Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

なぜか今 新感覚派 !

2023-04-18 08:13:04 | 読書

日本物理学会誌 vol.78 no.4 (2023) p.209 「 歴史の小径」に,加藤夢三氏による「新感覚派は可惜問物理学をどう受け止めたか - 横光利一,中川與一,稲垣足穂を中心に」.著者は物理学会会員ではなく,専門は日本近代文学・日本のモダニズム文芸理論.

16トンは青春時代,人間の感情はしょせん化学反応だと思って自らを慰めた覚えがある.化学反応を遡れば物理法則に行き着く.
物理法則は人びとの固有性個別性を圧殺する.横光利一はこの法則の無慈悲さに拘泥し,独特の作風に向かったと加藤氏は説く.客観的に記述することと主観的に記述することの葛藤への救いを,不確定性に求めたこともあったようだ.
不確定性原理はまた中川與一の「偶然文学論」を生み出した.徹底的な合理性の追求の成果であるはずの量子力学が,決定論的な世界観からの逸脱を含むことに,「浪漫主義者の心情」に近接するとして共感した.
この論考で名前が挙がった3人の中で,16トンがいちばん親しく読んだのは稲垣足穂である.彼は彼なりに物理学が説く時空の可変性・流動性を摂取した.「一千一秒物語」はそのような見方で解釈できる.

以下は 16 トンの妄想.海野十三は同時代の SF 作家だが,海野作品が時代を感じさせるが,新感覚派の作品は比較的に色褪せていないようだ.当時の SF が主として科学技術を扱ったのに対し,新感覚派は量子力学の思想に注目し,しかもそれを表に出さずに作品の底流とてしたからだろう.

加藤氏が「はじめに」で触れているが,むしろ (大正・昭和期ではなく) 現在の SF 作家たちと量子力学との関係を考えたら実りがありそう.SF 作家は多元宇宙,量子もつれ,量子計算機,さらにはAI とロボットなど技術問題を,まじめに勉強し,正面から扱い,ある意味で現実から発展させている,と思う.

 

BTW,書店で
小山力也編集「疾走! 日本尖端文學撰集 - 新感覚派+新興藝術派+α」筑摩書房 (ちくま文庫 2023/3).
登場する作家は
藤澤桓夫,横光利一,堀辰雄,今東光,川端康成,龍膽寺雄,浅原六朗,山下三郎,...
前述の加藤論文と重なるのは横光だけだが,この本あたりが世間の新感覚派の認識を示しているのかもしれない.まだ読んでいません !!

コメント
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