7日の伊吹答弁は「特待生そのものが悪いのではなく、各地から選手を集める野球留学は好ましくない」という内容でした。この発言は落とし所を示唆したものです。今日11日に伊吹-脇村会談が予定されているのですから、高野連様が大臣発言に迎合した「修正」を施すのは当然のことでしょう。
高野連が特待制度申告者に緩和措置
(2007年5月11日06時01分 スポーツ報知)
日本高野連は10日、大阪市内で緊急の全国理事会を行い、日本学生野球憲章違反のスポーツ特待制度の申告者のうち、経済的な事情で就学継続が困難となる部員に限り、卒業まで学校長や関係審査機関の裁量で設けた奨学金を受けられる緩和措置を決めた。
各都道府県高野連を通じて違反校のその後の状況を調べた日本高野連は、退学や転校する部員が出る可能性を重く受け止め、5月末までの対外試合出場禁止と解約同意書提出の上なら、暫定的に設けたスポーツ以外を理由とする奨学制度は憲章違反とせず、制度の内容も問わない。田名部和裕参事(61)は「野球留学の行き過ぎ是正が今回の目的。十分に事情を知らない生徒、熱心な指導者への影響を考えると緩和が必要」と説明した。
本当に「野球留学の行き過ぎ是正」が目的なら、最初から特待生をターゲットにする必要はなかったわけです。福翔のようなケースは、とても「行き過ぎた野球留学」につながるとは思えませんが、それまでバッサリ切り捨てたのはなんだったのか、という話にしかなりません。
「行き過ぎた野球留学」が問題なら、解消に向けて手順を踏んでいけばいいわけです。大学側がほとんど一顧だにしなかった「憲章」を振りかざして解約を迫ったことで得られたものは、混乱と反発だけでした。
“目的が正しければ手段を選ばないというのは、あんたらが好むフェアプレイ精神とやらに反するだろう”と簡単に突っ込まれてしまうわけです。普段からきれいごとばかり並べているこの団体の場合、それを逆手にとることは容易です。
まあ、これでようやく話が本線に入ってきて、私もやりやすくなりますが、せっかく集めたコレクションですので、「高校別」は週に1~2本でも続けようと思います。
野球留学反対派には2つの流れがあります。1つは、伊吹氏のような「親元を離れて…」派です。これはおそらく故・神田順治元東大野球部監督あたりが源流になるはずです。地元の生徒でないと応援したくないというケ○の穴の小さい人たちです。高校野球が都道府県対抗という色彩を持つために、この考え方は根強く残っています。
心情的には理解できなくもありませんが、「では、オリンピックその他で日本人以外の選手に心を打たれたことはないのか」ということにしかなりません。この層は放っておくしかありません。「成長」を待つしかないのです。自分がそうだからといって(それは自由です)、よそ様の進路先を規制しようとするのは越権行為です。
誤解も多いはずですが、実は高野連様は「野球留学」それ自体を問題にしているのではありません。先の報知の記事でも田名部氏は「野球留学の行き過ぎ是正」と発言しています。田名部氏だけでなく脇村氏の発言も同じです。
特待制度:高野連緩和策「退学者など出すのは意図にない」
(毎日新聞 5月10日20時15分)
一方で、日本高野連は憲章の順守と、金銭の絡む行き過ぎた野球留学などにメスを入れる方針に変わりがないことを強調。脇村春夫会長は「最大の問題は野球留学などに伴う不正で、フェアプレー、アマチュア精神に反する。根幹を手術しなくてはいけない」と話した。
ここで脇村氏が「フェアプレイ」だの「アマチュア精神に反する」だのと発言してしまうので、逆に反発を買うのです。今回はっきりとわかったように、こんなものはいくらでも都合よく解釈できてしまいます。先に「憲章」を持ち出したのと同じ愚です。
「野球留学などに伴う不正」の具体的事例を語れば、世論の理解も得られて、話は進展するはずです。「行き過ぎ」とは何なのか、「…などに伴う不正」とは何なのか、「手術を要する根幹」とは何か、ということになります。
おそらくこの問題は、高校の制度をいじっても解決しません。野球留学に規制を設けても本質的な解決にはなりません。県内ならいいのかということにしかならないからです。本丸を攻めることができないので、外堀を埋めようとしたのが、今回の事件の真相ということになるのかもしれません。この2人なら、きっとまた同じ愚を犯すでしょう。
ただし、高野連様は高校の競技団体にすぎず、高校以外のところには手を出すことができません。そうした意味では、2人の能力の欠如だけが問題なのではなく、野球界全体を束ねる統一組織がないことが根本的な問題として強調されなければなりません。
次のような記事もありました。
特待制度で高野連が緩和措置 (日刊スポーツ 2007年5月10日20時38分)
実態調査で違反なしの申告をした学校の規約を精査した結果、新たな違反校はなかった。
また、次のような報道もあります。
特待制度:打ち切りで就学継続が困難なら緩和措置 高野連
(毎日新聞 2007年5月10日 20時05分)
各校の来年度募集要項の作成に間に合わせるため、憲章に違反しない特待制度の基準作りを当初予定していた11月から早め、6月下旬をめどに決める。
11月に決めてもらっても私立校は困るだろうと思っていましたが、6月下旬ではもう2カ月足らずしかありません。夏の予選が始まってからは対応できないのが実情でしょうが、拙速の恐れがあります。来年度に関しては暫定措置をとることも1つの知恵です。
特待制度:高野連緩和策「退学者など出すのは意図にない」
(毎日新聞 5月10日20時15分)
--緩和措置が必要なケースとはどのようなものか。どのように救済するのか。
田名部 多くの学校に家庭の経済的事情などを理由にした奨学金制度があるが、その給付基準に達しなくても転校、退学に追い込まれかねない生徒がいる。このような生徒に対して、一般生徒と異なる基準で給付するのは憲章違反としてきたが、一般生徒とは別枠の制度で給付をしても憲章違反としないこととした。
きのうまでNG、きょうからOK、その前は黙認、こんな朝令暮改では振り回されるほうが迷惑です。決めるのは俺だと言わんばかりのこういう態度は改めてほしいものです。