孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  不動産不況に「破産すべき会社は破産しなければならない」と厳しい対応表明

2024-03-19 22:49:23 | 中国

(中国全人代の開幕式に臨む習近平国家主席(左)と李強首相=北京の人民大会堂で2024年3月5日、共同【3月5日 毎日】)

【続く不動産不況 地方政務の財政悪化も喫緊の課題】
中国の不動産不況は相変わらずです。

****中国 1、2月の不動産開発投資マイナス9% 減少幅拡大****
中国の1月と2月の不動産開発投資は、前の年の同じ時期と比べてマイナス9.0%でした。不動産不況からの回復の遅れが改めて浮き彫りになっています。

中国国家統計局の発表によりますと、1月と2月の不動産開発投資は1兆1842億元で、前の年の同じ時期と比べてマイナス9.0%でした。減少幅は、前の年の同じ時期のマイナス5.7%からさらに拡大しました。

住宅に関するほかの指標も軒並み悪化していて、▼工事に着手した面積はマイナス29.7%、▼完成した面積はマイナス20.2%、▼新築の売上額はマイナス29.3%となっています。

一方で、売れ残っている住宅の面積は15.9%増加していて、不動産の購入が停滞しているとみられます。

中国では不動産不況が景気回復の足かせとなっていて、中国政府は不動産事業への金融支援を強化するほか、中央銀行も住宅ローン金利の基準となる金利を引き下げるなどテコ入れを図っています。【3月18日 TBS NEWS DIG】
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****中国の不動産危機が加速、恒大と碧桂園に続いて万科も―仏メディア****
仏RFIの中国語版サイトは14日、「中国の不動産危機は手に汗を握らせる」として、不動産開発2位の万科も危機に陥っていると伝えた。

記事は「恒大、碧桂園に続いて万科も危機に陥っている」として米格付け会社のムーディーズがこのほど万科を格下げしたことを説明。「資金調達難で今後12〜18カ月の財務リスクが増す可能性のあることを示すものだ」と伝えた。

中国では不動産危機と不動産価格の下落を背景に、人々は景気減速の中で不動産への投資をやめている。投資家は慎重な態度を取っており、この数週間はデベロッパーの株式と債券の投げ売りが起きたという。

記事は「万科の株価は13日午前の取引で2%余り値を下げたが、中国政府は依然、同社を支え、積極的に財政支援することを選んでいる」と言及。恒大と同様に、万科も依然「大きすぎて潰せない」企業とみなされているという。【3月17日 レコードチャイナ】
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不動産不況は、「融資平台」という地方政府傘下の資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備えた投資会社を通して不動産市場に膨大な資金を注ぎ込んできた地方政府の財政状況を著しく悪化させています。

****地方融資平台****
中国の地方政府傘下にある、資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備えた投資会社。バブルを抑制するために、銀行からの地方融資平台を含めた不動産融資は規制されているが、その規制を抜けて発行された城投債と呼ばれる債券を通し理財商品や信託による投資が行われており、不動産バブルを煽っていると言う指摘がある。【ウィキペディア】
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****中国 インフラ過大投資 「融資平台」“2000兆円”巨額債務の実態****
不動産不況に苦しむ中国経済にもう一つのリスクが浮上しています。融資平台、インフラ開発の資金集めをする投資会社などを通じて地方政府が2000兆円ともいわれる巨額の債務を抱えています。その実態を取材しました。

■“2000兆円”巨額債務の実態
朝の中国。男性が一人太極拳を楽しむこの場所は、320億円をかけて整備されたスポーツセンターです。ほとんど使われていないといいます。

近くの店の人 「基本的に誰もいない」 「(Q.商売は?)ギリギリ生きています」

嘆きの声が聞こえてきたのは、中国・貴州省の遵義市。 人口660万人の大都市は、深刻な不景気に陥っていました。

午後8時半ですが、確かに明るいですが人はあまり歩いていません。そして、オフィスビルが7割引きで今売り出されています。

30年ほど前の貴州省の映像です。のどかな景色が広がっていましたが…。 “脱貧困”を掲げる中国政府の掛け声のもと、開発は進められてきました。その結果、この20年でGDPが年平均で10%を超える成長を遂げてきたのです。

総額300億円以上かけた巨大建築「遵義古城」。ところが…。 扉には鍵が掛かっています。そして、中はがらんどうで、もぬけの殻になっています。(中略)

東京財団政策研究所 柯隆主席研究員
「(中国で)不動産バブルが崩壊して、地方政府の債務を中心に不安要因が浮上してきているが、『融資平台』の政府系の投資会社も債務返済が滞るようになった」

銀行や投資家などから金を集め、町の開発を進めてきたのは「融資平台」という投資会社です。地方政府が作りました。

柯隆主席研究員 「地方政府が発行する地方債以外にもっとたくさんお金を借りたいから『融資平台』という投資会社を設立して、隠れ債務を発行してお金を借り入れていた」 ところが、中国の不動産不況などの影響で投資会社の資金繰りは悪化。進められていた工事もストップしました。

こうした事態は貴州省だけにとどまらず、中国全土で起きています。地方政府の損失は計り知れません。
柯隆主席研究員 「地方の債務だけで約100兆人民元(2000兆円)」 専門家の試算では、地方政府の借金は2000兆円。これは日本のGDPの3倍を超えます。

柯隆主席研究員 「背伸びしすぎたんでしょうね。地方政府の歳出に対するガバナンスが効いていないため無駄遣いが相当あって、どんどんどんどん不動産作っても買い手がつかない。最初から成立しないゲーム。融資平台の破綻も今、時間の問題になっている」

一方、中国政府は「隠れ債務の規模は縮小している」と主張。今後、監督体制を強化するとしています。 ただ、あおりを食らうのは中国国民です。(中略)

柯隆主席研究員 「有効な政策を早く打たないと、ますますリカバリーができなくなる。いわゆる弱者といわれる人たちが犠牲にされる。社会不安をもたらす一つのきっかけになる」【3月17日 テレ朝news】
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こうした不況は中国国民の生活を圧迫し、それが消費を抑制し、さらに不況を悪化させるという流れにもなっています。

****増える中国の住宅ローン延滞、不動産・消費に一段の下方圧力****
中国南部の恵州市で金融関係の仕事を失ったレイ・ジャオユさん(38)は今、住宅ローンの返済が滞っており、取立人に追い回される境遇にある。避けられない破局を少しでも先延ばししようと、電話には一切出ないようにしている。

2022年終盤に失業し、130万元(18万1139ドル)で買った住宅のローンとクレジットカードの借金の返済ができなくなったレイさんは「私にとって唯一の家で、差し押さえされたくない。でも、何ができるのか」と途方に暮れる。

<今年1月の差し押さえ件数、前年比64%増>
7年前に家を購入したことを悔やみながら「私は自分の若さを無駄にしたような気がする」とつぶやいた。 レイさんのような状況に陥った人は、中国ではまだ少ない。だが、その数は急速に増え続けている。

背景には、不動産危機や地方政府の債務増大、デフレ懸念などに伴って経済全体が依然として部分的な回復にとどまり、足場がもろいことがある。

複数の専門家は、住宅ローン延滞件数の増加は不動産価格と消費者信頼感の双方にとって悪影響を及ぼしかねず、家計需要を促進して経済基盤をより強化しようという政府の努力に一層の冷や水を浴びせる恐れが出ている。

中国の民間不動産調査大手、中国指数研究院(チャイナ・インデックス・アカデミー)の分析では、23年に差し押さえられた物件数は前年比43%増の38万9000件。今年1月はさらに5万件以上が差し押さえとなり、前年比増加率は64.4%に達した。

華宝信託のエコノミスト、ニー・ウェン氏は、延滞と差し押さえ増加は消費を萎縮させているだけでなく、過剰な不動産投資は避けるべきという警鐘にもなっていると述べた。

レイさんも到底、消費などできる気分ではない。

昨年はライブ配信経由でさまざまな所有品を売って稼いだ合計額は約4万元。毎月の住宅ローン返済額の4200元に充てるには不十分で、毎日の基本的な生活費すらおぼつかない。

「私が着ているのは全て5年前の服だが、体重が増えたので、その多くはもう合わなくなってきている。友人からはお古のコートをもらった。旅行は17年以降、一度も行っていない」という。

レイさんにとって最も心苦しいのは、毎月3000元の年金で暮らす母親を支えてあげられないことだ。(後略)【3月17日 ロイター】
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【「破産すべきは破産」 厳しい対応の中国政府】
当然に中国政府もこの事態の立て直しに取り組んでいますし、全人代でも重要な検討課題となった思われますが、ただ、「破産すべき会社は破産しなければならない」という厳しい姿勢で、やみくもに救済はしない方針を示しています。

****「破産すべきは破産」 中国の住宅部門トップが不動産市場に指摘****
中国で、国会にあたる全人代(=全国人民代表大会)が開かれるなか、住宅部門のトップが低迷する不動産市場について「破産すべき会社は破産しなければならない」と強調しました。 

住宅・都市農村建設省のトップは9日、不況が続く不動産市場について、資金断絶などのリスクに直面し「安定させるのは極めて困難な任務だ」との認識を示しました。  

さらに、巨額の負債などを抱えて経営能力を失った不動産関連企業について、やみくもに救済はせず「破産すべき会社は破産しなければならない」と指摘して、不動産市場の整理・調整を進める姿勢を強調しました。  

一方で、中国は「300億平米以上の住宅を改築する必要があり、大きな潜在力だ」と述べ、不振にあえぐ不動産業界の立て直しをアピールしました。【3月10日 ANNニュース】
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「破産すべき会社は破産しなければならない」・・・経済合理性からすれば極めて正論です。そのことよって非効率な企業は淘汰され、健全な経済が維持できる・・・ただ、「大きな痛み」を伴いますので、日本みたいな政府に「救済」が期待される社会、民意に沿った穏便な対応が求められる社会では非常に難しいことも。

こうした厳しい対応ができるのは、公的な介入を否定する自由主義を重視する社会か、あるいは救済を求める声を封じ込めることができる中国のような強権的な社会でしょう。

下記も「破産すべき会社は破産しなければならない」という姿勢の現れでしょうか。

****中国・恒大集団に罰金865億円…子会社が11兆円超の売り上げ高の水増し報告****
経営危機に陥っている中国の不動産大手・恒大集団の子会社が、11兆円を超える売上高の水増し報告を行ったなどとして、およそ865億円の罰金を科されたことがわかりました。

中国の不動産大手恒大集団の主力事業を担う「恒大地産集団」は、2019年と2020年の決算報告書に虚偽の報告を行ったと明らかにしました。

具体的には、売上高を前倒しで計上するなどし、2019年には、当期の売上高のおよそ50パーセントにあたる4兆4400億円を、2020年にはおよそ78パーセントにあたる7兆2600億円を水増ししたということです。

中国証券監督管理委員会は、恒大地産集団におよそ865億円の罰金を科し、恒大集団の許家印会長については、生涯にわたり債券市場への参入を禁じるということです。

中国政府は、低迷が続く不動産市場について、市場ルールに従い「破産すべき会社は破産すべきだ」との方針を示しており、今後、経営難の企業に対し、厳しい対応を加速させる可能性があるとみられています。【3月19日 日テレNEWS】
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もっとも、中国政府は民間企業には厳しい姿勢をとれるでしょうが、共産党の信頼が揺らぎかねない地方政府の破綻という話になると、話はまた別でしょう。

【中国がもし確信犯的に不動産不況の「痛み」に耐えているのだとしたら空恐ろしい感も】
いずれにしても、中国経済の不調を論じる記事は多々溢れていますが、中国政府は何の考えもなく事態を座視している訳でもなく、ことによると将来的なステップアップのためには現在の窮状を敢えて「放置」する厳しい姿勢なのかも・・・。

****習近平政権の批判ありき。日本人が喜ぶ「つまみ食い報道」を繰り返すマスコミに踊らされる“おめでたい人々”****
3月5日から11日にかけて北京で開かれた全国人民代表大会(全人代)。中国の国会にあたる全人代では同国の今後を知る上で重要な報告が多数なされましたが、日本メディアはこれまで同様、習近平政権を批判的に扱うことが可能な題材だけの「つまみ食い報道」に終始しました。

そんなメディアを批判的に見るのは、多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さん。富坂さんはメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』で今回、中国が何を成し遂げようとしているのかという視点を葬り去るような報道が、日本人に及ぼし続けている弊害を解説しています。

中国全人代のテーマは景気対策と国防、台湾問題だけではないという当たり前のことが伝わらない現実
(中略)全人代では冒頭、首相による政府活動報告(以下、報告)が行われる。報告は経済問題が中心になるが、実際はかなり網羅的だ。

日本では、その報告のなかから「日本人が興味を持てそうなテーマ」で、かつ「(習近平政権を)批判的に書ける」題材をピックアップし、短くまとめた記事が目立つ。ここ数年はGDP成長率の目標値にケチをつけ、国防費の伸びを「軍拡」と批判し、台湾問題で「中国の危うさ」を強調するというパターンが繰り返されてきた。

報道が不正確とは思わないが、報告の全文を読み、比べれてみれば「つまみ食い」感は否めない。中国が対外的にアピールしたい内容とのズレも深刻だ。

もちろん日本のメディアが習近平政権の意図を汲む必要などないし、独自の視点で中国を報じることに問題があるわけではない。しかし、中国が何を目指し、何を成し遂げようとしているのか、という視点まで葬り去ってしまっては、その弊害は小さくない。

例えば、前回の原稿でも触れた「新たな質の高い生産力」である。その前の党大会で打ち出された「中国現代化」と同じく、おそらく日本の読者の頭には、何の情報も残っていないのではないだろうか。

習近平政権がわざわざ「これこれこういう問題に取り組み、社会をこう変えてゆく」と宣言している事柄をメディアが正面からとらえなければ、中国の未来を予測する上で支障をきたすことは間違いない。

実際、日本はこれまで中国の変化を大きく見誤ってきた。
凄まじい勢いで国民に普及したスマートフォンを背景に急速に進んだ社会のキャッシュレス化。爆発的な勢いを見せたライブコマースとそれにともなう流通網の整備。世界的規模にまで成長した家電メーカーや電気自動車産業の台頭。水質汚染、大気汚染に悩んでいた姿から短期間のうちに脱却し、環境を整備すると同時に太陽光・風力発電でリーディングカンパニーを数多く輩出する国へと変貌したことなど、数えれば枚挙に暇がない。

言うまでもなくこれらの変化にはすべて予兆があり、萌芽もあった。それなのに、たいていのケースで日本はそれらを見落とし、目の前に疑いようのない現実を突きつけられてはじめて驚くということを繰り返してきた。

前例に倣えば、今度の全人代が打ち出した「新たな質の高い生産力」も新たな変化の予兆に違いない。
習近平政権は欧米社会に評価されるために政治をしているわけではない。人口の最大ボリュームゾーンを占める農民や労働者のために政策を練ってきたことは報告の全文を読めばよく分かる。

その一つが「脱貧困」への取り組みだ。
中国共産党が結党100周年という大きな節目を祝うために全力で取り組んできたのが「脱貧困(小康社会実現のための)」だ。コロナ禍の2021年、それを達成したことが習指導部の大いなる誇りだった。
そして今回の報告でも「脱貧困の継続」が叫ばれ、脱貧困が瞬間風速に終わってはならないという戒めが記されている。

これは「先に富む」ことにブレーキをかけ「共同富裕」へとシフトさせた変化にも通じる。そして今回、西側社会やマーケットが注目する「目先の景気対策」より、貧困の逆流防止や徹底した就職支援、可処分所得の重視や養老金(年金)増額などに力を入れたことは、彼ら姿勢が一貫していることの表れだ。

習指導部のこうしたかじ取りの成否が明らかになるのは、まだ少し先の話だ。しかも、それは痛みに耐える時間だと言われている。

「新たな質の高い生産力」が意味するのは従来型発展モデルからの脱却だ。北京大学国家発展研究院中国経済研究センター主任の姚洋教授はこれを「粗放で外向き拡張型の成長モデルから、内側の発展を中心とし、イノベーションを動力とする発展モデル」への転換だと解説する。そして変化には「債務への過度な依存や金融、不動産の膨張といった構造的な問題の調整」に付随して「痛みがともなう」と警告する。

中国がもし確信犯的に不動産市況の低迷に耐えているのだとしたら、少し恐ろしいことなのではないだろうか。【3月19日 富坂聰氏 MAG2NEWS】
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「痛みがともなう」構造改革に向かって、焼け火箸を握りしめる覚悟で現状の痛みには耐える・・・ということであれば、民主的価値観から見ての良し悪しは別として、空恐ろしい感じがします。
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