孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

懸念される原油・食料価格の高騰  アルジェリア・チュニジアでは暴動も

2011-01-13 20:39:01 | 国際情勢

(チュニジアでの抗議行動の様子 騒乱を起こしている勢力はともかく、デモ参加者は写真で見ると若者だけではないようです。 “flickr”より By Pan-African News Wire File Photos
http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/5341557515/ )

【「原油価格は世界経済にとって危険な領域に入りつつある」】
原油先物市場で、指標となる米国産標準油種(WTI)先物価格は07年から08年前半に急上昇し、08年7月には1バレル=146ドル近くまで上昇して、食料価格上昇と相まって世界各国、特に貧困層を抱える国々で暴動や政情不安を招く危機的な事態となりました。原油・食料価格高騰の原因として大量の投機マネーの流入があることも問題とされました。

その後、原油価格は急落、08年12月には7月水準の4分の1以下の33ドル台にまで落ち込みました。
09年に入ってからは上昇基調に転じており、最近では90ドル前後の水準にまで上昇しています。
12日の米原油先物(2月限)は1バレル=91.86ドルと、2年3カ月ぶり高値で取引を終えています。
市場には、景気回復に伴いエネルギー需要が拡大するとの期待が広がっているようです。

こうした相場の動きには全くの素人でよくわからないながらも、最近の100ドルも視野に入れた推移には、「なんだか随分高くなってきたな・・・・。また08年みたいになるのだろうか?」といった漠然とした不安も感じていましたが、あながち素人の杞憂でもないようです。

****原油価格は世界経済にとって「危険ゾーン」=IEAエコノミスト****
英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙によると、国際エネルギー機関(IEA)の主任エコノミスト、Fatih Birol氏は、原油価格は世界の景気回復を脅かす「危険ゾーン」まで上昇していると警告した。
同氏は「原油価格は世界経済にとって危険な領域に入りつつある。原油の輸入価格は景気回復に対する脅威となっている。これは、原油消費国と産油国への警鐘だ」と述べた。
FT紙はIEAの分析を引用し、経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の原油輸入コストが過去1年間に2億─7億9000万ドル増加したと伝えた。
IEAによると、これはOECD域内総生産(GDP)の約0.5%に相当する金額となる。【1月5日 ロイター】
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食料価格、最高を更新
一方の食料価格については、昨年7月猛暑が続くロシアで干ばつが広がり、小麦の輸出禁止措置をとったことで市場が高騰し注目を集めました。
****世銀、食糧危機につながる恐れのある政策を控えるよう各国に要請****
世界銀行は9日、干ばつに見舞われているロシアが穀物の輸出禁止期間を来年まで延長する可能性があると明らかにしたことを受け、国際的な食品価格危機につながる恐れのある政策を取らないよう各国に要請した。
世銀のオコンジョ・イウェアラ専務理事はロイターに対し、前週以降の穀物価格の高騰はまだ危機には達していないものの、食品価格のボラティリティの高まりは貧困国に打撃を与えると強調。
状況が悪化した場合に備え、現在休会中の世界銀行理事会が9月初めに招集された際に食糧基金を発動する方針を示した。

穀物価格は、ロシアが穀物輸出を禁止する方針を明らかにしたことを受け、前週以降大幅上昇している。
世界第6位の小麦輸出国ウクライナでは、穀物輸出業者が、前週の新たな税関審査システム導入後に輸出の遅れに直面しているほか、悪天候により穀物の収穫・輸出見通しが悪化する恐れがある。
専務理事は、輸出国がバングラデシュへの小麦の輸出契約を取り消し、エジプトへの小麦供給契約を見直しているとの報道があるなか、影響を受けやすい国を対象に調査を行っていることを明らかにした。
また、インド、パキスタン、中国での洪水も食糧供給への懸念の高まりにつながっていると指摘した。
同専務理事は「まだ危機は見られておらず、危機につながる政策を取らないよう各国に要請することで危機を食い止めることを望んでいる」と語った。
さらに、米国のような穀物生産の良好な国々がロシアの生産減少を補うことを望んでいると述べた。
また、世銀は食糧基金を発動することで、状況が正当化する場合には迅速に資金を提供する用意があると語った。同基金は2008年の危機時に食料不足に直面する途上国を支援するため設立された。
専務理事によると、基金には約8億ドルの資金がある。【10年8月10日 ロイター】
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10年9月には、アフリカ南部モザンビークで、パンなどの値上げに抗議する市民デモが暴徒化して警官隊がゴム弾などを発砲、子供を含む10人が死亡したほか、400人以上が負傷する事態も報じられていました。
その後も、食料品価格の高騰は続いています。

****世界の食料価格が最高に=12月、08年水準上回る―FAO****
国連食糧農業機関(FAO)が5日発表した昨年12月の世界の食料価格指数は214.7となり、統計を開始した1990年1月以来の最高を更新した。干ばつに見舞われたロシアで小麦生産が落ち込んだことなどが響き、新興国の需要増大でこれまで最高だった2008年6月(213.5)を上回った。
昨年12月は前月比で8.7ポイント上昇。6カ月連続の上昇となり、食料の国際価格がじわじわ値上がりしていることを示している。【1月6日 時事】
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こうした情勢を懸念する動きも出てきています。
****仏大統領、米仏会談で食料価格安定に向け支持求める方針****
フランスのサルコジ大統領は、20カ国・地域(G20)会合の議長国として、米仏首脳会談で世界的な食料価格と為替の安定をとりあげ、オバマ大統領に取り組みへの支持を求める方針。
食料価格の上昇とアルジェリアなどでの暴動を受け、サルコジ大統領には、為替相場と同様に商品価格の極端な動きへの対処について、G20参加国間の調整を求める声が強まっている。(後略)【1月11日 ロイター】
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暴動 背景には若者の高い失業率
上記記事にもあるアルジェリアでは、今年に入っての暴動で2人が死亡、400人が負傷したと報じられています。暴動の直接の原因は食料品価格の高騰で、若者に失業者が多く、将来がまったく見えないということも暴動の一因にあげられています。【1月8日 AFPより】

****アルジェリア、食料品暴動の鎮静化目指す―チュニジアでは14人死亡****
食料品価格高騰による暴徒と警官隊の衝突が起きているアルジェリアでは政府が先週末、事態鎮静化のために一部食料品の税金と輸入関税の引き下げを発表した。
一方で、隣国のチュニジアでは高失業率に伴う反政府デモが広がっており、同国メディアによると、週末の警官隊との衝突で少なくとも14人が死亡した。

両国とも若年層の人口が増加する中で高い失業率に悩まされているが、いずれも独裁政権が政治的反対運動を抑え込んできており、今回のような暴動は異例だ。
エコノミストや開発専門家の間では、最近の世界食料価格の高騰によって2008年に一部開発途上国で起きた食料暴動に似た事態が起こるのではないかとの警戒感が強まっている。

ただ、今回のアルジェリアの暴動の場合、どの程度まで食料価格が影響したのかは不明だ。同国は穀物などの食料の大手輸入国だ。1月に入ってからの暴動の直接的原因は、規制されていない行商や家内工業など大規模なインフォーマル・セクター(非公式部門)を規制するために今年導入された政策だ。
卸売業者や流通業者はこの新政策に伴うコスト増加分を消費者に転嫁しようとした。エコノミストや国内企業関係者らによると、これによって食用油と砂糖は1月に20%も値上がりした。
抗議の動きは、数が多く失業率も高い同国の若者たちの間に、広まったようだ。国際通貨基金(IMF)の統計によれば、同国の人口の70%近くは25歳未満の層が占めているが、その失業率は推定30%に達する。
カブリア内相が国営メディアに語ったところでは、先週半ばに始まった暴動で少なくとも3人の暴徒が死亡し、このほか約100人の暴徒と少なくとも300人の警官が負傷した。

同国は世界有数のエネルギー生産国だが、1999年以降圧政を敷いているブーテフリカ大統領は北アフリカや中東のほとんどの国が抱える若年層の高失業率問題の対策に完全に成功しているとはいえない。若年層は何年も前から住宅難を訴えており、一方で市民社会の創設を目指すグループは政治的自由を求めている。

アルジェリア政府は8日の閣議で、砂糖と食用油の輸入関税、付加価値税、それに関連する法人税の「一時的、例外的免除」を決めた。政府は声明で、この新たな措置はこれらの価格を40%以上下げることを目的としたものだと強調した。9日には新たな抗議活動の報告はなかった。
チュニジアでは、今回のアルジェリアの暴動が起きる数週間前から暴動が相次いでいる。昨年12月17日に警察によって果物や野菜を販売していた屋台を没収された大卒の男性が焼身自殺した。この男性の葬儀後、めったに行われることのなかった全国規模のストライキやデモ行進が続いている。【1月10日 JST】
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アルジェリアは沈静化したようですが、チュニジアの混乱は続いています。
****夜間外出禁止、異常事態に=暴動で死者多数―チュニジア****
北アフリカで安定した経済成長を続けていたチュニジアが12日、首都チュニスに夜間外出禁止令を出す異常事態に陥った。混乱は各地に広がり、多数の死者が出ている。
一連の騒ぎは昨年12月17日、中部シディブジッドの路上で物売りをしていた若者が警察の取り締まりに抗議する焼身自殺を図ったのが発端。警察への抗議が内陸部から沿岸へと飛び火し、各地で暴動や衝突が発生、首都にも到達した。
各地では治安部隊の発砲で死者が続出。政府が死者23人と主張しているのに対し、人権団体や労組は少なくとも50人と反論している。背景には、若者の高い失業率があり、物価上昇や汚職への不満も加わり、抗議活動への参加者は増えている。【1月13日 時事】
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アルジェリア、チュニジアともに若者の高い失業率が政府への不満となっている背景があり、【1月10日 JST】にもあるように、どの程度まで食料価格が影響したのかはよくわかりません。
ただ、今後、ガソリン・燃料価格、食料品価格の高騰が続くと、いろんな不安定要因を抱えた途上国において、08年前半と類似の事態が発生することが懸念されます。


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