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特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

処分なし、調査なし、期限なし

2007年05月10日 | 大学野球連盟

大学野球の特待制度について、次のような記事がありました。記事では東北のほかの大学にも触れてありますので、必要ならリンクをたどってください。

大学も特待制度「野球憲章違反なのか」東北関係者戸惑い
(河北新報 2007年05月09日)
 富士大(岩手)は、野球部員の約8割が特待生。関係者は「授業料免除などをしないと、地方の大学でわざわざ野球をする選手はいない」と率直に話す。

まあ、匿名の「関係者」ですから、率直な話もできるのでしょう。さて、9日の大学野球連盟常任理事会の結論は、「処分なし」で「調査なし」、そのうえ違反の恐れがあっても是正に「期限なし」というものでした。

大学野球連盟:特待生に処分科さず 高野連とは異なる対応
(毎日新聞 2007年5月9日 21時23分)
 全日本大学連盟は(1)学費、入学金などの軽減や免除を約束して入学・入部させること(2)野球部員のみを対象とした奨学金制度--の2点については、学生憲章違反になる恐れがあると指摘。期限は設けず、実態調査もしないが、違反行為があれば是正するよう求めた。
 特待制度に対して厳格な指導をした日本高校野球連盟とは異なる対応になったことについて、大学連盟の内藤雅之常任理事は「大学連盟として初めて13条についての解釈を示した。それをすぐに『こうしなさい』と求めるわけにもいかない」と説明。体育専門の学部なども多く、より幅広い教育の場である大学
の特性なども考慮したという。
 高校と大学で学生憲章の解釈に違いが出たことについて、同連盟の八田英二会長は「理事会としては13条を未来永劫(えいごう)守っていこうと話したわけではない。今後検討して改正が必要ならば、正式なルートに乗せて提起していきたい」と憲章の見直しにも言及した。

この内容では、「学生野球憲章って(まだ)あったっけ。じゃあ、みんなで守ってることにしようや」としか聞こえません。

同じ学生野球憲章の解釈が180度と言っていいぐらい異なるのなら、学生野球憲章を白紙に戻して、新たに大学野球憲章と高校野球憲章をつくればいいのです。もともと学生野球憲章は、大学と高校の2本立てですから、別々にしたほうがわかりやすいわけです。学生野球憲章がなくなれば、学生野球協会という組織も必要ありません。

いずれにせよ、これでまた一段と高野連様の暴走ぶりが際立ってきました。高体連が高野連様に追随するとも思えず、私学部会での反撃も必至でしょうから、脇村執行部はいよいよ窮地に立たされたわけです。

元セリーグ事務局長の渋沢良一氏からはこんな皮肉も浴びています。これまで度々、憲章を盾にされた積年の恨みでもあるのかもしれません。

【四季折々】いまだに憲章改正の機運見られぬ学生野球界
(サンケイスポーツ東北版 2007年05月08日)
高野連の脇村会長は学生野球界きっての、憲章の使い手だ。高野連は義務と責任をまっとうするに違いない。

8000人を“犯罪者”扱いしたのですから、渋沢氏に言われるまでもなく、義務も責任も重いはずです。今日10日は、高野連様の緊急理事会が開かれます。この場でなすべきことは、まず処分の撤回であり、名誉回復です。今ならまだ間に合うかもしれないのです。

まあ、せっかく申告してもらったのですから、8000人をシニア、ボーイズ、その他の硬式、軟式という形で出身別に振り分けるべきでしょう。前向きな話に持っていくつもりなら、そこに踏み込むべきだということは、田名部氏も脇村氏もわかっていることです。


大学野球連盟の理事

2007年05月06日 | 大学野球連盟

次の焦点は、5月9日に開かれる全日本大学野球連盟の常任理事会です。すでに同連盟の内藤常任理事(学生野球協会では事務局長)は次のように発言しています。ちなみに、氏は立大のOBです。

日本学生野球協会、違反校300超にも冷静
(2007年5月2日23時17分  スポーツ報知)
内藤氏は「高校とはまったく同じ対応にはならない」と、あらためて高野連とは違反の線引きを変える方針を示した。

まあ、スポーツ特待生がダメということになると、日本体育大、大阪体育大、鹿屋体育大(国立)、びわこ成蹊スポーツ大などは身動きがとれなくなります。もっとも内藤氏の発言にもブレがありますが…。

大学野球連盟の寄付行為(株式会社の定款に当たるもの)第18条によれば、理事は評議員会で選任されることになっています。また、寄付行為第24条によれば、評議員は理事会で選出し会長が任命することになっています。

全日本大学野球連盟のWebサイトでは、同連盟の理事は23名です。次に掲げる役職は名誉職的なものより野球の現場に近いものをピックアップしました。カッコ内には学生野球協会のWebサイトに記載されている評議員に推薦した加盟団体を付しました。

【会長】
八田英二★(理事会推薦)日本私立大学連盟副会長、同志社大学長
【副会長】
南原晃★(理事会推薦)元東京六大学野球連盟監事、元日本銀行理事
尾郷良幸★(首都)東海大常務理事
神田俊輔★(理事会推薦)?
【専務理事】
小野忠彦★(関西学生)関西学生野球連盟理事長
【常任理事】
小宮谷紀男★(北海道)?
大竹榮★(仙台六)東北福祉大野球部部長
田和一浩★(東京六)東京六大学野球連盟先輩理事
内藤雅之★(東京六)東京六大学野球連盟事務局長
大谷哲夫★(東都)駒沢大野球部部長、駒沢大総長、東都大学野球連盟理事長
工藤房雄★(神奈川)元関東学院大野球部監督、神奈川大学野球連盟理事長
浪川正己★(愛知)愛知大学野球連盟理事長
村上博★(関西六)関西六大学野球連盟理事長
高本登★(広島六)元広島工業大野球部監督
太田紘一★(九州地区)九州地区大学野球連盟理事長
榊原敏一★(理事会推薦)元慶応大野球部監督
八頭司義久★(理事会推薦)関西学生野球連盟常任理事
中山実★(理事会推薦)
【理事】
岩井美樹★(千葉県)国際武道大野球部監督
高橋昭雄★(東都)東洋大野球部監督
河野通方★(理事会推薦)元東京大野球部部長
石井連藏★(理事会推薦)元早稲田大学球部監督
奥田裕一郎★(理事会推薦) ?

実は、学生野球協会のWebサイトでは真鍋豊宏氏(元松阪大野球部監督)を含めた24名になっていますが、やはり当事者のものを信用するしかありません。

太田紘一や中山実という元プロ野球選手も実在しますが、単に同姓同名ではないかと思われます。また、「"奥田裕一郎" 野球」でGoogle検索したら、「都市対抗監督勝利数」のページがヒットして、びっくりしたのですが、ご本人かどうかはわかりません。

なお、9日は常任理事会とのことですので、平理事の5人は関係ないのでしょう。いずれにせよ、大半は私学関係者です。

もともと日本の野球は大学から始まっており、野球部特待生も大学が端緒であることは疑いようもありません。NPBの観客概数発表にしても、元をたどればアマの慣習を引き継いだだけのことです(つまり、概数発表をやめることでNPBはようやく「プロ」らしくなったわけです)。私はこの問題がなくても、特待生の起源をたどりたいと思っていましたので、ちょうど好都合なんですが…。

さて、学生野球憲章の第7条には次のように定められています。

学生野球憲章第7条
入場料は、入場者の整理、試合及び練習に要する経費に充てる場合に限りこれを 徴収することができる。但し、日本学生野球協会の承認ある場合はこの限りでない。

この規定の本則部分は高校野球には適用されません。但し書きの部分は第19条によって、高校野球にも準用されます。これに関連する次のような記事もあります。

斎藤獲りに総長も動いたワセダの鼻息(サンデー毎日 今週の1本)
斎藤投手は野球部にとって即戦力であると同時に貴重な〝財源〟にもなりそうだ。74年から10年間、早大野球部監督を務め、プリンスホテル監督や巨人軍編成本部長などを歴任した石山建一氏が解説する。「野球部は六大学リーグ入場料収入の分配金などが主な収入源です。チームの運営費はもちろん、合宿所の経費までを賄っているのです。甲子園のスター選手が六大学リーグで活躍すれば、野球部も潤いますよ」

こういうことになっている以上、「奨学金をもらうとプロ」というきれいごとの論理は、とても大学野球では通用しそうにありません。「入場者の整理、試合及び練習に要する経費」という憲章の条文を拡大解釈しない限り、「合宿所の経費まで」賄うことはできません。

というわけで、まさか大学が高野連様に足並みをそろえることにはならないでしょう。高野連様の暴走のとばっちりを受けて、せっかくのハンカチ効果を台無しにしたくはないはずです。


大学はどうする?

2007年04月26日 | 大学野球連盟
少しはものごとがわかっているはずの大学野球側がどう対応するのかも興味深いところです。分断されるのかされないのか、保守派と現実派の綱引きがあるのでしょうか?

PL・済美も特待制度 日本学生野球協会、即時廃止方針を承認
(Yahoo!ニュース 4月25日8時0分配信 産経新聞)
大学の特待制度への対応については、5月9日に予定される全日本大学野球連盟の常任理事会で協議する。日本学生野球協会の内藤雅之事務局長は「プロ・アマの関係で高校と大学では異なる取り扱いがある。きょうの理事会では(奨学制度などは)必ずしも高校と同じ扱いをしなくてもいいのではないか、との意見もあった」と語った。

高校野球と違って人気のない大学野球では、高校と同じ措置をとりたくても、そう簡単に問屋がおろしてくれません。大学側が異なる対応をとれば、高野連の暴走が露出します。これを嫌うなら、同一歩調をとるしかありません。同じ「学生野球憲章」の制約下にある大学サイドの対応は注目されます。