特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

常葉菊川

2007年05月01日 | 高校別

言わずと知れた今春のセンバツ優勝校です。4月28日から始まる県大会開幕前日に登録9選手を差し替えて、16校参加の静岡県大会に臨みました。

常葉菊川高:登録9選手を除外 特待生問題で春季県大会
(毎日新聞 2007年4月28日 3時00分)
同校は学業など総合的に優れた選手に対して授業料減免などの奨学金制度を設けており、同大会でベンチ入り登録した2、3年生20人のうち9人が奨学金を受けていた。

大会初日の1回戦では5対6で富士宮西に敗れたことが大きく報道されましたが、ここで問題になるのは、選手の入れ替えが憲章違反になるのかどうか判断しかねた末の苦肉の策だったということです。この時点では憲章違反であることが「確定」したのではなく、その疑いもあるからとりあえず辞退したということになります。

選抜優勝校の常葉菊川、県大会1回戦で敗れる 高校野球
(朝日新聞 2007年04月28日19時57分)
常葉菊川は大会前日の27日、野球部員を理由とした特待生制度に該当する可能性があるとして、登録メンバー20人のうち約半数を今大会の選手登録から外し、佐野心部長が退任。静岡県高野連によると、大会が迫る中で学校側の判断が固まらず、大会中の混乱を事前に防ぐために取られた措置で、県高野連への特待生制度の正式な申告はまだないという。

要は、(東海地区でも静岡県でも)高野連様が、違反なら違反である、そうでないならそうでない、とジャッジすればいいことです。もし、最終的に「セーフ」だったとしたら、何も悪くない選手個人が「あいつは特待生だ」というレッテルを貼られた事実だけが残ります。

今回の特待生問題は「教育の一環だから、金品を受け取るのはまかりならぬ」という高野連様の“教義”が発端です。こんなことを平然とやってのけるところに「教育」を語る資格などありません。


尾藤公氏

2007年05月01日 | ブルータス

前回と同じ記事に箕島の監督だった尾藤公氏の発言があります。尾藤氏も今では高野連様の幹部の1人です。ですから、別に「ブルータス」ではない(意外ではない)のですが…。

クローズアップ2007:高野連の特待制度根絶策 実効性が課題、歓迎する声も
(毎日新聞 2007年4月21日 東京朝刊)
特待制度が廃止されると中学球児の進学先にも変動が起きそうだ。和歌山の箕島高元監督の尾藤公・高野連常任理事は「高校野球の勢力図が変わってくる。今は県立校の甲子園出場は少ないが、県立校にもチャンスが増えてくるかもしれない」と話す。

まあ、このへんが本音なのでしょう。とくに和歌山と言えば、今ではあの高校ですし…。真実がそうでないとしても、そのように矮小化されてしまうのは仕方のないことです。

かりに、公立高校が復活することで高校野球が隆盛を迎えたとしても、高校野球だけが繁栄すればいいのか、ということは問われなければなりません。

(同)
尾藤さんは「『あこがれの学校に行きたい』『この指導者の下で野球をやりたい』との考え方は当然認められる。しかし、おカネで勧誘して生徒を集める今の特待制度は不公平だ」と見る。

授業料や入学金は私立校のほうが高いわけです。それは「不公平」ではないのでしょうか? 同じ公立校でも学区に縛られる高校と全県から集められる高校があります。この併存は「不公平」ではないのでしょうか? 公立高校でも生徒数の規模は異なります。それは「不公平」ではないのでしょうか? なによりも、野球部員だけ特待生になれず奨学金も受けられらないのは「不公平」ではないのでしょうか?

高校で転校することは稀ですから、私立高と公立高の両方に在学した経験のある人は少ないでしょう。自分の高校だけを基準にものごとを考えるのは「井の中の蛙」です。ちなみに、私は公立高出身であり、受験が許される普通科の公立高はそこだけでした。


新川(富山)

2007年05月01日 | 高校別

知らない名前の高校のほうが興味をそそられます。「ウラ優勝校」のようなものです。愛知県立新川(しんかわ)高校ではなく、札幌新川(しんかわ)高校でもなく、富山県魚津市の荒井学園新川(にいかわ)高校でした。かつては日大の系列校だったようですので、まったく「知らない」わけではありませんが…。

春季大会の出場を辞退しています。06年夏は3回戦で高岡第一に6対7、05年夏は2回戦で水橋に4対10で敗れています。

特待生問題 7校が憲章違反(朝日新聞富山版 2007年05月02日)
 新川高校は、野球部を含むすべての部活動が対象の特待生制度を設けており、「入学金・授業料などの免除と奨学金の付与」から「入学金のみ免除」まで4段階あるという。
 中田幹雄教頭によると、29人の野球部員のうち多数が該当しており、これらの部員を除くと9人に満たないため、春の県大会辞退を決めた。中田教頭は「生徒のことを考えると本当に残念でしかたない」とした上で、「高野連の通達についてコメントは差し控えたい。ただ、私立高校の野球部関係者が思いを話せる機会を設けていただければ、と思う」と話した。

高野連様は単に一競技団体であるにすぎません。処分をふりかざして自らの“教義”を押しつける前に、私学関係者からのヒアリングをおこなうべきだったはずです。教頭先生のコメントは、この時点では精一杯のものでしょう。

今後も「私立高校の野球部関係者が思いを話せる機会」がないのだとすれば、きわめて深刻な事態に陥るはずです。これほどの“絶対専制君主”は、いまどきかなり珍しいのですが、このような形でその専横ぶりが白日のもとにさらされることは、“自爆”にしかつながらないことにまだお気づきではないようです。

高野連様が強硬姿勢をとればとるほど、結果的には自らの孤立を深めていくことになります。


日大明誠

2007年05月01日 | 高校別

97年春に甲子園出場を果たしている日大明誠は木田優夫の母校として有名ですが、この問題では素早く対応しています。

山梨・日大明誠高が報告へ、奨学金が憲章抵触の可能性
(2007年4月24日3時4分  読売新聞)
日大明誠高(山梨県上野原市)は、同高後援会の奨学金制度について、「野球部員を理由とした特待生制度ではないが、日本学生野球憲章に抵触する可能性がある」として山梨県高野連に報告する方針を固めた。野球部員1人が受給している。

結局、これは「憲章違反」との結論になりました。

奨学金は憲章抵触 日大明誠 高野連が見解
(産経新聞山梨版 2007/04/26 03:29)
県高野連によると、いかなる名義でも選手や野球部員であることを理由に奨学金など金品を受けることを禁じている憲章13条に抵触するという。5月1日までに文書で報告するよう同高に連絡した。同高の西島泰明野球部長は「憲章についてよく知らず、認識が甘かった。高野連の指示通りに報告したい」と述べた。

野球部の活動と学業との両立を理由に支給していた奨学金ですが、高野連様としてはNGであるとの見解を示したわけです。たしかにこれも「野球部員である」ことを理由とした金品の収受には違いありません。

ただ、「特待生制度はよろしくない」と考えている人の中にも、これぐらいは許容できると思う人のほうが多いのではないでしょうか。あまりにも杓子定規すぎるのではないかと思われます。結局、ここでも野球と学業の両立はNG、他の競技と学業の両立はOKということになってしまいます。

まあ、「認識が甘かった」のは事実でしょう。高野連様の教義に照らすと「アウト」だろうと私も判断していましたから…。所詮は理解不能な理屈をこね回す“宗教”団体なのですから、一般常識では判断できません。

ところで、先の読売の記事では、奨学金を受けていたのは現役部員のように読めますが、地元紙では次のように報道されています。

日大明誠も違反申告 特待制度で高野連発表 県勢は航空に続いて2校目
(山梨日日新聞 2007年04月28日)
日大明誠は昨年度、野球部員1人が同校後援会による奨学金制度の適用を受けていた。

昨年度のことまで報告対象になるのなら、今年度から(絶妙のタイミングで)やめたらしいPL学園にも報告義務はあるでしょう。はたして、どこまでさかのぼるのでしょうか? なにしろ、田名部氏は「学生野球憲章に時効はない」とおっしゃっているのです。→プロ野球:現金供与 処分対象は「覚書以後」--高野連参事が見解(毎日新聞 2007年4月12日 東京朝刊)

50年さかのぼれば、立大時代のミスターが南海ホークスからもらっていた「栄養費」もアウトのはずです。