杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

フーリガン

2007年05月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年6月17日公開

大学でジャーナリズムを専攻するマット(イライジャ・ウッド)は、ルームメイトに麻薬売買の罪を着せられ、退学処分になる。失意のまま姉の住むロンドンへ来た彼は、姉の夫スティーヴ(マーク・ウォーレン)とその弟ピート(チャーリー・ハナム)と出会う。ウェストハムの熱狂的サポーターであるピートとの初のサッカー観戦で興奮したマットは、その直後サポーター同士の喧嘩に巻き込まれるが、その中で異様な興奮と連帯感を覚え、彼らとの世界に埋没していく・・・。

若い女性監督の作品であるこの映画は、同士愛と友情がテーマだ。

ルームメイトは有力議員の息子で、闘う前から結果を予想し諦めるマットは、離れて暮らすジャーナリストの父親にも相談出来ず、すごすごと尻尾を巻いて負け犬としてロンドンに住む姉の元を訪れる。義兄に邪魔にされ、義弟のフーリガン・ファームGSEのリーダーであるピートにお守りという名目で追い出された彼は、この時点でも邪魔者である。しかし、初めてのサッカー観戦の興奮の後に彼を襲ったある事件を通してマットはピートや彼の仲間に加わることになる。暴力という初めての強烈な体験が彼の中に眠っていた強さへの渇望を掘り起こし、友人をも与えてくれたのだから、のめりこんでいってもそれは当然の結果だろう。そして長年の敵であるミルウォールとの抗争で彼らを出し抜いてGSEに勝利をもたらしたことで、仲間としての位置を確実なものとした彼は、十分な満足感と充足感を感じることになるのだ。

野球の方が好きなごく一般的なアメリカ人のマットにとって、サッカーの魅力より、フーリガンをすることで培われる仲間との繋がりの方が大事なのは明らかだ。そして、GSEの仲間たちにとってもそれはあまり変わらないように思える。
マットの出現により、親友ピートを奪われた疎外感を募らせるボヴァーや、先代のリーダー「少佐」を超えようと悩むピートなど、それぞれの心の中の迷いや葛藤が丁寧に描かれていく。

やがて明かされる「少佐」の正体は義兄の堅物だと思っていたスティーブ。そして起こる悲劇。だが、この時の姉の行動は納得できんのよね。
誓いを破ったから、というより息子に危険が及ぶのを恐れてロンドンを離れようとした彼女が、弟の身を案じて抗争現場に駆けつけるのは、まして子供を連れて飛び込んでいくのは軽率すぎやしませんか。
更にあの場面で立ち去ってしまうマットも何だかな~~。
大学に復学するための手段もせこい、と言ってはいけないんだろうけど、どうも最後の最期でゆるゆるな気がして、脱力~。

しかし、暴力は結局自分に返ってくるものだという視点では、この結末は正しいのかもしれない。マットは自分の想いとは別に、あの国では終始よそ者であったわけだし。

もう一つの友情、ピートとボヴァーの関係の方が、純粋かもね

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 宅間久善コンサートツアー2... | トップ | アジアプレミアin武道館(... »
最新の画像もっと見る

映画(DVD・ビデオ・TV)」カテゴリの最新記事