ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長は26日、日本の賃上げが画一的だとして苦言を呈した。「日本企業は『グローバル』と言う割に、賃上げの議論だけはすごくローカルだ」と指摘。「何年か後には日本企業の発想が変わると期待し、ルネサスが日本を誘導することに貢献したい」とし、古い慣習を見直して国際競争力を高めるべきだと訴えた。
柴田氏は「ベースアップなど日本以外ではほぼ聞かない。海外では事業環境が軟調な中で賃上げを実施することは考えられない」と述べた。
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日本の企業は長い間、賃金引き上げについては定期昇給とベースアップで対応してきたが、欧米の企業は定期昇給というのは無く、ジョブ対応の賃金なので賃上げはジョブが変わるか、あとは全てベースアップとなる。この30年間、日本企業はほとんど定期昇給のみの対応で、G7で見ると、グラフのように他国はきちんと毎年ベースアップをしてきたので日本の労働者は企業の業績に較べ割を食らってきた。それが日本のデフレ経済脱却ができなかった原因で、本年30年ぶりで政労使呼吸あわせで遅まきながら大幅ベースアップが実現した。
日本には欧米企業とは違い、年間のボーナス制度が歴史的にあり、企業経営者は業績に応じて従業員に報いており、自動車産業では6ヶ月~7ヶ月支給されている。この部分こそ画一的で無い部分であり、欧米企業と違うところだ。
金属労協の発表では「額の平均は14,877円(45組合)で、高い引き上げ額となっている。また、87.5%の組合が要求を満たす回答を引き出している。これらの回答は、実質賃金の改善や組合員の生活の安心・安定はもとより、金属産業の現場力・競争力を高め、経済の好循環を実現する原動力となり得るなど、労使の社会的な役割を果たすものであると受け止める」
トヨタ、ホンダなど自動車は満額だけでなくスズキには「新人事制度における人的資本への投資として、組合要求にある昇給制度維持分と物価上昇の影響を踏まえた配分を含み、組合要求を超える平均10%以上の賃金引き上げを実施」となんと要求以上の回答。
平均賃上げ額はホンダ20000円、日産18000円、三菱自工17500円、マツダ16000円
電機は大手組合には13000円の同額回答、最低賃金も10000円前後の引き上げで、中にはNECのように33300円の引き上げで最賃が一気に212300円になった。
注、電機のモデルは開発・設計職基幹労働者賃金:スキル・能力基準『レベル4』30歳相当
鉄鋼大手3組合ベア30000円の要求で額としては突出していたが、JFE、神戸は満額、日本製鉄は35000円と要求を上回った。定期昇給などを含めた賃上げ率は14.2%にもなるビックリ回答だ。
三菱重工、川重、IHI、住友重機械など造船は一律ベア18000+定期昇給6000円24000円の高額満額で綺麗に揃った。
注、:鉄鋼大手3組合は35歳生産職標準労働者、造船は組合員平均
どうする春闘 実質賃金4.1%減少
厚生労働省が7日発表した1月の毎月勤労統計調査によると、1人当たりの賃金は物価変動を考慮した実質で前年同月比4.1%減った。10カ月連続の減少で、1月としては遡れる1991年......
絶好調のマイクロソフトでも、同社や2023年10月に687億ドルで買収したゲーム企業アクティビジョン・ブリザードのゲーム部門から、合わせて1,900人を解雇すると複数メディアが報じた。アマゾンは、同社のビデオゲームストリーミングサービス部門のツイッチの従業員500人以上と、同社の動画配信サービスのプライムビデオ、MGMスタジオの従業員数百人を1月初めに解雇。等々
ブルームバーグによれば、米国の失業率は低いかもしれないが、それでも新年は大手テクノロジー企業が3万2000人の人員削減に踏み切った。2024年の大量解雇は、多くは景気後退への恐れ、パンデミック時の過剰雇用の縮小、アクティビスト投資家の満足、人工知能へのリソースの再配分などが正当化の理由として挙げられている。
今年に入り、Snapは、従業員の約10%にあたる540人が職を失うと発表したばかりで、ソフトウェア会社のOktaは、従業員の7%にあたる400人を削減すると発表した。レイオフが至る所で行われていることで、米国の経営者世代は、定期的な人員削減は企業にとって必要であり、有益でさえあると確信している。
しかし、そうではないと、サラ・グリーン・カーマイケルはブルームバーグ・オピニオンに書いている。定期的なレイオフは、広く行き渡っているが、深く腐食するビジネス慣行である。解雇された人々は心理的および経済的苦痛に苦しむ一方で、定期的に人々を解雇する組織にもコストがかかります。マネージャーは、採用、コーチング、フィードバックという困難な仕事に対して怠惰になる、と彼女は書いている。
レイオフした企業で、残されたスタッフの間では、やる気とエンゲージメントが低下し、離職率が上昇している。研究者らは、こうした影響が約3年間続くと推定している。
日本でも、労働力の流動化をダイナミズムとして評価し、奨励する専門家がいるが、労働者の生活だけで無く心理的な負担も考慮に入れなければWellbeingな企業は実現しない。
経団連主催の「労使フォーラム」が24日、開催された。デフレからの脱却に向け、約30年ぶりの高水準だった昨年を上回る賃上げを労使がともに目標として掲げ、労使の共闘?で春闘が幕を開けた。従来の春闘は、賃上げを求める労組、賃上げを抑えたい企業側が応酬する場だったが、24年は大きく様変わりしている。
先ず、3月中旬の金属労協が5%賃上げを実現できるかが焦点で、その後に続く中小企業が賃上げ原資を確保できるよう、人件費の価格転嫁を大企業に促す労使の共闘が鍵を握る。価格転嫁に関しては昨年よりかなり雰囲気が違う。私が聞いた中小企業の経営者は価格転嫁が進んでいると言っており、政府の後押しもあり、期待できる。
日銀植田総裁は「実質賃金の上昇率がずっとマイナスであるという見通しでは物価目標の達成が遠いと思うが、足元でマイナスであっても近い将来プラスに転じるという見通しがあればそれは政策の正常化を必ずしも妨げるものではない」と、金融政策の焦点ゼロ金利脱却は春闘の結果を見てからと、春闘の行方を注目している。
また、「人件費上昇分の価格転嫁、少しずつ進んでいる」としている。
国の統計を毎月見ていると、11月の就業人口は6689万人で前年に比べ43万人増(0.6%)とかなり増えているが、男性は3686万人、6万人増(0.2%)に対し、女性は3003万人、38万人増(1.3%)と女性の増勢がここのところ大きく、人手不足の緩和に大きく寄与している。
労働参加率を見てみると、全体では62.2%で、0.5%増、男性71.1%、0.1%増、女性53.9%、0.8%となっている。この参加率から見ると、ざっくり女性の半分が労働市場に出ているだけで女性労働力にはまだ可能性がある。15から64歳の主労働力層の参加率を見ると、全体では80.2%で0.6%増、男性86.3%増、0.2%増、女性は74.1%、1.1%増とこの主力層では女性の参加率は7割を超えている。
経団連の十倉雅和会長ら経済団体トップは報道各社のインタビューなどで、2024年への抱負を語った。十倉氏は賃上げについて「23、24年だけでは終わらない」と述べ、継続が必要と訴えた。経済同友会の新浪剛史代表幹事は賃上げを「社会通念にしていくことが重要」と語った。
十倉氏はインタビューで、24年の賃上げ率について「一過性で終わらせてはならない。前年以上の熱量で臨む」と改めて強調した。23年の大手企業の実績である3.99%を超えることに意欲を示した。物価上昇の家計への影響を和らげるには、基本給を底上げするベースアップ(ベア)が重要とした。
新浪氏もインタビューで「賃上げを人への投資として、ノルム(社会通念)にしなければならない。ノルムに反する企業は評価されない環境づくりが大切になる」と強調した。最低賃金については理想としながら「3年くらいで2000円まで引き上げるというのがめざすべき像だ」と述べた。
昨年末に日経新聞が行った主要企業「社長100人アンケート」でも「5%台」の賃金引き上げが最多だった。
政府も積極賃上げには補助金を出す。中堅企業の賃上げ重点支援策として、最低賃金の伸び率を上回る賃上げを実施する計画を立てた企業を対象に、大規模な設備投資を支援する補助金を今春までに新設する。対象企業は従業員2000人以下の企業で、投資額が10億円以上の場合、投資額の3分の1を補助する。
また、従来から有る「賃上げ促進税制」を見直し、従業員300人以下の中小企業が給与を増やしたら、企業の法人税負担を軽くする税優遇を受けやすくする仕組みをとりいれる。
春闘史上これほど、政財が賃上げに熱を入れたことは無い。労働組合の出番が無い事態になりかねない。3月中旬の集中回答が注目される。
華やかな宝塚の舞台からは想像ができない踊り子のやりきれない自殺事件、事業者や経営者は従業員のメンタルヘルスに向き合うべきだ。
メンタルヘルスに1980年代から取り組んできた生産性本部が第11回「メンタルヘルスの取り組みに関する企業アンケート調査」結果を9日発表した。企業の人事担当から見た従業員のメンタルヘルスの現状と組織の状況についての調査で「心の病」が最も多い年齢層について、何と10~20代との回答が43.9%に急増し、過去最多。初めて30代(26.8%)を上回り、「心の病」が最も多い世代となった。責任が重い中高年層かと思っていたが意外と若い人という結果に驚いたが、宝塚事件で裏付けた。直近3年間において「心の病」が「増加傾向」と回答した割合は45.0%となり、「横ばい」と並んで最多という結果で、最近流行りのウェルビーイングの前提がメンタルヘルスだろう。
これからという10~20代の自殺行動は何としても防がなければならない。労使で有効なカウンセリング体制の構築に全力で邁進すべきだ。また職場のメンタルヘルス調査も定期的に実施し、未然に防ぐ環境を整えることが肝心だ。
働き方改革関連法で5年間猶予されていたトラック運転手などの残業時間の上限規制が2024年4月から始まることにより、人手不足や配送の遅れが懸念されるという問題、マスコミも行政も大騒ぎで「1人あたりの運転時間が制限され、企業は追加雇用や配送量減などを迫られる。一方労働時間が減るドライバーも、働きやすくなる一方で収入が減る懸念がある」と連日の報道、何かおかしい。
働き方改革関連法で世の中一般は世界でも長い労働時間を改善したが、長距離輸送など長時間労働が常態化している運送業では早期の対応が難しいことから5年間適用を猶予していた。つまり、5年間の間に企業も労働組合も対策しなくてはならなかった。それが猶予が終わると大変だと騒ぎ、更に猶予を求めている。つまり自分たちがさぼった責任を放棄している。
2024年4月より、残業の労働時間上限は年960時間、これでも月平均80時間の時間外勤務となる。併せて終業から始業までの休息時間(勤務間インターバル)を8時間以上から9時間以上にする。働き方改革で人間らしい労働に一歩近づく、しかし欧米の組合なら一蹴するレベルだ。
建設業や医師でも同時に上限規制が始まる。建設業は残業時間の上限は年720時間までで、災害復旧時は特例的に月間の上限を撤廃する。医師も残業時間の上限は年960時間となるが、地域医療の維持などの理由があれば最大で年1860時間まで残業が可能だ。
EUの労働法ではトラック運転手の労働時間は
①1日の運転時間は原則最大9時間まで (但し1週間内で2日は最大10時間まで可能)
②1週間の運転時間は最大56時間まで
③2週間通算の運転時間は最大90時間まで