tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

あふれるほどに・・・ 8

2017-06-04 16:12:11 | あふれるほどに・・・
ようやく報告もすみ、解放された時間だと戻る足が軽かったと笑う。
治安は他よりはましな商店街・・・アーケード街を横切ろうと入り込んだ。

見上げると方角によりアーケードの梁の色が変わる。
それで自分の位置を知れる・・・

比較的真ん中の広場に、まるでフードコートのような場所があり 飲食や休憩も出来る場所があった・・・

そこで休んでいた男、瀧川雅弥は訝しげた・・・
どこぞの男達が静かに誰かを探しながら動いていたようたった。
駆け出しては覗き、何かを見ては歩き出して辺りを眺めていた姿があったのだ。

また新たに現れた人達・・・不意に殴られ、慌て駆け出していった。
何なんだと眺めていたが、巻き込まれないようにとカップにある珈琲を飲みきって場を離れた。


そっと歩く道の遥か先で、脇道を覗き辺りを探りながらも前へと歩く人が居た事に気づく。
大きめのリュックを抱くようにして、それでも難なく歩く姿に手慣れさと行動が上手いと目が離れなかった。

ふと思い出して笑む・・・リュックに見覚えがあったのだ。

それは数日前に確信した。
逃げるように走る・・・そっとリュックを隠すように置き、それらしき人を引き寄せては倒し 事が終われば大事にリュックを抱えて姿を街中へ消していった。

余りの手際の良さに、事務所で使えそうな腕だと思え目が向いて眺めていた自分だった。
何より大事にしている理由が気になった。

そのリュックは目の前にあった・・・確認しては足を早め、それでも自然に歩いていく人だった。

抜け出た場所から眺めながら歩くようだった。
それでも治安のいい場所、追いかけていた人達も入れない場所へと行く人に口を引いて眺めた。


混雑はないが、人混みはあり そのファミレスは交番から眺められる場所でもあった。
席を選べば通りさえ一望も出来る・・・その人は人の視線が目立たないであろう場所へ腰を下ろした。

瀧川は迷う事なく入り込み、外ごと見晴らしも出来る場所へ身を置いた。
店員に声をかける姿を眺める・・・その間の準備したモノを見て初めて驚いた・・・大きめのリュックを置き、上着も脱いでいく・・・

声一つ上げない小さな姿に驚いた・・・テーブルへ準備されていく・・・
瀧川は驚き外を眺めた・・・追っ手が素通りしていく・・・迷うように立ち上がると席へ運んでいた店員に声をかけて同じ席へ腰を下ろした。

『頼めたか?(笑)』
『 ・・・』
『(笑)珈琲とでコレ、二つずつ頼む』
『他は(笑)』
店員が聞く・・・
『取り合えず今はいい(笑)』
了解とチェックして席から離れて行った店員に笑み、静かに前を向いた。

『街に入り込んでた姿は数回見てた(笑)、それで その姿を見て驚いて・・・
悪かった(笑)本物か、確認したくなったんた・・・』
腕の中に視線を飛ばし、そっと壁の鏡を眺めた。

『(笑)ひと芝居頼むな、うっさい奴にバレた』
なんだと眺めると、迷わずに突進するように歩いてきた人達を見返した。
声にも出さずに睨むように二人を眺める・・・

『本当に子供を運ばれたわけ?』
『そうだ、置いてきやがった・・・』
『その子は?』
『知り合いの子で、シッターで、人質だ(笑)』
『ガキじゃなくて、この子を取りに来るわけ?』
『そうだ』

『羽佐間関係の女じゃなくて?』
『ん?ソコも探してんのか?』
『そうよ、囲った女を見つけて連れ戻してやったのに逃げられたらしいわ』
『この子じゃないの?』
今度は彼女へ目を落として観察していた。

『おい!子連れじゃねーだろ(笑)。
ちゃんと検査もして確認してきて、遅くなったから食べに来てんだぞ?』
『事務所で働かせんの?』
『(笑)見張れねーだろ・・・
おい、出て聞かれたら正しく伝えといてくれよ!』

『分かったわ(笑)瀧川の子と事務員って言ってあげるわ』
サンキュと笑って言うと、笑みながら手を振って出て行った事に彼女が驚いた。

『ガキ連れて逃げきれるのか?』
『 ・・・』
『だよな、初めて見てから だいぶ立つしな(笑)』
『どーしたら出れますか?』
『周辺は全部庭だ・・・容姿は大丈夫かもしんねーが、新顔は中途半端で出さねーし・・・』

『出たいんです・・・』
『お前の産んだ子か?』
そうだと頷く彼女を眺めた。
ようやく飲みきった子は、満たされたからか静かに眠り始めた・・・

『泣くのが商売なのに・・・』
聞いた彼女は悲し気に子を見つめるだけだった。
『オムツ、変えた方がいいんじゃねーか?。普通は飲んだら変えて寝るだろ・・・』
そうかと鞄を眺め肩を落とす彼女もいた・・・

『ねーのか?』
そうだと頷く彼は苦笑いして、子供を眺める。
『早く食って・・・それから買い出しに付き合ってやる。
ながながとココに居たら不味いし・・・お前は知り合いの娘にして(笑)、その子は俺の子供にしとく』

『何故』
『分かんねーよ、みょうに気になって拾いたくなった・・・』
それ以上は話さない人に感謝して、食べ始める人を眺め仕方ないと彼女も食べるのだった。

隣にあった服屋で買い物をしまくる瀧川・・・歩きながらリュックにしまいこみニット帽を彼女に被せ、子は見えるように抱かせると次はと促して歩き出した。

ドラッグストアに入ると、素早い情報は流れていたのか覗き込み必要なモノを取り揃えて袋へ詰め込み瀧川にムッとした顔をしながら手渡した。
苦笑いをしながら会計をする・・・袋を 持つと黙って出る瀧川の後を追った。

その間に男は話をする・・・似た子供の状況に利用させてくれと笑って話す人を観察するように眺めた。
細い階段を上がる・・・ソコから奥へ入り、数度のロックが外れた部屋を 解除しては入りと上へ奥へと向かった。

プライベートだろう部屋・・・生活にと使えるように作り変えられていた事に驚いた。
更に奥の部屋・・・本当の使い道はオフィスらしいと分かるが、誰かの部屋として使えるようにもなっていた。

『取り合えず(笑)使え。ガキは動かねーだろうしな・・・
手が空いたら出てこい、話がある』
『 ・・・』
返事は無かったが瀧川は、そう言うとカーテンを閉めきり視線を外した。

リビングと寝室だろう場所・・・他はフローリング板が敷かれてあり冷えもなく過ごしやすい場所でもあった。
キッチンとダイニングスペースは靴のままに過ごせた。

冷蔵庫からビールを取り出して、キッチンカウンターにある椅子に腰かけカーテン向こうにいる彼女の気配を感じながら考えていた。

容姿は歳若い気がする・・・子供は産まれたばかりのように小さい・・・子供が子供をと考えた。
羽佐間組の存在・・・高野辺の存在・・・その中で誰の女なのかと、相手を探すかのように思い浮かべた。

当てはまらない人達・・・子を取り戻す程の器の男は居たのかと・・・その場所に子供は交ざるのかと・・・


そっと出て来た彼女を見返す・・・存在はあり、動じない様子に口を引く。
『頼みがあります』
『何だ?』
『子供が落ち着くまで、置いて下さいませんか?』

『何処まで話す?』
『それで・・・』
いいのかと瀧川を眺める彼女もいた。
『お前の腕と頭を買う。
嘘は買わん、情報も先の事情も。
探偵事務所をしてる・・・ココで、お前を働かせる・・・』

『全部を聞くけど、流さずに所員にも秘密?それが出来るんですか?』
『もしもがある・・・命を預け互いを助け合う事もある。
スタッフを晒すのに嘘つきは置けないだろ・・・

俺は聞くが所員に言う気はない。
いつか出た先で足を引きに行く事もない・・・嘘がないなら給料を出す。
どうせ出れないだろ・・・子供を守り生かせる場所だと思うぞ(笑)』

どうだと彼女を見る人を眺め、考える彼女・・・子供が寝ている場所を見返していた。

『あの子は・・・産まれた日から・・・泣き声さえ出しません。
あと一ヶ月して検査をしなくてはならなくて・・・
それと、もう一人の子は預けてるので・・・落ち着けたら引き取りに行きます』
『ん?・・ 双子?
それより何で様子見だ?普通は・・・』

『お金が無くて・・・産んで直ぐに病院から出たので・・・』
『費用は?』
『持ってた分は出産費用だけで・・・残りは子供のミルクとオムツ・・・それと預けた先に置いてきたので・・・』
『ん?』

『あの子は陽咲と言います・・・私は陽緋と言います・・・預けた子は清瀬と言います』
『未成年か?』
『21です』
『親は?』
『4年ほど会ってません』
『ガキの事も知らずか?』
『私が生きてる事も・・・』

『だから、名字も言わずか(笑)。
二人の子は連れ出せないな・・・大変な方を連れてたのか・・・・
俺は瀧川雅弥と言う・・・これから先は、表向きは瀧川を名乗れ。 ・・・免許』
『取ってます、家を出る前に取ってから完全に家を出たので・・・』

『 ・・・何で出た?一言で言うなら?』
どうせ言わないのだろうと言い方を変えてみた。
『外で生きたかったから・・・』
『(笑)ソコは好きな男の後を追った。じゃなくてか?』
『(笑)本当に外で生きたかったからです・・・』

『(笑)友達は?本当に双子か?』
『 ・・・』
瀧川が声にして・・・押し黙る彼女を眺めた・・・噂を疑い聞いてみた彼・・・答えない事で、どこまでが真実か調べようと思った。
『逃げてる? 居ない?死んだ・・・のか?』
うつ向いたままに黙った彼女を眺めた・・・その頭を撫でた瀧川だった。

『大事な人を失った目だったのか・・・自分を消す感じもなくて、それでもお前の奥で泣いてる気がして目が離せなかった。

諦めた感じとか、悲しさとか・・・沈んでる感じはあるが何とか持ちこたえてる理由というか・・・それが気になってな・・・

何より子供が居た事で(笑)理由は知ったな・・・自分から命は捨てない・・・』

『最初から捨てる気もないです。街から出れない恐怖だけでした。
捕まえる理由は知りたいけど、子供を取られるかもって聞いてたし・・・人質にされて、それを理由に売る事もしたくないし・・・手放したくもない』

『喧嘩が強くて助かる(笑)。身は自分で守ってくれねーとな』
『本当に私でも働けますか?』
『(笑)出来る奴が出来る事をして受けるからな。
お前なら、どの仕事ならOKって決めてソレに合わせて仕事を回す。
その他も回す(笑)調査した報告書も出して貰うぞ?』

『その間の子供の世話って・・・』
『その相談も明日からする(笑)。時間帯で俺も見れるし、一人、子育てしてる事務員もいる(笑)』
『保育園とか・・・』
『安全管理が高い園は、遠いし高いぞ(笑)』
『それでも探してみます、いずれ二人になるので・・・』
『 ・・・』

何かを考えながら話す人を眺める・・・
『お世話になります』
『(笑)従姉妹にしとくか?』
『瀧川さんは、いくつですか?』
『32(笑)』
『私の子で、瀧川さんが従兄弟の兄でいいですか?』

『陽咲が第一?』
『当たり前です。二ヶ月ですから・・・覚えといて下さい』
『(笑)小さい方か?』
『早産でした・・・助産師がそういってて・・・ も少し小さかったら保育器行きでした(笑)』

『先に病院に連れてくか?』
『迷います・・・どの場が安全で・・・どの場で生きて行けるのか・・・
子供の先を考えなきゃ・・・』

小さな囁き・・・呟きながらもカーテンの向こうに眠る陽咲を眺めた。
誓いをたてるように・・・ギュッと手を握り締めていた・・・



それから暫くは、環境の慣れをと陽緋は陽咲と穏やかに過ごした。
誰かしらの叫ぶ声音は聞こえていた。

それはドアをノックする人さえ・・・それでも瀧川はドアを開ける事は無く、二人が誰かに会う事も無かった。

食事さえ瀧川までが自宅で取るようになったのだ。
買い込めば陽緋が作り出す・・・室内の端に上がる先の部屋は、トレーニングスペースがあり、色んな機材もあった。
時間が出来ると自分自身を鍛える時間を彼女は作った。

揺りかごのように陽咲を寝かせられる椅子・・・自分で手足を動かして遊んでいるようだった。

声をかけて見つめると、楽し気に笑み返して動く・・・その揺れさえ楽し気に笑う陽咲だった。

見返す陽咲に笑む・・・足元にある陽緋の頬に触れて目を合わせる陽咲・・・
息を吐き耐えた顔で笑うと、一緒に笑む陽咲だった。

足裏へキスをする・・・擽ったいのか直ぐに動かして笑む陽咲・・・続けて欲しいのか同じ場所に足を伸ばす・・・可笑しくてチュッと音を出して見返した陽緋に嬉しくて楽しいのか足は何度も跳ね上がり楽し気だった。


あふれるほどに・・・ 7

2017-06-04 15:52:37 | あふれるほどに・・・
久し振りの休日が重なり・・・二人は病院にいた。
何度調べても陽性の反応は重なるだけだった・・・諦めるように陽緋は病院へ彼女を連れてきたのだ。

帰り道の自分達の足は重く・・・新たな枷で繋がれた気がした。
日々を忙がしくしていた事で気づきも遅かったのだ・・・そして二人に不安が包み出したと思えた。

その場で考える・・・ギリギリだという行為に怯え、先の不安が消えなかった。
急かす医師・・・物言いは看護師の言葉が突き刺さった・・・

看護師にしてみれば、自分達は子供だ・・・未婚という現実を言葉に変えて、延々と話し込まれた。
聞く間に、七瀬は意思を固めるような顔付きになり 迷いもなくなった事に看護師だけが戸惑った。

子供を持つ母親という立場で話す・・・それでも意思は変わらずに聞く七瀬もいた。
秘密だと本当の事を話した七瀬に、陽緋が驚いた・・・余計に戸惑い、それでも若いというハンデを呟く看護師に苦笑いをして子を流す行為を拒否した七瀬だった。

『まさか貴女は?』
今度は陽緋を見つめる・・・
『本当に妊娠してたなら私も産みます(笑)。自分だけの子供として育てます。
怖さは残るけど・・・子供を幸せにする力は貯めたいと思います(笑)』

『 ・・・』
『産んだ後に激しい後悔は、絶対にくるのよ?』
隣に居た看護師が言った。
『(笑)自分で決めたなら、後ろを見る事はしません』
『言い切れる?』
『はい(笑)、今は彼女と逃げて・・・一緒に育てます』

『ハル・・・』
『育てるんでしょ?決めたなら振り返るな! 追っ手はまける力はあると信じな(笑)』
産みたいのに怖さが先に出る・・・見つかって囲われる恐怖・・・もしかしたら、子供を取られるかもしれない恐怖が先にたった。

それでも産み育てたい七瀬だった・・・二人で看護師と話した事を、帰ってからも互いに念を押すように話し込んだ。

陽緋さえ反応はないが、可能性は残っていた・・・だから余計に七瀬は怖かったのだ。
妊婦の二人で生きて行けるのかと・・・

『本当の・・・最悪な状態になったら、実家に頼み込む・・・』
『ハルが辛いだけじゃん!』
『それでも、手離さない条件で受け入れて過ごせるから大丈夫(笑)
七瀬を私が囲うだけだよ・・・その間に出る準備をする(笑)。

いつかの計画をしよう・・・父親は居ない(笑)愛して産んだと、幸せを約束して居なくなっただけと教えよう』
溢れた涙を拭いてやりながら陽緋は七瀬に呟いたのだった。



田舎町へ移り住む・・・それは転々と・・・まるで放浪するような生活が始まった・・・
その間に現実を受け入れる陽緋も、迷わずに決めた。

比較的にお腹が出ない陽緋・・・不思議と負担にもならずに動けた事にホッとした。
名を変えて夜の道へ入り込む・・・十分に貯めると次へと移り住んだ・・・


『な、七瀬・・・何かヤバい・・・タクシー捕まえて』
不意に起き出した陽緋が声にした・・・戸惑いながらも、調べて頼んでいた七瀬は彼女を産院へ連れ出した。

その町では大きな病院だった・・・慌てた運転手が間違えて連れてきたのだ。

『お父さん?』
『わりいな・・・近場で考えたら、お前の所しか思い浮かばなかった(笑)
急に産気づいたらしいし、若いからヤバいと思った』

だから連れてきたと、救急へ運ばれていく彼女達を眺めながら言った。
『なんかよ・・・引っ越してきたばっかりらしいぞ(笑)』
『この町に移り住むと?』

『違うらしい・・・借りのアパートで体を休めて、落ち着いてから行くはずだったらしい・・・
もしもって(笑)知り合った俺のタクシー会社に頼んでたんだ。
町外れのバーで、俺も知り合ってたんだがな(笑)』

『えっ・・・・』
『そうだ(笑)妊婦がだ・・・逃げてるらしくてよ・・・友達も妊婦らしいぞ?
今の子は最初は妊婦と思えなかったがな(笑)服で隠してたし』
『 ・・・』
『病院には言うなよ・・・若い二人で頑張ってんだ・・・逃がしたいだろ・・・』
『 ・・・』

自分の娘のような顔に驚き、確かにと頷くと彼女は病院へ戻って行った。


暫くして友達の見舞いが無くなった事に違和感を持った彼女・・・
『それとなく聞いたけど・・・』
話さないのだと看護師たちが口々に言った・・・

『支払いは大丈夫と聞いてるけど、も一人の子が気になるわね・・・』
師長の呟きにスタッフが頷く・・・住所さえ未定のアパートだった。

簡易アパート・・・それは全国化されていて月単位の契約で手軽に借りられるモノだった。
連絡先も携帯で、かかれたモノは入院している彼女の番号だけだった。


師長が話をしに病室へ入った。
既に退院の準備をしようとしていた陽緋に驚く。
『すみません、ご迷惑をおかけしました・・・子供が大丈夫なら退院します』
『 ・・・』

『大丈夫です(笑)。動き過ぎて早まると調べてたので・・・
私のが そうですよね?』
『病院側は助かるけど・・・・本当なら、もう少し体を休めて欲しいのよ?』
『(笑)無理をしなきゃ大丈夫ですよね?』
『そうだけど・・・』

『一ヶ月位なら余裕はあるので大丈夫です(笑)お世話になりました』
呟く陽緋は礼をして見返した。

看護師に抱かれた子を眺め、笑みを浮かべた陽緋を見つめる。
『頑張れ!』
優しく抱き止めて呟く陽緋だった・・・病院の事務長が入り込む・・・

『すまんね・・・本来は駆け込みは拒否するんだが・・・無事に産んでくれて感謝するよ。
いいかい?暫くは絶対に安静に過ごしてくれ・・・』

じゃないと困ると言いたげな事務長を睨む師長もいた。
急かし早く出したい事務長に、口を引いて分かったと眺め支払いをすると陽緋は病院を後にした・・・

不安そうに眺める師長・・・産まれたばかりの子も心配で堪らなかった。
追い掛けて陽緋を捕まえ声をかける。

『暫く、この町に留まるなら見に行くから・・・
携帯に(笑)電話するから居場所を教えなさい。
全部が初めてでしょ・・・人を育てる一歩を貴女が居る間に教えるから。
だから遠慮なく電話にでなさい・・・』

番号をメモした師長の笑みに、目を潤ませて礼をした陽緋だった。
それは日を空けずに教えに来てくれた・・・離れる日も早く、苦笑いをして小さな手帳へ記してくれていた。

『全部が情報どうりにならないと思いなさいね(笑)。たかが少しの参考と思って・・・人それぞれ(笑)それが赤ちゃんなだけよ・・・
いい?お友達にも伝えて教えて頑張りなさいね・・・

シングルという世間体に負けない!自分は自分・・・力を抜いて(笑)笑って育てるのよ・・・』
別れる前日に会いに来た師長の呟きに、丁寧に礼をする。

『もしもの先もあるなら、ソコが安心と思えるなら迷わずに子供の為に行きなさい。
いつかの計画を立てればいいだけよ・・・子供の成長は早いのよ(笑)』
『なんで・・・』

『雰囲気で(笑)気付けるのよ? それなりの場所で暮らせてたんでしょ?(笑)迷わずに・・・先へ生きる為に・・・』
実家に頼れと、直接には言わない事に苦笑いをした。

『本当にありがとうございました・・・自分の手で育てます(笑)』
『焦らずに(笑)』
『はい』
礼をしてタクシーに乗り込むと、笑みを浮かべた陽緋だった。





教会が聳え、それが見渡せる街だった・・・穏やかな佇まい・・・七瀬が逃げ込んだ場所で、頼み込んで暫くはと過ごしていた。

その間に産み落とした七瀬だった・・・シスターに支えられ暮らしていた事を知った。
陽緋は子を預け仕事を始めた。

噂が届き取り合えずと二人は離れて過ごす事にした・・・
少しの猶予と預けたままに飛び出た陽緋・・・七瀬もだが養子には出さずという条件で頼み込んだのだ。

集中して稼ぎ、蓄えホッとしながら戻った陽緋・・・そこには既に七瀬は居なかった事に驚いた。
連絡さえ取れず、二人を探す人達の事も聞いた。

子は二人へ繋がらないように騙し隠してくれた事に感謝したが、七瀬は子を連れて居なかった。
『預かりますよ?二人は大変でしょう・・・』
『そうですけど・・・』

『絶対に迎えに来ると言い残して出たそうですから・・・信じます(笑)』
『落ち着けて安定したら、一度会いに来ます。その時に来てなかったら引き取りますから・・・絶対に手離さないでくれませんか?』
『貴女が育てる?』

『はい(笑)。本当に無理なら実家に戻ります・・・
子供の父親へ取られたくないので・・・それじゃ七瀬が辛いから・・・』
『信じますよ?』
『誓います・・・双子として育てます・・・だから・・・』
真剣な眼差しに、シスターは頷いた事にホッとした。

『清瀬(笑)、絶対に迎えに来るからね。七瀬を助けて連れてくるから・・・頑張って待ってな!
陽咲と一緒に大きくなろうね・・・』
『清瀬君(笑)。
大丈夫よ、守りますよ・・・携帯は私個人にしますね(笑)
異動になったら一緒に連れて別の教会で暮らしてますね(笑)』
その呟きに感謝する・・・何度も礼をして、当分の費用を渡して場を離れた。

記憶にある人を見つけ、容姿を先に変えておいた事にホッとした。
一度は見つかり、子を守りながら蹴り飛ばして逃げれた・・・追っ手はないと確信して、ようやく安堵した陽緋だった。

調べてから向かう陽緋もいた・・・その間も七瀬へメッセージを残す。
なかなか連絡も着かず、幼すぎる子供をたてに働ける場所は少なかった。

奏大へ送金を頼み、内緒にして話した陽緋もいた。
違和感を抱かれない事にホッとして話をして終えた。

自分に合いそうな街と思えた土地にホッとして、彷徨うように探りながら歩く・・・

陽咲の為に暫くは安定したい陽緋・・・落ち着けて探したい思いもあり、焦らないように身を置く場所を探し始めた陽緋だった・・・

あふれるほどに・・・ 6

2017-06-04 13:52:22 | あふれるほどに・・・
七瀬が皐月と別れたと聞いてから間もなく彼女は姿を消した・・・理由が知りたくて、皐月と会えるように柊音に頼むと 場所を指定され彼女は向かった。

藤崎が警護だと一緒に来てくれた事に苦笑いをして一軒の店へ入った。

その街の繁華街では大きなクラブで、人混みは半端なく連絡をしてから待つ陽緋。
フロアを覗いて陽気に踊り楽し気な時間を過ごす人達を眺めていた。

『待たせた』
少しムッとしながらドカッとソファーへ座り込む皐月を見返した。
『何のようだ?』

グラスを傾け口にすると、彼が呟く・・・理由を知るはずなのに、わざわざ声にした事に腹が立ったが我慢して見返した。

『別れたんだから関係ないだろ!』
『私の親友に手を出したのに、関係なくない・・・』
『 ・・・黙って消えたんだぞ?話さえ聞こうともしないで・・・』

『考える時間が欲しいと聞いてない?』
『なんで考える? 俺と居たくないから別れたんだろ!』

『 ・・・自分の居場所と思えなかったからよ・・・順番待ちは、普通したくないと思うけど?』
『俺らの場所は普通なんだぞ?』
『なら、一番最初に言うべきだったわ』

『逃げんだろ』
『当たり前よ。七瀬の場所では、それが普通だもの。
あちこちに女の存在があって・・・気にしてない七瀬を攻撃してるのよ?』

『ん?誰が?』
『他に貴方が囲ってる女しか居ないわ。
皐月さん・・・次に見つけても七瀬を捕まえないでね』
『なんでだ!』

『一般の生活を始めてるからよ・・・私もそうするわ・・・
元の自分の居場所へ帰るね・・・だから、貴方は七瀬を探さないで』
『見つけた?』
『 ・・・教える気もない』
『 ・・・』
押し黙り考える皐月を眺めていると、自分を見返し新たに考えこんだ。

『お前も離れる? 柊音は? 捨てんのか?』
『 ・・・貴方の場所では、男が女を捨ててる・・・
別れを切り出したのも貴方・・・七瀬一人を大事にもしなかった・・・』

『探し出すぞ!』
『また囲う?』
『俺の女だぞ?誰かに渡せるかよ!』
『身の危険を感じて消えたのよ?』
『殺さねーよ・・・』

『 ・・・囲うなら同じよ、七瀬が生きれない・・・別れたなら濁さずに、手放して・・・』
『 ・・・聞きてー事があんだよ』
『手遅れよ・・・手を離したんだから』

言われて声にならない皐月を眺める・・・本当に七瀬を愛していなかったのかと探るように眺めた陽緋だった・・・


女の気配に不安だった七瀬・・・それでも七瀬に会いに来る皐月を信じていた・・・嫌だと声にもしてみたが無理と知る七瀬だった。

口喧嘩をする二人・・・ただ最初から居場所が違っていた事に気づいてなかった。
学生でも、既に女を囲い時間を潰していた皐月と知ったのは付き合いだして半年位後だった。

本命は誰かと悩み、彼に聞くと自分だと言う言葉を信じた。
同じ会話をしていた女性が会いに来る・・・住む世界は違うと、執拗に別れろと呟く女性に驚いた・・・

何より囲う女は確実に居て、時間潰しの関係だからと言い捨てて七瀬を言葉で傷つけていた。
何より、そばに付く人達に恐怖を覚えた七瀬もいた。

陽緋が遊びに行っていた日さえ、彼の女たちに出訓した。
同じように柊音を知る彼女も声にして離れまいと声を揃えて言っていたのだった。

激しい喧嘩をした日に・・・別れると・・・出ていけと切り出され、戸惑う七瀬・・・聞き付けた女性迄が追い討ちをかけるように男を使って追ってきた。

数日後に行けば七瀬は出て行った後だった・・・

その前日に電話があり、七瀬は寂しそうに部屋を後にしていた事を知った。



聞いた柊音は、寝付けない陽緋を抱き寄せて彼女を見つめていた。
『七瀬の所に居たいか?』
『柊音は? 頑張れる?』
『 ・・・』

『大丈夫って・・・そんな感じに取れる日が増えたよね?』
『 ・・・』
『助けたいの・・・
七瀬は私を救ってくれた恩人だから、悲しくて辛い彼女といたい・・・』
『俺より・・・』

声に出せずにつまってしまった柊音・・・自分を愛さない陽緋だと分かっていても、離れて行かない陽緋に祈りながら抱いていた。

『ずっと・・・あったかい中で過ごしたかった・・・皐月もなんだぞ・・・』
『婚約者以外も居て・・・その中で幸せになれると思う?
別れろと皐月さんの身内から言われ続ける七瀬を守れる?』

『それは・・・』
『ね・・・無理よね』
『子供が出来たら別だった・・・皐月の手の中に置けたんだ』
『それでも嫌だと思う・・・愛人だもの・・・』

『一人が妊娠したかも知れないと聞いてるが・・・』
『だから脅しも入った?』
『たぶん・・・』
『柊音なら?』
『俺なら・・・か・・・』
悲し気な笑みを浮かべながら考える柊音だった・・・

『前にも言ったろ(笑) ・・・陽緋に俺の子が出来たら・・・・俺は手放す・・・
助けれないが頼み込んで産めと言う・・・争いのない場所で笑って暮らせる場所へ子供を連れてって貰う』

『だから避妊しないわけ?』
『組の女は最初から覚悟を持って生きてる・・・
陽緋は違うから・・・だけど俺が愛す女だ・・・陽緋との子は欲しい・・・抱いて喜んで笑って暮らしたかった・・・
ずっと・・・陽緋を抱いてたいから・・・』

『 ・・・』
『俺を悲しんで離れない陽緋と知ってる・・・
それを俺は利用してるんだ・・・』
『柊音を哀れんでない・・・』
『不安で離れがたいんだろ?・・・俺を愛してないだろ・・・』

『 ・・・そう・・・思えてたわけ?』
そうだと頷く柊音だった・・・黙って柊音は彼女へ寄り添った・・・心音を聞くように寄り添う柊音を優しく包んだ。
目を閉じて互いを感じるのだった。

彼女のラインを撫でて手を優しく巡らせていく柊音・・・別れを惜しむように線を辿るように巡らせた。

外から内へ流れるように優しく触れていく・・・忍ばせ浸り互いを感じた。

同じように首から肩・・・腕へと流して巡らせる手に集中するように・・・神経も昂らせた柊音だった。
優しく包み込まれ、温かな中へ沈み始めると それは静かに浸るように時間を共有したのだった。




見つけ出した陽緋・・・気づいた七瀬が苦笑いをして、うつ向き近付く陽緋を待った。
カフェでバイトをしているという七瀬に、笑み返した陽緋は優しく抱き締めた。

オーナーに頼み奥の控え室を借りて、互いの近況報告を始めた。
『帰る場所がないって(笑)寂しいね』
『少しね(笑)』
『(笑)戻ったらヤバいでしょ?・・・』
『たぶん(笑)』

『陽緋は?』
『七瀬(笑)、なんで簡単に諦めた? 皐月さんが信用出来なかった?』
『ただの女なら離せたけど・・・妊娠したかもって・・・
(笑)言われたら離れるしかないわよ・・・しかも別れるって言われたし』

『そっか・・・
なら、これから・・・どーするの?』
『お金貯めて(笑)外へ出たいかな』
『(笑)少し出たじゃない』
『まーね(笑)兄貴も居ないし』
『調べた?』
してないと苦笑いをした七瀬

『(笑)だと思った・・・だから調べてきたよ』
『大丈夫そう?』
『(笑)兄貴は孕ませて結婚してたよ・・・でね、七瀬を探してもいた』
『な、なんで?』

『(笑)大丈夫だよ・・・何か揉め事があって、外の誰かから知らせが入って一騒動があったみたい。
ごめん(笑)理由は分からなかった』
口を引いて笑みを浮かべた七瀬だった。

調べ始めた陽緋・・・それは自分の事も探りを入れた。
同時にバイトも始める・・・互いに貯めたモノで部屋を借り二人で過ごし助け合った。

落ち着けた頃に・・・バイト先に現れた人に苦笑いをして待たせ、休憩の合間に会った。
懐かしそうな・・・それでも心配していた人に笑み返す。

『あんなボロな家で大丈夫か?』
『言ってないよね(笑)』
『言ってたら(笑)陽緋の今は家に戻されて出されてないだろ・・・
あの場所から完全に離れたか?』
『(笑)調べるのは止めて』

『心臓が止まるかと思ったぞ(笑)。余計に連絡が取れないだろ・・・』
『迷惑はかけないわよ(笑)。それに名乗ってもないし名前もハルって呼んで貰って徹底してたし』
『彼が手放してくれて良かったが・・・探してはいるぞ?』

『両方?』
『陽緋の友達の方みたいだ・・・調べたら跡目争いとか・・・本当に大丈夫か?』
兄の言葉に驚いた・・・跡目と聞いて考える・・・

『お前は? ・・・体・・・は?』
迷うような口調に苦笑いをしたが、声にはしなかった・・・それが不安で兄は震える手で陽緋の手を握り締めた。

『やくざの子は・・・諦められるよな・・・じいさん達が許す可能性を持つな』
『奏大・・・』
『陽緋が愛した男の子なら・・・本当に産みたいなら助ける・・・だけど俺らは・・・』

『子供の域を出てないね(笑)
彼はね・・・私と似てた・・・親から伸ばされてる手の中で泳がされてる。
出たくても・・・自分で切り開いても・・・背中に居る・・・日々を見張られて生きてるの』

『だから助けてたのか?』
『悲しい目が消えなかった・・・だけど七瀬が心配で置いてきちゃった』
本当に寂しそうな、辛そうな陽緋に驚いて見返した。

『心から・・・気持ちはないだろ。それで何で彼と・・・』
『温かな中で過ごしたくて・・・出来そうな気もしてたけど・・・』
『その格好で、これからも暮らしてくのか?』
『先ずは確認しなきゃ・・・』
『友達か?』
そうだと頷く陽緋を眺めた。

『事実なら逃げる・・・産むなら助ける・・・大丈夫と信じて頑張るよ(笑)』
陽緋の笑みに驚き、自分よりも大人になっていた事に気づくと フッと苦笑いをした。

決意したら止まらずに向かう陽緋と知る・・・何にでも手を出して自分の道は自分で切り開く事を知る。
今も何かを決めたのだろうと思えた。

『陽緋(笑)、調べは揉み消すから俺との連絡は切るなよ?
今は竹脇と俺しか知らない・・・』
『秘書についたんだ(笑)。学生同士だし頑張って』

『迷ったら連絡しろ(笑)いいか?』
『ん・・・。近寄りも駄目だからね・・・探してるなら関係者と思われて利用されてくから』
『分かってる・・・』
そっと抱き寄せた奏大・・・連れ帰れない陽緋が心配で離れがたいのだ。

ずっと一緒だった二人・・・何をするにも互いの気持ちは気付ける。
それは互いを応援し・・・励ましてきた・・・一人離れる陽緋に不安は取れないのだ。

大丈夫と背を撫でる・・・大丈夫と自分へ言い聞かせるしかなかった奏大だった。
帰っていく奏大を見送ると仕事に戻る陽緋だった。



奏大からの連絡で理由を知る二人・・・戸惑い苦笑いをすると押し黙った。
『あの場所から・・・結局は出れないんじゃない・・・』
『本当の親は誰って聞かなかったの?』

『戸籍は実子だったもん・・・養子って聞いて悲しかったけど・・・いっかって思えた。
出る時も、先にパスポートを作ってたから・・・それを奪って出て来た・・・今はそれだけが自分の証明で・・・』

産まれたばかりの七瀬を育てたのは今の両親で・・・本当の実家は、その家系だった・・・異母の兄がいて、それは尊だった事に余計に驚いたのだった。

『尊さんが本当の兄だった・・・』
『なら、最初からソコで良かったのに・・・あんな兄貴よりマシだった』
『 ・・・』
七瀬の心の叫びが分かるようで声にならなかった・・・