環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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私の環境論 「経済危機と環境問題」⑤ 本田由紀・東大大学院教育学研究科準教授

2008-10-27 15:35:17 | 環境問題総論/経済的手法
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自然に働きかけて人間生活に有用な財やサービスをつくりだす経済活動、つまり、生産活動や消費活動、余暇活動は、もともと人間にとって「手段」であって、「目的」ではありません。経済活動の目的は、本来、人間生活を豊かにするために「生活の質」を向上させることであり、経済成長率を高めることではないはずです。 

経済活動の規模や成果をあらわす経済成長率の基礎データは、すべて「金額」で表示されています。従来の経済学はこのように、貨幣に換算できない関係は無視し、貨幣による関係だけで人間社会の活動を評価してきました。経済学には、「資源・エネルギーの流れ」が十分にインプットされていないのです。こうした枠組みにとらわれた経済学者やエコノミストには、環境問題の本質は見えてこないでしょう。  

これからの経済学は、「モノやサービスの流れ」を「金の流れ」で見るのではなく、「資源・エネルギーの流れ」で見なければなりません。環境問題は、「経済学の枠組みを現実に合わせるために早急に変えなければならないこと」を示唆しています。環境負荷を最小限に抑えながら製品やサービスを供給し、消費するためには、どのような経済のあり方が必要なのか、これこそが、21世紀の経済学の主要なテーマであるはずです。

したがって、「資源・エネルギー・環境問題(あるいは政策)」の議論は、いまの経済学が対象としている「経済問題(政策)」「雇用問題(政策)」「福祉問題(政策)」などと緊密な関連のもとに議論されなければならないはずです。 

朝日新聞の企画「経済危機の行方 世界は」が、5回目となりました。今回登場するのは東京大学大学院教育学研究科準教授の本田由紀さんです。教育学者が「経済危機の行方」を議論するときに、「資源・エネルギー、環境問題」の視点が入っているかどうか、ご確認ください。


本田さんのお考えの趣旨は明快な見出しが示唆するように、「市場主義の波」が「戦後日本型循環モデル」を崩したので、新たに「個人を守る社会モデル」の構築が求められているというものです。上の記事の中に、「資源・エネルギー・環境問題」の視点がはいっているかどうか、ご確認ください。「劣悪な環境」という言葉が1か所(青の網を変えた部分)出てくるだけで、そのような視点はまったく見受けられません。   

 「個人を守る社会モデル構築を」という見出しのもとに書かれているお考えを、すでに20世紀の後半に築き上げた具体例の一つがスウェーデンの福祉国家だと思います。スウェーデンは今、20世紀から21世紀の変わり目に、「福祉国家」から環境に十分配慮した「緑の福祉国家」への転換を急いでいます。道半ばの今、経済も、福祉も、環境もバランスよく進展しているように見えます。

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