Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

2018年問題とこれからの音楽教育

2017-02-28 09:10:39 | エトセト等
サブタイトル「激動の転換期をどう乗り越えるか?」
久保田 慶一,ヤマハミュージックメディア (2017/1).

音楽教育については門外漢だが,定年を迎えた大学には教育学部第4類音楽文化系コース,大学院には教科教育学専攻音楽文化教育学専修 と言うのがあった.学生も何人か知っている.

2018 年問題とは,日本の 18 歳人口が 2018 年から減り始めるから,大学の教員が学生に対して過剰になると言う問題.この対策として文科省が考えたのが文系学部廃止らしいが,この本の第1章のタイトルは「「文系廃止」より以前に「芸術系廃止」が始まっていた」である.そして最初の見出しは「国立教育学部の芸術系課程・専攻の廃止」である.たしかにうちの大学も例外ではなく,「コース」の名は課程時代の名残りである.

音楽の教育機関はコンセルヴァトワール型 (16 とんの解釈では,音楽職人養成所) とリベラルアーツ型 (同じく,音楽を核とするオトナの育成) に大別できるのだそうだ.前者は街の専門学校に任せ,音楽大学は後者に徹すべしというのが,文科省の方針で,著者もこれに賛成らしい.しかし表現に持って回ったところがあって,歯切れが悪い.

音楽大学を卒業してどうなるか? 著者が教授を務める国立音大の場合,3割が進学か留学,3割が学校教員や音楽教室の教師,3割が一般企業,残る1割がフリーランスの音楽家というところだそうだ.著者は3割の一般企業就職を (「も」というべきか) を支持しているようだ.
著者の視野の大半はクラシックの音楽大学とクラシックの音楽家が占めているようだ.しかし音楽産業全体では,音楽大学出身者の寄与はそれほど大きくないように見えるが,どうなんだろう.大学で理工学・文学・法学等を学んで音楽界に入ることができるのも,リベラルアーツ教育の賜物?

本文の見出しはなかなかキャッチーだ.
「第3章 義務教育から音楽をなくしてはいけない理由」には,
実技のできる教員は良い教員か / 合唱は非日常的な経験をもたらす / エル・システマの逆を行く日本の音楽教育 / 「音楽は女性が嗜むもの」という偏見 / 音楽は「情緒的」ではなく、「理性的」/ 交響曲《運命》は何歳の子どもに聴かせるべきか
などのタイトルが並ぶ.
しかし,読んだあとで,やっぱり義務教育に音楽は必要だな と納得したかと問われると,微妙.

図書館本.

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