特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

特殊な団体

2007年05月31日 | 脇村語録

いつものように滝口氏の記事から始めます。

脇村高野連会長と伊吹文科相が会談 基準作りで温度差
(毎日新聞 2007年5月12日 東京朝刊)
 日本高野連の脇村春夫会長と伊吹文明文部科学相が11日に東京都内で会談し、伊吹文科相は「(特待制度を認めている)他のスポーツとのバランスも考えて制度の基準を検討してほしい」と要望した。【滝口隆司】
 日本高野連は6月下旬をめどに日本学生野球憲章に違反しない特待制度の基準をまとめる。会談後、脇村会長は「我々には(戦前に野球統制令で活動を制限された)歴史的な問題や野球留学の問題もある。他との関係より、高校野球がどうあるべきかを考えていきたい」と述べ、他競技に影響されず、主体的に基準を作る意向を強調した。

意外なことですが、脇村氏や田名部氏は「(野球は)特別」と発言していないようです。すくなくとも私が保存している記事のなかには見当たりませんでした。ただ、複数の社説では「野球は特別」が出てきますので、そのように受け取られても仕方のない発言を繰り返したことは間違いないわけです。

上の記事は、文科相との会談後に脇村氏が語ったものです。彼らは、いわゆる「野球は特別」論を主に歴史的背景から語るのですが、ちょっと珍しい側面から「野球の特殊性」を示してみます。

総務省の「公益法人データベース」で「野球」をキーワード(部分一致)にして、得られた検索結果を設立順に並べ替えてみました。

●S23/03/01社団法人日本野球機構
●S28/02/12財団法人日本学生野球協会
●S28/04/01財団法人全日本軟式野球連盟
●S33/11/10財団法人野球体育博物館
●S38/02/27財団法人日本高等学校野球連盟
●S39/12/24財団法人東京都軟式野球連盟
●S48/04/05財団法人神奈川県高等学校野球連盟
●S51/04/01財団法人千葉県高等学校野球連盟
●S52/03/28財団法人静岡県高等学校野球連盟
●S52/05/24財団法人埼玉県高等学校野球連盟
●S54/06/13財団法人全日本大学野球連盟
●S55/08/15社団法人日本プロ野球選手会
●S56/01/19財団法人横浜野球友の会
●S57/03/04社団法人少年軟式野球国際交流協会
●S58/12/28財団法人兵庫県高等学校野球連盟
●S62/03/26社団法人神奈川県少年野球交流協会
●H02/12/25財団法人栃木県軟式野球連盟
●H01/11/16財団法人吉澤野球博物館
●H02/06/28財団法人日本野球連盟
●H04/08/12財団法人世界少年野球推進財団
●H10/04/23社団法人全国野球振興会
●H17/05/19財団法人全日本リトル野球協会
●H17/05/19財団法人日本少年野球連盟

このように、名称に「野球」が含まれる公益法人は23団体あります。まあ、「横浜野球友の会」というのは、私も初めて知りましたが…。

実は、「サッカー」で検索すると30団体あります。これは日本サッカー協会が下部組織の法人化を促している帰結であって、その財団法人日本サッカー協会を除けば、H04/04/01付で財団法人認可を受けた静岡県サッカー協会がもっとも古く、大半はこの4~5年の間に社団法人の認可を受けています。

公益法人制度の見直しが進行中の今では事情が異なると思われますが、数年前までは財団法人認可を受けるには1億円以上の資産が必要だと言われていました。高野連様の場合、ローカル組織にすぎない神奈川、千葉、静岡、埼玉、兵庫の5県が財団法人認可されています。

「野球」という競技の中の「高校」という階層の県レベルの団体が5つも財団法人になっているのです。こんな競技はほかにないでしょう。申請すれば、東京や大阪なども簡単に認可をとれるはずです。このような意味において、(高校)野球が特別であることは事実です。


寮費(寮の食費)

2007年05月30日 | 田名部語録

さて、お待たせしている件について、お答えしましょう。その前に、例によって(しつこく)滝口氏の記事から、どうぞ。

特待制度:寮費減免など議論のポイント3項目提示 高野連
(毎日新聞 2007年5月24日 21時17分)
 日本学生野球憲章違反とならない特待制度の基準を協議する「特待生問題私学検討部会」の初会合が24日、日本高校野球連盟で開かれ、日本高野連は議論のポイントとして3項目を提示した。
 「学校教育活動の一環としての部活動の趣旨を損なわない制度」という前提を示した上で、(1)中学生募集段階の問題点(2)部活動参加者を対象とした容認できる制度の検討(3)寮費減免の是非--の3点を検討課題とした。寮費については、中学生を勧誘する際の「丸抱え」との批判もあることから項目に盛り込んだ。
<略>記者会見で日本高野連の田名部和裕参事は「私学の方から自主基準を提案していただいて、それが高野連の考えと一致するのであれば、それに越したことはない」と語り、私学側の意見を多角的に聴く考えを示した。

先のお尋ねは26日のものでした。すでに24日にこういう方向性が示されています。これを踏まえたうえでのご質問かどうかは判断できかねますが…。

私は寮生活をしたことがありませんが、寮の食費や光熱費は寮費に含まれていたり、別になっていたりするはずです。「(寮費はOKだが)食費はNG」と言われると、食費込みで寮費を徴収している学校は、食費相当額を別に算出しなければならなくなります。便宜上、食費を小さくする抜け道も考えられます。

まあ、それは置いても、食費と光熱費ぐらいは、いくら特待生といえども実費負担するのが筋というものでしょう。ここで悩ましいのは、寄付としての差し入れでしょう。寮の食費に関しては、(長期的な休みが入ることもあって)固定的に月額いくらと決まっているのではなく、実費相当額を請求することも多いと思われます。

「差し入れで全部賄えたので、今月の食費はゼロです。負担には及びません」なんて主張されるかもしれないわけです。結局、「食費NG」の縛りを入れたところで、さほど実効性はないような気がします。

もともと、今、問題視されていることは、公立高や名門私大がかつてやってきたこと(の発展形)です。ただ、公立高にはおのずと制約がありますし、すでにブランドを得た名門私大はほとほどの条件で生徒を集められます。南北問題にも似た側面もあるわけです。

かりに「寮費NG」や「寮費はOKだが食費はNG」の線引きをすると、今度は公立高にも話が及んでくる可能性があります。監督の自宅に下宿している部員がいるのは昔からのことです。その下宿代が適正かどうか誰がチェックできるというのでしょうか。これをやっていくと、がんじがらめで窮屈になるだけです。

もし「寮費はNG」という線引きした場合には、ほかにも問題が生じてきます。まず、寮費自体を格安に設定するという抜け道があります。また、第三者の自宅に下宿させるという形も抜け道としては有効かもしれません。このような抜け道が用意されてしまうなら、やはり実効性に欠けることになります。

いわば“赤線”として学校の管理下に置けば、高野連様の指導の範囲内です。高野連様が“赤線”を認めないという姿勢を貫くなら、逆に第三者の介在を許してしまって、手の届かないところに行ってしまうわけです。まあ、清廉潔白を旨とする高野連様に“赤線”を認めろと言うのも、相当無理がありますけど…。

で、結論として、寮費は別にしても食費や光熱費はNGであると私は考えますが、そのように決めたところで担保されるわけではありません。私学部会に丸投げするなら、今のうちに抜け道も探しておけよと言っているようなものです。

まあ、高野連様としては(表向きなくなれば)それでいいのでしょうから、この「落としどころ」は真剣に考えるようなことでもないわけです。本気で取り組む気があるなら、「多角的に聴く」のではなく、私学側と直接対決しなければならないはずです。

ご質問では、これが「問題の本質」であり「最終着地点」とのことでしたが、私の認識はまるで違います。これは瑣末な問題です。


駒大苫小牧

2007年05月29日 | 高校別

春季北海道大会が28日に始まりました。

目指せ、春の覇者 春季全道高校野球が開幕 札幌円山球場
(北海道新聞 05/28 12:47)
快晴の下、開会式の選手宣誓では、釧江南の菊地勇介主将が、支部予選で出場辞退校が出たスポーツ特待制度問題に触れ、「野球ができる喜びを感じ、今回出場できなかったチームや高校球児のために、スピーディーかつフェアプレーを胸に戦うことを誓います」と宣誓した。

釧路江南は道立であり、直接の関係はありませんが、北海道では13校320人が該当し、6校が春季地区予選の出場を辞退しています。釧路江南は直後の試合でセンバツ出場の旭川南に敗れました。この結果、明日30日の2回戦では、特待生を外して春季大会に臨んでいる駒大苫小牧が旭川南と対戦することになりました。

駒大苫小牧については、腑に落ちない点があります。

甲子園優勝校ズラリ、戸惑う高校球界--「生徒に責任ない」
(毎日新聞 2007年5月3日 東京朝刊)
昨夏の甲子園決勝の引き分け再試合でファンに感動を呼んだ駒大苫小牧高。2日、会見を開き、同校の奨学制度が日本学生野球憲章に違反していることを認めた。野球部員111人のうち、3年16人、1年15人の計31人が該当。春季地区大会は31人を除いたメンバーで出場することを決めた。

ん、なぜ1年生と3年生だけ? 2年生は?

野球特待、道内13校 計320人-マイタウン北海道
(朝日新聞北海道版 2007年05月03日)
記者会見した駒大苫小牧の小玉章紀校長は、「野球部に限定した特待生制度ではないので、問題はないと考えていた」などと話した。主なやりとりは以下の通り。
 ――制度を作った時に憲章との関係の判断は。
 「野球部に限定した制度ではなく、学業や人物などを考慮して決定している。憲章に抵触すると認識したのは今回が初めてだ。今回、本校の内規を日本高野連に見てもらった。すると『すべての生徒を対象にする奨学制度であれば問題はないが、体育と芸術の2コースに限定しているので、問題があるだろう』との回答があった」

どこかで報道されているのかもしれませんが、1年生と3年生だけというのは不自然ですから、もし会見で誰も質問しなかったのだとすれば、突っ込みが甘いと言わざるを得ません。

駒大苫小牧の特待生は31人 (苫小牧民報 07年5月3日)
駒大苫小牧は学業と部活動の2種類の奨学制度を設けており、いずれも入学金や授業料の軽減、免除などの措置を受けられる。詳細を記した資料を2度、道高野連に提出し、助言を求めたが、「すべての生徒を対象にしていれば問題ないが、(部活動奨学制度は)体育、芸術分野に限定しているため、学生野球憲章に抵触する可能性がある」趣旨の回答があり、1日に申告した。

高野連側の「回答」も煮え切らないものだったようです。「問題がある」ではなく「問題があるだろう」、「抵触する」ではなく「抵触する可能性がある」ですから…。まあ、この辺は伝聞情報にしかならないので、実際のところはどのような回答だったのかわかりませんけど…。

なお、同校の2種の奨学制度のうち「部活動奨学制度」は、「スポーツや芸術で優れた生徒を、学業成績や経済的側面を考慮して」(前掲 朝日新聞北海道版2007年05月03日)入学金と授業料の減免が受けられる仕組みだったようです。

学校側としては「野球部に特定したものではないからOK」との認識であり、高野連様としては「体育・芸術に限定しているからNG(の可能性あり)」という判断のようです。駒大苫小牧高のWebサイトによれば、同校には、「国公立大進学コース」「大学進学コース」「総合コース」「文化コース」「体育コース」の5つのコースがあります。

このコース分けで、学業と部活動の2種の奨学制度を設けているなら、「体育や芸術に限定したものはダメ」と言わると、学校側は困惑するばかりでしょう。そう言えば、こんな発言がありました。

もっと知りたい 高校野球の特待生問題 (北海道新聞 2007/05/12)
春季大会を出場辞退した道内私立校の校長が「この一カ月間、得体の知れないものと話をしてきたような気がする」とため息をついて話すように、残ったのは深い徒労感だった。

駒大苫小牧は出場を辞退していませんので、これは小玉校長の発言ではありませんが、同じ気分を味わっているに違いありません。同校では、奨学制度そのものは存続させて、野球部員を対象から外すという対処になるようです。まあ、結果的には学校長任せの「救済措置」が認められわけですが…。


高野連新役員

2007年05月28日 | ブルータス

5月25日の日本高野連評議員会で新役員が決まっています。どの新聞でもいいのですが、ここはやはり滝口氏の記事を引くのが「礼儀」というものかもしれません。

高野連:脇村会長を再選 (毎日新聞 2007年5月25日 19時40分)
新しい副会長には、大阪大医学部名誉教授の越智隆弘・行岡病院骨関節センター長(65)、和歌山県高野連会長の田井伸幸・県和歌山商校長(57)を選出した。越智氏は春夏の甲子園大会で投手の肩ひじ関節機能検査に携わってきた。田井氏は箕島が春夏連覇した79年夏に野球部長を務めた。
 新理事には新副会長を含む14人が選ばれ、西岡宏堂・元滋賀県高野連会長が審議委員長、野村利夫・元大阪府高野連会長が同副委員長に内定した。

おっ、やっぱり来たな県和商ってな感じもありますが…。


新任理事(副会長を除く)は次の通り。

 
森田郁朗(東京都高野連理事長)山口雅生(日本高野連事務局長)石井晃(元朝日新聞社論説委員)松倉展人(毎日新聞社総合事業局スポーツ事業部長)西岡宏堂(元滋賀県高野連会長)野村利夫(元大阪府高野連会長)木村淳(宮城県高野連理事長)渡辺圭一郎(山梨県高野連理事長)小山修一(長野県高野連理事長)伊原登(大阪府高野連理事長)正木陽(高知県高野連理事長)松元泰(宮崎県高野連理事長)

この結果、高野連様の理事は会長・副会長を含んで33人となりました(ほかに監事が3人)。

会長●脇村春夫(再)
副会長●新妻義輔(再)
副会長●山武久(再)
副会長●越智隆弘(←顧問)
副会長●田井伸幸(新)

理事●清澤忠彦(再)
理事●和泉健守(再)
理事●杉中豊(再)
理事●木嶋一晃(再)
理事●尾藤公(再)
理事●浜村康弘(再)
理事●相澤孝行(再)
理事●吉井秀一(再)
理事●高木正皓(再)
理事●速水徹(再)
理事●堂馬隆之(再)
理事●森田郁朗(←評議員)
理事●山口雅生(←評議員)
理事●石井晃(新)
理事●松倉展人(←評議員)
理事●坂本浩哉(再)
理事●木村淳(←評議員)
理事●渡邊圭一郎(←評議員)
理事●小山修一(←評議員)
理事●神谷良治(再)
理事●伊原登(←評議員)
理事●河原丈久(再)
理事●正木陽(←評議員)
理事●松元泰(←評議員)
理事●田名部和裕(再)
理事●田中元男(再)
理事●西岡宏堂(←評議員)
理事●野村利夫(←監事)

監事●山下雅広(再)
監事●萩尾千里(←評議員)
監事●常本明(新)

財団法人においては理事は必置機関であり、意思決定、業務執行、対外代表の権限を有するものとされています。反高野連様の態度をとる一部には誤解があるはですが、「参与」という肩書きで登場する田名部氏は理事の1人ですから、財団法人日本高野連を代表する権限は(法的にも)認められます。

現実には、理事の大半は兼職であって、ほかに本業を持っています。結果的に、「専業」である田名部氏と脇村氏ばかりが表に出てくるわけです。彼ら2人の首をとったとしても、本部が大阪であることから、後任を探すのはコミッショナー探しより難しいでしょう。

また、「実質的に高野連様を支配しているのは最高顧問の4人だ」とする向きもあるようですが、すくなくとも彼らは法的な権限を有しておらず、また実態としても名誉職にすぎないはずです。

最高顧問●箱島信一
最高顧問●松前達郎
最高顧問●北村正任
最高顧問●秋山耿太郎

顧問●大本修
顧問●藤城亘男
顧問●鵜山治
顧問●佐山和夫
顧問●鬼頭鎭三
顧問●三輪武
顧問●奥尾幸一
顧問●渡部義徳
顧問●河村正(←副会長)
顧問●吉田孝(←副会長)
顧問●永野元玄(←理事)
顧問●達摩省一(←理事)

さて、理事または顧問で、今回退任したのは次の方々です。

上宮厚慧(顧問):大谷高校長、京都府私立中学高等学校長会会長
寺尾理(顧問):静岡東高校長
西川征志郎(理事):兵庫県高野連会長
高塚昌倶(理事):カネカサンスパイス社長、鐘淵化学野球部監督
西建策(理事):大阪市教育委員長
佐藤道輔(理事):東京都高野連理事長、東大和高野球部監督
藤澤義昭(理事):岩手県高野連理事長、盛岡工野球部長
多賀義彦(理事):奈良県高野連理事長?

藤岡行弘(理事→評議員)
岡村清(理事→評議員)
小森年展(理事→評議員)
小倉好正(理事→評議員)

まあ、この顔ぶれなら170人リストとはほぼ無関係でしょう。理事会は株式会社で言えば取締役会のようなものですが、一般的に財団法人は理事会とは別に評議員会を設けていることが多いようです。監事は監査役と考えればいいはずです。

また、高野連様に対して「天下り組織」との批判?がありますが、これはまったく的外れです。すくなくとも脇村氏は「無給」を条件に会長に就任しています。朝日や毎日との関わりが深いのは昔からのことであって、彼らは民間人ですからいわゆる「天下り」ではありません。

ついでに言えば、事務局員が報酬を得ているのは当然のことですが(「参与」となった田名部氏がどうなのかは知りませんが…)、役員報酬がもしあるとしても、せいぜい足代程度のものでしょう。この裏を返せば、だからこそ彼らは頑迷なアマチュアリズムから抜け出せないとも言えるわけです。

非常勤は別にしても、常勤の理事ならそれなりの報酬を得るのは自然なことであって、法外な退職金などが支給されない限り、非難されるようなことではありません。


コメントをくださる方へ

2007年05月26日 | コメント・トラバ指針

「最後の論客」?のページに対して、次のようなコメントを頂戴しました。

特待の程度問題について (元球児) 2007-05-26 14:03:36
高野連の失政をクローズアップするがあまり、問題の本質があまり論じられていないような気がします。たしかに高野連の運用は叩かれて叱るべきですが、「行き過ぎた野球特待生の実態を正そう」としていることにも興味があります。「毎月お小遣いが支給」されたり「寮の食費は無償」という特待生について、管理人様はどうお考えでしょうか。この問題の最終着地点になる案件でしょうから、今後の展開に加えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

コメントをいただけるのは、ありがたいことだと思っていますが、適切なページにお願いします。

このブログは4月24日に始めています。当日か翌日付で、たしか「コメント・トラバ指針」というページを掲げました。5月4日付の「コメント・トラバ・リンク」は、これを焼き直したものです。

最初は「コメントもトラバも、もっとも適切なページにお願いします」と書いていたのですが、ページが増えてきましたので、“もっとも適切なページ”を探せと要求するのも無理があるだろうと思って、「そのページに関係がないと私が判断したコメントは公開せずに削除しています」だけを残しました。

gooのブログには、(使い心地はよくありませんが)ブログ内検索がついています。今回のご質問でしたら、「小遣い」で検索すれば「次年度の基準」のページが、「寮費」で検索すれば、「落としどころ?」などのページがヒットします。

ご質問の内容からすれば、「最後の論客?」のページとは論点がまったく噛み合いません。“もっとも適切”でなくても構いませんが、“適切な”ページへのコメントを希望していることを再度申し上げておきます。

このブログは、「特待生」「野球留学」「アマチュアリズム」に特化したものです。一般的にブログは日記の代用になっていることが多いのでしょうが、私はブログを日記として運用していません。

「んだ」は、「セットポジション」で新しいページを作成したときや一定規模以上の加筆をお知らせしていますが、同時に「セットポジション」における掲示板のような役割も果たしています。Wikipediaで言うなら、「セットポジション」が本文であり、「んだ」がノートや履歴になります。

「書庫・東雲」は、「ライブラリー」のページを「セットポジション」から独立させる目的で開設しました。今後は少し毛色の変わったページも加えていく予定ですが、あくまでもブックレビューの枠にとどめるつもりです。

なお、「セットポジション」では「不良精神」を掲げています。「批判の自由をいかなるときにも許容する自由な寛容」というフレーズを含む藤田省三氏(近鉄パールスや法大の監督を務めた同姓同名の藤田省三氏とは別人)の論文の一節は、(今でも)私のお気に入りです。

私は、このブログを始める直前に、特待生批判を展開されていたあるお方のブログに2度ほど投稿してみました。毎日更新されているブログでしたが、どちらも数日間放置され、いつの間にか削除されました。

このブログでは、たとえ批判的・否定的なコメントであっても、このような対応はとりません。本当は「そのページに関係のないコメント」として削除したいのですが、批判的な内容を含むから削除したのだと思われたくありませんので、このページをつくりました。

さて、ここでは「小遣い」についてだけ触れて、「寮の食費」は別の機会に譲ります。「寮の食費」も来週の前半には扱えると思います。私の中では常に数回分の予定を立てていますが、新しいニュースが入るたびに後回しになって、草稿中のまま眠っているページも多いのです。

「小遣い」の問題は、すくなくとも報道されている限り、今回は表面化していません。1985年に国士舘大が憲章違反で1年間の出場停止になりましたが、それ以来、公にはなっていないはずです。

あると言うなら、その存在を証明しなければなりませんが、「噂」の域を超えるものではありません。まあ、制度上の名目としての「小遣い」はあり得ないことです。

それに、純粋な「小遣い」までダメなのかという問題はありそうです。監督なり部長なり後援会またはOB会の誰かが、「ご苦労さん。今日はこれで何か食べて帰れや」と相応の額を渡すことも一律に不可としなければならないのでしょうか?

これがダメなら、近所のおじさんが畑でとれたスイカを差し入れるのもダメということになりそうです。結局、「小遣い」の定義から始めなければなりませんから、結構やっかいなのです。

ご質問の「お小遣い」とは、「名目の如何を問わず、定期的に定額支給され、受け取った側が使途を問わず自由に使えるもの」を想定されているのでしょう(この定義なら簡単に抜け道を見つけられますが…)。

すでに「次年度の基準」のページで述べているように、こうした「小遣い」はNGとするのが世間相場というものです。たとえ小関氏でも「1校10人までなら小遣いもOK」とは言わないでしょう。

以上、コメントはこちらに振り替えて掲載しましたので、いったん公開した「最後の論客?」のページからは削除します。


「最後の論客」?

2007年05月25日 | アマチュアリズム

毎日新聞大阪本社で高校野球取材班キャップを務める滝口隆司氏が次のように述べています。

スポーツアドバンテージ>アマチュアリズム再考
(vol.351-2 2007年5月11日発行)
高校野球は日本に残るアマチュアリズムの最後の砦といえるかも知れない。甲子園大会ではフェンスの広告を消し、テレビ放映権料もとっていない。特待制度を選手が得る金銭的利益とみなすのも、その思想に基づいている。一方で日本の大半の競技は「エリート養成」や「商業的マネジメント」にまっしぐらだ。「するスポーツ」と「見るスポーツ」、アマとプロ。今回の問題を機に大いに議論したいテーマだ。

「最後の砦」の部分では私と共通認識があるようです。まあ、私はこの「最後の砦」を粉砕してしまおうとして、このブログを立ち上げました。滝口氏は「最後の砦」を守りたいのでしょう。いや、「議論したい」とおっしゃるぐらいですから、「最後の砦」からの逆襲を試みておられるのかもしれません。

しかしまあ、1986年に出版された本に掲載されている1964年の“ミスター・アマチュア(リズム)”の発言を引っ張り出したあげく、「議論したい」と言われても、誰も乗れない話でしょう。20世紀末に死滅したはずの亡霊を蘇らせたいのでしょうか。

今さら終わった話を蒸し返しても、無駄だということにお気づきでないようです。このまま「アマチュアリズム」に逃げ込むなら、高野連様と滝口氏は返り討ちにあいます。滝口氏はアマチュアリズムという“宗教”の「最後の論客」と言っていいかもしれません。

興味のある方は、次に掲げる国会図書館のWebページで「アマチュアリズム」を検索してみてください。1988年の国会論戦です。質問した高木健太郎参議院議員も、答弁した中島源太郎文部大臣も、90年代初頭に鬼籍に入りました。

参議院会議録情報 第113回国会 文教委員会 第7号

20年前の議論を再現したいと思うほど、現代人は暇ではありません。滝口氏は高野連様の意向に沿った記事を連ねてきました。私の知る限りでは昨夏あたりからです。むしろ、積極的にリードしているようなフシさえあります。

さて、先に紹介したコラムのバックナンバーを読んでみました。元特待生である滝口氏は野球留学を否定していません。当時の中山文科相が開会式で野球留学批判を展開したときのコラムです。

スポーツアドバンテージ>高野連は寮生活の実態にメスを
(vol.264-1 2005年8月17日発行)
だからといって野球留学を規制せよ、という話にはしてはならないと私は思う。15歳にして親元を離れるのは、青年が自立していく成長過程において決して悪いことではない。集団生活で貴重な体験も多く積める。問題とするのなら、それは野球留学ではなく、寮生活のあり方だろう。

ごもっともです。この人が今になって、死滅した「アマチュアリズムを議論したい」と言い出すとは思えません。こんなコラムもあるのです。

スポーツアドバンテージ>欽ちゃん球団の公式戦デビュー
(vol.246-2 2005年4月15日発行)
 試合前の関係者入口では、萩本欽一監督の即席インタビューが開かれていた。「きょうはグラウンドでマイクを持たせてもらえないので残念だなあ」。オープン戦では、試合中もワイヤレスマイクを片手にファンサービスをしていた。しかし、この日は公式戦。当然そんなパフォーマンスが認められないと思っていたら、試合直前に許可が出た。
 県野球連盟の役員が「あまり時間はないですが、試合前だけですよ」とマイクを欽ちゃんに手渡した。ノック中からマイクパフォーマンスが始まり、その一言一言に観客からは大きな笑いが沸き起こる。お年寄りや子どもたちも「欽ちゃーん」と声を掛け、球場は微笑ましいムードに包まれた。
  「公式戦なのに、なんと不謹慎な」と目くじらを立ててはいけない。このパフォーマンスにこそ、今のスポーツ界へのヒントが隠されているように思える。

名門と呼ばれる高校で野球をやっていた滝口氏が野球のルールに詳しくないとしても、滝口氏が落ち込む必要はありません。ルールなど知らなくても、野球はできます。萩本監督のマイクパフォーマンスは厳密にはルール違反です

連盟役員は精一杯の配慮をしているのです。まあ、ノック中なら、私とて「目くじらを立てる」つもりなどありませんが、さすがに試合中はまずいはずです。しかし、このマイクパフォーマンスを、滝口氏は「今のスポーツ界へのヒントが隠されている」と評しています。


欽ちゃんが唯一不満だったのは、ゲームセット直後、スタンドの声援に応えて愛嬌を振りまいていたら、審判に「早く整列して」と注意されたことだ。「まずはお客さんを大事にしなきゃあ。舞台人はお客さんに作られる。野球の選手も観客に育てられるんだよ<略>

えっ! まあ、ルールを知らなくても野球記者は務まります。(日本における)アマチュアの試合で球審が「ゲーム」を宣告するのは、たしか整列のときだったと私は記憶しているのですが…。審判が整列を促すのはむしろ当然のことです。

相手チームは整列して待っているのでしょうから、萩本氏がチンタラしているのは逆に失礼な話です。ファンサービスは結構ですが、だからと言って相手チームや審判を待たせていいということにはなりません。

選手へのスポンサーを募り、有料の練習試合で全国を転戦する欽ちゃん球団は、限りなくプロに近いアマです。もちろん、私はそれが悪いとは思いません。むしろ滝口氏と同じ意見です。ほら。


アマチュアスポーツに「お客さん」という意識は低かったに違いない。スポーツはすることも見ることも面白い。欽ちゃんはその一体感を強調したかったのだろう。企業スポーツが低迷し、クラブスポーツに活路が求められている。今年は野球の四国独立リーグや、男子バスケットのプロ「bjリーグ」も始まる。その成功のカギは、人を引き付ける「創意工夫」以外にない。地方球場を満席にする欽ちゃん球団を見ていると、そんな気がしてくる。

あれ? 四国独立リーグもbjリーグも「プロ」です。「プロ」と欽ちゃん球団を同列視しておられます。いや、私もそう思っていますから、別にいいんですが…。ただ、滝口氏は次のようにも語っているのです。

スポーツアドバンテージ>なぜ野球はだめなのか
(vol.348-2 2007年4月20日発行)
10代の若者にスポンサーをつけ、テレビCMに使い、競技会を転戦させる。それが日本のスポーツ界がひた走る時代の最先端なのか。日本のスポーツが目指すべき方向なのか。

あれ? 「テレビCM」云々はたぶん浅田真央のことでしょうが、茨城ゴールデンゴールズの女子選手も化粧品メーカーのCMに出ているはずです。私には滝口氏の最近の発言と2年前の発言に一貫性がないように思えてなりません。

ところで、私は「アマ」です。滝口氏は「プロ」です。私は、自分がやりたくないことはやらなくても済むのが「アマ」だと考えています。意に反することでもやらなければならないのが「プロ」だと思っています。そういう意味で滝口氏は「プロ」なのかもしれません。

別に毎日新聞社の社内事情に詳しいわけではありませんが、大阪本社でキャップなら、いずれ運動部長(兼高野連理事)というコースが見えているのかもしれません。もし、これが「変節」であり、その原因が私の邪推どおりなら、単に滝口氏が「プロ」であることの証左にすぎません。そして、それは否定されることではありません。

私は「アマ」です。このブログで、高野連様をけなそうが持ち上げようが、何の得にもならず何の損にもなりません。金銭的対価を求めない(得られないだけ?)「アマ」です。まあ、「最後の論客」たる滝口氏には再度の登場をお願いするつもりです。


専大北上

2007年05月25日 | 高校別

専大北上の再加盟が高野連様の理事会で承認されました。

専大北上高の再加盟承認 (共同通信 2007年05月24日 19:35)
 日本高校野球連盟は24日、大阪市内で全国理事会を開き、プロ野球西武の裏金問題に関係して野球部を解散した専大北上高(岩手)の6月1日付での再加盟を承認した。同校は夏の全国選手権岩手大会への出場が可能となった。
 4月16日に野球部を解散していた同校はこの日午前に、再加盟のための申請書を提出。理事会では野球部の指導監督体制の整備などが確認されたとして5月31日付で対外試合禁止処分を解除することを決めた。

まあ、最初からそういう流れになっていたわけです。これは既定路線であって、「除名相当」で解散に追い込んだ悪代官がヒヨったわけではありません。

専大北上高野球部解散 「甲子園が…」涙の部員
(産経新聞 2007/04/17 08:07)
 日本高野連の田名部和裕参事は、専大北上高が再加盟する条件として、再発防止策を確立した上で(1)新しい指導者の就任(2)日本学生野球憲章に違反したスポーツ奨学制度廃止に保護者の同意を得ることなどを挙げた。
 再加盟が申請された場合は、高野連の審議委員会で諮られる。田名部参事は「夏はOKとは明言できないが、県大会の抽選が6月末にあることを考えると会議に諮るリミットは6月初めぐらいだろう」と話した

とはいえ、途中に大騒動を挟んでいますので、「結局、高野連は何をやりたかったの?」という疑問を増幅させることになるでしょう。少数ながら、高野連様支持派もいるわけですが、彼らからすれば納まりがつかないかもしれません。

これまでの流れは、次のとおりです。

★3月9日★西武球団の不正(≠不法)なスカウト活動が発覚。

★3月10日★専大北上高出身の早大選手が計1000万円余りを受け取っていたことが判明。

★3月14日★専大北上高の黒沢勝郎校長が会見、高校在学中からの金銭授受が判明。

★3月15日★専大北上高出身の早大選手が会見、金銭受領を認めて野球部を退部。西武球団による隠蔽工作も判明。

専大北上に強い不信感 (2007年03月21日 23:54 共同通信)
 田名部参事は「高校時代からプロと練習するなどルール違反に強い憤りを感じる。学校ぐるみとしか思えない状況で、除名に値するくらい悪質だと考えている」と話した。日本高野連では22日に全国理事会があり、この件について経過報告が行われる。

★3月22日★日本高野連全国理事会で、各都道府県高野連理事長に対し加盟校に日本学生野球憲章やプロアマ関連規定の順守を促すよう要請。

★3月23日★早大元部員に停学1カ月の処分。専大北上高は金銭授受に関与していた当時の野球部コーチを解雇。

★3月26日★専大北上高の黒沢勝郎校長が学校法人北上学園に辞職願を提出、受理。

★4月4日★西武球団の調査委員会が別の5選手や高校の監督ら170人に金銭を渡していたことを発表。

★4月9日★日本高野連が岩手県高野連を通じて13項目の質問書を専大北上高に送付。

★4月12日★日本高野連が専大北上高校長、当時のコーチら5人から事情聴取。同校のスポーツ奨学制度が日本学生野球憲章に違反することが判明。

高野連、専大北上を「除名相当」と判断 裏金問題で
(朝日新聞 2007年04月12日22時03分)
中学時代の野球の成績などをもとに生徒の入学を認め、学費などの免除をしていた。<略>同校では1学年10人程度の野球部員が、スポーツ特待生制度で現在も入学しているという。日本高野連では、部員がプロから金銭を受けていたことを前コーチが黙認していたことに加え、憲章違反が重なり、学校側に管理能力が欠如していると判断。「極めて重い違反行為。除名相当である」(田名部和裕参事)とした。<略>この日の調査では、選手の早大進学に際し、西武から金銭供与が持ちかけられ、前コーチも選手の家庭事情から了承したことなど、事件の概要もほぼ明らかになった。学校関係者への金銭供与は認められなかった。

★4月14日★専大北上高内に「硬式野球部緊急再生委員会」設置。野球部員のスポーツ奨学制度を廃止する方針を保護者らに説明。

★4月16日★専大北上高硬式野球部が解散届。日本高野連が受理。

専大北上高が野球部解散 学費免除など憲章違反
(産経新聞 2007/04/16 17:57)
 同校は(1)野球部コーチだった元教諭が元選手と西武が交わした覚書に関与(2)中学時代のスポーツの実績に応じて学費などを免除する奨学制度が日本学生野球憲章に抵触-との指摘を重く受け止めたことを解散の理由に挙げている。12日に日本高野連からの事情聴取の際に野球部解散の方向性を伝えていた

ルール違反、苦い決断 専大北上の野球部解散
(朝日新聞 2007年04月17日07時14分)
 専大北上
高校では4時間目の途中に野球部員が集められ、高木敬蔵校長らが「解散」を告げた。「びっくりしている。野球がしたくてこの学校に入ったのに……」。ある2年生はがっかりした様子をみせた。
 3年生の一人は「監督が『夏の大会には間に合わせる』と言ったのでそれを信じている。夏に向けて練習するだけ。最近の練習では『こんなことに負けない』という部員たちの気持ちが出て以前よりも気合が入っている」と話した。別の3年生は「正直不安だ。甲子園に行きたくて入学したので夢は捨てていないけど、この件が今後のモチベーションにどう影響するか、少し心配だ」と語った。
 特待生として入学したという2年生は「突然、特待生がだめだと聞いて驚いた。解散が決まり、自分が悪いことをしているのかと思わされた。ほかの特待生もお金の心配をするなど戸惑っている」。

★4月17日★岩手県高野連理事会で藤沢義昭理事長が特待生制度に関する全国調査の可能性を示唆。

★4月18日★日本高野連の審議委員会で専大北上高の処分案を検討、20日の理事会で再審議に。脇村会長が特待生制度の実態調査の方針を明らかに。

★4月20日★日本高野連の常任理事会でスポーツ特待制度について全加盟校に実態調査することを決定。専大北上高の当面の対外試合禁止を決定(処分保留)

★4月25日★申告受付開始。

★4月27日★日本学生野球協会審査室が専大北上高の対外試合禁止処分を正式決定。

専大北上対外試合禁止処分に
(スポニチ 2007年04月28日付 紙面記事)
「学校の責任は重い。しかし、多くの部員が所属する野球部には新たな出直しに期待をかけた処分となった」と日本高野連の河村副会長。(1)学生野球憲章の順守(2)学校の野球部管理体制の適正化(3)学生憲章に違反する特待生制度廃止と解約証明書の提出――を6月28日の県大会抽選日までに満たせば出場が認められる見通しを示唆した。

★5月3日★日本高野連が特待生制度の申告校を最終発表。

★5月10日★日本高野連全国理事会で、専大北上高部長に科した1年間の謹慎処分の短縮を日本学生野球協会に上申することを決定。在校生の緩和措置なども同時発表。

★5月24日★日本高野連が専大北上高からヒヤリング、理事会で6月1日付の再加盟を承認。

専大北上のスポーツ特待制度については、次のような報道があります。

特待生野球は憲章違反 (2007年4月17日 読売新聞)
専大北上高は2000年4月に「スポーツ奨学制度」を創設し、卓球、レスリング部などと同様に野球部にも適用していた。中学時代の実績などにより、A、B、Cの3ランクに分けて、ランクに応じて一定の経費を免除。今回の問題の発端となった早大野球部の元選手が、同高に入学した01年には、野球部で14人が特待生となり、元選手を含む9人が最も優遇される「A」、2人が「B」、3人が「C」とのランク付けがされていた。

ちなみに、野球の成績をもとに入学を認めるだけなら学生野球憲章には触れません。また、この内容なら従来考えられていた「解釈」でもアウトになるでしょう。

4月12日の段階で学校側から高野連様に解散の意思が伝えられていたというのは、「高野連様側から自発的解散を示唆され、これを受け入れた」と深読みすべきでしょう。まあ、恫喝されたとまでは言いませんけど…。

ところで、専大北上と言えば、矢田利勝元監督の存在もクローズアップされねばならないはずです。系列関係にある石巻専修大の選手のプロ入りに際して、斡旋謝礼として数百万円を受け取ったものの、スカウトに固辞されたため1年間預かり、これを理由に04年秋に監督を解任され、学生野球協会からは無期謹慎処分になっています。

この解任を受けて(短期間とはいえ)監督に就任したのが、今回の件で懲戒解雇された高橋利男コーチ(副部長)です。ですから、「除名相当」の声が出てくるのはある意味では必然だったわけです。

さて、日本学生野球協会は1968年から表彰選手を発表しています。現在では、高校が各都道府県1人の計47名、大学は各連盟1人の計26名ですが、まれに「該当者なし」のときもあります。

どういう選考基準があるのか知りませんが、高校の場合は甲子園出場校のキャプテンが選ばれることが多いはずです。無期謹慎処分中の元監督、実は高校時代に学生野球協会の表彰選手になっています。

形式的には協会が表彰するのだとしても、実際に選んでいるのは(県)高野連側です。当時は佐伯天皇の時代です。もちろん当時も「高校野球は教育の一環」でした。すると、これもまた素晴らしき「教育の成果」ということになります。

裏金に関与したスカウト氏にしても、その昔は高野連様の加盟校の1つで汗を流していたはずです。「教育」だの「健全育成」だのと“清く正しく美しく”を謳い上げてみても、しょせんこの程度の結果しか残していないわけです。


落としどころ?

2007年05月23日 | 憲章見直し

小関順二氏が次のように述べています。

プロ野球偏愛月報>「特待生問題」の落としどころ
(Number Web 2007年5月16日)
 高野連(高等学校野球連盟)のように高校野球を教育の一環ととらえれば特待生はとんでもないということになるが、野球を世界に誇るスポーツ文化と位置づけ、その強化が国民に喜びを与えると考える僕のような人間にとっては、技量のすぐれた高校球児を特待生として遇するのは当たり前ということになる。

野球は「世界に誇るスポーツ文化」だと言われると、私はちょっと引いてしまいます。私は「セットポジション」の「来訪者要件」で、「野球は文化だと思っている人」を掲げてきました。その私でさえ引いてしまうのです。

「その強化が国民に喜びを与える」とまで言われると、後ずさりしたくなります。せいぜい「ファンに喜びを与える」程度でしょう。私も「国民」を使っていないか、「セットポジション」をサイト内検索してみました。6件ありましたが、すべて引用や固有名詞でした。ひと安心です。

小関氏は続けます。


高野連もつらい立場に立たされているが、ここは頭を柔軟にして考えてほしい。1校10人に特待生を制限すれば違反も摘発しやすい。しかし、特待生を認めなければグレーゾーンが新たな問題として浮上してくる。つまり「学業などで特待生の待遇を得ているから問題ない」と主張する選手が蔓延してくるはずである。そういうあやふやなゾーンを払拭する意味でも、高野連には人数を制限した上での特待生を認めてほしいと思う。

表題からすれば、これが小関氏のおっしゃる「落としどころ」なのでしょう。これは100%あり得ません。断言できます。グレーゾーンがあるのなら、人数を制限したところで、摘発は容易ではありません。

人数を制限すれば、グレーゾーンは払拭できるのでしょうか? ほとんど何も考えていないに等しいようです。高野連様は「野球部員であることを理由とした特待生」を認めないと言ってきたわけですから、たとえ1校1人でもこれを認めるはずがありません。結局、アマをドラフトの道具にしか思っていない方なのでしょう。

一方、次のような意見もあります。

野球特待生問題、高野連を責めるのは簡単だが…
(稲見純也の週刊Bylining Sports 2007/05/21)
第13条(と第19条)を改定して特待制度や奨学金を認めた上で、その額に「他の競技と比べても常識的な」上限を一律に設定し、連盟側が責任持ってその上限が遵守されているか監視すべきである。

人数の上限を定めるより、金額の上限を定めるほうが現実的です。これなら、高野連様の顔を立てることができます。一般常識として許容される金額で線を引くのは「落としどころ」になり得ます。

高野連様はすでに憲章の「解釈改憲」を示唆しています。金額で線を引き、この程度なら、「野球部員であることを理由とした特待生」には該当しないと解釈変更するだけで済みます。ただ、学費は学校によって異なります。一律に金額で線を引こうとすると折り合いがつかないかもしれません。

授業料や入学金といった一般生徒が負担する性質のものを減免しても「野球部員であることを理由とする特待生」とはみなさない、と解釈変更することのほうがより現実的な気がします。寮費、遠征費、用具代などは一般生徒は負担しませんから、これらの減免や補填をNGとする考え方です。

どのみち高野連様単独では学生野球憲章を変えることはできません。とりあえず、あと1カ月少々の時間的制約のなかで、私学部会がまとめられるのは、この程度の内容にしかなりません。

当座は「解釈改憲」でしのぐしかないわけですが、最終的には「改憲」の必要があることは言うまでもありません。主にサッカーを担当していた元NHKアナウンサーの山本浩氏は次のように述べています。

時論公論 「野球特待生制度を救うもの」
(NHK解説委員室ブログ 07/05/08)
プロ野球界には、これまでも登録をしたスカウトしか交渉に行けないというスカウト登録制度があります。このスカウトは自分の球団のために働く存在ですが、それを全日本野球会議が認定する資格制度にするのです。「移籍認定者」とでもいったらいいのでしょうか。この資格を持つ人物を全ての組織が受け入れる。移籍認定者が介在しない移籍や登録は、どこの組織も認めない。そうした制度を検討することはできないのでしょうか。

山本氏の“ボリューム感にあふれた”主張こそ理想なのです。どうせ今の各団体の規定でも二重登録はできません。少年野球からプロ野球まですべての野球選手・指導者らが全日本野球会議に登録し、全日本野球会議が各団体に応じた指導者資格、審判資格、記録員資格、ゼネラルマネージャー資格、スカウト資格、トレーナー資格などのライセンスを発行するというシステムに移行しなければなりません。

つまり、短期的には特待生問題の後始末が急務ですが、中期的には学生野球憲章の見直しが必要であり、長期的には組織の統一が求められています。全日本野球会議にはまだ実質的な権限はありません。

本来なら、あと2つ3つぐらい“爆弾”が炸裂しないと、統一組織の話までいかないのでしょうが、せっかく高野連様が“自爆”してくださったのですから、これを憲章の見直しで止めてしまったのでは高野連様に申し訳が立ちません。

なお、このブログで扱うのは憲章までですので、念のため。ちなみに、「ボリューム感」とは小関氏が選手評でよく使う言葉です。何を意味するのか私は知りません。


通達全文

2007年05月22日 | 特待生の何がNG?

リクエストをいただいた「中学生の勧誘行為の自粛について」の全文です。リニューアル前の高野連様のWebサイトには、この通達以外の文書もWordファイル(!)で公開されていました。

私はてっきり、どこか県高野連のWebサイトに掲げられているものと思っていましたが、検索しても出てきません。たしかに、この通達を抜きにして、この件を語ることはできないでしょうし、別に機密書類ということでもありませんので公開します。

★印の行は本来は右寄せです。□□□□は都道府県名と会長の氏名が入るものと思われるスペースです。また、標題と「記」は原文ではセンタリングされています。

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日本高野連発第W3298号
平成17年11月25日

□□□□高等学校野球連盟
   会長 □□□□ 殿

財団法人 日本高等学校野球連盟
会長 脇村春夫

「中学生の勧誘行為の自粛について」(通達)

 日本高等学校野球連盟では、懸案の野球留学問題の是正について、今年度「野球留学検討委員会」を設置、現在の実態やその背景、問題点について、都道府県高等学校野球連盟の協力を得て資料を収集しました。
 その結果、中学生の勧誘行為について、現在取り決めている学生野球憲章や各種の規定、通達に違反する現状が指摘されました。
 都道府県外から生徒を受け入れることは、中学生の進路選択の自由や私学の特色づくりなどもあり一概に規制することは困難とされています。
 しかし、野球留学検討委員会では、高校野球の健全な発展を損なう勧誘や、野球に偏重した生活を見直す必要性を確認すると同時に、中学生の適正な進路決定にふさわしい環境を確保するためにも、この機会に改めて高校側に自粛を求める必要があるとの意見が出されました。
 さらに同委員会では、全都道府県高等学校野球連盟が共通の認識を持って取り組むことが重要であるとの意見も出されました。
 スポーツを通じての人間形成は大きな教育的効果があることは周知の通りですが、余りに偏重すれば形成途上の青少年に及ぼす心身への影響は極めて大きく、時にはその一生を左右するような決定的要因となります。特に中学生を勧誘することは、本人に「野球だけをすればよい」などと誤った優越感や特権意識を持たせることになり、精神面への悪影響は計り知れません。
 高等学校野球の本来あるべき健全な姿を守るためにも、まず各高等学校の指導者の皆さんが真剣に青少年の心身への効果と影響を考え、再度襟を正して野球部の運営に当たっていただくことを心から願っています。
 つきましては、特に問題となる「中学生の勧誘行為」について、次の通り具体的な指導事項をまとめましたので、貴連盟加盟校への周知徹底をよろしくご指導下さるようお願いします。
 

1. いかなる場合でも高校側の指導者や関係者が中学生を勧誘してはいけない。いかなる場合も高校側関係者が、中学生の家庭訪問をしてはならない。

2. 高校のOB(会)や後援会が学校とは別の動きをし、結果的には高校の代替役を果たして勧誘に回っているケースが見受けられる。
従ってこうした周囲の動きには特に留意し、少しでもそのような動きを察知すれば直ちに自粛、自戒する措置をとること。

3. 中学生の進路について、中学校や少年野球団体関係者ではない第三者による斡旋行為があるとの実態報告があった。ときには金銭が介在するという指摘もあり、高校側が断じてこうした第三者の介入を許さない自戒が必要である。

4. 中学野球や少年野球関係者から入学についての打診や相談は、はっきりと一線を画し、当該生徒の進路指導は、あくまで中学校の担任教諭との間で正しく進められるよう留意すること。

5. 「高等学校新入生徒の練習参加に関する規定」に規定されている通り、入学以前に中学生を対象としたいわゆるセレクションを行ったり、練習に参加させてはならない。なお、平成15年から「中学生の体験入部」について、体験できる内容など規定を設け認められているのでこの範囲での実施に留意すること。

6. 中学生の入学に当たって高校は、日本学生野球憲章13条の「野球部員であることを理由とした金品収受の禁止」規定に触れる、学費、入学金、寮費などを軽減したり、免除するいわゆる特待生待遇をしてはならない。高校入学後も同様に、野球部員であることを理由とした特待生待遇をしてはならない。

7. 高校が中学校(また少年野球)の試合を主催したり、試合を斡旋したりしてはならない。また、高校が地域の中学野球や少年野球関係者に誤解を招くような寄付をしたり、野球の指導を行ってはならない。

以上

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この通達は前置きで、「野球留学を規制することは困難だが、自粛を求める必要があるとの意見が出された」と述べています。「意見が出された」だけであって、「自粛を求める必要があるとして意見が一致した」のではありません。

さて、「具体的指導事項」として掲げられた7項目は次のとおりです。

  1. 勧誘や家庭訪問の禁止
  2. OB会や後援会による勧誘の自粛要請
  3. 斡旋行為に対する自戒の要請
  4. 進路指導の「適正」化の要請
  5. セレクションの禁止、体験入部の制限
  6. 野球部員であることを理由とした特待生の禁止
  7. 中学野球や少年野球への技術的指導等の禁止

このうち「禁止」は1、5、6、7の4項目であり、2~4は「自粛」「自戒」「留意」でしかありません。たとえば、2の裏を返せば、OB会や後援会が学校当局に察知されないように動いている限り、問題はないということになります。

4は「野球で高校に入学するのはダメよ」と言いたいのでしょう。高校生が野球で大学に入るのは別に否定されないようですから、結局、学生野球憲章の問題ではなく、高校生としてどうなのかという問題になってくるわけです。だとすれば、やはり学生野球憲章は高校と大学に分けるしかありません。

実は、高野連様が11年前に出した「歴史的!文書」も私は(勝手に)公開しています。記録としてとどめておく価値があると思っているからです。私は本来、記録マニアですから…。まあ、11年前というのを割り引いたとしても、ここまで言える団体はそうありません。


軸足

2007年05月21日 | 脇村語録

脇村氏の発言がどうにも一貫しません。まあ、報じる側のメディアが肝心な部分をそぎ落してしまうのかもしれませんが…。

「特待制度」驚きの実態!400校1万人アウトか
(2007年5月3日06時01分 スポーツ報知)
脇村会長は「憲章違反は本来ならもっと処分が重いが、免責される。健全な高校球界を作ることが残された責任。13条は時代遅れと思っていないし、野球留学が絡んだ大問題を解決しないと高校野球の発展はない」と言い切った。

緩和措置を発表したあとも同じです。

特待制度に緩和措置 高野連が緊急理事会
(中日スポーツ 2007年5月11日付紙面から)
脇村会長は「きっちりとした制度改革が課せられた責任と思っている。今回の最大の問題は、野球留学に絡んでおり、フェアプレー精神、アマチュア精神に反する、そこの根幹をきちんとしなければいけない」と話した。

まるで、「特待生が悪いと言いたかったのではない。本当は野球留学がよくないと言いたかっただけだ」と弁明しているようにしか聞こえません。

それなら、それでいいのです。野球留学が本丸だと言ってくださるのなら、私は楽チンです。野球留学に歯止めをかける目的で「特待生NG」を言い出したのだとしたら、まったくもって本末転倒だからです。

なぜなら、「特待生制度を使わず私費で野球留学するのは構わないのだな」ということになってしまうからです。かえって、野球留学を認めることになります。

脇村氏は今回の事件以前には次のように発言していました。

小中高野球協10周年祝う 高知市 (高知新聞 2007年01月28日)
―出身地以外に進む野球留学について高野連は、さまざまなデータを集めていますが。
 「本人に選択の自由があるので一律に規制することはできないが、個人的には親元から通学して地元の高校で野球をすることが望ましいと思う。だが、県外で寮生活をしながら野球をすることが一概に悪いともいえない。ただ、授業料免除など特待生として進学するケースを含めて、金銭の授受が絡むとすれば、日本学生野球憲章に反する。具体的な確証があれば、しっかりと対処したい」

ここでは、「野球留学は一概に悪いと言えないが、特待生制度は学生野球憲章に反する」とおっしゃっていたわけです。ねえ、どっちなの?

特待生制度は学生野球憲章の問題です。これは“宗教論”です。しかしながら、野球留学は“宗教論”ではありません。学生野球憲章は野球留学を禁止していないからです。禁止できるはずがありません。大学にも適用される学生野球憲章で野球留学を禁止したら、大学野球は成立しません。

脇村氏の発言でわずかに救いがあるのは、これだけです。

勧誘行為の制限が課題 (2007年5月11日19時08分 スポーツ報知)
脇村会長は「留学そのものを駄目と言っているのではない。問題になっているのは選手の勧誘」と話したが、明確な基準づくりは難しく、高野連の今後の課題ともいえる。

もう少し発展させれば、話を集約できるのではないでしょうか? 選手の勧誘そのものが問題なのではなく、中学生の高校進学に際して人身売買的にブローカーが蠢くことこそが排除されるべきなのです。

そのようにおっしゃってくださるのであれば、知恵の出しようもあるでしょう。何が悪いのか、何を排除すべきなのか、一番肝心な軸足がブレているのですから、各方面から「ボーク!」の大合唱が起こるわけです。

選手の勧誘を規制してしまうと(規制しているのですが)、逆にブローカーの跋扈を促すことになります。当たり前です。高校側が直接勧誘できないのですから、誰かが仲立ちするだけのことです。

特待生を禁じて、表向き「健全」化されたとしても、実質的な特待生が闇に潜ってしまう可能性があります。本来、これこそ恐れなければいけないことです。学校側が定めた特待生のほうがよほど「健全」です。

野球留学を規制したところで、同県内の高校への進学の斡旋を規制することはできません。このように考えるなら、野球留学、特待生、選手の勧誘をことごとく禁止しても、ゴキブリのように生き残るものがあるわけです。これこそが実は“本命”ではないのでしょうか?

これだけ発言が一貫しないのは、ご本人も何かが悪いとは思いながら、何が悪いのか確信をお持ちではないのかもしれません。その程度の人物が号令をかける(その程度の人物に号令をかけさせている)から、話が混乱するわけです。「見逃し三振はけしからん」とほざいているぐらいが、ちょうどお似合いのお方です。

私はTVを見ませんから知りませんが、どうやら緩和措置の発表のときも、謝罪の言葉はなかったようです。たとえ“帽子”にすぎなくても、最高責任者である以上、それはあってはならないことです。