特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

通達全文

2007年05月22日 | 特待生の何がNG?

リクエストをいただいた「中学生の勧誘行為の自粛について」の全文です。リニューアル前の高野連様のWebサイトには、この通達以外の文書もWordファイル(!)で公開されていました。

私はてっきり、どこか県高野連のWebサイトに掲げられているものと思っていましたが、検索しても出てきません。たしかに、この通達を抜きにして、この件を語ることはできないでしょうし、別に機密書類ということでもありませんので公開します。

★印の行は本来は右寄せです。□□□□は都道府県名と会長の氏名が入るものと思われるスペースです。また、標題と「記」は原文ではセンタリングされています。

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日本高野連発第W3298号
平成17年11月25日

□□□□高等学校野球連盟
   会長 □□□□ 殿

財団法人 日本高等学校野球連盟
会長 脇村春夫

「中学生の勧誘行為の自粛について」(通達)

 日本高等学校野球連盟では、懸案の野球留学問題の是正について、今年度「野球留学検討委員会」を設置、現在の実態やその背景、問題点について、都道府県高等学校野球連盟の協力を得て資料を収集しました。
 その結果、中学生の勧誘行為について、現在取り決めている学生野球憲章や各種の規定、通達に違反する現状が指摘されました。
 都道府県外から生徒を受け入れることは、中学生の進路選択の自由や私学の特色づくりなどもあり一概に規制することは困難とされています。
 しかし、野球留学検討委員会では、高校野球の健全な発展を損なう勧誘や、野球に偏重した生活を見直す必要性を確認すると同時に、中学生の適正な進路決定にふさわしい環境を確保するためにも、この機会に改めて高校側に自粛を求める必要があるとの意見が出されました。
 さらに同委員会では、全都道府県高等学校野球連盟が共通の認識を持って取り組むことが重要であるとの意見も出されました。
 スポーツを通じての人間形成は大きな教育的効果があることは周知の通りですが、余りに偏重すれば形成途上の青少年に及ぼす心身への影響は極めて大きく、時にはその一生を左右するような決定的要因となります。特に中学生を勧誘することは、本人に「野球だけをすればよい」などと誤った優越感や特権意識を持たせることになり、精神面への悪影響は計り知れません。
 高等学校野球の本来あるべき健全な姿を守るためにも、まず各高等学校の指導者の皆さんが真剣に青少年の心身への効果と影響を考え、再度襟を正して野球部の運営に当たっていただくことを心から願っています。
 つきましては、特に問題となる「中学生の勧誘行為」について、次の通り具体的な指導事項をまとめましたので、貴連盟加盟校への周知徹底をよろしくご指導下さるようお願いします。
 

1. いかなる場合でも高校側の指導者や関係者が中学生を勧誘してはいけない。いかなる場合も高校側関係者が、中学生の家庭訪問をしてはならない。

2. 高校のOB(会)や後援会が学校とは別の動きをし、結果的には高校の代替役を果たして勧誘に回っているケースが見受けられる。
従ってこうした周囲の動きには特に留意し、少しでもそのような動きを察知すれば直ちに自粛、自戒する措置をとること。

3. 中学生の進路について、中学校や少年野球団体関係者ではない第三者による斡旋行為があるとの実態報告があった。ときには金銭が介在するという指摘もあり、高校側が断じてこうした第三者の介入を許さない自戒が必要である。

4. 中学野球や少年野球関係者から入学についての打診や相談は、はっきりと一線を画し、当該生徒の進路指導は、あくまで中学校の担任教諭との間で正しく進められるよう留意すること。

5. 「高等学校新入生徒の練習参加に関する規定」に規定されている通り、入学以前に中学生を対象としたいわゆるセレクションを行ったり、練習に参加させてはならない。なお、平成15年から「中学生の体験入部」について、体験できる内容など規定を設け認められているのでこの範囲での実施に留意すること。

6. 中学生の入学に当たって高校は、日本学生野球憲章13条の「野球部員であることを理由とした金品収受の禁止」規定に触れる、学費、入学金、寮費などを軽減したり、免除するいわゆる特待生待遇をしてはならない。高校入学後も同様に、野球部員であることを理由とした特待生待遇をしてはならない。

7. 高校が中学校(また少年野球)の試合を主催したり、試合を斡旋したりしてはならない。また、高校が地域の中学野球や少年野球関係者に誤解を招くような寄付をしたり、野球の指導を行ってはならない。

以上

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この通達は前置きで、「野球留学を規制することは困難だが、自粛を求める必要があるとの意見が出された」と述べています。「意見が出された」だけであって、「自粛を求める必要があるとして意見が一致した」のではありません。

さて、「具体的指導事項」として掲げられた7項目は次のとおりです。

  1. 勧誘や家庭訪問の禁止
  2. OB会や後援会による勧誘の自粛要請
  3. 斡旋行為に対する自戒の要請
  4. 進路指導の「適正」化の要請
  5. セレクションの禁止、体験入部の制限
  6. 野球部員であることを理由とした特待生の禁止
  7. 中学野球や少年野球への技術的指導等の禁止

このうち「禁止」は1、5、6、7の4項目であり、2~4は「自粛」「自戒」「留意」でしかありません。たとえば、2の裏を返せば、OB会や後援会が学校当局に察知されないように動いている限り、問題はないということになります。

4は「野球で高校に入学するのはダメよ」と言いたいのでしょう。高校生が野球で大学に入るのは別に否定されないようですから、結局、学生野球憲章の問題ではなく、高校生としてどうなのかという問題になってくるわけです。だとすれば、やはり学生野球憲章は高校と大学に分けるしかありません。

実は、高野連様が11年前に出した「歴史的!文書」も私は(勝手に)公開しています。記録としてとどめておく価値があると思っているからです。私は本来、記録マニアですから…。まあ、11年前というのを割り引いたとしても、ここまで言える団体はそうありません。


壊滅

2007年05月04日 | 特待生の何がNG?

あれっ? 今日の日付だけど、この記事はいつか読んだよなあ、と思っていたら、共同の配信記事でした。なっとく。

西武裏金調査委員長インタビュー 実名公表なら球界壊滅 夏の甲子園もできない (東京新聞 2007年5月4日 朝刊)
 ――実名公表は控えた。
 「(中間報告までに調査委で)一致していた。公表したら夏の甲子園なんてできない。日本球界が壊滅しかねなかった」
 ――公表を求めるアマ側からの重圧は。
 「感じていなかった。向こうも出さないと思って言っている。本当に出されたら困るのは彼ら」
<略>
 ――調査で驚いた点は。
 「裏の常識がまかり通っていたのが第一。第二に『必要悪だ』と罪悪感が見られない。非はプロばかりにあるのではなく、アマにもおいしい汁を吸おうとする人たちがかなり存在することが分かった」

このブログでは「裏金」を扱うつもりはないのですが、特待生問題の発端は「裏金」でした。今まで高野連様は長く特待生を見過ごしてきたわけです。唐突に5月中の解約を迫る強硬姿勢には「裏」があると見るのはいたって自然です。

ライオンズ以外の分も含めて実名公表されたら、今回の騒ぎどころではありません。高校も大学も社会人も丸ごと謹慎状態です。アマ側が実名公表を求めているのは、ただのポーズにすぎないことぐらい、誰でもわかっていることです。

結果的には、特待生問題は「裏金」から話をそらす効果がありました。わざわざ共同通信が3日付で配信したのも意味ありげですが…。

(同)
 ――裏金撲滅に提言を。
 「第一に制度改正。ドラフトは完全ウエーバーにすることで裏金がある程度阻止される。第二にアマ指導者の待遇改善。学生野球憲章も見直してもらわないと困る。あまりにも古過ぎる。いかに日本のプロ野球を魅力あるものにするか、みんなで知恵を絞らないと」

何をするにしてもお金はかかります。金をもらうことも金を出すことも、それだけなら悪いことではありません。新人選手の契約金に10億出せる資力があって、それだけの価値がある(投下資金を回収できる)と思うのなら出せばいいのであって、受け取る側も堂々ともらえばいいのです。

学生野球憲章で金をもらってはいけないと縛りを入れているために、全部が「裏」に潜ってしまうのです。「表」でやりとりすればいいのです。まあ、公立校の先生は地方公務員ですから直接もらうのは法的にNGとなるでしょうが、せめて学校に還元するシステムは必要でしょう。自分の懐に入れたい指導者は、それを認めてくれる私立でやればいいわけです。

「自衛隊は憲法違反だ。よって今月一杯で解散する。隊員は全員解雇だ」なんてことは、共産党や社民党でも言いません。衆議院が中選挙区制だった頃、いわゆる「1票の格差」をめぐって、たびたび違憲判決が下されました。だからといって、すでに実施された選挙が無効とされたわけではありません。

今回の強権発動は、「すでに締結された(違法ではない)契約を破棄せよ」というものでした。彼らがその根拠として振りかざしたのは、自分たちで埃を積もらせてきた古びた“経典”だったのです。


特色

2007年05月03日 | 特待生の何がNG?

5月3日付の読売新聞は各地方版で一斉蜂起をかけているかのようです。もともとこの件では、「朝日&毎日」VS「読売&産経」の構図が見られましたが、ここに至って歴然としてきたようです。

道内では野球の特待生制度は13高校に。道高野連が発表(北海道)
(2007年5月3日  読売新聞北海道版)
一方で、最終判断を委ねられた学校現場から戸惑いの声が出ている点には、「真剣に対応してきたが、各学校ごとに特色がありすぎ、高野連としても明確な基準を示すのに、時間がかかった」と釈明した。

発言しているのは北海道高野連の坂本理事長です。「各学校ごとに特色があ」るのは当り前のことです。特色を出してこそ私学なのです。そんなことさえわからないで、「あれはダメ、これはダメ」では、無責任すぎます。

「明確な基準を示すのに、時間がかかった」 はあ? いったい、いつ「明確な基準」とやらが示されたというのでしょう。(今でも)基準がわからないからこそ、みんなが混乱して、とりあえず駆け込みで「違反」を認めているのではないでしょうか?

まあ、「時間がかかったので結局は示せなかった」という意味なのかもしれません。それは順序が逆というものです。まず明快な基準があって、それに従って「アウト」と「セーフ」がジャッジされるのが筋です。今回は「疑わしきは罰す」にしかなっていません。

申告した高校のなかには、最終的には「セーフ」になる高校も出てくるかもしれません。自ら「アウト」だろうと勝手に判断して辞退したかもしれないのです。


実技テスト

2007年04月29日 | 特待生の何がNG?

タレコミがありました。どうやら、静岡の複数の県立高校で、入試に野球の実技テストがあるようです。「アマチュア問答集」は次のように定めています。

日本学生野球協会>アマチュア野球問答集
問49 スポーツ選手を対象とした推薦入学制度はどうか。
答)かまいません。ただし、高校では野球に関する実技テストはできません。

たとえば、次のようなWebページがあります。

■静岡県立富士宮北高等学校>中学生へ>平成19年度「前期選抜における学校選択資料区分Ⅱの概要」

平成19年度ですから、来年の話かと思いましたが、浜名高校のWebサイトにも同様のページがあり(pdfファイルですのでリンクしません)、そこには野球の実技試験もある2日目が「2月7日(水)」と記されています。今年の2月7日は水曜日でした。

まあ、野球の実技試験があっても、野球部に入ることが条件にならないならOKなのかもしれませんし、推薦入学でない一般入試ならOKなのかもしれません。

高校は義務教育ではありません。どんな生徒をどのように選抜するかは、私立校か公立校かを問わず、その学校が掲げる教育理念に基づく裁量の範囲なのです。一競技団体の分際で野球の実技テスト不可などというふざけた制約を設けるのは、越権行為でしかありません。こんな“宗教”団体に唯々諾々と従うのではなく、さっさとケツをまくって、私立校だけでもオサラバすべきです。

今後ともタレコミは歓迎します(できればソースも示してください)。


この基準でいいの?

2007年04月27日 | 特待生の何がNG?

「特待制度問題:学生野球 高野連が「補足説明」 初日申告2校、試合処遇でも指針」(毎日新聞 2007年4月26日 東京朝刊)によると、高野連の判断基準が示されたようです。

◇判断がつきにくいケースの日本高野連の解釈◇
(1)学業優秀または保護者の経済的理由で奨学金を受けている場合
 →スポーツ部活動(野球)が条件に含まれていなければ違反ではない
(2)学業優秀で、品行方正かつスポーツ部活動に取り組んでいる生徒が対象の場合
 →学業優秀の基準に適合していれば問題はないが、スポーツ部活動の支援が主で、一般生徒よりも低い学業基準などが設けられている場合は違反
 →この制度とは別に学業優秀制度があり、その基準に適合する学力があれば、これまでの扱いは違反とみなさない。今後はその制度に切り替える
(3)学業優秀かつ経済的援助が必要で、スポーツ部活動に熱心に取り組んでいる生徒が対象の場合
 →スポーツ部活動が必須の条件なら違反
 →学力や経済的理由で別に明確な規定があり、それに適合すれば違反ではない
(4)スポーツコースがあり、そのコースの生徒のみ学力や経済的理由を一般生徒とは別の基準で定めている場合
 →スポーツ部活動(野球)だけに与えられた特典とみなし違反
<以下略>

まあ、今頃こんな基準を出されても、学校側は困るでしょう。私は、長いこと「野球部を退部したら支給が打ち切られるものはダメ」と思っていたのですが、どうもそういうわけでもないようです。

(1)と(3)は、おおむね妥当であって、理解の範囲内です。(2)は学業優秀と品行方正はスポーツ優秀にまさるとおっしゃているわけです。(4)は完全に噴飯ものです。高野連様の価値観にみんなが従わなければならないのでしょうか?

バカでワルだが運動能力だけはあるという生徒は、どんなクラスでも1人や2人はいるものです(小中学校の話)。そういう生徒はそういう生徒なりの道を行けばいいのであって、そんな生徒が卑屈にならずに済むような環境を整えることこそ「教育」というものだろうと私は考えています。

学業優秀も結構、品行方正も大いに結構、それと同じようにスポーツ優秀も評価されていいのです。もちろん、そうでないという考え方もあるでしょうが、それをよそ様に押しつけてはいけません。価値観は人それぞれであって、私立校が独自の教育理念を掲げることは否定されることではありません。

カタカナ・イングリッシュのスピーチで話題になった(公立高校出身の)投手は、その「勇気」がむしろ好感をもって受け止められたはずです。最初からわかっていたことですが、いよいよ本格的に「宗教」の領域に入ってきたようです。

まあ、学生野球協会が定めた学生野球憲章を高野連が勝手に解釈して、それが大学野球連盟の解釈と異なる場合には、ダブルスタンダードになってしまいます。「これでいいんだな、後悔しないよな」と言いたくもありますけど…。


線引き

2007年04月25日 | 特待生の何がNG?

『河北日報』4月20日付(紙面上)の「強豪校に広まる優遇制度 東北・私立高の野球部」によると、スポーツ選手を対象とした優遇制度があり、現役の野球部員もこれに含まれているのは、春季大会の出場を辞退した東北高校のほかに、光星学院、八戸工大一、一関学院、花巻東、酒田南、日大山形、東海大山形、聖光学院の8校です。

この記事によれば、青森山田や明桜(旧秋田経法大付)は、スポーツ奨学制度ではなく、学力などによる特待生に野球部員が含まれているということのようです。

まあ、高野連の線引きは「野球部を退部したときに打ち切られる性質の奨学金はNG」ということのようですから、これに抵触しないような制度にしておけばいいだけの話です。野球部のある学校はどこでもそういう制度になっているはずだと私は思っていました。はい。

河北新報社のWebサイト「コルネット」には24日現在、「高校野球 憲章違反問題」の特集が掲載されています(20日以前の記事の日付が乱れていますのでご注意ください)。震源地を抱えているせいもあるでしょうが、全国紙やスポーツ紙より突っ込んだ記事が多いようです。

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