tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

かぐや 31

2017-06-06 20:25:07 | かぐや < R >
部屋に戻り身綺麗にして水を飲み込むカグヤ・・・眠るハルトを眺め苦笑いをした。
手でカグヤを探すのか、ベッドを擦る動きをした事に可笑しくて眺める・・・飛び起きて酔いが回るのか項垂れながら奥のベッドへ戻ろうとした。

そっと抱き止められたハルトの動きが止まる・・・震えなくハルトに優しくキスを落とした。
『何処でシャワーした?』
『ココ』
『遅いだろ』
『お待たせ(笑)。抱いていいか?』
『ん・・・』

ベッドへ押し倒して口付けるカグヤだった・・・ゆっくりと撫で巡る事でハルトの声が漏れていく。
痺れていく自分・・・焦がれていた自分に笑みが溢れた。

全部に巡る・・・優しい手が自分を包む温かさに満たされていく事が嬉しかった。
いつもより深く、より荒く張り付くカグヤだった・・・
待たされた分の返しには余るほどに落とされていく事に酔いしれた。

息の辛さに構わずに絡める・・・駄目だと違う身へ跳ね落とされていく・・・全部にカグヤが居て熱ささえ貰えた笑みは全身を駆け抜けるように散りばめられていった。

自分へ口付けるカグヤを捉え笑み合う・・・弾けても迎える事に酔いしれた。
休ませろと笑うカグヤに仕掛ける・・・謝り笑うカグヤを落としに向かった。

熱さが増しビクつくのも構わずに求めていった・・・それも自分のだと言いたくて自分へ取り込むように絡めたハルトもいた。

沈ませ深みへ誘う・・・耐えて先にイカせ、待たずに送り込む・・・張り付きも止まらずに全部が足りないと思える程に落としていった。
唇を這わせ優しく包む・・・自分と交ざる笑みに照れてキスを落とした。

余りの状態に身動きも出来ず眠り込むハルトに呆れ、諦めたカグヤも深い眠りへ落ちていった・・・


『ん?カグヤ?』
『あとでな・・・』
『だけどコレ・・・』
『ハルトが頑張った結果だろ(笑)。それよりカーテンは閉めとけ・・・眩しくて起きたろ・・・』

『ごめん(笑)。俺、酔っててもカグヤを抱けたんだね物凄く怠くて焦った・・・何か凄い嬉しくて起きたんだ。
コレのせいだね(笑)ちょー幸せ!』
呟くハルトに可笑しくて寝ながら笑うカグヤだった。

『シャワーしたい』
『動けるなら(笑)してこい』
『ん(笑)』
勢いをつけたハルトが、唸り声を飛ばしてベッドに沈み込んだ。
軋む体・・・怠くて震える体に驚いた・・・

『これは参りました(笑)』
『諦めろ』
『カグヤも?』
『寝たいんだ、二時間も寝てないぞ・・・』
驚いて時計を探すハルト・・・確認して驚き、納得してカグヤを抱き込んだ。

『幸せー(笑)だけどさ・・・』
笑うカグヤは仕方ないと、ハルトに触れて下がり始めた。

見事に昂りは甦り焦りながらもカグヤに苦笑いをした。
自分の思いが嬉しくて、素直な自分にも笑ったのだった。


ゆだりそうな状態に可笑しくて、ハルトがカグヤを連れ出した。
剥ぎ取った状態に笑うが、眠さには勝てず奥へ押し込んで新たな深い眠りへ落ちていった。

珈琲の香りに目覚めたハルトはカグヤを探した。
庭を眺め飲みながら考え込んでいたカグヤの姿を笑み見つめていた。


『カグヤ?』
思わず呟くハルト・・・何だと言いたげにハルトを見返した・・・
不安そうな声音にカグヤは一瞬、驚いた・・・前に無意識に、辛そうに誰かを呼んでいた声と似ていたのだ。

笑みながらハルトのそばに行き彼を抱き締めた。
『どんな夢だ?』
『ん?見てない・・・カグヤが消えそうだったから焦った(笑)』
『(笑)寝惚けたのか・・・』
『あー(笑)カグヤ惚け?』
『何よりだ(笑)』
照れながら笑うハルトを強く抱いた。

『ハル・・・』
『ん?』
『生きろよ(笑)』
『カグヤが寝惚けた?』
『(笑)ずっと抱きたいから誓え』
『それは俺だろ?(笑)俺が抱くんだぞ?』
『あぁ(笑)誓う・・・ハルは生きろ・・・』

『例えば・・・抱く日が無くなったら?』
『自分じゃなくなるだけだ・・・静かに終わらせる・・・それが夢だったから』
そう呟いたカグヤに驚き・・・そういえばと前に聞いたカグヤの言葉を思い出し、レンの言葉を思い出した・・・

『(笑)俺の中にカグヤが居たんだった・・・俺はカグヤを生かさなきゃ』
『頼んでいいのか? 辛いなら出していいぞ・・・』
『ごめん(笑)時々、忘れちゃうみたいだ・・・当たり前が増えたから・・・』

『ハル(笑)愛してるぞ・・・』
『俺もだ(笑)』
『寝とけ・・・』
『起きたら(笑)抱くぞ?』
『頼んだ・・・』
笑みながら力が抜けていくハルトだった・・・






『(笑)ハルト・・・・良かった・・・』
ヒロの呟きに笑み返したハルト・・・身動きしずらい自分に驚いた。
慌てるように飛び込んでくる人達に、何だと顔を引きつらせヒロを見返していた。

声も上手く出ない・・・何でだと怖くて不安になった・・・カグヤの姿が無い事に余計に辛くなった。
『ハルト!寝るなよ、頑張ったら連れてくから。カグヤさんの所に連れてくから!』

連れてこいと叫べない・・・理由が知りたいのに声が出ない・・・カグヤに会いたいのにと戸惑いが先に走った。

少しずつ落ち着く自分・・・それは睡魔が襲う・・・怠さが襲う・・・それが余計に怖くてヒロを探した。
今の日付を聞き、ずっと寝ていた事を知った。

涙を溢したハルトに優しく拭いて目を合わせた。
『覚えてた?』
ゆっくりと瞼を閉じて返事の代わりをしたハルトに苦笑いをした。

繋ぐ手に力が入った・・・
『連れて行きたいけど、ハルトは動けないだろ・・・
レンが生かす為にそばに居てくれるよ(笑)ハルトに会わせたくて。
だから頑張ろ・・・』

検査は続き同時にリハビリも始まった・・・
その間に知りたい事を書き留めて行く・・・戸惑うように答えるヒロもいた。

見覚えのある人が、ヒロと一緒に見舞いだとやって来た。
未だ声も出ないハルト・・・自分に拒否したように兆しもなかった。
だから諦めて筆談にしてヒロは会話を楽しんだ。

珈琲の香りに笑みながらハルトは嬉しそうに飲んだ。
『一口だけの許可なんだぞ(笑)』
『高浪さんのが一番美味しいてすね(笑)』
ヒロの呟きに笑みながら頷くハルトもいた。

-カグヤは大丈夫?-
『(笑)大丈夫だよ』
『歩けるようになりましたか?』
-も少し-
『そうですか(笑)ハルト不在は大変でしたよ。挽回して貰いますから頑張って下さいね』

-ヒロ、レンさんは?-
『仕事だよ(笑)、そこに助っ人もあるから来れないんだ・・・』
-カグヤは居ない?-
-もう居ない?-
-俺の中にカグヤを置いたままで、会ってないから-
『助っ人って言ったぞ?』
立ち上がるヒロが怒りながら言い、静かに病室を出て行った。

-高浪さん、本当の事を教えて下さい-

フゥと息を吐く高浪はハルトを見つめ笑み返した。
『誰も知らないんだ。
君が入院して暫くして姿を消してしまった・・・ヒロと君を残して・・・
費用は払われてる・・・二人へも月々入金されてる。

まぁオーナーという立場は変わらないし、店長も同じだよ必要なやり取りは出来てるそうだ。
姿が見えなくなった・・・それだけだ』

-カグヤは生きてますよね?-
『ハルト君が探してくれますか?
(笑) 君ならカグヤさんも姿を見せてくれそうだ・・・』

-会いたいと伝言を頼めますか?-
読んで分かったと頷く高浪が帰っていった。

謝りの手紙を書くハルト・・・それを看護師に託して眠るハルトだった。

痛みを堪えて身をまるめ眠るカグヤの姿があった・・・泣きたくて・・・逃げたくて・・・ジッと耐えるようにいたカグヤ・・・

悲しくて起こされるまで、それが夢とは想えないほどにリアルだった。
ヒロと連絡しあい二人を探す・・・繋がりの合った人達の姿まで消えていた事に驚いた。

その先へ少しだけ繋がるが、ハサミで切られた糸は力なく動きを止めたように無くなった。

会いたくて空を眺める・・・一緒に見た夜空の気がしただけで嬉しかった。
それでも寂しくて涙が溢れ、そっと謝り続けるハルトだった。

無理やり繋ぎ止めたのは自分だった・・・詰め込んで返せない事に辛くなった。
生きてて欲しくて祈る・・・負けた自分が悔しくて謝った・・・
何より痛みが取れてるように祈るハルトもいた・・・

『カグヤ・・・・』
一人呟くハルトの声が悲しく響いた・・・驚くほどにリアルな光景が甦る・・・交じる花の香り・・・痛みを耐える声・・・

-月に帰れたんだよ-
医師の笑み・・・ホッとした自分・・・そして自分にくれた言葉・・・

涙が溢れた・・・硝子越しに見えるカグヤの姿があった・・・優しい笑みは何度見ても自分だけにあった。

生きろというカグヤの声が響く・・・自分の中で温まり頑張ると誓う。
すると余計に笑みが可愛くて、もっと見ていたいとジッと見つめるハルトだった・・・

かぐや 30

2017-06-06 16:06:08 | かぐや < R >
起き出した箕島に気づき、寝てろと促したカグヤだった。
周藤は項垂れたままに床しか見ていなかった。

『周藤が好きでも、箕島の気持ちは?』
『酔った日・・・あの日、抱けるかなって笑ってキスされた・・・
男同士って・・・思ったのに抵抗もなくて・・・何かホッとしたんだ・・・
酔えば本音は分かるんだって(笑)、箕島さんの本音かなって・・・

だから自分は?って考えて・・・いつもと同じだ(笑)。無意識に目で追うなら見返して箕島さんの力になりたいって思った』

『(笑)勝手にか』
『だって話したら仕事の話に戻されるから・・・
ここさ・・・最初はホストみたいだったんだ。だけど違うと教えてカフェスタッフって意識させて頑張ってた。
凄く疲れても、声をかけられたら頑張るから息抜きさせてあげたくて・・・』

『それで何で抱くに繋がるよ(笑)』
『全部に解放するだろ・・・俺は女しか抱いた事はないけど・・・
悩みの解消とか・・・考えたくない時にも、したら少しだけ頭から離れるし・・・』

『箕島の事はいつ知った?』
『同じ日に確信した・・・してやりたいけど知らなくて出来なかった・・・
触られて触り返せたけど・・・その先に・・・急に我に返ったのか謝って寝込んだから・・・』
『勉強しに行くか?』

『ん・・・でもさ、それ俺がするんでしょ?』
『当たり前だろ(笑)』
『箕島さんしたいのに・・・』
『だから習うんだろ(笑)』
『 ・・・習いながら誰かに、しちゃうだろ。なんか嫌だ・・・』
吹き出したカグヤに真っ赤になって照れながら怒る周藤もいた。

腹まで擦り笑うカグヤだった・・・
『あー仕方ない(笑)』
スッと立ち上がるとメモを残し、箕島を置いて周藤を連れ出したカグヤだった。



チャイムが鳴りカグヤは招き入れた・・・
『マジで泥酔だぞ?何すんだ?』
『高坂(笑)サンキュ』
『一つ返したぞ(笑)』
玄関に寝かせた箕島に優しく声をかけて高坂は帰って行った。

やっと歩く箕島を無理やりバスルームへ入れて身綺麗にしてベッドに押し込んだ。
『カグヤさん?』
『趣向を代える(笑)、これは取るなよ?』
『 ・・・はい』

目隠しをして強張る箕島へ口付けて黙らせた・・・丁寧に巡らせていく手に震え跳ねる箕島だった・・・

『人を増やす(笑)』
『何で?』
『楽しむ為だろ(笑)感じとけ』
『 ・・・』
押し黙るが、震えた手が全身へ巡ると漏れていく吐息で響いた。
重なる手に違和感はあれど、目隠しを取れない箕島だった事で苦笑いをして迷わずに始めた。

滲む箕島へ口付ける・・・絡めて離さない事で震えていった。
解かれていく箕島に、優しく丁寧に始める手に翻弄されていった。

沈み込むと唸りが重なる・・・微かな声さえ聞こえない事を利用してカグヤは囁いていった。
馴染ませる間に巡らせる手の温かさに気づき、溢れ滲み出た頬を優しく撫でられた事にホッとした。

絡めとる唇に耐えていた自分が出始め苦しくなった。
『大丈夫だから力は抜いてくれない?』
シーツを掴む手が余計に強くなった・・・

『貴方が好きだよ(笑)。だから俺を捨てないで・・・』
震えた手が目隠しへ伸びる・・・そっと外してやった周藤の笑みに驚いた箕島だった。
カグヤを探す箕島を捕まえて自分に目を向けさせる周藤・・・

『俺を見ろよ!今は俺だけ・・・』
深みへ落として目を合わせた周藤だった・・・溢れた涙を優しく拭いて見つめた。
『も、戻れないだろ・・・』
『(笑)何処に?俺の場所はココしかなくなったし(笑)俺を置いて貰う』
優しく揺らす周藤に、未だ驚く箕島に苦笑いをした・・・
小さな唸りで逃がし耐える周藤もいた。

『(笑)嬉しくてもたない・・・』
大丈夫か不安なだけに箕島を心配した顔の周藤だった・・・
『途中からカグヤさんが帰っちゃって(笑)、この後の事は教えてくれなかった・・・まだヤバい?』
堪えながらも焦らす動きと気づかない周藤に、イキそうで焦る箕島だった。

『大丈夫だよ(笑)』
『マジ?(笑)サンキュ!』
求め始めた周藤へ預けた箕島だった・・・
促して捉え運ばせていく箕島・・・その重なりに熱さを感じていく二人だった。

『箕島さん(笑)エロい・・・』
荒さを逃がす二人で話をする周藤を抱き締めた。
『巻き込んで・・・』
『違うな(笑)。おれは俺だよ・・・ごめんね、巻き込んで・・・
俺の気持ちを押し付けてごめん・・・本当は気持ちを確かめてから抱きたかった・・・
だけど、酔ってる箕島さんを抱くカグヤさんに我慢出来なくて・・・』

『ごめん・・・』
『したいなら俺を誘ってよ(笑)。そしたら遠慮なく抱けるし、すっげー気持ちいい・・・
あ・・・俺・・・・コレ使うの忘れてた・・・あのさ・・・あまりに・・・』
箕島の体に顔を押し付けて話す周藤・・・恥ずかしいのだと分かる・・・真っ赤な顔だったのだ。

『本当に嫌じゃないの?』
『ない(笑)、箕島っていう人が好きだった・・・自分の為に手にいれたくて頑張った俺を誉めてくれない?

カグヤさんが触ってて・・・先にイカされそうだったんだ・・・だけど箕島さんにしたくて・・・先にしたくて・・・ヤバかったんだ・・・』
本当に困ったように呟く周藤に苦笑いをして、笑み返した箕島は彼の頬にキスをした。

『煽んないでよ(笑)』
互いに見つめ笑みあっていた二人に・・・
『(笑)着替えてもいいか?』
突然声にした声の主に驚いて、布団を箕島に被せて振り向く周藤に笑うカグヤだった。

ガウンを着ていた姿に苦笑いで返す二人・・・
『マジで始めると思わなかったぞ(笑)。あーあった』
ベッドの横から服を取り上げて、二人を眺めながら着替えるカグヤに驚いた。

『足りないなら(笑)手伝うか?』
『遠慮します』
『いい! いいです!俺がするし』
重なる声に笑うカグヤだった。

『いいか、必要以上に話せ。それは店では声にもするな。
ココ、使うか?』
『カグヤさんのマンションですか?』
『そうだ(笑)、貸してやるから家賃を払え』

『そんなに高くは・・・払え』
『箕島の今の家賃と同じでいい。二人で考えて連絡しろ。
それからココを片す、オートだから何もせずに出ろよ。
10時にクリーニングが入るからな(笑)見られたくないたら間に合うように出ろ』

『カグヤさん・・・』
『ん?』
『ありがと(笑)』
『それはまだいい・・・箕島は約束を忘れるな。忘れたら落としにくるからな・・・』
『 ・・・はい』
答えた箕島に驚き、グッと顔を捕まえて目を合わせた周藤が呟く。

『やだからな!カグヤさんに触らせないでよ?』
『 ・・・』
『話す努力から始めろよ(笑)』
カグヤは二人へ言って部屋を出たのだった。




帰りにくい重石が足の動きを止めそうだった・・・苦笑いしかない。
ハルトを連れ出すべきじゃなかったと後悔しても、それは遅いと口を引いた。

通りを歩く・・・ハント為損なう高坂に笑って手助けし店へ入り込んだカグヤだった。
そっと客から離れ店を出ると、抱き付いて背を撫でる高坂に呆れた。

『目標クリア!(笑)サンキュだ!』
『こっちもだ(笑)』
『早く帰れよ(笑)。泣き顔を取ってやれ』
『泣いてたか?』
『(笑)怒ってた、ヒロが酒を飲まして潰して帰ってたし』
アハハと互いに可笑しくて笑う・・・笑みの高坂が押し出した・・・

静かな ため息を吐くとカグヤは足を踏み出したのだった。


あふれるほどに・・・ 11

2017-06-06 08:25:01 | あふれるほどに・・・
携帯の着信が止まらない・・・仕事と兼用の為に電源を落とす事も出来ずにいた。
よく聞けば、仕事とプライベートの着信音は違うと知れた。

その音が鳴る度に深い ため息を繰り返す陽緋・・・
『はい、瀧川の携帯です』
苛ついた瀧川が陽緋の机から取り上げて代わりに出た。

無音の間はあったが・・・
『もしもし? 』
『・・・女性の携帯では?』
『瀧川ですが・・・今は席を外しております。
恐れ入りますが、どちら様でしょう』
『折り返し連絡をとだけ伝えて下さい。それで分かると思いますので。失礼致しました』

切れた電話を眺め陽緋を眺めた。
力なく机に両肘をたてて頭を凭れていた陽緋だった・・・

静かにサークルの中で遊ぶ二人を彼女は眺めた・・・思い切り息を吐いてから陽緋は携帯を持ち、履歴に残る番号から選んで電話をした。

黙って耳を傾ける・・・
『陽緋か?』
『ん・・・バレた?』
『浅見建設を調べたろ(笑)、ソコで父さんが見つけた。
祖父さんが調べて・・・戸籍を知った』
『ごめん』

『喜んでるのは婆さん達だけだ(笑)。親族会議だぞ?』
『結構な数で電話は来てるけど』
『しまくってたよ(笑)。叔父さん側もだ・・・』
『出てない、何とかならない?』

『も少しいけると思ったが無理だ(笑)。一度、二人を連れて来い』
『奏大が静めてよ』
『俺は抑えるので精一杯だった(笑)。どうせ一歳の誕生日も来るだろ・・・会わせてから離れろよ』
『海外に逃げるよ?』
『 ・・・』

『仕事が代わるなら何処でも一緒だけど?』
『追うだろ(笑)。それと、陽緋の友達が近くなった』
『狙われて逃げてる?』
『そうだ、知り合った人と海外に出た事までは分かった。
も少ししたら次の報告も入る・・・』
『海外に居たんだ・・・追える?』

『(笑)だから来い』
『交換なわけ?』
『連れ戻されるよりマシだ』
『 ・・・』
『迎えをやる』
『明後日』
了解と切れた事に口を引いた。

瀧川が心配そうに見ていた事に、苦笑いしかない・・・自分の素性がバレていく怖さよりも、嘘を突き通せない自分が悲しかった。
話せば巻き込む・・・だから必要以上に声にはしなかったのにと。

『捕まる?それは実家?奏大という名は?』
『兄弟・・・』
『海外は行方不明だった親友か?』
そうだと頷く陽緋は椅子へ腰を下ろして項垂れた。

『お前の歳は21か?』
気づいたのかと口を引き項垂れたままに頷く陽緋・・・
『二つ上に見えてたぞ(笑)聞いたが信じてなかった・・・』
そう呟きながら陽緋の頭を撫でた瀧川だった。

『大手の仕事を受けた時に、陽緋に似た男を見た。
年若いのに学生で会社の役員も兼任してると聞いた・・・聞いた歳に驚いたよ・・・。
繋がるかと・・・ヤバいと思って・・・陽緋に回してはないが・・・それでバレたか?』
『(笑)浅見建設ので祖父にバレた・・・』
その言葉にフッと笑う瀧川・・・

『その辺も聞いてたら、近寄せも無かったぞ?』
『ごめんなさい(笑)』
新たな声に苦笑いをしてフーと息を吐くと、近場の椅子を引いて座り込んだ。

『誰も居なくて助かった(笑)』
『だから出た(笑)。調べてた番号ばっかりだったから出なかっただけだし』
『最後の電話じゃないよな・・・』
『あれは叔父・・・』
『全部覚えてるのか?』
そうだと頷く陽緋に驚いて眺める瀧川だった。

『本当の家族に見つかった訳だ・・・』
『迷います・・・』
『まさか子供は引き離さないよな?』
『それはしないと思う・・・私が掴まるだけで・・・盾がない・・・』
『親友を理由にもか?』
『引き延ばせる程度・・・』

『本名は?』
『 ・・・』
『俺だけに留める(笑)、今も妨害してるから大丈夫だ』
『 ・・・光峰陽緋』
『 ・・・オールの直系?』
そうだと頷く陽緋に驚いて、瀧川は声を失った・・・

オールというグループは、起業している会社なら誰でも知る・・・幅は広く海外にも余裕で進出していた大会社でもあった。

今の社長になるとよりグンと跳ね上がり、少しの事でも揺るがない場所になっていた。

その中に居て、何故だと不思議そうに陽緋を眺めた。
それに気づいたのだろう陽緋が苦笑いをして瀧川を見つめた。

『足枷を外して、自分で生きたかったから・・・』
『親友が出来たが、繋がりで出れずか?』
『そーでもない(笑)。浸りはなかったから・・・
七瀬を出してやりたかった・・・』
『何不自由もなく生きてきたのに?』

『それぞれだし・・・・

(笑)普通に学校へ通ったり・・・友達と買い物に行ったり・・・通う為にバスに乗ったり・・・色んな事を誰かと したかった(笑)・・・。

(笑)その日、誰かと話したかなって考えたら・・・SPに言った事だけだった・・・近場の店にも(笑)後ろに二人は控えてた・・・

庭の端にまで・・・(笑)常に囲われてる、家の中は仕事をしてる人達もいる・・・掃除をする人、食事を作る人・・・色んな業種のように彷徨いてる(笑)
ついでの私の報告もあって・・・息がつまりそうだった・・・』

『部屋は?』
『入り口と窓にカメラがね(笑)。
兄弟で話してた事まで知られてた・・・
見張りは数多い・・・ま、脱け出しも簡単だったから免許を取るのも余裕で出来たし(笑)、SPさえ気にならなくなった頃で楽は楽だったかな』

『(笑)子供が子供を産んだぞ?』
『(笑)悩みは無かったし・・・優しい人だったし・・・自分が生きてる実感はしてたから(笑)』
真実なのだろう陽緋の笑みにホッとした瀧川だった。

『明後日(笑)お披露目して帰ります・・・出来る限りの言動で出ますけど・・・手が延びたら迷わずに教えてくれますか?』
『くっ来るのか?』
『潰しはしないと思いますけど(笑)、絶対に!死守しますから!
置いてくれますか?』

『本当に戻れたら・・・だろ。
(笑)俺は大丈夫だから二人を抱えて脱け出して来い!』
瀧川の言葉に感謝した陽緋だった。




翌日に車を乗って来た陽緋に驚いて、皆で群がる姿に瀧川が笑った。
全財産を叩いたと笑って呟く陽緋に、馬鹿だと笑って眺める人達・・・

『スポーツカーでベビーシートって・・・・ありえねー!』
車大好きスタッフの叫びに、苦笑いをして陽緋は調節をした。

『逃げの為に準備してたか?』
仕様が違うと気づく人の呟きに、陽緋は口を引いただけで声にしなかった。

助手席を倒して二つ並ぶシートを眺めた・・・
『おっ!』
凄いなと笑み呟きながら来た人に笑み返した。

『どれだけの腕がある?』
『おっ(笑)見てやるから乗れ!』
笑って助手席に座り込んだ彼に笑み、苦笑いした陽緋も乗り込んだ。

滑り出す・・・走り込むには不便な場所なだけに静かに動き、曲がり出した・・・走り出した音が少しずつ静かになっていった。

呆気に囚われた気がする人達・・・
置いていかれたとベソをかく子供たち・・・苦笑いをしてあやす人達。

それぞれの時間を潰すかと思いきや、反対の方から滑り込んできた車に視線が飛んだ・・・

ドアが開き先に出た満面の笑みの陽緋・・・苦笑いをして出てきた顔に笑った。
『直ぐソコにある空き地に入ってドリフトだぞ!』
『楽しく?(笑)』
『ちょー(笑)楽しーい』
スタッフの声に呟く彼に笑う・・・

姿を見せた陽緋に手を伸ばす陽咲・・・
『(笑)マー』
陽緋を呼ぶ声に笑みながら抱き上げた。
『マッ(笑)』
自分もだと慌てた清瀬の呟きに、笑う陽緋が手を伸ばした。
互いにバランスよく抱き付く事に笑う・・・

親子の視線の重なりに微笑ましく、ジッと見つめ笑みを浮かべていた瀧川だった。



『安全運転(笑)。それは絶対だからな・・・』
シートに乗せる陽緋・・・覚えたての言葉を呟きながら、子供たちは玩具を片手に叫んでいた。
荷物は子供たちの足元に置き、二人を眺めた。

瀧川が見送る・・・既に車内は子供向けの音楽が流れる・・騒ぎ出す間に決着をつけようと思った・・・


スッと門へ滑り込む・・・窓は開けずに陽緋は電話をかけた。
警備の人がノックしても眺めるだけで、話さず身分証と叫んでも見向きもしなかった。

電話をきるとハンドルへ両腕を乗せて、門が開くのを待った。
シートの置かれた窓は視線が飛ばないようにスモークが貼られ、前からも見えにくくなっていた。

警備員が何をしようとしても、見えず声さえかけられない状態だった。
連絡は通ったのだろう、静かに門は開かれたのだった。


ゆっくりと滑り出す・・・遥か奥にある家屋へと小路は続き、彼女の車は滑らかに木立の中を通り過ぎていった。

久し振りの小路は懐かしさもなく、自然の中をドライブをしている気がした。
窓を開け放ち外の空気を取り入れながら少しずつスピードを落として行った。



車の向きを変えて直ぐに出れるようにしてから、改めて陽緋はドアを開けた。

幼い頃から自分の世話をしていた人が目を潤ませながら やって来た事に気づいた。
迷わずに抱き締めて背を撫でる人に苦笑いしか出なかった。

『マッ!』
車からの叫びに笑み、驚きながら静かに顔を覗かせる・・・
『初めまして(笑)小夜と言います、ぼっちゃま方・・・』
両手を組んで絡め、嬉しそうに呟く彼女に、口を引いた。

足元の荷を取り出していく小夜・・・
手前に居た陽咲を出して、足元に出すとギュッと陽緋の足に抱き着いて清瀬を待った。

早くと声を出しながら両手を伸ばす清瀬に笑み車から出して陽咲の隣へ立たせた。

二人は手を繋ぎ、一緒に行ける安心感からか辺りを見回しながら見上げた。
『(笑)わー』『わー(笑)』
揃って声にする子供たちを、優しい眼差しが注がれる。

『お嬢様(笑)、紹介して頂けますか?』
『陽咲と清瀬よ(笑)』
順に頭を撫でながら呟く陽緋に笑み返して腰を下ろした小夜・・・

『(笑)陽咲ぼっちゃまと、清瀬ぼっちゃま・・・小夜と仲良くして下さいね(笑)』
『ねっ(笑)』『ねー(笑)』
小夜の笑みに呟く二人に口を引いて笑った陽緋だった。

数人のメイドが来て小夜が荷物を頼む・・・
『これだけですか?』
『そうなの・・・お嬢様?』
『帰るから(笑)。それは、もしもの着替えよ。しまわないで取り出したい時に出すから近場に置いといて』
『(笑)はい』
言われたメイドが返事をした。

帰るのかと驚いて陽緋を見返していた小夜に苦笑いをして、行こうと目配せた陽緋。
『(笑)行こう』
『こー(笑)』
『マッ(笑)』
子供達の叫びに、可愛くて笑みながらメイド達も歩き出した。

あちこちを観察しながらも、歩く二人・・・覚束ない足取りは繋いだ手が互いを守った。
どんなに揺らいでも離さない二人でもあった。

散歩のような歩み・・・数歩先を歩く二人を眺めながら陽緋が行く。
小まめに振り向いては歩く二人でもあった・・・隣で歩幅を合わせ歩く小夜にも笑み二人は頑張って歩いた。

玄関で数人が笑って待ち構えていた事に驚いて、子供達は陽緋の所へ戻ろうとした。
慌てたのか転ぶ二人・・・泣くのを我慢して立ち上がると陽緋に両手を伸ばして抱きついた。

腕の中の安心を覚えたのか泣き出した二人の涙を拭いてキスをすると、少しずつ落ち着き、あれは誰かと揃って見返した子供達もいた。

『マッ?』
陽咲が誰かを見つめ呟く・・・
『違う(笑)、奏大・・・』
『 ・・・』
陽緋の声に笑み、大丈夫なのだと振り向き見直した陽咲だった。

子供達の顔に笑う・・・奏大と陽緋を見返している小さな二人に視線は集まった。
『マッ?』
『ん!』
『マッ?』
どんな会話なのだろうと、大人達が笑う姿に微笑む二人もいた。

そっと近寄った奏大は、二人の前で腰を下ろして笑みを浮かべる・・・それでも見上げた子供達はジッと見つめた姿に苦笑いをした。

『ない!』
突然呟く陽咲は陽緋の足に抱き着いて、陽緋を見上げた。
『ん? ・・・ない?』
違うのかと陽咲に呟く清瀬・・・そっと陽咲の手を握り、清瀬は奏大を見上げた。

『二卵性でも、似てるんだな(笑)。やっぱり双子って面白いって理解出来た気がする』
後ろで呟く柚悟だった・・・その声に巴瑞季までが笑っていた。

そっと手を伸ばした奏大に、笑みながら陽緋に見上げる清瀬の顔。
『中に行こうって(笑)』
『い?』
『ん(笑)行こう!』
『こー(笑)』

清瀬が笑みを浮かべて、そっと奏大の手を掴むと一緒に歩き出した。
陽咲と手を繋いでいた腕が伸び・・・陽咲は迷いながらも歩き出した。

口を引く陽緋・・・
『陽咲(笑)、私の兄貴だから大丈夫なのよ?』
『 ・・・』
『ママ!』
『兄貴(笑)』
『にっ!』

にっ!にっ!と・・・陽咲と清瀬は呟きながら、手を引かれて入って行くのだった。


新たな人達に今度は身を固めて動けなくなった子供達・・・それでも笑みは消えずジッと観察する子供達。

それでも清瀬は奏大から手を離して、陽咲と陽緋の足元へ戻り抱きついたのだった。

見合う陽緋は、皆へ頭を下げて黙って謝ると二人を抱き上げた。