は、与えられた枠組みのなかで工夫し、すぐれた要素技術の開発をするのが得意な国ですが、システム思考があまりありません。 


朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が9回目となりました。今回登場するのは元首相の中曽根康弘さんです。経済危機の行方を考えるときに、「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。



私の環境論 「経済危機と環境問題」⑨ 武藤敏郎・大和総研理事長・前日本銀行副総裁

2008-11-07 17:53:29 | 環境問題総論/経済的手法
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開かれた民主主義のもとで先進的な社会保障制度を編み出し、福祉や環境、原発やIT、バイオなどの技術で世界の最先端をいくスウェーデンは、他国から学べないので、つねに自国で考え行動している、米国とは一味違うフロンティア国家です。

スウェーデンは、国際社会に高度な情報収集のためのネットワークを張り、たえず自国の考え方と行動が正しいかどうかをチェックするため、ほかの先進工業国(米国、日本、ドイツ、英国、フランス、イタリア、ロシア、北欧の近隣諸国など)に同時に同じ質問を投げかけ、それぞれの国から返ってきた答えを参考にしながら、自国の向かうべき方向の修正と決定を行なっています。

このようにして針路を模索するスウェーデンの様子は、まるで真っ暗な洞窟のなかを、超音波を利用して自在に飛び回るコウモリのように思えます。

朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が9回目となりました。今回登場するのは大和総研理事長の武藤敏郎さんです。経済危機の行方を考えるときに、「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。

私の環境論 「経済危機と環境問題」⑧ 黒田東彦・アジア開発銀行総裁

2008-11-04 12:21:44 | 環境問題総論/経済的手法
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経済活動の本質は「資源とエネルギーの利用の拡大であり、経済活動の拡大の結果必然的に生ずるのが環境問題である」と理解する私の環境論では、「環境問題は21世紀の市場システム経済(資本主義経済)を揺るがす人類共通の最大の問題」と位置づけられるのですが、日本の経済学者やエコノミストの多くには、そのような認識はほとんどありません。

彼らの環境問題に対する現状認識は、きわめて乏しく、彼らの21世紀前半を意識した経済論議は、いつもGDPに示された数値の拡大議論に終始している感があります。評論家や銀行系研究所のエコノミストの多くは、 「金の流れ」だけで社会の動きを一面的に見ているので、20世紀型経済の議論の枠組みから抜け出ていないのです。

朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が、8回目となりました。今回登場するのはアジア開発銀行総裁であられる黒田東彦さんです。いつものように、「経済危機の行方」を議論するときに、 「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。

私の環境論 「経済危機と環境問題」⑦ ジョセフ・スティグリッツ・米コロンビア大学教授

2008-11-03 21:03:25 | 環境問題総論/経済的手法
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20世紀から21世紀への移行期にあたって、社会科学系の学者や研究者は「パラダイム(思考の枠組み)の転換」という言葉を好んで用います。 

しかし、日本の政治や社会に大きな影響力を持つ社会科学系の学者の考え方の枠組みには、「資源・エネルギー・環境問題に関する十分な概念が埋め込まれていない」ため、パラダイムの転換については、「20世紀型経済成長」の延長線上の議論に終始しています。このことは、小渕恵三内閣のときに組織された経済戦略会議の提言の背景にある歴史的認識にもあらわれています。 

この会議のメンバーであった慶應義塾大学総合政策学部教授(当時)の竹中平蔵さんは、1999年の著書「経世済民 経済戦略会議の180日」の第4章 構造改革への道で、「なぜ、いま構造改革なのか」というタイトルのもとで、経済戦略会議の歴史的認識を次のように書いています。この部分は、日本の21世紀社会がめざすべき方向を、経済戦略会議が示唆していると考えられる重要なメッセージです

ここでとりあげた「経済戦略会議の歴史的認識」は、社会科学系の学者や研究者には説得力のある意見と映るかもしれません。しかし、「経済の持続的拡大」の延長上にある、古い考えではないでしょうか。ここに示された歴史的認識は大問題です10年経った今、 この歴史的認識がやはり古い考えであったことが証明されたのではないでしょうか 



朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が7回目となりました。今回登場するのは2001年のノーベル経済学賞を授与された米コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツさんです。「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。

スティグリッツさんは上の記事の中で「この危機をきっかけに、新自由主義は終わりを迎えなければならないと思う。規制緩和と自由化が経済的効率をもたらすという見解は行き詰った。」と述べておられます。

それでは、「資源・エネルギー、環境問題」の視点はどうでしょうか。長期的視野に立って地球温暖化対策に力を入れ、 「グリーンなアメリカ」を作るべきだ、とおっしゃっています。

私が15年ほど前から言い続けてきた「経済学に対する基本的な主張」をやっとノーベル経済学賞受賞の経済学者がアメリカ発のサブプライムローンに起因する経済危機におよんで、 「新自由主義の終わり」「グリーンなアメリカ」 (資源・エネルギー、環境問題をきちんと考慮に入れたアメリカ)を主張し始めたのです。

米国がこの機に「グリーンなアメリカ」を模索することになれば、「グリーンな福祉国家」スウェーデンに遅れること12年、日本はさらに何年か遅れることになるでしょう。

私の環境論 「経済危機と環境問題」⑥ エマニュエル・トッド・人口統計学・歴史学者

2008-10-30 20:08:22 | 環境問題総論/経済的手法
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20世紀の政治・経済分野の基本テーマは「市場経済主義(資本主義)」か「社会主義」かでした。21世紀前半社会の基本テーマが、グローバル化に基づく「市場経済主義のあり方」であることに異論をはさむ社会科学者はほとんどいないでしょう。21世紀の社会は、過去・現在の延長線上にありますが、現在をそのまま延長・拡大した(フォアキャストした)方向にはあり得ないことは、これまで議論してきたように、「資源・エネルギー・環境問題」から明らかです。  

国連をはじめとするさまざまな国際機関も20世紀の価値観で維持されているものが多く、21世紀の社会を展望するには至っておりません。このことは、20世紀の政治・経済をリードしてきたG8の国々がいまだ20世紀の発想から抜けきれないでいるのですから、むしろ当然のことです。 

ヨーロッパには、ドイツ、フランス、英国、北欧諸国という、所得水準が高く、資本主義のあり方がまったく異なる国々が共存しています。これらの国々は福祉への取り組みも異なりますが、EUを構成する主要国として米国とは異なる道を模索しています。この現象は「米国型の市場原理主義」と「ヨーロッパ型の福祉国家路線」の対立のようにも見えます。スウェーデンはEUをリードし、日本は米国に追従しているように見えます


朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が、6回目となりました。今回登場するのは人口統計学・歴史学者のエマニュエル・トッドさんです。「経済危機の行方」を議論するときに、「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。



私の環境論 「経済危機と環境問題」⑤ 本田由紀・東大大学院教育学研究科準教授

2008-10-27 15:35:17 | 環境問題総論/経済的手法
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自然に働きかけて人間生活に有用な財やサービスをつくりだす経済活動、つまり、生産活動や消費活動、余暇活動は、もともと人間にとって「手段」であって、「目的」ではありません。経済活動の目的は、本来、人間生活を豊かにするために「生活の質」を向上させることであり、経済成長率を高めることではないはずです。 

経済活動の規模や成果をあらわす経済成長率の基礎データは、すべて「金額」で表示されています。従来の経済学はこのように、貨幣に換算できない関係は無視し、貨幣による関係だけで人間社会の活動を評価してきました。経済学には、「資源・エネルギーの流れ」が十分にインプットされていないのです。こうした枠組みにとらわれた経済学者やエコノミストには、環境問題の本質は見えてこないでしょう。  

これからの経済学は、「モノやサービスの流れ」を「金の流れ」で見るのではなく、「資源・エネルギーの流れ」で見なければなりません。環境問題は、「経済学の枠組みを現実に合わせるために早急に変えなければならないこと」を示唆しています。環境負荷を最小限に抑えながら製品やサービスを供給し、消費するためには、どのような経済のあり方が必要なのか、これこそが、21世紀の経済学の主要なテーマであるはずです。

したがって、「資源・エネルギー・環境問題(あるいは政策)」の議論は、いまの経済学が対象としている「経済問題(政策)」「雇用問題(政策)」「福祉問題(政策)」などと緊密な関連のもとに議論されなければならないはずです。 

朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が、5回目となりました。今回登場するのは東京大学大学院教育学研究科準教授の本田由紀さんです。教育学者が「経済危機の行方」を議論するときに、「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。


本田さんのお考えの趣旨は明快な見出しが示唆するように、「市場主義の波」が「戦後日本型循環モデル」を崩したので、新たに「個人を守る社会モデル」の構築が求められているというものです。上の記事の中に、「資源・エネルギー・環境問題」の視点がはいっているかどうか、ご確認ください。「劣悪な環境」という言葉が1か所(青の網を変えた部分)出てくるだけで、そのような視点はまったく見受けられません。   

 「個人を守る社会モデル構築を」という見出しのもとに書かれているお考えを、すでに20世紀の後半に築き上げた具体例の一つがスウェーデンの福祉国家だと思います。スウェーデンは今、20世紀から21世紀の変わり目に、「福祉国家」から環境に十分配慮した「緑の福祉国家」への転換を急いでいます。道半ばの今、経済も、福祉も、環境もバランスよく進展しているように見えます。

私の環境論 「経済危機と環境問題」④ ポール・サミュエルソン・マサチューセッツ工科大学名誉教授

2008-10-25 18:55:08 | 環境問題総論/経済的手法
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私たちはこれまで、去年よりも今年、今年よりも来年というように、経済が右肩上がりに拡大していくことを「豊かになった、生活水準が向上した」と考え、 “よし”としてきました。しかし、これが環境問題の主な原因だったのです。

「不況になると、困ったこと」と考え、景気回復を考えます。確かに、目の前だけを考えれば、不況は困ったことですが、「景気回復」とは、その判断基準を変えない限り、一般社会の議論では「経済成長の拡大」と同義語と言ってよいでしょう。だとすれば、環境問題の主な原因と考えてよいでしょう。

環境問題の主な原因が「経済成長の拡大」であることが明らかとなった現在、社会の変化と知識の拡大に対応して、「判断基準」を変えていかなければ、本来、見える筈のものも見えず、わかる筈のものもわからなくなってしまいます。

次の最新の記事は、経済活動と環境問題が直接結び付いていることを示めすよい事例です。


今、米国を震源とする金融危機で世界経済は大きく揺らいでいます。朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が、今日で4回目となりました。今回登場するのは経済学者ポール・サミュエルソンさんです。この著名な経済学者が「経済危機の行方」を議論するときに、もうひとつ同時進行で起きている「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。

私の環境論 「経済危機と環境問題」③ 入江 昭・ハーバード大名誉教授

2008-10-19 09:45:10 | 環境問題総論/経済的手法
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このブログの読者の方々にはお馴染みになったと思いますが、「私の環境論」の根底にある認識のうち、「経済」と「環境問題」のかかわりを示す図を改めて掲げておきます。


日本のあちこちで地震、台風、火山の噴火など自然災害が相次いで発生しています。国際社会に目を転ずると、2004年12月26日のスマトラ沖地震によるインド洋大津波や2005年8月29日に米国南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」など、自然災害の報道が多くなっています。戦争やテロ活動はやむきざしがなく、貧困の原因の一つとも指摘されている経済のグローバル化は、さらに急速に進展しています。
 
今年5月2日から3日にかけてミャンマーをサイクロンが襲いました。死者・行方不明者が計32万人、このうち死者は最大約10万2000人、行方不明者は22万人と言われています。5月10日には、米国オクラホマ州で竜巻が発生し、死者22人を含め多数の被害者、家の崩壊などの被害が報じられました。そして、5月12日には、中国中西部の四川省でマグニチュード7.8の大規模地震が発生し、中国政府は17日、四川大地震で地震の死者が2万8881人、負傷者19万8347人に達したと発表したそうです。その後日本でも大きな地震が相次いでが起きています。

これらは災害としての人的、物的被害に加えて、環境にも大きな負荷をかけますが、これらの環境負荷を人間の力で抑えることはほとんど不可能です。ですから、私たちにできることは、私たちが生きていくために行う「経済活動の環境への負荷(環境への人為的負荷)」をできるだけ少なくするということになります。



「私の環境論 経済危機と環境問題」は3回目となりました。初回が経済学者(岩井克人さん)、2回目がエコノミスト(行天豊雄さん)、そして、今日は歴史学者(入江昭さん)です。この企画にこれから何人の識者が登場するのか不明ですが、今日までのところは「経済のこれから」を考えるときに、「私の環境論」の最も重要な視点である「経済」と「環境問題や資源・エネルギー問題」がまったくインプットされていないことは明らかです。


私の環境論 「経済危機と環境問題」② 行天豊雄・元大蔵省財務官

2008-10-18 18:55:03 | 環境問題総論/経済的手法
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21世紀の日本経済や科学技術を論ずる雑誌や書物が溢れています。これらの著者の多くは評論家あり、自然科学系あるいは社会科学系の大学教授あり、エコノミストあり、ジャーナリストありと多彩ではありますが、これらの著者に共通していることは21世紀の経済や科学技術の行く末を論ずる際に、工業化社会の経済の将来を左右する最も重要な要因である「資源・エネルギー問題」や「環境問題」の視点がまったくといってよいほど、欠落していることです。

このことは、今なお経済学の基本的な枠組みが、生産の基本的要素として 「資本」、「労働」および「土地」、あるいは「技術」を掲げていることからも明らかです。

21世紀の経済や技術を論ずる経済学者やエコノミストの議論もこの枠組みを超えるものではありません。大学で講じられている経営学は企業や組織を学問の対象とし、「戦略論」「組織風土論」、「知識創造論」、「リーダーシップ論」、「ゲーム論」などを展開してきましたが、いまなお、企業活動に必然的に伴う「資源・エネルギー・環境問題」に十分踏み込んでいません。

試しに、近くの書店に立ち寄って平積みになっている新刊書の目次を眺めてみたらよいでしょう。経済、ビジネス関係の書物や科学技術の書物で、ここで指摘したような視点を持った書物を容易に捜し出すことができるでしょうか。ぜひ、お試しになって下さい。   

経済関係の書物でも、特に、将来の経済の方向性を議論しているもの、具体的には「21世紀」を冠した書物で、 「資源・エネルギー問題や環境問題」に基礎を置いてない経済議論は絵に書いた餅のようなもので、バーチャル・リアリティ(仮想現実)の世界です。書物だけではありません。テレビの討論番組も、著名なエコノミストや一流経営コンサルタントによる経済に関する高価な有料セミナーも・・・・・・

さて、今朝の朝日新聞に、有識者に聞く「経済危機の行方」の第2弾が掲載されました。私の問題意識に触れておられるでしょうか。



私の環境論 「経済危機と環境問題」① 岩井克人・東大経済学部教授

2008-10-17 21:12:03 | 環境問題総論/経済的手法
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私の環境論が他の多くの日本の専門家の議論と異なるのは、 「環境問題」と「経済(活動)」 を最初から関連づけて考えていること、そして、環境問題の解決のためには 「民主主義の考え方」と「その実践」
が必須なこと、具体的には環境問題の解決は、従来の公害とは違って技術的な対応だけでは不十分で、経済社会の制度の変革をともなうこと、21世紀に主な環境問題を解決した「エコロジカルに持続可能な社会」の創造のためには、さまざまな「政策」とそれらの政策を実現するための「予算措置」が必要なこと、つまり、環境問題の解決に当たって、「技術の変革」「政治と行政のかかわり」を強く意識していることです。


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20世紀の安全保障の議論は「軍事的側面」に特化されていましたが、21世紀の安全保障の概念は軍事的側面だけでなく、さらに広く「経済活動から必然的に生じる環境的側面」へと展開していかなければなりません。戦争やテロ活動がなくなり、世界に真の平和が訪れたとしても私たちがいま直面している環境問題に終わりはないからです。その象徴的存在が「気候変動問題」といえるでしょう。

上記のような認識で、次の記事をご覧ください。この記事は米国のサブプライムローンに端を発した「経済危機の行方」を有識者へのインタビューを通じて明らかにしていこうという今日から始まった企画の第一弾のようですが、この記事の中にはまったく「環境問題や資源・エネルギー問題」が出てきません。これから登場する識者の意識の中に実体経済を支える「環境問題や資源・エネルギー問題」がしっかり組み込まれているかどうか注目していきましょう

私たちが行動すると、その目的が達成されようとされまいと、必ず「目的外の結果」が生ずることになります。20世紀後半に顕在化した「環境問題」の大半は、私たちが豊かになるという目的を達成するために行った「企業の生産活動」「企業と市民の消費活動」があいまってつくりだした経済活動の「目的外の結果」が蓄積したものです。ですから、経済活動が大きくなれば「目的外の結果」も比例的に、あるいはそれ以上に大きくなります。つまり、「経済」と「環境問題」は切っても切れない関係にある、分かり易くいえば「コインの裏表」と表現してもよいでしょう。

「経済学者やエコノミストの多くはコインの表である“金の流れ”で社会の動きを評価し、判断している。環境論者はややもすると環境問題の現象面ばかり見ている。21世紀の経済はコインの裏である“資源・エネルギー・環境問題”で考えるべきだ」という私の主張は、案外、新しい視点なのかもしれません。 


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年度末にあたって、改めて「環境問題」とは

2008-03-29 10:08:54 | 環境問題総論/経済的手法
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環境問題は経済活動の「目的外の結果」の蓄積である
これが「私の環境論」の基本的な認識の一つで、多くの日本の環境問題の学者や専門家、政策担当者、環境NPO、そして、企業人との認識と表現方法を異にする点である。


私たちが行動すると、その目的が達成されようとされまいと、必ず「目的外の結果」が生ずることになります。20世紀後半に顕在化した「環境問題」の大半は、私たちが豊かになるという目的を達成するために行った「企業の生産活動」「企業と市民の消費活動」があいまってつくりだした経済活動の「目的外の結果」が蓄積したものです。ですから、経済活動が大きくなれば「目的外の結果」も比例的に、あるいはそれ以上に大きくなります。つまり、「経済」と「環境問題」は切っても切れない関係にある、分かり易くいえば「コインの裏表」と表現してもよいでしょう。

「経済学者やエコノミストの多くはコインの表である“金の流れ”で社会の動きを評価し、判断している。環境論者はややもすると環境問題の現象面ばかり見ている。21世紀の経済はコインの裏である“資源・エネルギー・環境問題”で考えるべきだ」という私の主張は、案外、新しい視点なのかもしれません。 


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環境問題は世界のほぼ全域に広がった、市場経済社会(資本主義経済社会)を揺るがす「21世紀最大の問題」と位置づけられますが、主流の経済学者やエコノミストの多くには、そのような認識はほとんどありません。コインの表側ばかり見ており、裏側を見ていないからです。
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21世紀に私たちが、20世紀のような「経済規模の拡大」ではなく、「経済の適正規模」を模索しなければならないのは、「資源やエネルギーの量的な不足や枯渇によって経済活動が制約される」という20世紀の懸念からだけではなく、21世紀の新たな懸念があるからです。

それは、「20世紀の経済活動の結果、大気や水や土壌にすでに蓄積されている様々な環境負荷(温室効果ガスやオゾン層破壊物質、有害物質、廃棄物、放射線など)」に、「21世紀の経済活動にともなって新たに加わる環境負荷」が加わることによって、その総和がいよいよ環境の許容限度や人間の許容限度に近づくこと、あるいは、一部ではすでにそれらを超えてしまったために、経済活動が制約されざるを得ないという20世紀には想定されなかった新たな懸念です。

ですから、私たちがいま直面している「環境問題に対する最も重要な判断基準」は、「社会全体のエネルギー消費量を削減できるかどうかにかかっている」ということになります

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