ようやく報告もすみ、解放された時間だと戻る足が軽かったと笑う。
治安は他よりはましな商店街・・・アーケード街を横切ろうと入り込んだ。
見上げると方角によりアーケードの梁の色が変わる。
それで自分の位置を知れる・・・
比較的真ん中の広場に、まるでフードコートのような場所があり 飲食や休憩も出来る場所があった・・・
そこで休んでいた男、瀧川雅弥は訝しげた・・・
どこぞの男達が静かに誰かを探しながら動いていたようたった。
駆け出しては覗き、何かを見ては歩き出して辺りを眺めていた姿があったのだ。
また新たに現れた人達・・・不意に殴られ、慌て駆け出していった。
何なんだと眺めていたが、巻き込まれないようにとカップにある珈琲を飲みきって場を離れた。
そっと歩く道の遥か先で、脇道を覗き辺りを探りながらも前へと歩く人が居た事に気づく。
大きめのリュックを抱くようにして、それでも難なく歩く姿に手慣れさと行動が上手いと目が離れなかった。
ふと思い出して笑む・・・リュックに見覚えがあったのだ。
それは数日前に確信した。
逃げるように走る・・・そっとリュックを隠すように置き、それらしき人を引き寄せては倒し 事が終われば大事にリュックを抱えて姿を街中へ消していった。
余りの手際の良さに、事務所で使えそうな腕だと思え目が向いて眺めていた自分だった。
何より大事にしている理由が気になった。
そのリュックは目の前にあった・・・確認しては足を早め、それでも自然に歩いていく人だった。
抜け出た場所から眺めながら歩くようだった。
それでも治安のいい場所、追いかけていた人達も入れない場所へと行く人に口を引いて眺めた。
混雑はないが、人混みはあり そのファミレスは交番から眺められる場所でもあった。
席を選べば通りさえ一望も出来る・・・その人は人の視線が目立たないであろう場所へ腰を下ろした。
瀧川は迷う事なく入り込み、外ごと見晴らしも出来る場所へ身を置いた。
店員に声をかける姿を眺める・・・その間の準備したモノを見て初めて驚いた・・・大きめのリュックを置き、上着も脱いでいく・・・
声一つ上げない小さな姿に驚いた・・・テーブルへ準備されていく・・・
瀧川は驚き外を眺めた・・・追っ手が素通りしていく・・・迷うように立ち上がると席へ運んでいた店員に声をかけて同じ席へ腰を下ろした。
『頼めたか?(笑)』
『 ・・・』
『(笑)珈琲とでコレ、二つずつ頼む』
『他は(笑)』
店員が聞く・・・
『取り合えず今はいい(笑)』
了解とチェックして席から離れて行った店員に笑み、静かに前を向いた。
『街に入り込んでた姿は数回見てた(笑)、それで その姿を見て驚いて・・・
悪かった(笑)本物か、確認したくなったんた・・・』
腕の中に視線を飛ばし、そっと壁の鏡を眺めた。
『(笑)ひと芝居頼むな、うっさい奴にバレた』
なんだと眺めると、迷わずに突進するように歩いてきた人達を見返した。
声にも出さずに睨むように二人を眺める・・・
『本当に子供を運ばれたわけ?』
『そうだ、置いてきやがった・・・』
『その子は?』
『知り合いの子で、シッターで、人質だ(笑)』
『ガキじゃなくて、この子を取りに来るわけ?』
『そうだ』
『羽佐間関係の女じゃなくて?』
『ん?ソコも探してんのか?』
『そうよ、囲った女を見つけて連れ戻してやったのに逃げられたらしいわ』
『この子じゃないの?』
今度は彼女へ目を落として観察していた。
『おい!子連れじゃねーだろ(笑)。
ちゃんと検査もして確認してきて、遅くなったから食べに来てんだぞ?』
『事務所で働かせんの?』
『(笑)見張れねーだろ・・・
おい、出て聞かれたら正しく伝えといてくれよ!』
『分かったわ(笑)瀧川の子と事務員って言ってあげるわ』
サンキュと笑って言うと、笑みながら手を振って出て行った事に彼女が驚いた。
『ガキ連れて逃げきれるのか?』
『 ・・・』
『だよな、初めて見てから だいぶ立つしな(笑)』
『どーしたら出れますか?』
『周辺は全部庭だ・・・容姿は大丈夫かもしんねーが、新顔は中途半端で出さねーし・・・』
『出たいんです・・・』
『お前の産んだ子か?』
そうだと頷く彼女を眺めた。
ようやく飲みきった子は、満たされたからか静かに眠り始めた・・・
『泣くのが商売なのに・・・』
聞いた彼女は悲し気に子を見つめるだけだった。
『オムツ、変えた方がいいんじゃねーか?。普通は飲んだら変えて寝るだろ・・・』
そうかと鞄を眺め肩を落とす彼女もいた・・・
『ねーのか?』
そうだと頷く彼は苦笑いして、子供を眺める。
『早く食って・・・それから買い出しに付き合ってやる。
ながながとココに居たら不味いし・・・お前は知り合いの娘にして(笑)、その子は俺の子供にしとく』
『何故』
『分かんねーよ、みょうに気になって拾いたくなった・・・』
それ以上は話さない人に感謝して、食べ始める人を眺め仕方ないと彼女も食べるのだった。
隣にあった服屋で買い物をしまくる瀧川・・・歩きながらリュックにしまいこみニット帽を彼女に被せ、子は見えるように抱かせると次はと促して歩き出した。
ドラッグストアに入ると、素早い情報は流れていたのか覗き込み必要なモノを取り揃えて袋へ詰め込み瀧川にムッとした顔をしながら手渡した。
苦笑いをしながら会計をする・・・袋を 持つと黙って出る瀧川の後を追った。
その間に男は話をする・・・似た子供の状況に利用させてくれと笑って話す人を観察するように眺めた。
細い階段を上がる・・・ソコから奥へ入り、数度のロックが外れた部屋を 解除しては入りと上へ奥へと向かった。
プライベートだろう部屋・・・生活にと使えるように作り変えられていた事に驚いた。
更に奥の部屋・・・本当の使い道はオフィスらしいと分かるが、誰かの部屋として使えるようにもなっていた。
『取り合えず(笑)使え。ガキは動かねーだろうしな・・・
手が空いたら出てこい、話がある』
『 ・・・』
返事は無かったが瀧川は、そう言うとカーテンを閉めきり視線を外した。
リビングと寝室だろう場所・・・他はフローリング板が敷かれてあり冷えもなく過ごしやすい場所でもあった。
キッチンとダイニングスペースは靴のままに過ごせた。
冷蔵庫からビールを取り出して、キッチンカウンターにある椅子に腰かけカーテン向こうにいる彼女の気配を感じながら考えていた。
容姿は歳若い気がする・・・子供は産まれたばかりのように小さい・・・子供が子供をと考えた。
羽佐間組の存在・・・高野辺の存在・・・その中で誰の女なのかと、相手を探すかのように思い浮かべた。
当てはまらない人達・・・子を取り戻す程の器の男は居たのかと・・・その場所に子供は交ざるのかと・・・
そっと出て来た彼女を見返す・・・存在はあり、動じない様子に口を引く。
『頼みがあります』
『何だ?』
『子供が落ち着くまで、置いて下さいませんか?』
『何処まで話す?』
『それで・・・』
いいのかと瀧川を眺める彼女もいた。
『お前の腕と頭を買う。
嘘は買わん、情報も先の事情も。
探偵事務所をしてる・・・ココで、お前を働かせる・・・』
『全部を聞くけど、流さずに所員にも秘密?それが出来るんですか?』
『もしもがある・・・命を預け互いを助け合う事もある。
スタッフを晒すのに嘘つきは置けないだろ・・・
俺は聞くが所員に言う気はない。
いつか出た先で足を引きに行く事もない・・・嘘がないなら給料を出す。
どうせ出れないだろ・・・子供を守り生かせる場所だと思うぞ(笑)』
どうだと彼女を見る人を眺め、考える彼女・・・子供が寝ている場所を見返していた。
『あの子は・・・産まれた日から・・・泣き声さえ出しません。
あと一ヶ月して検査をしなくてはならなくて・・・
それと、もう一人の子は預けてるので・・・落ち着けたら引き取りに行きます』
『ん?・・ 双子?
それより何で様子見だ?普通は・・・』
『お金が無くて・・・産んで直ぐに病院から出たので・・・』
『費用は?』
『持ってた分は出産費用だけで・・・残りは子供のミルクとオムツ・・・それと預けた先に置いてきたので・・・』
『ん?』
『あの子は陽咲と言います・・・私は陽緋と言います・・・預けた子は清瀬と言います』
『未成年か?』
『21です』
『親は?』
『4年ほど会ってません』
『ガキの事も知らずか?』
『私が生きてる事も・・・』
『だから、名字も言わずか(笑)。
二人の子は連れ出せないな・・・大変な方を連れてたのか・・・・
俺は瀧川雅弥と言う・・・これから先は、表向きは瀧川を名乗れ。 ・・・免許』
『取ってます、家を出る前に取ってから完全に家を出たので・・・』
『 ・・・何で出た?一言で言うなら?』
どうせ言わないのだろうと言い方を変えてみた。
『外で生きたかったから・・・』
『(笑)ソコは好きな男の後を追った。じゃなくてか?』
『(笑)本当に外で生きたかったからです・・・』
『(笑)友達は?本当に双子か?』
『 ・・・』
瀧川が声にして・・・押し黙る彼女を眺めた・・・噂を疑い聞いてみた彼・・・答えない事で、どこまでが真実か調べようと思った。
『逃げてる? 居ない?死んだ・・・のか?』
うつ向いたままに黙った彼女を眺めた・・・その頭を撫でた瀧川だった。
『大事な人を失った目だったのか・・・自分を消す感じもなくて、それでもお前の奥で泣いてる気がして目が離せなかった。
諦めた感じとか、悲しさとか・・・沈んでる感じはあるが何とか持ちこたえてる理由というか・・・それが気になってな・・・
何より子供が居た事で(笑)理由は知ったな・・・自分から命は捨てない・・・』
『最初から捨てる気もないです。街から出れない恐怖だけでした。
捕まえる理由は知りたいけど、子供を取られるかもって聞いてたし・・・人質にされて、それを理由に売る事もしたくないし・・・手放したくもない』
『喧嘩が強くて助かる(笑)。身は自分で守ってくれねーとな』
『本当に私でも働けますか?』
『(笑)出来る奴が出来る事をして受けるからな。
お前なら、どの仕事ならOKって決めてソレに合わせて仕事を回す。
その他も回す(笑)調査した報告書も出して貰うぞ?』
『その間の子供の世話って・・・』
『その相談も明日からする(笑)。時間帯で俺も見れるし、一人、子育てしてる事務員もいる(笑)』
『保育園とか・・・』
『安全管理が高い園は、遠いし高いぞ(笑)』
『それでも探してみます、いずれ二人になるので・・・』
『 ・・・』
何かを考えながら話す人を眺める・・・
『お世話になります』
『(笑)従姉妹にしとくか?』
『瀧川さんは、いくつですか?』
『32(笑)』
『私の子で、瀧川さんが従兄弟の兄でいいですか?』
『陽咲が第一?』
『当たり前です。二ヶ月ですから・・・覚えといて下さい』
『(笑)小さい方か?』
『早産でした・・・助産師がそういってて・・・ も少し小さかったら保育器行きでした(笑)』
『先に病院に連れてくか?』
『迷います・・・どの場が安全で・・・どの場で生きて行けるのか・・・
子供の先を考えなきゃ・・・』
小さな囁き・・・呟きながらもカーテンの向こうに眠る陽咲を眺めた。
誓いをたてるように・・・ギュッと手を握り締めていた・・・
それから暫くは、環境の慣れをと陽緋は陽咲と穏やかに過ごした。
誰かしらの叫ぶ声音は聞こえていた。
それはドアをノックする人さえ・・・それでも瀧川はドアを開ける事は無く、二人が誰かに会う事も無かった。
食事さえ瀧川までが自宅で取るようになったのだ。
買い込めば陽緋が作り出す・・・室内の端に上がる先の部屋は、トレーニングスペースがあり、色んな機材もあった。
時間が出来ると自分自身を鍛える時間を彼女は作った。
揺りかごのように陽咲を寝かせられる椅子・・・自分で手足を動かして遊んでいるようだった。
声をかけて見つめると、楽し気に笑み返して動く・・・その揺れさえ楽し気に笑う陽咲だった。
見返す陽咲に笑む・・・足元にある陽緋の頬に触れて目を合わせる陽咲・・・
息を吐き耐えた顔で笑うと、一緒に笑む陽咲だった。
足裏へキスをする・・・擽ったいのか直ぐに動かして笑む陽咲・・・続けて欲しいのか同じ場所に足を伸ばす・・・可笑しくてチュッと音を出して見返した陽緋に嬉しくて楽しいのか足は何度も跳ね上がり楽し気だった。
治安は他よりはましな商店街・・・アーケード街を横切ろうと入り込んだ。
見上げると方角によりアーケードの梁の色が変わる。
それで自分の位置を知れる・・・
比較的真ん中の広場に、まるでフードコートのような場所があり 飲食や休憩も出来る場所があった・・・
そこで休んでいた男、瀧川雅弥は訝しげた・・・
どこぞの男達が静かに誰かを探しながら動いていたようたった。
駆け出しては覗き、何かを見ては歩き出して辺りを眺めていた姿があったのだ。
また新たに現れた人達・・・不意に殴られ、慌て駆け出していった。
何なんだと眺めていたが、巻き込まれないようにとカップにある珈琲を飲みきって場を離れた。
そっと歩く道の遥か先で、脇道を覗き辺りを探りながらも前へと歩く人が居た事に気づく。
大きめのリュックを抱くようにして、それでも難なく歩く姿に手慣れさと行動が上手いと目が離れなかった。
ふと思い出して笑む・・・リュックに見覚えがあったのだ。
それは数日前に確信した。
逃げるように走る・・・そっとリュックを隠すように置き、それらしき人を引き寄せては倒し 事が終われば大事にリュックを抱えて姿を街中へ消していった。
余りの手際の良さに、事務所で使えそうな腕だと思え目が向いて眺めていた自分だった。
何より大事にしている理由が気になった。
そのリュックは目の前にあった・・・確認しては足を早め、それでも自然に歩いていく人だった。
抜け出た場所から眺めながら歩くようだった。
それでも治安のいい場所、追いかけていた人達も入れない場所へと行く人に口を引いて眺めた。
混雑はないが、人混みはあり そのファミレスは交番から眺められる場所でもあった。
席を選べば通りさえ一望も出来る・・・その人は人の視線が目立たないであろう場所へ腰を下ろした。
瀧川は迷う事なく入り込み、外ごと見晴らしも出来る場所へ身を置いた。
店員に声をかける姿を眺める・・・その間の準備したモノを見て初めて驚いた・・・大きめのリュックを置き、上着も脱いでいく・・・
声一つ上げない小さな姿に驚いた・・・テーブルへ準備されていく・・・
瀧川は驚き外を眺めた・・・追っ手が素通りしていく・・・迷うように立ち上がると席へ運んでいた店員に声をかけて同じ席へ腰を下ろした。
『頼めたか?(笑)』
『 ・・・』
『(笑)珈琲とでコレ、二つずつ頼む』
『他は(笑)』
店員が聞く・・・
『取り合えず今はいい(笑)』
了解とチェックして席から離れて行った店員に笑み、静かに前を向いた。
『街に入り込んでた姿は数回見てた(笑)、それで その姿を見て驚いて・・・
悪かった(笑)本物か、確認したくなったんた・・・』
腕の中に視線を飛ばし、そっと壁の鏡を眺めた。
『(笑)ひと芝居頼むな、うっさい奴にバレた』
なんだと眺めると、迷わずに突進するように歩いてきた人達を見返した。
声にも出さずに睨むように二人を眺める・・・
『本当に子供を運ばれたわけ?』
『そうだ、置いてきやがった・・・』
『その子は?』
『知り合いの子で、シッターで、人質だ(笑)』
『ガキじゃなくて、この子を取りに来るわけ?』
『そうだ』
『羽佐間関係の女じゃなくて?』
『ん?ソコも探してんのか?』
『そうよ、囲った女を見つけて連れ戻してやったのに逃げられたらしいわ』
『この子じゃないの?』
今度は彼女へ目を落として観察していた。
『おい!子連れじゃねーだろ(笑)。
ちゃんと検査もして確認してきて、遅くなったから食べに来てんだぞ?』
『事務所で働かせんの?』
『(笑)見張れねーだろ・・・
おい、出て聞かれたら正しく伝えといてくれよ!』
『分かったわ(笑)瀧川の子と事務員って言ってあげるわ』
サンキュと笑って言うと、笑みながら手を振って出て行った事に彼女が驚いた。
『ガキ連れて逃げきれるのか?』
『 ・・・』
『だよな、初めて見てから だいぶ立つしな(笑)』
『どーしたら出れますか?』
『周辺は全部庭だ・・・容姿は大丈夫かもしんねーが、新顔は中途半端で出さねーし・・・』
『出たいんです・・・』
『お前の産んだ子か?』
そうだと頷く彼女を眺めた。
ようやく飲みきった子は、満たされたからか静かに眠り始めた・・・
『泣くのが商売なのに・・・』
聞いた彼女は悲し気に子を見つめるだけだった。
『オムツ、変えた方がいいんじゃねーか?。普通は飲んだら変えて寝るだろ・・・』
そうかと鞄を眺め肩を落とす彼女もいた・・・
『ねーのか?』
そうだと頷く彼は苦笑いして、子供を眺める。
『早く食って・・・それから買い出しに付き合ってやる。
ながながとココに居たら不味いし・・・お前は知り合いの娘にして(笑)、その子は俺の子供にしとく』
『何故』
『分かんねーよ、みょうに気になって拾いたくなった・・・』
それ以上は話さない人に感謝して、食べ始める人を眺め仕方ないと彼女も食べるのだった。
隣にあった服屋で買い物をしまくる瀧川・・・歩きながらリュックにしまいこみニット帽を彼女に被せ、子は見えるように抱かせると次はと促して歩き出した。
ドラッグストアに入ると、素早い情報は流れていたのか覗き込み必要なモノを取り揃えて袋へ詰め込み瀧川にムッとした顔をしながら手渡した。
苦笑いをしながら会計をする・・・袋を 持つと黙って出る瀧川の後を追った。
その間に男は話をする・・・似た子供の状況に利用させてくれと笑って話す人を観察するように眺めた。
細い階段を上がる・・・ソコから奥へ入り、数度のロックが外れた部屋を 解除しては入りと上へ奥へと向かった。
プライベートだろう部屋・・・生活にと使えるように作り変えられていた事に驚いた。
更に奥の部屋・・・本当の使い道はオフィスらしいと分かるが、誰かの部屋として使えるようにもなっていた。
『取り合えず(笑)使え。ガキは動かねーだろうしな・・・
手が空いたら出てこい、話がある』
『 ・・・』
返事は無かったが瀧川は、そう言うとカーテンを閉めきり視線を外した。
リビングと寝室だろう場所・・・他はフローリング板が敷かれてあり冷えもなく過ごしやすい場所でもあった。
キッチンとダイニングスペースは靴のままに過ごせた。
冷蔵庫からビールを取り出して、キッチンカウンターにある椅子に腰かけカーテン向こうにいる彼女の気配を感じながら考えていた。
容姿は歳若い気がする・・・子供は産まれたばかりのように小さい・・・子供が子供をと考えた。
羽佐間組の存在・・・高野辺の存在・・・その中で誰の女なのかと、相手を探すかのように思い浮かべた。
当てはまらない人達・・・子を取り戻す程の器の男は居たのかと・・・その場所に子供は交ざるのかと・・・
そっと出て来た彼女を見返す・・・存在はあり、動じない様子に口を引く。
『頼みがあります』
『何だ?』
『子供が落ち着くまで、置いて下さいませんか?』
『何処まで話す?』
『それで・・・』
いいのかと瀧川を眺める彼女もいた。
『お前の腕と頭を買う。
嘘は買わん、情報も先の事情も。
探偵事務所をしてる・・・ココで、お前を働かせる・・・』
『全部を聞くけど、流さずに所員にも秘密?それが出来るんですか?』
『もしもがある・・・命を預け互いを助け合う事もある。
スタッフを晒すのに嘘つきは置けないだろ・・・
俺は聞くが所員に言う気はない。
いつか出た先で足を引きに行く事もない・・・嘘がないなら給料を出す。
どうせ出れないだろ・・・子供を守り生かせる場所だと思うぞ(笑)』
どうだと彼女を見る人を眺め、考える彼女・・・子供が寝ている場所を見返していた。
『あの子は・・・産まれた日から・・・泣き声さえ出しません。
あと一ヶ月して検査をしなくてはならなくて・・・
それと、もう一人の子は預けてるので・・・落ち着けたら引き取りに行きます』
『ん?・・ 双子?
それより何で様子見だ?普通は・・・』
『お金が無くて・・・産んで直ぐに病院から出たので・・・』
『費用は?』
『持ってた分は出産費用だけで・・・残りは子供のミルクとオムツ・・・それと預けた先に置いてきたので・・・』
『ん?』
『あの子は陽咲と言います・・・私は陽緋と言います・・・預けた子は清瀬と言います』
『未成年か?』
『21です』
『親は?』
『4年ほど会ってません』
『ガキの事も知らずか?』
『私が生きてる事も・・・』
『だから、名字も言わずか(笑)。
二人の子は連れ出せないな・・・大変な方を連れてたのか・・・・
俺は瀧川雅弥と言う・・・これから先は、表向きは瀧川を名乗れ。 ・・・免許』
『取ってます、家を出る前に取ってから完全に家を出たので・・・』
『 ・・・何で出た?一言で言うなら?』
どうせ言わないのだろうと言い方を変えてみた。
『外で生きたかったから・・・』
『(笑)ソコは好きな男の後を追った。じゃなくてか?』
『(笑)本当に外で生きたかったからです・・・』
『(笑)友達は?本当に双子か?』
『 ・・・』
瀧川が声にして・・・押し黙る彼女を眺めた・・・噂を疑い聞いてみた彼・・・答えない事で、どこまでが真実か調べようと思った。
『逃げてる? 居ない?死んだ・・・のか?』
うつ向いたままに黙った彼女を眺めた・・・その頭を撫でた瀧川だった。
『大事な人を失った目だったのか・・・自分を消す感じもなくて、それでもお前の奥で泣いてる気がして目が離せなかった。
諦めた感じとか、悲しさとか・・・沈んでる感じはあるが何とか持ちこたえてる理由というか・・・それが気になってな・・・
何より子供が居た事で(笑)理由は知ったな・・・自分から命は捨てない・・・』
『最初から捨てる気もないです。街から出れない恐怖だけでした。
捕まえる理由は知りたいけど、子供を取られるかもって聞いてたし・・・人質にされて、それを理由に売る事もしたくないし・・・手放したくもない』
『喧嘩が強くて助かる(笑)。身は自分で守ってくれねーとな』
『本当に私でも働けますか?』
『(笑)出来る奴が出来る事をして受けるからな。
お前なら、どの仕事ならOKって決めてソレに合わせて仕事を回す。
その他も回す(笑)調査した報告書も出して貰うぞ?』
『その間の子供の世話って・・・』
『その相談も明日からする(笑)。時間帯で俺も見れるし、一人、子育てしてる事務員もいる(笑)』
『保育園とか・・・』
『安全管理が高い園は、遠いし高いぞ(笑)』
『それでも探してみます、いずれ二人になるので・・・』
『 ・・・』
何かを考えながら話す人を眺める・・・
『お世話になります』
『(笑)従姉妹にしとくか?』
『瀧川さんは、いくつですか?』
『32(笑)』
『私の子で、瀧川さんが従兄弟の兄でいいですか?』
『陽咲が第一?』
『当たり前です。二ヶ月ですから・・・覚えといて下さい』
『(笑)小さい方か?』
『早産でした・・・助産師がそういってて・・・ も少し小さかったら保育器行きでした(笑)』
『先に病院に連れてくか?』
『迷います・・・どの場が安全で・・・どの場で生きて行けるのか・・・
子供の先を考えなきゃ・・・』
小さな囁き・・・呟きながらもカーテンの向こうに眠る陽咲を眺めた。
誓いをたてるように・・・ギュッと手を握り締めていた・・・
それから暫くは、環境の慣れをと陽緋は陽咲と穏やかに過ごした。
誰かしらの叫ぶ声音は聞こえていた。
それはドアをノックする人さえ・・・それでも瀧川はドアを開ける事は無く、二人が誰かに会う事も無かった。
食事さえ瀧川までが自宅で取るようになったのだ。
買い込めば陽緋が作り出す・・・室内の端に上がる先の部屋は、トレーニングスペースがあり、色んな機材もあった。
時間が出来ると自分自身を鍛える時間を彼女は作った。
揺りかごのように陽咲を寝かせられる椅子・・・自分で手足を動かして遊んでいるようだった。
声をかけて見つめると、楽し気に笑み返して動く・・・その揺れさえ楽し気に笑う陽咲だった。
見返す陽咲に笑む・・・足元にある陽緋の頬に触れて目を合わせる陽咲・・・
息を吐き耐えた顔で笑うと、一緒に笑む陽咲だった。
足裏へキスをする・・・擽ったいのか直ぐに動かして笑む陽咲・・・続けて欲しいのか同じ場所に足を伸ばす・・・可笑しくてチュッと音を出して見返した陽緋に嬉しくて楽しいのか足は何度も跳ね上がり楽し気だった。