tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

あふれるほどに・・・ 6

2017-06-04 13:52:22 | あふれるほどに・・・
七瀬が皐月と別れたと聞いてから間もなく彼女は姿を消した・・・理由が知りたくて、皐月と会えるように柊音に頼むと 場所を指定され彼女は向かった。

藤崎が警護だと一緒に来てくれた事に苦笑いをして一軒の店へ入った。

その街の繁華街では大きなクラブで、人混みは半端なく連絡をしてから待つ陽緋。
フロアを覗いて陽気に踊り楽し気な時間を過ごす人達を眺めていた。

『待たせた』
少しムッとしながらドカッとソファーへ座り込む皐月を見返した。
『何のようだ?』

グラスを傾け口にすると、彼が呟く・・・理由を知るはずなのに、わざわざ声にした事に腹が立ったが我慢して見返した。

『別れたんだから関係ないだろ!』
『私の親友に手を出したのに、関係なくない・・・』
『 ・・・黙って消えたんだぞ?話さえ聞こうともしないで・・・』

『考える時間が欲しいと聞いてない?』
『なんで考える? 俺と居たくないから別れたんだろ!』

『 ・・・自分の居場所と思えなかったからよ・・・順番待ちは、普通したくないと思うけど?』
『俺らの場所は普通なんだぞ?』
『なら、一番最初に言うべきだったわ』

『逃げんだろ』
『当たり前よ。七瀬の場所では、それが普通だもの。
あちこちに女の存在があって・・・気にしてない七瀬を攻撃してるのよ?』

『ん?誰が?』
『他に貴方が囲ってる女しか居ないわ。
皐月さん・・・次に見つけても七瀬を捕まえないでね』
『なんでだ!』

『一般の生活を始めてるからよ・・・私もそうするわ・・・
元の自分の居場所へ帰るね・・・だから、貴方は七瀬を探さないで』
『見つけた?』
『 ・・・教える気もない』
『 ・・・』
押し黙り考える皐月を眺めていると、自分を見返し新たに考えこんだ。

『お前も離れる? 柊音は? 捨てんのか?』
『 ・・・貴方の場所では、男が女を捨ててる・・・
別れを切り出したのも貴方・・・七瀬一人を大事にもしなかった・・・』

『探し出すぞ!』
『また囲う?』
『俺の女だぞ?誰かに渡せるかよ!』
『身の危険を感じて消えたのよ?』
『殺さねーよ・・・』

『 ・・・囲うなら同じよ、七瀬が生きれない・・・別れたなら濁さずに、手放して・・・』
『 ・・・聞きてー事があんだよ』
『手遅れよ・・・手を離したんだから』

言われて声にならない皐月を眺める・・・本当に七瀬を愛していなかったのかと探るように眺めた陽緋だった・・・


女の気配に不安だった七瀬・・・それでも七瀬に会いに来る皐月を信じていた・・・嫌だと声にもしてみたが無理と知る七瀬だった。

口喧嘩をする二人・・・ただ最初から居場所が違っていた事に気づいてなかった。
学生でも、既に女を囲い時間を潰していた皐月と知ったのは付き合いだして半年位後だった。

本命は誰かと悩み、彼に聞くと自分だと言う言葉を信じた。
同じ会話をしていた女性が会いに来る・・・住む世界は違うと、執拗に別れろと呟く女性に驚いた・・・

何より囲う女は確実に居て、時間潰しの関係だからと言い捨てて七瀬を言葉で傷つけていた。
何より、そばに付く人達に恐怖を覚えた七瀬もいた。

陽緋が遊びに行っていた日さえ、彼の女たちに出訓した。
同じように柊音を知る彼女も声にして離れまいと声を揃えて言っていたのだった。

激しい喧嘩をした日に・・・別れると・・・出ていけと切り出され、戸惑う七瀬・・・聞き付けた女性迄が追い討ちをかけるように男を使って追ってきた。

数日後に行けば七瀬は出て行った後だった・・・

その前日に電話があり、七瀬は寂しそうに部屋を後にしていた事を知った。



聞いた柊音は、寝付けない陽緋を抱き寄せて彼女を見つめていた。
『七瀬の所に居たいか?』
『柊音は? 頑張れる?』
『 ・・・』

『大丈夫って・・・そんな感じに取れる日が増えたよね?』
『 ・・・』
『助けたいの・・・
七瀬は私を救ってくれた恩人だから、悲しくて辛い彼女といたい・・・』
『俺より・・・』

声に出せずにつまってしまった柊音・・・自分を愛さない陽緋だと分かっていても、離れて行かない陽緋に祈りながら抱いていた。

『ずっと・・・あったかい中で過ごしたかった・・・皐月もなんだぞ・・・』
『婚約者以外も居て・・・その中で幸せになれると思う?
別れろと皐月さんの身内から言われ続ける七瀬を守れる?』

『それは・・・』
『ね・・・無理よね』
『子供が出来たら別だった・・・皐月の手の中に置けたんだ』
『それでも嫌だと思う・・・愛人だもの・・・』

『一人が妊娠したかも知れないと聞いてるが・・・』
『だから脅しも入った?』
『たぶん・・・』
『柊音なら?』
『俺なら・・・か・・・』
悲し気な笑みを浮かべながら考える柊音だった・・・

『前にも言ったろ(笑) ・・・陽緋に俺の子が出来たら・・・・俺は手放す・・・
助けれないが頼み込んで産めと言う・・・争いのない場所で笑って暮らせる場所へ子供を連れてって貰う』

『だから避妊しないわけ?』
『組の女は最初から覚悟を持って生きてる・・・
陽緋は違うから・・・だけど俺が愛す女だ・・・陽緋との子は欲しい・・・抱いて喜んで笑って暮らしたかった・・・
ずっと・・・陽緋を抱いてたいから・・・』

『 ・・・』
『俺を悲しんで離れない陽緋と知ってる・・・
それを俺は利用してるんだ・・・』
『柊音を哀れんでない・・・』
『不安で離れがたいんだろ?・・・俺を愛してないだろ・・・』

『 ・・・そう・・・思えてたわけ?』
そうだと頷く柊音だった・・・黙って柊音は彼女へ寄り添った・・・心音を聞くように寄り添う柊音を優しく包んだ。
目を閉じて互いを感じるのだった。

彼女のラインを撫でて手を優しく巡らせていく柊音・・・別れを惜しむように線を辿るように巡らせた。

外から内へ流れるように優しく触れていく・・・忍ばせ浸り互いを感じた。

同じように首から肩・・・腕へと流して巡らせる手に集中するように・・・神経も昂らせた柊音だった。
優しく包み込まれ、温かな中へ沈み始めると それは静かに浸るように時間を共有したのだった。




見つけ出した陽緋・・・気づいた七瀬が苦笑いをして、うつ向き近付く陽緋を待った。
カフェでバイトをしているという七瀬に、笑み返した陽緋は優しく抱き締めた。

オーナーに頼み奥の控え室を借りて、互いの近況報告を始めた。
『帰る場所がないって(笑)寂しいね』
『少しね(笑)』
『(笑)戻ったらヤバいでしょ?・・・』
『たぶん(笑)』

『陽緋は?』
『七瀬(笑)、なんで簡単に諦めた? 皐月さんが信用出来なかった?』
『ただの女なら離せたけど・・・妊娠したかもって・・・
(笑)言われたら離れるしかないわよ・・・しかも別れるって言われたし』

『そっか・・・
なら、これから・・・どーするの?』
『お金貯めて(笑)外へ出たいかな』
『(笑)少し出たじゃない』
『まーね(笑)兄貴も居ないし』
『調べた?』
してないと苦笑いをした七瀬

『(笑)だと思った・・・だから調べてきたよ』
『大丈夫そう?』
『(笑)兄貴は孕ませて結婚してたよ・・・でね、七瀬を探してもいた』
『な、なんで?』

『(笑)大丈夫だよ・・・何か揉め事があって、外の誰かから知らせが入って一騒動があったみたい。
ごめん(笑)理由は分からなかった』
口を引いて笑みを浮かべた七瀬だった。

調べ始めた陽緋・・・それは自分の事も探りを入れた。
同時にバイトも始める・・・互いに貯めたモノで部屋を借り二人で過ごし助け合った。

落ち着けた頃に・・・バイト先に現れた人に苦笑いをして待たせ、休憩の合間に会った。
懐かしそうな・・・それでも心配していた人に笑み返す。

『あんなボロな家で大丈夫か?』
『言ってないよね(笑)』
『言ってたら(笑)陽緋の今は家に戻されて出されてないだろ・・・
あの場所から完全に離れたか?』
『(笑)調べるのは止めて』

『心臓が止まるかと思ったぞ(笑)。余計に連絡が取れないだろ・・・』
『迷惑はかけないわよ(笑)。それに名乗ってもないし名前もハルって呼んで貰って徹底してたし』
『彼が手放してくれて良かったが・・・探してはいるぞ?』

『両方?』
『陽緋の友達の方みたいだ・・・調べたら跡目争いとか・・・本当に大丈夫か?』
兄の言葉に驚いた・・・跡目と聞いて考える・・・

『お前は? ・・・体・・・は?』
迷うような口調に苦笑いをしたが、声にはしなかった・・・それが不安で兄は震える手で陽緋の手を握り締めた。

『やくざの子は・・・諦められるよな・・・じいさん達が許す可能性を持つな』
『奏大・・・』
『陽緋が愛した男の子なら・・・本当に産みたいなら助ける・・・だけど俺らは・・・』

『子供の域を出てないね(笑)
彼はね・・・私と似てた・・・親から伸ばされてる手の中で泳がされてる。
出たくても・・・自分で切り開いても・・・背中に居る・・・日々を見張られて生きてるの』

『だから助けてたのか?』
『悲しい目が消えなかった・・・だけど七瀬が心配で置いてきちゃった』
本当に寂しそうな、辛そうな陽緋に驚いて見返した。

『心から・・・気持ちはないだろ。それで何で彼と・・・』
『温かな中で過ごしたくて・・・出来そうな気もしてたけど・・・』
『その格好で、これからも暮らしてくのか?』
『先ずは確認しなきゃ・・・』
『友達か?』
そうだと頷く陽緋を眺めた。

『事実なら逃げる・・・産むなら助ける・・・大丈夫と信じて頑張るよ(笑)』
陽緋の笑みに驚き、自分よりも大人になっていた事に気づくと フッと苦笑いをした。

決意したら止まらずに向かう陽緋と知る・・・何にでも手を出して自分の道は自分で切り開く事を知る。
今も何かを決めたのだろうと思えた。

『陽緋(笑)、調べは揉み消すから俺との連絡は切るなよ?
今は竹脇と俺しか知らない・・・』
『秘書についたんだ(笑)。学生同士だし頑張って』

『迷ったら連絡しろ(笑)いいか?』
『ん・・・。近寄りも駄目だからね・・・探してるなら関係者と思われて利用されてくから』
『分かってる・・・』
そっと抱き寄せた奏大・・・連れ帰れない陽緋が心配で離れがたいのだ。

ずっと一緒だった二人・・・何をするにも互いの気持ちは気付ける。
それは互いを応援し・・・励ましてきた・・・一人離れる陽緋に不安は取れないのだ。

大丈夫と背を撫でる・・・大丈夫と自分へ言い聞かせるしかなかった奏大だった。
帰っていく奏大を見送ると仕事に戻る陽緋だった。



奏大からの連絡で理由を知る二人・・・戸惑い苦笑いをすると押し黙った。
『あの場所から・・・結局は出れないんじゃない・・・』
『本当の親は誰って聞かなかったの?』

『戸籍は実子だったもん・・・養子って聞いて悲しかったけど・・・いっかって思えた。
出る時も、先にパスポートを作ってたから・・・それを奪って出て来た・・・今はそれだけが自分の証明で・・・』

産まれたばかりの七瀬を育てたのは今の両親で・・・本当の実家は、その家系だった・・・異母の兄がいて、それは尊だった事に余計に驚いたのだった。

『尊さんが本当の兄だった・・・』
『なら、最初からソコで良かったのに・・・あんな兄貴よりマシだった』
『 ・・・』
七瀬の心の叫びが分かるようで声にならなかった・・・