特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

ユースより社会人で

2007年06月06日 | 展望

日本野球連盟の「登録規程」には、次のように定められています。

財団法人日本野球連盟>登録規程
(資格要件)
第5条 加盟チーム及び競技者は、義務教育を終了したものでなければならない。
(学生及び生徒の特例)
第6条 学生及び生徒は、次の一に該当する場合は競技者とすることができる。
(1) 学生は、日本学生野球協会所属団体に登録した学生を除く大学(短期大学を含む。)、専修学校及び各種学校に在籍する者
(2) 生徒は、日本学生野球協会所属団体に登録した生徒を除く高等学校に在籍する者

いわゆる専門学校は大学野球連盟には加盟できません。硬式野球部のある専門学校は社会人野球に混ざっているのです。元来は二重登録禁止条項である第6条は5年前に改正されました。

現行規定では、高野連様に加盟している高校の生徒であっても、その高校で(その年度中)野球部員として登録していなければ、日本野球連盟に登録することができます。高校の野球部になじめなかった高校生がクラブチームに入ろうとしたところ、従前の規定にひっかかったからです。

すでに中高一貫を掲げる複数の私学では、中体連の枠に入らない中学生のクラブチームを組織しています。リトルシニアもボーイズも日本野球連盟の傘下であって、学校単位の中体連とは直接関係ありません。

私立高校が母体となり高野連様の傘から飛び出してクラブチームをつくっても、受け入れ先はあるのです。青森山田クラブ、神村学園クラブ、長崎海星クラブとして、都市対抗を目指すことは可能です。北信越あたりなら、間違って出られるかもしれません。

高野連様と日本野球連盟では、プロとの関係も雲泥の差があります。楽天イーグルスの野村監督はシダックスの監督でした。カツノリが堀越高校と明治大学に在籍していた7年間、すくなくとも公の場で、父親が息子を指導することはできませんでした。

プロゴルファーの東尾理子は帝京高校の出身ですが、ライオンズの元監督である東尾修氏が高校在学当時の東尾理子に野球を教えても、何の問題にもなりません。東尾理子は野球部員ではなかったからです。高野連様の傘下を離れれば、元プロが高校生を指導してもノープロブレムです。

もはや高野連様には関係のないことですから、特待生制度も野球留学も問題にはならないはずです。ただ、都市対抗では甲子園ほど知名度アップに貢献しません。そこで、プロの出番なのです。

純粋にプロのユースチームを組織しようとすると、既存のアマと軋轢を生んでしまいます。サッカーでも何事もなかったというわけではないようですから…。日本野球連盟傘下の
U20チームの大会(リーグ戦)をプロが支援するという形なら、さして問題にはならないはずです。

もともと社会人野球には、学生野球憲章に相当するものがありません(あるのかもしれませんが、すくなくとも私の知る限りはありません)。東京ガスの木村投手の場合、たしかにドラフト前のプロとの接触を禁じた登録規程16条1項には違反しますが、それ以外に「1年間の謹慎」を根拠づけるものが見当たりません。

もし、片岡安祐美が流通経済大で部員登録していたら、ポーラ化粧品のCMに出ることはできません。まさか無償で出演しているわけではないでしょう。日本野球連盟は体協に加盟していますが、体協は80年代にアマ規定を削除しています。

新団体設立やプロのユースより、社会人への移行のほうが現実味があります。それに、高校野球は金属バットです。プロは木製バットです。社会人も(今では)木製です。(打者は)どうせプロを目指すのなら、高校時代に金属を使わないほうがいいに決まっています。

現在、日本野球連盟に加盟している専門学校チームは、会社登録扱いされています。これは、連盟内でも審議事項になっているはずですが、あくまでもクラブチームとして、母体となる高校の生徒以外にも門戸を広げたほうがいいように思われます。


クラブチーム

2007年06月05日 | 展望

伊吹文科相の陳腐な野球留学NG発言です。まあ、雑談程度の話に記者が食いついただけかもしれませんが…。

文科省ダメ出しも高野連改定拒否
(2007年5月12日06時01分  スポーツ報知)
 伊吹文科相は野球留学にもくぎを刺した。京都出身の同相は「西岡、今江(ともにロッテ)も京都出身なのに、京都の高校にいなかった。部員のほとんどが寮生活をして特待制度を受けるというのは、本来のスポーツの在り方としてどうか」と苦言。

今江は京都府向日(むこう)市出身で、京都田辺ボーイズ-PL学園高です。JR京都線の向日町駅から2つ目の山崎駅は京都・大阪の府境に位置します。郡山シニア-大阪桐蔭高の西岡は、たしかに一部の選手名鑑では(なぜか)京都府出身ということになっています。本人のオフィシャルサイトでは大阪府大東市出身ですけど…。

いずれにしても、このレベルで野球留学NGを語るのは勘弁してほしい気がします。私は高校まで鹿児島で過ごしました。もう30年ほど前のことですが、中部地方のある高校に数人の鹿児島出身の選手がいました。たしかに複雑な気持ちになったのを覚えています。

その後、私はケ○の穴を拡張しましたので、別に誰がどこに行こうが本人の勝手だと思っていますが、「特待生が問題なのではない、野球留学こそが問題なのだ」とする論調も多いわけです。

【主張】野球特待制度 拙速ではない論議重ねよ
(産経新聞 2007/05/12 05:04)
 繰り返しになるが、特待制度が悪いのではない。全日本大学野球連盟や全国高等学校体育連盟も制度の全面否定には疑問を呈している。誤った運用や拡大解釈が問題なのであり、制度を利用し半ば野放し状態の野球留学に検討を加えることが重要だと考える。

郷土意識は大なり小なり誰でも持っているものでしょうし、そうである限り、野球留学批判がやむこともないでしょう。もともと、京阪神地区に送り出された「金の卵」たちが帰省することなく故郷に触れられる機会が甲子園だったわけです。郷土意識(や学校対抗意識)を煽り立てて、部数を伸ばし広告を得るのが主催新聞社のビジネスです。

それなら、プロがこれを利用しない手はないはずです。道州制が議論され始めて久しく、いずれ47都道府県体制は消え去る運命にあります。都道府県単位で考える必要はないでしょうが、NPBが一定数のユースチームを組織し、プロを目指す者はこっち、クラブ活動としてやっていく者はそっち、という具合に分けたほうがすっきりするのは事実です。

いっそのこと、プロ球団と私学が共同でクラブチームを組織してもいいのではないかと思われます。この場合、学校単位のチームではありませんから、高野連傘下からは離れることになります。ただし、クラブチームですから学生野球憲章の呪縛からは逃れることができます。

ここで問題になるのは、サッカーと違って、両者の間の交流戦を高野連様が認めるとは思えないという点です。もとより、今のNPBと高野連様の関係では、高野連様の領域にNPBが手を突っ込む(既得権益を侵す)ことになりますから、もしプランとして持っていたとしても口に出すことさえできないでしょう。

特待生問題も野球留学問題も、野球界という全体の中で考えていけば、必ず解決策は見つかります。高校野球の枠の中だけで解決しようとすると、寮費が適正かどうかという話にしかなりません。