Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

協和音を荒っぽく説明すれば...

2010-10-23 08:53:36 | 新音律
拙著「音律と音階の科学」などは,二つの楽音の協和を,不協和曲線に基づいて説明している.
二つの単音(単一周波数の音)の音高が一致すれば違和感がないが,少し離れると違和感が増し,十分離れれば違和感が消える...という前提から出発し,楽音の周波数スペクトルのデータを使ってごちゃごちゃ計算すると,完全4度,完全5度,長3度,長6度などが協和することが導かれる.

もっと仮定を単純化すると,「音高が一致するふたつの単音以外は,聴いて違和感がある」ということになる.逆に言えば,どこかで同じ音が鳴っていれば,高さが違う音を同時に鳴らしても親しみを感じる.
例えば,楽音のドと楽音のソが協和するのは,楽音ドにミが含まれているからだ.



この図はピアノでドレミファソラシドを弾いたときのソノグラム = 周波数スペクトルの時間変化を表示するもの.横軸が時間,縦軸が周波数.左端を上下方向に見ると,ドというキーを押し下げたとき,266Hzがいちばん低い周波数成分として出ている.これがドの音である.しかし,その他に,2倍波すなわち2x266Hz,3倍波すなわち3x266Hz,4倍波すなわち4x266Hz...が上方向にずらずらと並んでいる.

その隣の縦列はレの周波数スペクトルで,やや大きい間隔で縦に並ぶ.その右はミだが,間隔はもっと広がる.

ドの各周波数成分の位置を横方向の点線で示してある.
これで見ると,ドの下から5番目とミの下から4番目は 縦方向に同じ位置にある.ここを赤丸で囲む.
隣の,ファの3番目はドの4番目と同じ位置にある.ここも赤丸で囲む.
おっと,ファの6番目もドの8番目と同じ位置にある.ここも赤丸で囲む.
エトセトラ.

要するに,レ,ミ,ファ,ソ...のうち赤丸の数が多い音ほど,ドと同時に弾いたときの響きが良い,すなわち協和度が高いことになる.
もっと詳しく言うと,赤丸の位置が低いほど協和する.
この図では,ドと協和する音を順位づけると,オクターブ上のドがいちばん良く,ソ,ファと続き,ミとラが同列となる.

このようにうまいこと赤丸が描けるのは,じつはミ,ファ,ソ,ラの最低音の,ドの最低音にたいする周波数比が単純だからである.平均律ではじつはずれているのだが,ご覧のようにスペクトルにも幅があるので誤摩化される.
しかし12音平均律で音階を作るからうまく赤丸が描けるのであって,例えば16音平均律などでは赤丸はひとつも描けない.

もともとの周波数音の他に,その2倍波,3倍波,4倍波,...が生じるのは,ピアノだけでなく,多くの管楽器・弦楽器の音に共通している.2倍波3倍波4倍波...がないと音楽の音としてはつまらない.ただし,打楽器の音にはまた別な規則性があり,ガムランのような音楽には,この説明は通用しない.

長文失礼いたしました.

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 100 円雨傘 -> 五月三十五日 | トップ | 学童保育所でジャズ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ブルーバックスを読みました (茂木 真)
2010-11-10 01:18:22
小方厚先生
拝啓
3オクターブに非常に興味を持っていて、悩んでいました。
両端がどのようになっているか分からなかったからです。
真ん中に引っ張られてスペクトルが落ち着くのか。
両端のスペクトルを行ったり来たりするのか。
スペクトルの遷移を考えていました。
スペクトルの幅とか誤魔化され方とか。
今回
ピタゴラスのコンマの話をホームページで拝見しました。
もっと詳しく理解を深める参考書などがありましたら。
ぜひご紹介していただきたいと思いぶしつけながらメールいたしました。
よろしくお願いいたします。
敬具
返信する
茂木様 (16トン)
2010-11-10 21:09:07
コメントをありがとうございました.

3 オクターブにお悩みとか,もしかしたら,フーリエ変換すると情報エントロピーが増えるという話と関連するのでしょうか.

私が書くときに参考にした本は,拙著の巻末にまとめてあります.藤枝守「響きの考古学―音律の世界史からの冒険」 (平凡社ライブラリー) が良い本と思います.数学的な見地から書かれた本はあまりないようです.

英文の Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Pythagorean_tuning
は数字がたくさん出ていて便利なことがあります.
返信する

コメントを投稿

新音律」カテゴリの最新記事