特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

憂鬱

2007年06月23日 | 脇村語録

高野連様が“緩和”措置の検討に入ったのは5月7日の夜です。同日の午前に伊吹文科相は衆院教育再生特別委員会で「できるだけ生徒に被害が及ばないよう話をしたい」と述べています。“緩和措置”を決めたのは10日です。翌11日に伊吹-脇村会談を控えていました。

高野連が憲章見直し 第三者機関発足…自民党本部訪問
(2007年6月23日06時00分  スポーツ報知)
 「以前、私は13条は見直さないと言うことで、『頭の固い高野連の会長』とおしかりを受けたが、決してそういうつもりではありません」かたくなに13条を錦の御旗としていた高野連トップが、突然の“軟化”。驚きを隠せない報道陣に、脇村会長は真意を説明した。
 「第三者機関も含め、検討してもらおうと思っている。私が13条を見直そうと言ってるわけではない。誤解のないようにして頂きたい」日本高野連では今秋、有識者による第三者機関を発足させる方針で、26日の全国理事会の承認を経て正式に発表される。この第三者機関によって、13条を聖域とせずに、検討を重ねる姿勢を示した。これまで、脇村会長は13条見直しについて、議論の余地すらないとの意向だったが「多少、柔軟になったかもしれない」と“軟化”を認めた。

今度は政権与党の提言をほとんど丸呑みしたようです。どうやら、この組織を動かすには政治の力を借りるのが一番早いようです。政治の圧力に弱い高野連という印象は拭えないでしょう。

もともと学生野球憲章とは、行政の介入を許さないために定められたものだったはずです。結果的に、脇村氏の言動は学生野球憲章の“立法の精神”を踏みにじるものになっています。

これほど見苦しい撤退を重ねるなら、最低限「生徒にも責任がある」との発言だけは撤回すべきでしょう。それができないのなら、脇村氏は秋を待たずにお辞めになるべきです。

だいたい、脇村氏はどのツラを下げて開会式や閉会式に臨めるというのでしょう。「責任がある」と言われた特待生が開会式をボイコットしたいと言い出したら、私が部長なら自分の責任においてこれを認めるしかありません。

97年:智弁和歌山-[申]平安
98年:[申]横浜-[申]京都成章
99年:[申]桐生第一-岡山理大付
00年:智弁和歌山-東海大浦安
01年:日大三-[申]近江
02年:明徳義塾-智弁和歌山
03年:[申]常総学院-[申]東北
04年:[申]駒大苫小牧-[申]済美
05年:[申]駒大苫小牧-[申]京都外大西
06年:早稲田実-[申]駒大苫小牧

過去10年間の決勝のカードは上のとおりです。申告校同士の決勝は4回あります。「生徒にも責任がある」を撤回しないまま、今年も申告校同士の顔合わせになったら、脇村氏は何を語れるのでしょうか。

いっそのこと、申告校が優勝したら辞任、非申告校が優勝したら留任ということにすれば、新たな球趣?も湧くというものです。


行き過ぎ

2007年06月15日 | 脇村語録

私学部会の県(地区)レベルの会合が各地で開かれています。福島は過激です。

憲章見直し求める/高校野球特待生問題(2007年6月12日 福島民友新聞)
(リンク先はいずれもGoogleのキャッシュ)
森座長は部会後、「日本高野連は『野球憲章を順守した上で、各校で対応を考えてほしい』と伝えてきたが、部会の結果は、野球憲章そのものを否定する内容になった」と話し、日本高野連との対立を強調した。

高野連様のお膝元・大阪も強硬姿勢のようです。

「特待生制度は維持を」で一致…関東地区私学検討部会
(2007年6月11日19時52分  読売新聞)
大阪府私学検討部会(部会長、坪光正躬・大阪明星学園長)もこの日、大阪市内で行われ、日本学生野球憲章などの見直しを求める意見が相次ぎ、14日の近畿地区私学部会に報告することを決めた。

都道府県レベルでは憲章見直しの発言も出るでしょうが、地区レベルで集約されたときに「憲章見直し」が残るかどうかは微妙なところでしょう。まあ、東北は残りそうな気配ですが…。

脇村氏は05/24の第1回私学検討部会後の記者会見で「憲章見直しを求める声はなかった」旨の発言していましたが、次回もそう言えるとは限りません。

■全私学新聞>特待生問題私学検討部会開く
脇村会長と田名部参事の二人が記者会見に臨み、脇村会長は「私学の経営のことも頭にあるが、具体的基準作りに向かって三項目を含め検討していただく」としながらも、私学関係者から憲章を見直すべきだとの意見は検討部会で出なかったこと、仮に各地区の私学関係者から憲章の見直しが提案されても見直す考えのないことを強調した。
 またこの会見の中では〝野球留学〟については、金銭が関与する特待生制度と結びついていない限り問題にはしないこと、高校野球として行き過ぎた行為を列挙して書き上げてほしいとも語り

この記事によれば、「行き過ぎた行為を列挙してほしい」と語ったのは脇村氏のようです。いったい誰に対して「書き上げてほしい」と語ったのでしょうか?

「行き過ぎ」の具体的な中身は私も一番知りたいところです。もともと田名部氏や脇村氏の中では、そこから話が始まっているはずなのです。こういう「行き過ぎ」があるから今回の措置をとったのだと言えば、脇村氏はこんなに悪役にならずに済んだはずです。

もしかすると、把握しないまま暴走したのでしょうか? そんなはずはありません。「行き過ぎ」については、噂では足りず、ある程度の裏付けが必要になります。ガセネタを掴まされ(てい)ることもあり得るわけです。

まずは高野連様が把握している「行き過ぎた実態」を開示すべきだと私は考えますが、「列挙してほしい」とおっしゃっているぐらいですから、ご本人もあまりご存知ではないのかもしれません。 


2007年06月13日 | 脇村語録

まんざら、皮肉というわけでもないのですが…。

脇村高野連会長吊し上げ、辞任要求も…「自民特待制度小委員会」出席
(2007年6月8日06時02分  スポーツ報知 リンク先はGoogleのキャッシュ)
出席議員からは「野球だけ高野連として独立していなければならない理由は何なのか」「会長はもっと頭を柔らかくすべきだ」といった厳しい声が続出。さらに特待制度導入校の野球部長を解任した越権行為を指摘され、「高野連は大会の運営だけに専念すればいい」といった意見も出るなど、まさに「針のむしろ」状態だった。

せっかく政権与党の国会議員と面談するチャンスを得たのですから、脇村氏は次のように言うべきでした。

これこれの問題がある。この問題を放置してきたのは行政や立法の怠慢(不作為の責任)であって、もはや高野連ごとき一競技団体では手の施しようがない。ぜひ議員の皆さんの知恵を貸してほしい、と。

まあ、次のような共同電もありますから、それに近いことは言ったのでしょう。

評議員会に進退諮る 日本高野連の脇村会長
(東京新聞 2007年6月7日 12時40分 リンク先はGoogleのキャッシュ)
脇村会長は「会長は頭を柔らかくした方がいいと言われた。(特待制度問題の)背景などを説明したが、なかなかご理解いただけなかった」と話した。

「なかなかご理解いただけな」いのは、何をNGとしているのか伝わって来ないからです。「これこれ」の部分に何が入るのか、もう2カ月になろうとする今でもまだわかりません。もともと高野連様は朝日新聞がつくった組織であって、そこに毎日も噛んで来て、試合はNHKが全国中継するので、広報の必要がなかったわけです。

野球特待生の問題なのか、野球留学の問題なのか、勧誘の問題なのか、脇村氏の発言は一向に腰が定まりません。

さて、自民党の「高校野球特待制度問題小委員会」というのも、少しピントが外れているような気がします。政党が議論する場合、「高校野球」というくくりは必要ありません。むしろ、高校における特待生制度全体を広い視野で吟味すべきでしょう。

野球部だけでこんなにいるなら、ほかの部や学業特待生を加えると、全校生徒に占める特待生の割合が相当な比率になるはずだと思える高校もあります。「広く薄く」の考え方は否定できないでしょうが、どうもそういうわけでもなさそうです。

このブログでは、そこまで踏み込むつもりはありませんが、ここまで問題が広がってしまうと、まずは社会的な合意形成が必要になってきているはずです。その意味では、様子見を決め込む高体連の対応は「正しい」のです。

そろそろ、朝日や毎日は「行き過ぎ」の具体的な中身を語るべきです。学生野球憲章があろうがなかろうがダメなものはダメなのであって、「行き過ぎ」とはそうした性質のものでしょう。

知っていても書けないのは、高野連様の「一罰百戒」主義が背景にあるからです。「頭を柔らかく」という自民党議員の発言は的を射たものです。


評議員【訂正】

2007年06月10日 | 脇村語録

05/28付「高野連新役員」のページにおいて、「評議員会は審議(諮問)機関の位置づけとなります」と記述していました。財団法人についての一般的な話なら、この認識でもいいのですが、高野連様の場合には事情が異なりますので、ミスリードをお詫びし、当該文言は削除します。

アマ4団体の寄付行為では、以下6点につき、次のように定められています。

A:理事の人員
B:理事の選出
C:評議員の人員
D:評議員の選出
E:会長の選出
F:寄付行為の変更

★日本野球連盟
A:17名以上20名以内(会長1名、副会長3名以内、専務理事1名以内を含む)
B:評議員会で選任
C:50名以上67名以内
D:理事会で選出し、会長が任命
E:理事の互選
F:理事現在数及び評議員現在数の各々の4分の3以上の議決

★大学野球連盟
A:22名以上26名以内(会長1名、副会長2名を含む)
B:評議員会で選任
C:43名以上50名以内
D:理事会で選出し、会長が任命
E:理事の互選
F:理事現在数及び評議員現在数の各々の3分の2以上の議決

★学生野球協会
A:17名以上21名以内(会長1名、副会長3名を含む)
B:評議員の互選
C:80名以内
D:(1)大学野球連盟で選挙した者、(2)高野連で選挙した者、(3)理事会で選挙した者
E:評議員会で選挙
F:評議員の3分の2以上の同意

★高野連
A:30名以上35名以内(会長1名、副会長4名を含む)
B:評議員会が選任
C:70名以上90名以内
D:(1)理事会による選任、(2)加盟団体=都道府県高野連による選任、(3)会長の指名
E:評議員会が理事の中から選任
F:理事現在数および評議員現在数各の3分の2以上の同意

会長の選任に関して、日本野球連盟と大学野球連盟では理事の互選になっていますが、学生野球協会と高野連様では評議員会で選任することになっています。また、寄付行為の変更に際して、学生野球協会では理事会の同意を必要としていません。

ざっくりと調べてみましたが、スポーツ関係以外では、評議員会でトップを選ぶ財団法人は見当たりませんでした。

財団法人社会保険協会:(会長)理事の互選
財団法人日本博物館協会:(会長)理事の互選
財団法人全国市町村振興協会:(会長)理事会が選任、(理事長)理事の互選
財団法人公正取引協会:(会長)理事会が推挙
財団法人明るい選挙推進協会:(会長)理事の互選
財団法人全国消防協会:(会長)理事の互選
財団法人国学院大学院友会:(会長)理事の互選
財団法人和歌山県暴力追放県民センター:(会長)和歌山県知事の職にある者
財団法人民事法務協会:(会長)理事の互選
財団法人堺市水道サービス公社:(理事長)理事の互選
財団法人アイヌ無形文化伝承保存会:(会長)理事の互選
財団法人公益法人協会:(会長)理事の互選
財団法人日本棋院:(理事長)理事の互選
財団法人日本相撲協会:(理事長)理事の互選
財団法人日本ハンドボール協会:(会長)理事の互選
財団法人日本オリンピック委員会:(会長)評議員会の推挙、(副会長)理事の互選
財団法人日本体育協会:(会長)評議員会で推挙し理事会で選任

高野連・脇村会長11月に進退「諮る」(リンク先はGoogleのキャッシュ)
(スポニチ 2007年06月08日付 紙面記事)
▼日本高野連評議員会 日本高野連の予算、決算や事業計画などを決定する最高意思決定機関。これに対し理事会は執行機関。また会長や副会長などの役員についても選任権を持ち、毎年2回の定例評議員会が行われる。現在、理事会や加盟団体から選任された評議員79人が在籍。

この記事の中(引用していない部分)で、脇村氏は「特待生問題では生徒は無過失である」と述べたとされています。脇村氏は以前も(特待生は)故意ではないにしても、責任はある」と述べています(→「選手にも責任?」)。

「無過失責任」は自賠責保険や労災保険などで被害者救済のために取り入れられている考え方ですが、特待生によって誰かが被害者になったわけではない以上、出場停止というペナルティを求める必要もなかったはずです。


特殊な団体

2007年05月31日 | 脇村語録

いつものように滝口氏の記事から始めます。

脇村高野連会長と伊吹文科相が会談 基準作りで温度差
(毎日新聞 2007年5月12日 東京朝刊)
 日本高野連の脇村春夫会長と伊吹文明文部科学相が11日に東京都内で会談し、伊吹文科相は「(特待制度を認めている)他のスポーツとのバランスも考えて制度の基準を検討してほしい」と要望した。【滝口隆司】
 日本高野連は6月下旬をめどに日本学生野球憲章に違反しない特待制度の基準をまとめる。会談後、脇村会長は「我々には(戦前に野球統制令で活動を制限された)歴史的な問題や野球留学の問題もある。他との関係より、高校野球がどうあるべきかを考えていきたい」と述べ、他競技に影響されず、主体的に基準を作る意向を強調した。

意外なことですが、脇村氏や田名部氏は「(野球は)特別」と発言していないようです。すくなくとも私が保存している記事のなかには見当たりませんでした。ただ、複数の社説では「野球は特別」が出てきますので、そのように受け取られても仕方のない発言を繰り返したことは間違いないわけです。

上の記事は、文科相との会談後に脇村氏が語ったものです。彼らは、いわゆる「野球は特別」論を主に歴史的背景から語るのですが、ちょっと珍しい側面から「野球の特殊性」を示してみます。

総務省の「公益法人データベース」で「野球」をキーワード(部分一致)にして、得られた検索結果を設立順に並べ替えてみました。

●S23/03/01社団法人日本野球機構
●S28/02/12財団法人日本学生野球協会
●S28/04/01財団法人全日本軟式野球連盟
●S33/11/10財団法人野球体育博物館
●S38/02/27財団法人日本高等学校野球連盟
●S39/12/24財団法人東京都軟式野球連盟
●S48/04/05財団法人神奈川県高等学校野球連盟
●S51/04/01財団法人千葉県高等学校野球連盟
●S52/03/28財団法人静岡県高等学校野球連盟
●S52/05/24財団法人埼玉県高等学校野球連盟
●S54/06/13財団法人全日本大学野球連盟
●S55/08/15社団法人日本プロ野球選手会
●S56/01/19財団法人横浜野球友の会
●S57/03/04社団法人少年軟式野球国際交流協会
●S58/12/28財団法人兵庫県高等学校野球連盟
●S62/03/26社団法人神奈川県少年野球交流協会
●H02/12/25財団法人栃木県軟式野球連盟
●H01/11/16財団法人吉澤野球博物館
●H02/06/28財団法人日本野球連盟
●H04/08/12財団法人世界少年野球推進財団
●H10/04/23社団法人全国野球振興会
●H17/05/19財団法人全日本リトル野球協会
●H17/05/19財団法人日本少年野球連盟

このように、名称に「野球」が含まれる公益法人は23団体あります。まあ、「横浜野球友の会」というのは、私も初めて知りましたが…。

実は、「サッカー」で検索すると30団体あります。これは日本サッカー協会が下部組織の法人化を促している帰結であって、その財団法人日本サッカー協会を除けば、H04/04/01付で財団法人認可を受けた静岡県サッカー協会がもっとも古く、大半はこの4~5年の間に社団法人の認可を受けています。

公益法人制度の見直しが進行中の今では事情が異なると思われますが、数年前までは財団法人認可を受けるには1億円以上の資産が必要だと言われていました。高野連様の場合、ローカル組織にすぎない神奈川、千葉、静岡、埼玉、兵庫の5県が財団法人認可されています。

「野球」という競技の中の「高校」という階層の県レベルの団体が5つも財団法人になっているのです。こんな競技はほかにないでしょう。申請すれば、東京や大阪なども簡単に認可をとれるはずです。このような意味において、(高校)野球が特別であることは事実です。


軸足

2007年05月21日 | 脇村語録

脇村氏の発言がどうにも一貫しません。まあ、報じる側のメディアが肝心な部分をそぎ落してしまうのかもしれませんが…。

「特待制度」驚きの実態!400校1万人アウトか
(2007年5月3日06時01分 スポーツ報知)
脇村会長は「憲章違反は本来ならもっと処分が重いが、免責される。健全な高校球界を作ることが残された責任。13条は時代遅れと思っていないし、野球留学が絡んだ大問題を解決しないと高校野球の発展はない」と言い切った。

緩和措置を発表したあとも同じです。

特待制度に緩和措置 高野連が緊急理事会
(中日スポーツ 2007年5月11日付紙面から)
脇村会長は「きっちりとした制度改革が課せられた責任と思っている。今回の最大の問題は、野球留学に絡んでおり、フェアプレー精神、アマチュア精神に反する、そこの根幹をきちんとしなければいけない」と話した。

まるで、「特待生が悪いと言いたかったのではない。本当は野球留学がよくないと言いたかっただけだ」と弁明しているようにしか聞こえません。

それなら、それでいいのです。野球留学が本丸だと言ってくださるのなら、私は楽チンです。野球留学に歯止めをかける目的で「特待生NG」を言い出したのだとしたら、まったくもって本末転倒だからです。

なぜなら、「特待生制度を使わず私費で野球留学するのは構わないのだな」ということになってしまうからです。かえって、野球留学を認めることになります。

脇村氏は今回の事件以前には次のように発言していました。

小中高野球協10周年祝う 高知市 (高知新聞 2007年01月28日)
―出身地以外に進む野球留学について高野連は、さまざまなデータを集めていますが。
 「本人に選択の自由があるので一律に規制することはできないが、個人的には親元から通学して地元の高校で野球をすることが望ましいと思う。だが、県外で寮生活をしながら野球をすることが一概に悪いともいえない。ただ、授業料免除など特待生として進学するケースを含めて、金銭の授受が絡むとすれば、日本学生野球憲章に反する。具体的な確証があれば、しっかりと対処したい」

ここでは、「野球留学は一概に悪いと言えないが、特待生制度は学生野球憲章に反する」とおっしゃっていたわけです。ねえ、どっちなの?

特待生制度は学生野球憲章の問題です。これは“宗教論”です。しかしながら、野球留学は“宗教論”ではありません。学生野球憲章は野球留学を禁止していないからです。禁止できるはずがありません。大学にも適用される学生野球憲章で野球留学を禁止したら、大学野球は成立しません。

脇村氏の発言でわずかに救いがあるのは、これだけです。

勧誘行為の制限が課題 (2007年5月11日19時08分 スポーツ報知)
脇村会長は「留学そのものを駄目と言っているのではない。問題になっているのは選手の勧誘」と話したが、明確な基準づくりは難しく、高野連の今後の課題ともいえる。

もう少し発展させれば、話を集約できるのではないでしょうか? 選手の勧誘そのものが問題なのではなく、中学生の高校進学に際して人身売買的にブローカーが蠢くことこそが排除されるべきなのです。

そのようにおっしゃってくださるのであれば、知恵の出しようもあるでしょう。何が悪いのか、何を排除すべきなのか、一番肝心な軸足がブレているのですから、各方面から「ボーク!」の大合唱が起こるわけです。

選手の勧誘を規制してしまうと(規制しているのですが)、逆にブローカーの跋扈を促すことになります。当たり前です。高校側が直接勧誘できないのですから、誰かが仲立ちするだけのことです。

特待生を禁じて、表向き「健全」化されたとしても、実質的な特待生が闇に潜ってしまう可能性があります。本来、これこそ恐れなければいけないことです。学校側が定めた特待生のほうがよほど「健全」です。

野球留学を規制したところで、同県内の高校への進学の斡旋を規制することはできません。このように考えるなら、野球留学、特待生、選手の勧誘をことごとく禁止しても、ゴキブリのように生き残るものがあるわけです。これこそが実は“本命”ではないのでしょうか?

これだけ発言が一貫しないのは、ご本人も何かが悪いとは思いながら、何が悪いのか確信をお持ちではないのかもしれません。その程度の人物が号令をかける(その程度の人物に号令をかけさせている)から、話が混乱するわけです。「見逃し三振はけしからん」とほざいているぐらいが、ちょうどお似合いのお方です。

私はTVを見ませんから知りませんが、どうやら緩和措置の発表のときも、謝罪の言葉はなかったようです。たとえ“帽子”にすぎなくても、最高責任者である以上、それはあってはならないことです。


選手にも責任?

2007年05月03日 | 脇村語録

「高校別」が一段落ついてから、「語録」をやろうと思っていましたが、これはちょっと問題発言だろうと思われます。

「子供にも責任」「憲章見直さず」…高野連の脇村会長
(2007年5月3日2時27分  読売新聞)
 60人を超す報道陣が詰めかけた日本高野連(大阪市西区)の記者会見。脇村春夫会長は、全国の400校近くが日本学生野球憲章に抵触する特待生制度を実施している現状に、「非常に驚いている」としつつ、「学生野球憲章を見直す考えはございません」と言い切った。
 違反校の部長は引責辞任、該当部員は5月3日から同月末まで対外試合出場を差し止められるなど、厳しい処分が下される。
 「子どもに責任はないのではないか」との質問にも、脇村会長は「憲章を知らない子どもに責任はないというが、現実に(学費などを)もらっている。故意ではないにしても、責任はある」と強調。田名部(たなべ)和裕参事も「憲章13条はアマチュア規則そのもの。その考え方で行けば、お金をもらった時点で資格を喪失する」と述べた。

いよいよ“自爆”への道をまっしぐら、という感じがしてきます。この“宗教”団体は、とうとう選手たちにも責任があると言い出したようです。

「私らが悪いのであって、社員は悪くありませんっ!」と涙ながらに語ったのは山一証券の社長でした(本当に悪いのは前社長だったのですが…)。下で問題が起きたとき、トップが(それなりの)責任をとるのがまっとうな組織です。

百歩譲って、学費の減免が極悪非道な行為だとしても、それを今まで放置してきた責任は脇村氏にも田名部氏にもあるはずです。どこの学校でも「君たちが悪いんじゃない」となだめているときに、たとえ記者とのやりとりの中であっても、その神経を逆なでするような発言をしてしまう感覚は理解に苦しみます。

「故意でない」という認識も誤りです。学費の減免を受けるということに対して、生徒は明らかに「故意」です。彼らは「故意でない」から悪くないのではありません。そもそも何の罪も犯していないのですから、最初から無実なのです。学費の減免を受けることは罪ではありません。したがって、罰を科してはならないのです。

学生野球憲章を知っていたか知らないかということは問題ではありません。殺人を犯して、人を殺したら罪になるとは知らなかったと主張しても、罪は軽減されません。インフィールドフライはインプレイです。そのルールを知らなかったからといって、審判がジャッジを変えることはありません。

「お金をもらった時点で資格を喪失する」という田名部氏の発言は、30年前なら通用したかもしれません。いまどき「アマチュア規定」なるものを後生大事に掲げているのは(日本の)学生野球ぐらいのものです。「アマチュアリズムの権化」と言われたラグビーでさえ、プロ化の波に洗われています。

まあ、「憲章を見直さない」とおっしゃるのは結構なことです。私も新サイトを立ち上げて、たった10日で閉鎖したくありませんから…。少しは突っ張ってもらわないと、肩透かしになります。