杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

帝都地下迷宮

2023年11月03日 | ドラマ
中山七里(著) PHP研究所(発行)

鉄道マニアの公務員、小日向はある日、趣味が高じて、廃駅となっている地下鉄銀座線萬世橋駅へと潜り込む。そこで思いがけず出会ったのは、地下空間で暮らす謎の集団。身柄を拘束された小日向に、彼らは政府の「ある事情」により、地下で生活していると明かす。その地下空間で起こる殺人事件。彼らを互いにマークする捜査一課と公安の対立も絡み、小日向は事件に巻き込まれていく。(内容説明より)


廃駅鉄(ヲタ)の存在を初めて知りました😶 
冒頭から暫く続くヲタ解説に、これは推理小説だったよな~と不安になるのですが、小日向が香澄と遭遇したあたりからどんどん引き込まれていきます。

小日向は区役所の生活支援課相談・保護係で日々生活保護申請者と向き合っています。予算削減のため救いを求める人をふるい落とさなくてはいけない現実に抵抗を覚える彼のストレス解消法が趣味の廃駅巡りです。
 
上司に親身になり過ぎるなと叱責されたのがきっかけで、彼は遂に無断で廃駅に侵入する計画を実行に移します。深夜、周到な準備のもとグレーチング(側溝などの上にかぶせてある蓋 )を外して秋葉原の地下にある役目を終えた地下鉄銀座線萬世橋駅跡に降ります。高ぶる気持ちのまま進む小日向でしたが、誰もいない筈の構内で遠城香澄との出会いが彼の運命を変えていきます。

萬世橋駅に住んでいると言う香澄は、小日向の処分を久ジイに仰ぎます。
構内には彼女の他にも大勢の人が暮らしていて、秘密保持のために「特別市民」となることを認められます。

小日向は善良な男ですが、時に突拍子もない大胆さを発揮します。
自分の仕事の理想と現実に忸怩たる気持ちを抱いていた彼は、地下の住民たちの素性に気付くと彼らを護りたいと思うようになるんですね。

八ケ部町で起こった高速増殖炉の事故により、住民が被爆し、色素性乾皮症に侵されて太陽の下で生きられない体になってしまったこと、政府筋の協力者によりこの地下に移住してきたことを知った小日向は彼らの役に立とうとします。

そんな矢先に、住民の輝美の所在がわからなくなり、やがて死体で発見されます。身分証から彼女が公安のスパイとわかり驚きますが、警察に存在を知られることを恐れて遺体を地上に移動させることになり、小日向がその役目を負わされます。

翌朝遺体は見つかり報道されたものの、何故か身元不明者扱いになっていました。訝しむ小日向の元へ、公安と捜査一課の刑事が入れ替わりに聴取にきます。公安は輝美から情報を得ていたので当然ですが、刑事が来たのは小日向が出勤途中に寄り道して現場を覗いて警官に職質されたからで自分で蒔いた種😁 
公安の刑事たちの描写が猛禽類を思わせる鋭い視線とかめっちゃビビる。彼らに対峙する小日向君に同情してしまいます。

公安が地下の住民たちをテロリストとして危険視していると知った小日向は、彼らを逃がそうとします。ここで彼の廃駅ヲタの知識が役に立つのですが、相手は公安、追っ手が迫り遂に逃げ場がなくなり・・・

そこに現れた救いの手は、殺人犯を追ってきた一課の刑事たち。元々公安とツーカーなわけじゃないのが幸いしたのと、小日向が弱音を漏らした職場の先輩が地下住民の存在を世間に公表したことで事態が好転するのです。更にその裏には小日向が通う鉄ヲタが集まる店の常連客の中に政治的目的から公安を動かす人物の失脚を狙ったという背景も見えてきます。
住人たちは自由と引き換えに医療とベッドを与えられたわけですが、病を抱えて生きなければならない彼らの憤りや不安や哀しみに国は寄り添ってくれるとは思えず・・・公安が個人より国の利益を優先する組織であることにも改めて気付かされます。

真犯人は意外な人物で、ラストの会話はちょっと切なかったな。


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