Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

井原三郎「句文集 全盲の画家」

2021-04-29 09:20:36 | お絵かき
朝日新聞出版 (2013/11).
だいぶ昔の本だが,図書館で背中のタイトルを見て 借りた.

Amazon の紹介*****
幼くして片眼を失明、20年後には全盲となった兄。
失明のどん底でしかし絵画への情熱を捨てきれず悶々とする。
やがて独自の手法を体得し個展を開催するまでになり、メディアに取り上げられる。
次々と進化させた手法を駆使し、60歳で世を去るまで描き続けたその半生を、弟の目から描く第1部。
第2部は「朝日俳壇」で年間俳壇賞を受賞するなど、各種の入選常連者である著者の第2句集として約200句を収載する。
*****

句文集というが,句と文は完全に分離している.文の方は借りた夜に読んでしまったが,句の方は進まない.春夏秋...に分かれていて,秋の句なんて見る気にならないのは当然だと思う.

第1部 エッセイ「全盲の画家」の目次は 1)大騒ぎ;2)心眼を求めて;3)記憶も成長する;4)ヒマラヤの風;5)その後.大雑把に言えば,1) は兄の絵が世に出るまで,2) は技法も含めた兄の絵の発展 である.3) からトーンが変わり,あなた = 兄 に呼びかける文体になる.兄とその家族と著者との葛藤など,書かなくてもいいじゃないのとも 読みながら感じたが,著者としては文章に起伏を与えることをねらったのかもとれない.この本は兄の死後 20 年以上経ってからの出版である.

この本を読んでも,実は「兄」の姓名さえわからない.その他の固有名詞も,T県K市S新聞というふう.
兄の絵画も,カバーイラストだけで,口絵があるわけでもない.しかし,目次の次のページに 挿画 全盲画家 鈴木敏之「家族の肖像」(油彩) との記載があった.ネットを漁ったが鈴木敏之の絵はあまり見つからなかった.

油粘土で輪郭をとり,塗りつぶしてから粘土を取り去るという技法が出発点だったそうで,このカバー絵にはそれが残っている.しかし後年の作品群はこの技法を悟らせないらしい.絵を描き始めたのは失明してから 20 年経ってからで,色も形も 20 年前の記憶に頼っている.
水墨画は別として,絵を描くことは修正作業の繰り返しだと思う.しかし氏の場合,形はともかく,色の方はフィードバックできない...まあ目あきの絵でも,対象の色を再現しているわけではないけれど.

関連記事は有料.しかし上記T県K市S新聞は栃木県鹿沼市下野新聞と判明.
鈴木敏之氏自身の著書もあるが,この井原本における評は辛口.でもぼく的には,こちらのカバーの油彩の方が絵としては良いと思う.

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 美術と音楽 アマとプロ | トップ | ヴァージニア・ウルフ「幕間」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

お絵かき」カテゴリの最新記事